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不動産特定共同事業法とは?改正のポイントをわかりやすく解説!

2020/10/27
不動産特定共同事業法とは?改正のポイントをわかりやすく解説!

不動産特定共同事業法とは、投資者が不動産小口商品に安心して投資できるための法律です。時代のニーズに合わせて改正が繰り返されており、ポイントを抑えることで更に効力を発揮します。

そこで今回は不動産特定共同事業法とはどのような法律なのか、改正のポイントを押さえながらわかりやすく解説します。

不動産特定共同事業法の概要

まず、不動産特定共同事業法の概要、目的や背景をみていきましょう。

不動産特定共同事業法とは

不動産特定共同事業法とは、1994年6月29日に施行された不動産特定共同事業に関する日本の法律です。不動産特定共同事業とは複数の投資家が共同事業として不動産に出資をし、不動産の取引や運用をして収益を分配する事業を指します。

不動産特定共同事業法の目的と背景

不動産特定共同事業法の目的は「不動産特定共同事業の健全な発展と投資家の保護」です。法律が制定された背景には1991年のバブル崩壊があります。

1980年代のバブル前の好景気とともに不動産小口商品の販売が急増しましたが、バブル崩壊以降には不動産小口商品を販売していた経営基盤の弱い事業者が相次いで倒産。投資家が大きな損失を被る事態が急増しました

。不動産特定共同事業の法規制のニーズに伴って制定されたのが不動産特定共同事業法です。

不動産特定共同事業法の改正ポイント

バブル直後は投資家保護を目的として不動産特定共同事業に参入できる事業者は厳しく制限されてきましたが、近年では時代のニーズに合わせて法律の改正がされています。この章では2017年と2019年の改正のポイントについてみていきましょう。

2017年の改正ポイント

2017年の改正ポイントは主に4つです。

ポイント1:小規模不動産特定共同事業の創設

不動産小口商品を提供する許可を受けられた事業会社の資本金や出資金などの要件が緩和されました。要件緩和により登録更新制度(5年)に変更となって、地方の中小規模の事業者も事業に参入できるようになりました

ポイント2:不動産クラウドファンディングの環境整備

不動産投資を始めるための新しい資金調達の手法である、クラウドファンディングについての環境が整備されました

具体的には「インターネットを通して資金を集める仕組みを扱う事業者についての業務管理体制や規定整備」、「投資家に交付する契約締結前の書面をインターネット上で実施できる規定」などです。

ポイント3:投資家向け事業の規制見直し

不動産投資に見識の深いベテラン向けの事業における約款規制の廃止や、適格特例投資家事業(機関投資家等の特定のプロフェッショナルのみを事業参加者の主体とする場合の特例)の創設が行われました。

この改正は成長が見込まれる分野における都市力の向上良質な不動産の蓄積を目的としています。

ポイント4:特別目的会社(SPC)の事業拡大

特別目的会社(SPC)とは企業が資金を調達する際の手段の1つです。投資家から資金を募って不動産を購入し、運用資金や売却益を投資家に還元したり不動産を証券化したりして資金の流動化を促進する役割があります。

しかし、この法改正により特別目的会社(SPC)を活用した特例事業の門戸が広げられ、一般投資家も事業に参加しやすくなりました

2019年の改正ポイント

2014年の改正ポイントは主に3つです。

ポイント1:投資家保護のルール明確化

不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドラインが策定され、ホームページのような電子取引業務を行う不動産特定共同事業者に対する規則が明確化されました。

その他、「顧客情報や財産の漏洩・流出を防止する体制整備」「適格な審査の実施「クーリングオフ制度」など、投資家の保護を目的とした規則が明瞭になりました

ポイント2:優良な投資商品の提供促進

対象不動産変更型契約における不動産売却後の金銭の運用が柔軟化されました。対象不動産変更型契約とは資産の入れ替えを行いながら長期的・安定的に不動産を運用する契約です。

不動産契約と個人が投資に参入しやすいクラウドファンディングとの組み合わせにより、投資家の保護が適切に図られる投資商品と、個人の資本形成の促進が共存する優良な投資商品を提供できるようになりました

ポイント3:新設法人による早期事業の活性化

法改正前までは不動産特定共同事業の許可は、直前3期分の計算書類の提出が必須であったため、設立後3年未満の法人は許可がおりにくい傾向にありました。

しかし2019年の法改正により、新設法人であっても不動産特定共同事業の許可基準が明確になり、参入事業の増加や活発化の促進がなされました。

不動産特定事業法商品とは

不動産特定共同事業法の整備が進むにつれ、不動産小口商品の信頼性も向上しています。不動産小口商品とは不動産特定事業法に基づく不動産商品の1つです。

特定の不動産を一口数万円から数百万円程度に小口化し、投資家に販売して家賃収入や売却益を投資額に応じて投分配する商品をいいます。

不動産特定事業法に基づく不動産小口商品の種類

不動産小口商品には「任意組合型」「匿名組合型」「賃貸借型」の3種類があります。それぞれの商品は事業主体が異なる点が特徴的です。

商品1:任意組合型

任意組合型の事業主体は「出資者(共同事業)」です。不動産に出資した複数の投資家が共同で事業主体となり、事業で得た利益は出資した額に応じて投資家に分配されます。任意組合型の不動産小口商品は金銭出資だけでなく現物出資や労務出資も可能です。

現物出資の場合は実際に不動産の共同所有者となるため所有権を取得でき、相続対策(相続税の節税)としても活用できます。なお、投資家が出資できる金額は1口100万円程度から。運用期間は10年以上からです。長期運用が基本なので、安定的に収益を得たい投資家にも選ばれています

商品2:匿名組合型

匿名組合型の事業主体は「事業者」です。投資家が金銭で不動産に出資し、事業者が事業で出た利益を出資額に応じた額だけ投資家に分配します。

投資家が出資できる金額は1口数万円程度の少額から始められ、数ヵ月程度〜10年程度の短期運用が可能です。匿名組合型の不動産小口商品は投資家と事業主の間の金銭のやり取りのみで成立します。

商品3:賃貸借型

賃貸借型の事業主体は「出資者(共同事業)」です。複数の投資家が組合を作り不動産を共同で投資用物件を購入。

物件管理は外部の業者に任せて、家賃収入は持ち分に応じて投資家に不動産所得として分配されます。賃貸借型は家賃収入が利益のメインなので、不動産を売却しても利益がない点が特徴です。

不動産特定事業法商品のデメリット・メリット

不動産特定共同事業法商品の代表的なデメリット・メリットについてみていきます。

不動産特定事業法商品のデメリット

不動産特定事業法商品(不動産小口商品)でよく指摘されるデメリットは「購入銘柄の少なさ」です。不動産小口商品を販売できる業者の条件は業者にとってハードルが高く、参入できる業者は少なく銘柄は多くありません。

したがって、投資したい時には募集が終わっていたり、倍率が高くて抽選で投資できなかったりする可能性があります。ただ先述した通り不動産特定事業法の改正により、参入事業の増加や活発化の促進が期待されています。

不動産特定事業法商品のメリット

不動産特定事業法商品(不動産小口商品)の最大のメリットは「少額で都心一等地に低リスクで投資できる」という点です。

不動産投資では投資用不動産の購入時に多額の資金が必要ですが、特に都心の一等地(東京都の港区・千代田区・渋谷区など)はワンルームでも数千万円〜億単位の購入費がかかります。

したがって、投資用の資金を調達するために金融機関からの融資を利用するのが一般的です。しかし、投資運用がうまく行かないと収支が赤字となり最悪の場合は自分の給与から持ち出す可能性があります。

その点、匿名組合型の不動産小口化商品では数万円から投資が可能です。また少額で投資ができるので複数の不動産に分散投資もできますので、1つの不動産で自然災害による滅損や空室による損失が出ても、他の不動産収入でカバーできるので低リスクです。

不動産小口投資を始める方法

不動産小口投資を始めるには、まず「不動産小口商品を扱っている不動産業者を探す」というアクションからスタートしましょう。

そして次は「気になる不動産業者への資料請求」をして、投資を具体的に検討している業者サービスに「会員登録」をします。

会員として入会するとその不動産会社が取り扱っている不動産小口商品の募集案件情報の詳細が分かるので、物件に関する情報収集を順次進めましょう。

ただし不動産小口商品は競争倍率が高いので、すぐに募集が終了してしまう可能性があります。こまめに情報収集をし、気になる物件があればすぐに動ける状態に準備をしておくのがポイントです。

募集案件への申し込みをしたら業者から入金を求められます。入金が完了した時点で購入完了となり、小口商品を通じた不動産投資のスタートです。

まとめ

今回は不動産特定共同事業法とはどのような法律なのか、改正のポイントを解説しました。要点は次の通りです。

  • 不動産特定共同事業法とは「不動産特定共同事業の健全な発展と投資家の保護」を目的として作られた法律。
  • 不動産小口商品は顧客需要が供給を大幅に上回る状態だが、不動産特定共同事業法の改正により参入事業の増加や活発化の促進が予想される。

不動産小口商品は少額で収益性の高い物件に投資ができる点が最大のメリットです。本記事をご自身の不動産投資の知識にぜひご活用ください。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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