みんかぶ不動産

不動産投資物件の家賃滞納をされた時にすべきことと滞納を予防する方法

筆者: 八木 チエ不動産投資管理
2019/08/202019/09/18

アパート・マンション経営を行い、不動産投資を行うにあたって家賃滞納が一つのリスクとして挙げられます。

家賃滞納が起こる理由は入居者によってさまざまですが、家賃未納をする入居者の傾向によりとるべき対策も異なってきます。


家賃滞納をされるとオーナーにとっては、収入がないことになりますので、入居者に家賃滞納をされてしまった場合の対処法と、家賃滞納のリスクを低く抑えるための家賃滞納対策、そして家賃滞納の解決策を詳しく説明していきます。

1.不動産投資を行う際の家賃滞納のリスクは平均何%?

そもそも家賃滞納は、どの程度の割合で起こっているのでしょうか。日本賃貸住宅管理協会が出した「日管協短観」よれば、2018年10月から2019年にかけての月初めの時点での滞納率は、全国平均で6.5%に及ぶことが分かっています。

参考:https://jpm.jp/marketdata/


また、2か月以上のいわゆる「悪質」または「貧困」による家賃滞納は全国平均で1.4%起こっています。単純な家賃滞納に関していえば、約15件の物件のうち1件家賃滞納が発生しているという計算です。


しかし、2か月以上家賃滞納が続いている物件の割合は全国で1.4%となっており、家賃滞納が発生した時点で適切な対応を取っていれば、ほとんどのケースで深刻な事態に陥ることはないと言えます。

2.家賃滞納が起こる原因

では、どのような理由で家賃滞納が起こるのでしょうか?月初めに家賃滞納が起こる割合は6.5%ですが、二か月以上滞納されている割合は1.4%と少なくなっており、二か月の間に家賃滞納の約8割が解決しています。


1)1ヶ月分だけ遅れた場合

その理由としては、お金がなく払えないというよりは、家賃の支払い方法を口座引き落としにしていて、その残高不足などが考えられます。家賃引き落としの専用口座を作り、そこに毎月入金を行って家賃の引き落としを行っている場合などに、このようなケースの家賃滞納が発生しやすいのです。


また、家賃の支払い方法を銀行振り込みにしている場合にも、家賃滞納は起こりやすいといえます。その理由として振り込み自体を忘れていたというものから、旅行などに行っていたために振り込みが遅れた、入院していたので身動きが取れず振り込みができなかったなどがあります。


ですので、ほとんどのケースは家賃の督促を行うことで穏便に解決することができるでしょう。しかし、口座への入金や振り込みを「忘れていた」というケースについては、同一人物が今後も同じ理由で家賃滞納を行う可能性が高いため、注意が必要です。


この月初めの家賃滞納は「お金がない」といった理由は少ないと考えられますが、中には冠婚葬祭、特に不祝儀による出費や、クレジットカードの支払いが嵩んで一時的にお金がなくなり、家賃を滞納してしまうケースもあります。


しかし、あくまでお金が一時的に手元にない状態であるため、こちらも時間をかければ滞納分の家賃を回収することはそう困難なことではありません。

2)二か月以上の長期にわたる家賃滞納する場合

では、二か月以上の長期にわたる家賃滞納の理由には、どのようなものがあるのでしょうか。これにはリストラなどで収入が下がった、または無収入になったなどの理由で本当にお金がなく、家賃の支払いがこの先困難なったケースと、お金はあっても家賃を払う気がないといった悪質なケースが考えられます。


物件の所有者は、このような入居者には退去してもらい、新しい優良な入居者を募りたいと考えますが、家賃を滞納している入居者であっても強制的に退去させることは非常に手間がかかります。


3.家賃を滞納されることで不動産投資物件の持ち主に降りかかるリスク

家賃を滞納されることで、投資用物件の所有者は当てにしていた金額のお金が手に入らなくなります。もし投資用物件を購入する場合に金融機関でローンを組んでいた場合、ローン返済のために金策を行う必要が出てきます。


家賃滞納の原因がすぐに解消されるタイプのものであれば、一時的に自分の預金などで賄うこともできるでしょう。しかし、家賃滞納が長期に及ぶとその金額も膨大なものになり、ローン返済が困難になることも考えられます。


また、家賃滞納分の金額は投資用物件の所有者が自分で賄ったとしても会計上は不動産所得として計上されるため、所得税の対象となります。さらに家賃滞納を行っている理由が悪質な物であった場合には、その入居者と深刻なトラブルになることも頭に置いておかなくてはいけません。


家賃滞納は単なる空室により家賃収入が無くなるケースとは異なり、すぐに新しい入居者を募集することもできません。最悪の場合、滞納された家賃を支払ってもらえないまま入居者を退去させることになる場合もあります。


4.借主の権利を守る借地借家法

不動産投資を行うときにぜひ知っておいてもらいたい法律に、借地借家法というものがあります。この法律は平成3年10月4日に交付された法律です。


それ以前に建物や土地の賃貸契約を行う場合には、旧借地借家法が適用されていました。しかしこの旧借地借家法は土地や建物を貸している人よりも、借りている人の方の権利がより強く保護されていました。

そのため貸主が不利益を被ることが多く、その点を現代の賃貸契約の現状に合わせて制定された法律が、この借地借家法です。


この法律により、貸主の権利がどの程度保証されているかをきちんと認識しておくことで、賃貸経営により不動産投資を行う際に自分の権利を守るための契約を結ぶことが可能になります。


5.家賃滞納のリスクを下げるために行っておくべきこと

家賃滞納は起こってしまうと、その解決に大変な労力と金銭が必要になることもあります。そのため前もっていくつかの対策を取っておくことによって、家賃滞納のリスクを下げることが可能です。そのいくつかの対策を、以下に解説していきます。


1)入居者審査の徹底

入居審査の際に、勤務先や勤続年数、年収などをしっかりと確認し、家賃の支払い能力があるかどうかを確認しておく必要があります。また、その入居者を紹介した不動産業者は、直接その入居希望者と対面しているので、その入居希望者の身なりや雰囲気などを聞いて、 きちんとした人物であったかどうかを確認しておくことも重要です。


2)家賃保証会社の利用

家賃保証会社とは、入居者が家賃保証会社に一定の保証料を支払い、家賃滞納が発生した場合に一定期間の家賃を物件所有者に支払うというサービスを提供している業者のことです。


入居者にこのサービスを利用してもらうことによって、家賃滞納による損失をある程度補填してもらうことが可能になります。


この家賃保証会社の利用は物件所有者に負担が少なく、入居希望者には一定額の金銭的負担が必要になるものの連帯保証人を立てることなく入居できるといった、双方にメリットがある方法です。


3)口座振替の利用

家賃の支払い法を口座振替にすることも、家賃滞納のリスクを低くする方法の一つです。家賃の支払いを振り込みにすると、入居者による家賃の払い忘れが多くなり、結果として家賃滞納につながります。

口座振替は口座に預金残高がある限り、決まった日に自動的に家賃が引き落とされるので、お金があるのに家賃を払い忘れるといったこともありません。


また、振り込みより口座振替のほうが手数料が安い金融機関が多いこともあり、物件所有者にも入居者にもメリットが多い家賃の支払い方法であるといえるでしょう。

6.それでも家賃滞納をされてしまったらどうすれば良い?

家賃滞納のリスクを軽減するために、さまざまな対策を行っていても、家賃滞納が起こる可能性はゼロにはなりません。家賃滞納に対する対策を行っていても家賃滞納をされた場合には、どうすればよいのでしょうか。ここでは、家賃滞納の傾向別に対応法を解説していきます。


1)家賃滞納者が比較的良心的である場合

家賃滞納の理由が単純に入金を「忘れていた」場合や、旅行や入院などで物理的に入金に行けなかったなどの場合には、まずは電話や手紙で家賃の督促を行うことをお勧めします。


このような理由の家賃滞納は入居者が比較的良心的であることが多いため、電話や手紙などの書面による督促で解決するケースがほとんどです。


2)家賃滞納者が悪質である場合

家賃滞納を行う入居者の中には、もともと家賃を払う気がない悪質な人が存在します。そのような悪質な家賃滞納者には、法律的な手段を取る必要が出てくることもあります。


時には強制退去など強硬な手段を用いる必要が出てくることもありますが、このような措置を行うためには法律に定められた方法があるので、慎重に行うようにしましょう。


3)家賃滞納者が行方不明である場合

もし、家賃滞納が入居者が行方不明であることに原因があるのであれば、速やかに連帯保証人に連絡を取るようにしましょう。近年では家賃保証会社を利用するケースが増えているため、連帯保証人を立てないことも増えてきています。


そのような場合には、金銭的な負担がかかる場合もありますが、不動産賃貸案件に強い法律の専門家に相談することをお勧めします。

7.滞納分の家賃を取り立てる方法

滞納されている家賃を取り立てるには、取り立ての手順があります。まず手紙や電話、口頭で直接といった方法で家賃の支払いを督促します。この場合、督促を行ったという証拠を残したほうが良いので、口頭や電話で滞納分の家賃の督促を行う場合には、録音しておくとよいでしょう。


これらの方法で督促を行っても支払いがない場合には、配達証明付きの督促状や内容証明郵便の送付を行います。


これらの文書の作成は素人でもできますが、法律的に通用する文言で文書を作成する必要があるため、なるべく法律の専門家に依頼する事をお勧めします。上記の方法全てをおこなっても支払いがない場合に初めて契約解除を行うことができるようになります。


しかし、契約を解除したにもかかわらず未払いの家賃が支払われないという場合には、裁判所に支払いを求めていく訴訟である明渡請求訴訟を起こすことが可能です。


この明渡請求訴訟は、滞納額が140万円以下の場合には簡易裁判所、140万円を超える場合は地方裁判所で行われます。明渡請求訴訟で強制執行が認められた場合に、未払い家賃の請求権を強制的に実現する手続きである強制執行を行うことができます。


このような流れで滞納分の家賃を取り立てることができますが、強制執行にかかる費用は投資用物件の持ち主の負担となります。

8.家賃滞納を行った入居者を強制退去させる方法

家賃滞納を行った入居者を強制退去させる方法は、滞納分の家賃の取り立て方法と同じ流れで行うことができます。


この場合手順や方法は同じですが、家賃滞納を行った入居者に求めることが未納家賃の支払いか、投資用物件からの退去かという点に違いが出てきます。明渡請求訴訟によって明渡の判決を認めさせるためには、少なくとも3か月は家賃が滞納されているといった条件が必要です。


しかし、入居者の生活の困窮が理由となる家賃未納の場合は、6か月以上家賃滞納を行っていても契約解除や明渡が認められないケースもあります。


9.家賃滞納をされてもやってはいけないこと

悪質な家賃滞納をされた場合、一刻も早く退去してもらいたいというのが投資物件の持ち主の本音だと思います。しかし、理不尽ですがどんなに不利益を被っていてもやってはいけないことがあります。


それは、連帯保証人以外の人への未納家賃の督促、入居者へ通知せずに鍵を交換する、入居者に無断で入居者の荷物を運び出す、選定した弁護士などの代理人以外に督促を依頼する、滞納していることを周囲に知らせるといった行為です。


このような行為を行った場合、法律的に投資用物件の持ち主のほうが法律的に不利な立場になるので、注意しましょう。

10.不動産投資で家賃滞納されてしまった場合には弁護士に相談を

家賃滞納されてしまった場合には電話や口頭、手紙による方法以外の未納家賃の督促は弁護士に相談することをお勧めします。なぜなら家賃未納問題は、最終的には裁判になることも考えられるからです。


内容証明の作成などは司法書士や行政書士など、弁護士以外の法律の専門家に依頼することもできますが、物件所有者の代理人として家賃未納を行っている入居者との交渉ができるのは弁護士だけだからです。


また、家賃未納問題が裁判にまでもつれ込んだ場合のことを考えると、相談は弁護士に対して行ったほうが良いでしょう。

まとめ

ここまで家賃未納が起こる理由と、その対策と解決法について解説してきました。家賃滞納の理由により対応方法が異なること、悪質な家賃滞納を行う入居者への対応は時に裁判に至ることもあることがお判りいただけたと思います。


不動産投資を行う際に起こり得る家賃滞納に関しては、それを未然に防ぐ対策を取っておくことが一番重要ですがそれでも家賃未納が起こった場合に備えて、その対処法を知っておきましょう。また、悪質な家賃未納を行う入居者に対応する必要が出てきた場合に備えて、相談できる弁護士を見つけておくことをお勧めします。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ不動産プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。