資産形成

NISAでREIT(不動産投資信託)する時におさえておきたいポイント

2020/08/11
NISAでREIT(不動産投資信託)する時におさえておきたいポイント

こちらの記事をお読みの方の中で、NISAの非課税枠を活用して、REITを検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、NISAの仕組み、REITはNISAの対象となるのか、REITのメリットとデメリットなどについて詳しく把握していない方も少なくないでしょう。

こちらの記事では、NISAの仕組み、NISAを利用する時の注意点、REITのメリット・デメリット、実際にNISA口座の開設方法などについて詳しく書いていきます。これからNISAを活用してREIT投資を検討されている方は、ぜひ最後までお読みください。

そもそもNISAとは?NISAの仕組みについて

NISAとは、最長5年間、毎年120万円までの投資で得られた利益に対して非課税になる制度です。

通常は株式、FXなどの資産運用で得られた利益に対して、20.315%の税金がかかりますが、NISA口座で投資した場合は非課税になるため、5年間でトータル600万円までの投資で得られた利益が非課税になりますので、節税対策として非常に有効的と言えます。

NISA口座の利用要件としては、1人につき1口座となっており

  • 利用できる期間:2023年まで
  • 対象利益:資産運用による配当、売却益

とされていました。

今年令和2年の税制改正があり、より多くの方に安心して利用できるよう、NISA口座について以下の変更点がありました。

  • 利用できる期間:2023年から2028年まで延長
  • 非課税枠:2階建てとなり、1階部分は「20万円/年」、2階部分は「102万円/年」

この非課税枠についてですが、1階部分は初心者向けの低リスクの商品が中心となっており、原則1階部分の年間20万円の積立投資をしないと、2階部分の102万円は利用できないようになっています。

なお、税制改正後の新制度NISAのスタートは2024年からとなります。

NISA口座を利用する時の注意点

一見、メリットが多いNISA口座ですが、仕組みについてきちんと理解しないと損をする可能性もあります。

NISA口座を利用する時の注意点を見てみましょう。

  • (1)損益通算ができない
  • (2)投資である以上損をするリスクもある

では、順番に説明していきます。

損益通算ができない

NISA口座は利益が出た時にその利益が非課税になるという大きなメリットがありますが、一方、万が一運用で損をしてしまった場合は、損益通算することができないため、NISA口座を利用して損をしているにも関わらず、税金がより多く発生してしまう可能性もあります。

例えば、2つの口座で運用をした場合

  • A口座:株式投資で300万円の利益
  • B口座:投資信託で150万円の損失

■一般口座(A)と特別口座(B)の場合

所得税:(300万円−150万円)☓20.315%=304,725円

■一般口座(A)NISA口座(B)の場合

所得税:300万円☓20.315%=609,450円

結果として、NISA口座の損失は利益が出た口座との損益通算ができないため、損失が出た上に更に税金「609,450円−304,725円=304,725円」も多く払うことになります。

投資である以上損をするリスクもある

NISA口座を活用して節税したいと思われている方が多いと思いますが、そもそも投資であることを忘れてはいけません。

投資である以上リスクはつきものです。利益を得ることができれば損をしてしまうこともあります。節税ができるから気軽に始めるのではなく、きちんと投資について勉強してからスタートすることが大切と言えます。

REIT(不動産投資信託)とは?

REITはReal Estate Investment Trustの略で、不動産投資信託のことを言います。日本ではJapanの「J」をつけて「J-REIT」と呼ばれています。

2001年の9月にJ-REITが初めて上場されました。下記の図をみて頂ければ分かりますが、REITは不動産投資法人が投資家に投資証券を発行し、投資法人はそのお金でオフィス、商業施設、マンション、流通施設、リゾートホテルなど複数の不動産を購入し、それを運用して得られた家賃収入や売却益を投資家に分配する仕組みになっています。

REITのメリットとデメリット

不動産投資と比較して、REITに投資するメリットとデメリットについて見ていきましょう。

REITのメリット

まず最初にREITのメリットについて見てみましょう。

大きく下記のようなメリットが挙げられます。

  • ①少額からスタートすることができる
  • ②リアルタイムで取引することができる
  • ③運用にほとんど手間がかからない
  • ④複数の物件に投資することによってリスク分散ができる
  • ⑤いつでも換金することができるため流動性が高い

では、順番に見ていきます。

①少額からスタートすることができる

不動産投資は数千万円から億単位と投資金額が大きく、投資金額が大きい分リスクも大きくなります。

一方、REITの場合は1万円からスタートすることができ、少額から不動産投資を始めることができるという観点ではリスクが低く、スタートするハードルも低いと言えます。

②リアルタイムで取引することができる

不動産投資の場合は物件を見に行ったり、融資の手続きなどで最終の決済までには最短でも1ヶ月前後かかると言われています。

REITは投資信託商品になりますので、株式の取引と同様にリアルタイムでの売買ができます

そのため、ご自身の都合で取引することができるのがメリットと言えます。

③運用にほとんど手間がかからない

REITの場合は運用会社、資産保管会社、事務受託会社など、基本的には物件の運用は全てプロに任せることができ、運用に関してはほとんど手間がかからないと言えます。

不動産投資は、物件の管理を管理会社に任せることで手間を減らすことができますが、やはり空室になった時に管理会社と対策を立てたり、リフォームしたりなどオーナーご自身で対応した方がいいケースもあります

④複数の物件に投資することによってリスク分散ができる

不動産投資は一つの部屋、一棟物件と特定した物件を投資することになりますが、REITの場合は同時に複数の物件を投資することができます

複数の物件タイプに投資することによって、たとえ1物件の運用がうまくいかなくても、他の物件でそのリスクを分散することができます。

⑤いつでも換金することができるため流動性が高い

人生に何が起きるか分かりません。急遽現金が必要になるケースも考えられます。

不動産投資をしている場合は、物件の売却期間は大体3ヶ月〜6ヶ月が一つの目安となっているため、流動性が低いと言われています。急遽お金が必要になった時になかなか対応が難しいと言えます。

一方、REITの場合はリアルタイムに取引ができることから、急遽お金が必要になった時もすぐ対応することができます

REITのデメリット

続きまして、REITのデメリットも見てみましょう。

REITには大きく下記のようなデメリットが挙げられます。

  • ①不動産投資のメリットを享受できない
  • ②投資法人の倒産、上場廃止のリスクがある
  • ③分配金が減少するリスクがある
  • ④リアルタイムに価格変動のリスクがある

では、順番に見ていきます。

①不動産投資のメリットを享受できない

まず最初のデメリットは、不動産投資のメリットを享受できないことです。

REITも同じ不動産を投資するのですが、管轄は金融庁であることから金融商品になります。そのため、国土交通省の管轄である不動産投資のメリットを享受することができないです。

具体的には他の投資商品との損益通算ができない相続税対策にならないなどが挙げられます。

従って、不動産投資のメリットを享受したい方はREITは適していないと言えます。

②投資法人の倒産、上場廃止のリスクがある

不動産投資は不動産投資会社、管理会社が倒産する可能性があるのと同じように、REITの場合は投資法人が倒産したり、上場廃止などのリスクがあることを認識しておく必要があります。

不動産投資の場合はたとえ不動産投資会社が倒産しても、管理会社が倒産しても、不動産という資産は自分のものであることに変わりはないですが、REITの場合は投資法人が倒産などになった場合、株式と同じようにただの紙くずになり、投資金額は返ってこないことを理解しておきましょう。

③分配金が減少するリスクがある

テナントの退去、借り入れ金利の上昇、地震など自然災害の影響により、分配金が減少するリスクがあります。

そのため、複数の物件を所有したり、新耐震基準を満たした物件を選ぶなどの対策を立てておく必要があります。

④価格変動のリスクがある

不動産投資の場合は、昨日今日で物件価格が変わることは想定しにくいですが、REITの場合は証券取引所に上場しているので、株式と同様に取引価格は日々変動しています。

同じ投資金額でも、購入するタイミングが遅れることによって価格が上昇してしまい、購入できる株数が変わるリスクがあることも認識しておきましょう。

NISA口座でREITを運用するには?

NISA口座で運用できる商品が決まっていて、REITはNISAの対象となっています。

NISA対象のREIT銘柄は

  • オフィス
  • 住居
  • 商業施設
  • 流通施設
  • リゾートホテルなどのホテル
  • 工場・有料老人ホームなどその他

など特定の銘柄もあれば、複数の複合型の銘柄もありますので、ご自身で自由に選ぶことができます。

REITの平均利回りは大体4%前後と言われていて、東証1部全銘柄の平均配当利回りの2%より高くなっています。その背景には賃料が安定していることと高い稼働率だと言われています。

つまり、NISA口座はREITの配当利益の節税対策としては有効的と言えます。

しかし、NISA口座は5年間と利用できる期間が決まっていることから、それ以上運用を検討されている方は注意しておく必要があります。

実際にNISAでREITを始めるには?

NISAでREITを始めるにはまずNISA口座を開設する必要があり、口座は証券会社、銀行などで開設することができます。

REIT専用の口座を検討している場合は、投資したいREIT商品を取り扱っている証券会社で開設するといいでしょう。その際に、手数料もぜひ比較してみてください。

具体的なREITの銘柄などについて詳しくは「不動産投信情報ポータル」を参考にしてみてください。

まとめ

今回はNISAの仕組み、REITの仕組み、メリット・デメリットなどについて書きましたが、参考になりましたでしょうか。

NISAでREITの運用を検討される際に、ぜひNISAを利用する時の注意点も把握した上で、活用するようにしましょう。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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