不動産投資は、物件を取得する時も運営する時も費用がかかります。ただ
という人もいるでしょう。
結論からいうと、自己資金がゼロ円でも不動産運営は可能ではありますが、ハードルは非常に高いです。
この記事では、自己資金がゼロ円でも不動産運営できるか?という点と、物件取得費用はいくら?物件運営にはいくら費用がかかるの?などの点を踏まえ解説していきます。
自己資金ゼロで不動産運営できるかどうかを知るためには、まず物件取得時にかかる費用を知っておきましょう。
つまり、不動産を購入する時に、物件の本体価格の他に、物件取得時の初期費用として、物件価格の8%前後の諸経費を現金にて支払わなければならないです。
売主が個人の場合に物件を購入する場合は、不動産会社が仲介に入るので不動産会社に支払う仲介手数料がかかります。仲介手数料率は売買価格によって、以下のように上限額が決まっています。
売却価格 | 仲介手数料率(税別) |
---|---|
200万円未満 | 売買金額 × 5% |
200万円超 ~ 400万円以下 | 売買金額 × 4% + 2万円 |
400万円超 | 売買金額 × 3% + 6万円 |
上記は、不動産会社が売主・買主それぞれに請求できる上限になっていて、上記の仲介手数料率で請求する不動産会社が多いですが、売主の同意を得られれば、仲介手数料はゼロ円でも問題ありません。
なお、売主が宅建業者(ディベロッパー)の場合には「仲介」がないので、仲介手数料はかかりません。
不動産購入における印紙税は以下の書類にかかります。
印紙税については、以下のように契約書に記載された金額…つまり売買金額、および借入金額によって異なります。
記載された契約金額 | 税額 |
---|---|
1万円未満のもの | 非課税 |
1万円以上 - 10万円以下のもの | 200円 |
10万円以上 - 50万円以下のもの | 400円 |
50万円以上 - 100万円以下のもの | 1,000円 |
100万円以上 - 500万円以下のもの | 2,000円 |
500万円以上 - 1,000万円以下のもの | 10,000円 |
1,000万円以上 - 5,000万円以下のもの | 10,000円 |
5,000万円以上 - 1億円以下のもの | 60,000円 |
1億円以上 - 5億円以下のもの | 100,000円 |
5億円以上 - 10億円以下のもの | 200,000円 |
10億円以上 - 50億円以下のもの | 400,000円 |
50億円以上 - | 600,000円 |
契約金額の記載のないもの | 200円 |
不動産購入における登録免許税は、以下の登記時にかかる費用です。
また、登記は司法書士に依頼した場合、5万円~10万円ほどの「司法書士報酬」が別途かかってきます。
土地の所有権移転登記に関する登録免許税は以下の通りです。
内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率(措法72) |
---|---|---|---|
売買 | 不動産の価額 | 1,000分の20 | 平成31年(2019年)3月31日までの間に登記を受ける場合1,000分の15 |
相続、法人の合併又は共有物の分割 | 不動産の価額 | 1,000分の4 | - |
不動産の価額 | 1,000分の20 | - |
課税標準とは、その不動産の固定資産税価格のことです。仮に、固定資産税価格がない場合(新築など)は、登記所が認定した価額になります。
建物に関する登録免許税は以下の通りです。
内容 | 課税標準 | 税率 | 軽減税率(措法72の2~措法75) |
---|---|---|---|
所有権の保存 | 不動産の価額 | 1,000分の4 | 個人が、住宅用家屋を新築又は取得し自己の居住の用に供した場合については「(3)住宅用家屋の軽減税率」を参照してください。 |
売買又は競売による所有権の移転 | 不動産の価額 | 1,000分の20 | 同上 |
所有権の保存登記とは、新築不動産の登記時のことです。一方、所有権の移転登記とは中古不動産の購入時に該当します。
不動産取得税とは、建物や土地などの不動産を取得した時にかかる税金です。不動産を取得した時だけ発生する税金なので、固定資産税・都市計画税のように継続的にかかる税金ではありません。
また、不動産を購入して半年ほど経ってから請求されるので、忘れないように気を付けましょう。
不動産取得税は地方税ですが、たとえば東京都の不動産取得税は以下の税率になります。
取得日 | 土地 | 家屋(住宅) | 家屋(非住宅) |
---|---|---|---|
平成20年 4月 1日から令和3年 3月31日まで | 3/100 | 4/100 |
念のため、不動産を取得する所在地の税事務所で税率を確認しておきましょう。
ローン関係費用とは以下になります。
上記の費用は金融機関によって異なります。
たとえば、手数料と保証料を合わせて「 借入金額 × 2% 」としている金融機関もあれば、手数料が「 借入期間 × 2.5% 」で保証はゼロ円という金融機関もあります。
また、団体信用生命保険が「 金利に0.3%上乗せ 」という金融機関もあれば、団体信用生命保険に関する費用の上乗せはない金融機関もあるので、個別に確認しましょう。
保険料とは、火災保険や地震保険のことです。
ローンを組んで不動産を取得した場合には火災保険は必須加入であり、支払う保険料はプランによって異なります。
また、地震保険は任意加入であり、こちらもプランによって保険料は異なります。
固定資産税・都市計画税は、その年の1月1日時点で不動産を所有している人に課税されます。
1月1日に不動産の引渡しをすることはないので、購入した不動産の固定資産税は売主が支払っているということです。しかし、本来であれば固定資産税・都市計画税は、引渡し日以降は買主が支払うべき税金になります。
そのため、引渡し日によって固定資産税を案分し、買主の負担分を「固定資産税精算分」として売主に支払います。
前項で不動産購入時の初期費用について書きましたが、続きましては物件取得後の運営時にかかる費用について解説します。
物件運営時の税金は固定資産税・都市計画税です。
この税額は税率を確認するよりも、新築物件であれば売主にシミュレーションしてもらい、中古物件であれば納税通知書で実際に支払っている税額を確認した方が早いでしょう。
また、物件関連費用として以下がかかります
区分投資であれば、毎月管理費と修繕積立金を支払う必要があり、金額は物件によって異なります。 また、一棟投資の場合は共用部補修費用や管理費用はオーナーが全て負担します。
そして、賃付けや家賃の徴収などを管理会社に依頼ことが多いので、管理会社に賃貸管理委託費用もかかる点は覚えておきましょう。
賃貸管理委託費用は管理会社やプランなどにもよりますが、一般的には家賃の5%ほどを毎月支払います。
さらに、不定期にかかる費用として以下が挙げられます。
賃借人が退去したときには、賃借人の故意・過失でない限り補修費用は基本的にオーナー負担です。 また、経年劣化して故障した設備の入れ替え費用などもオーナー負担なので、長期的にはそのような支出も加味しなければいけません。
あくまで一例ですが、以下が区分マンション投資をしたときの、上記の項目に関する支出になります。
部位 | 5〜10年目 | 11〜15年目 | 21〜25年目 | 26〜30年目 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
内容 | 金額 | 内容 | 金額 | 内容 | 金額 | 内容 | 金額 | |
給湯器 | 修理 | 4,950 | 交換 | 110,000 | 交換 | 110,000 | 修理 | 4,950 |
浴室設備 | 修理 | 5,500 | 部品交換 | 22,000 | 部品交換 | 220,000 | 修理 | 5,500 |
洗面台 | 修理 | 4,950 | 交換 | 110,000 | 交換 | 110,000 | 修理 | 4,950 |
トイレ | 修理 | 3,300 | 修理 | 3,300 | 修理 | 3,300 | 修理 | 3,300 |
キッチン | 修理 | 3,300 | 部品交換 | 22,000 | 部品交換 | 110,000 | 修理 | 3,300 |
エアコン | 修理 | 5,500 | 交換 | 110,000 | 交換 | 110,000 | 修理 | 5,500 |
さて、さいごに本題である「自己資金ゼロで本当に不動産投資できるのか?」という点について解説します。 冒頭で書いたように、結論からいうと自己資金ゼロでも不動産運営は可能ですが、実現するハードルは非常に高いです。
自己資金ゼロで不動産を運用するためには、まず自己資金ゼロ円で不動産を取得する必要があります。 その方法とは、物件取得の諸経費を含む金額を「オーバーローン」として組むことです。
たとえば、物件価格2,500万円で、取得に関する初期費用が200万円の区分マンションを購入するとします。 仮に、頭金ゼロの場合は借入金額が2,500万円になるので、物件価格はフルローンを利用することによって自己資金ゼロでも賄うことができます。
しかし、初期費用の200万円は手持ち資金から捻出する必要があるので、フルローンだと自己資金ゼロで不動産を取得することはできません。 オーバーローンは、この200万円も一緒にローンを組むので、合計で2,700万円のローンを組むことになります。 つまり、オーバーローンとは、物件価格を「オーバー」してローンを組むということです。
オーバーローンは、以下の理由で融資審査が厳しくなります。
まず、通常のローンよりも借入額が増える分、審査には厳しくなります。 また、不動産投資ローンを組む時は購入不動産を担保に入れますが、オーバーローンの場合には「初期費用」もまとめてローンを組みます。
つまり、担保に入れる不動産とは関係ない費用もローンに組み込むため、担保評価を超えた借入をすることになるのです。 そのため、融資審査は厳しくなり、それ故に「実現するハードルは高い」のです。一般的には不動産投資の初心者はおりないと思っていいでしょう。
前項のように自己資金ゼロでも物件を購入できますが、注意点は購入後に突発的な費用が発生することがある点です。 たとえば、中古物件の場合には「購入後に急にエアコンが壊れた」などもあり得ます。
上述したように、経年劣化による設備の交換はオーナー負担であり、オーナーがその都度支払うことになります。 つまり、その設備交換費用は自己資金から賄うことになるので、自己資金が本当にゼロの場合は支払いができないという事態になってしまうのです。
このように、自己資金ゼロでも物件取得はできるものの、物件運営となると突発的な支出が必要になることもあるので、実際は自己資金ゼロの運営はリスクが大きいといえるでしょう。
上述したように、不動産投資は突発的な出費に備える必要があるため、本当に自己資金がない人はムリして取得する投資商品ではないです。 また、設備交換費用以外にも、空室時は家賃収入がゼロになる場合があります。
しかし、家賃収入がゼロでも、ローンの返済は継続してあるので、その場合は手持ち資金から捻出することになるのです。 さらに、リスクとしては大きくはないですが、賃借人が家賃を滞納しても同じことがいえます。
ほかにも、不動産投資以外に自分自身や家族が事故に遭ったり、病気になったりすれば、突発的な費用がかかることもあるでしょう。
そんなとき、自己資金ゼロ円で不動産投資をしていて、さらに空室状態になっているのであれば、突発的な支出への支払いは非常に困難になってしまいます。 そのような点を良く吟味し、自己資金ゼロ円で不動産投資するか判断しましょう。
このように、オーバーローンを組むことができれば、自己資金ゼロでの不動産購入はできますが、しかし、その審査ハードルが高いですし、購入できたとしても所有している間に自己資金ゼロ円だと突発的な出費に対応できないです。
そのため、自己資金ゼロ円で無理やり不動産投資することはおすすめしません。 きちんと突発的な支出にも対応できるキャッシュフローを構築できる時に、その次のステップとして不動産投資を検討されるといいでしょう。