融資・ローン

不動産投資は返済比率が成功のカギ!安全な返済比率とは?

2020/01/15
不動産投資は返済比率が成功のカギ!安全な返済比率とは?

不動産投資にて融資を活用した場合、融資額を引っ張れたことに満足し、果たして継続して返済していくことができるかについてスルーしてしまう方も多くいらっしゃいます。融資の返済で自己破産にならないために返済比率をきちんと認識しておくことが重要です。

こちらの記事では返済比率とは何か、一般的な返済比率の目安、不動産投資を安全に行うための返済比率のラインについて解説していきます。ぜひ最後までお読みになり、安全な不動産投資を行うために役立ててください。

返済比率とは

まず、返済比率とは何かということについて解説していきます。

不動産投資を行う際にはほとんどの場合、不動産投資用ローンを組むことになります。

そして毎月借入金額を返済していくのですが、この返済額が満室時の家賃収入に占める割合が返済比率です

冒頭でもお話ししたように、返済比率は不動産投資を行う上で非常に重要な指標です。

不動産投資を始める際に不動産投資用ローンを組む場合、この返済比率を意識した返済プランを立てることが不動産投資を成功させるために非常に重要になります。

返済比率の計算方法

前述したように、返済比率とは不動産投資用ローンの返済額が家賃収入に占める割合のことを言います。

その計算式は

「不動産投資用ローンの毎月の返済額」÷「満室時の家賃収入」=返済比率(%)

で導き出すことができます。

この割合を見るだけで、ある程度その不動産投資の安全度が高いものであるかどうかを判断することが可能です。

返済比率によって何が変わるのか

では、返済比率が変わることによって不動産投資にどのような影響が出てくるのでしょうか?

まず、満室時の一か月の家賃収入が100万円で、毎月の不動産投資用ローンの返済額が50万円であると仮定した場合、返済比率は50%となります。

このケースでは、不動産投資用ローンを返済した後に手元に残る金額は50万円となります。しかし、この50万円がそのまま利益になるわけではありません。

手元に残った50万円から、管理会社への業務委託料、固定資産税などの支払い用にお金をプールしておく必要があります。

このような必要経費を差し引いた金額が利益になるため、返済比率は低いほうが手元に残るお金が多くなり、必要経費の支払いも余裕をもって行うことができます

では、満室時の家賃収入が100万円の物件で、返済比率が60%の場合は、50%の場合と比べてどのような違いが出てくるのでしょうか。

答えは簡単で、返済比率が60%の場合は手元に残る金額が40万円になります。この40万円のなかから修繕費などの諸費用や固定資産税用の資金をプールしなければいけなくなるため、利益となる金額は少なくなるのです。

従って、返済比率が低ければ余剰金が多くなり、反対に返済比率が高ければ余剰金が少なくなります

このように返済比率によって余剰金の過多が決まります。この余剰金が多いほど、投資用物件の維持のための資金繰りがしやすくなり、不動産投資の安全度が高まるため、返済比率は不動産投資を行う際の重要な指標とされているのです。

一般的な返済比率の目安

では、一般的にどの程度の返済比率が一般的とされているのでしょうか。ここではその一般的な返済比率を新築物件と中古物件に分けて解説していきます。

新築物件の場合

建物には耐用年数というものが法律で定められていて、鉄筋コンクリート造で47年、重量鉄骨造で34年、木造で22年となっています。

この耐用年数を過ぎてしまうと、建物自体の価値はほぼゼロになってしまいます。

ローンを組むことができる年数は、この耐用年数があと何年残っているかで決まるため、耐用年数がまるまる残っている新築物件の場合は、長期の不動産投資用ローンを組むことができるのです。

そのため月々の返済額を低く抑えることができ、結果としてフルローンを組んでも返済比率を比較的低く抑えることができます。

つまり、一般的な新築物件の返済比率は40%から50%が一つの目安と言えるでしょう。

中古物件の場合

中古物件の場合は、その築年数により組むことができる不動産投資用ローンの期間が変わってきます。

築浅の物件であれば比較的長期間の不動産投資用ローンを組むことができますが、築古のものであると短い期間の不動産投資用ローンしか組むことができないケースが多いです。

その理由は新築物件の場合に記述した耐用年数の残りにより、中古物件を購入する際に組むことができる不動産投資用ローンの年数が変わってくるためです。

不動産投資用ローンは購入した不動産を担保として借り入れを行うため、建物自体に価値がない場合にはローン審査にはほぼ通らないと考えておきましょう。

そのため、築古の物件になるほど短期のローンしか組むことができず、返済比率は新築物件より割合が高くなり、50%から60%の返済比率が目安となります。

安全な返済比率のライン

不動産投資を行う場合、理想的な返済比率は40%だそうです。

しかし、そのような物件が市場に出回ることはごくまれなので、一般的には50%が安全な返済比率の最低ラインであるといわれています。

その理由としては、金融機関への不動産投資用ローンの返済以外にも、リフォームや管理費等の経費や固定資産税が掛かるため、それらの資金をプールできる金額を手元に残すことができるラインが返済比率50%だからです。

これら不動産投資用ローン返済金以外の必要経費や税金は、合計で家賃収入の20%程度が必要になると考えておきましょう。また、返済比率は満室時の家賃収入を基準として計算しているため、空室リスクも考慮しなければなりません。

当然の事ながら満室状態がずっと続くわけではありません

少し古いデータになりますが、平成25年に総務省統計局が行った土地家屋調査の結果によると、日本の賃貸住宅の戸数は約2280万戸となり、そのうち約440万戸が空室となっています。

参考:https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/index.html

空室数440万戸÷賃貸住宅の総戸数2280万戸=18.85%となり、これが空室率の全国平均となります。

しかし、これは過疎化した地方などの空室率なども総合した平均値であるため、入居者が多く見込める立地の不動産投資用物件であれば、空室リスクは10%程度織り込んでおけば良いでしょう

このような出費を総合すると、満室時の家賃収入の約80%の金額が不動産投資用ローン返済や諸経費、空室による収入減となるため、残りの20%が手元に残るお金となり、これが利益となります。

この程度のお金が手元に残っていれば、一時的に空室が増えた場合や、突発的な修繕が重なっても何とか対応することができるでしょう。

しかし、返済比率が5%上がって55%になると、諸経費や税金にかかる費用を差し引くと手元に残るお金は満室時の家賃収入の15%となり、手元に残るお金が無くなるどころか、赤字になってしまう可能性もあります。

ですので、返済比率の安全ラインは50%と考え、それを目安に不動産投資用ローンを組むようにしましょう。

返済比率を下げる方法は?

返済比率は50%が安全ラインということは前述しましたが、この安全ラインを超える場合に、返済比率を下げる方法にはどのようなものがあるのでしょうか。

まず一番に考えられるのは、頭金を多く入れ月々の返済額を低く抑える方法です。この方法は自己資金に余裕がある人にお勧めの方法です。

また、自己資金が少なく十分な金額の頭金が用意できない場合には、最初のうちは返済比率が高い状態を続けながら貯蓄を重ね、繰り上げ返済を行うという方法もあります。しかし、この繰り上げ返済を行う方法を利用する場合には、手数料がかかることもあるのでその点に注意が必要です。

それ以外に、金融機関に金利を下げてもらうことができないか交渉してみるという方法もあります。

金利は数%という数字なので、あまり効果がないとお考えの方もいるかと思いますが、たとえ1%でも下げてもらうことができれば、支払総額で計算するとかなりの金額の違いが出てきます。

例えば、3%の金利で1億円の借り入れを行い35年で返済する場合には、月々の返済額は384,850円となり、返済総額は161,637,000円となります。しかしこれを、金利を2%に下げてもらうと、月々の返済額は331,236円、返済総額は139,130,460円となります。

1%金利が下がるだけで月々の支払いは53,614円、返済総額は22,506,540円も低く抑えることが可能になるのです

さらに返済期間を長くすることで、月々の返済額を抑えることができ、この方法でも返済比率を低く抑えることが可能になります。

この場合、購入しようとしている物件が長期的に運用可能かしっかりと見極める必要があるので、この点に注意しましょう。

それ以外にも、基本的なことですが購入しようと思っている物件を相手の言い値で購入することはなるべく避けましょう。まずは少しでも値引きできないか交渉してみることも、重要な返済比率対策になります。

アパート経営における返済比率の例

ここで、アパート経営における返済比率別の収益例を挙げていきます。比較がしやすいように満室時家賃収入はいずれも100万円として計算しています。

返済比率40%の場合

まずは非常に安全な不動産投資ができる可能性が高い返済比率40%の場合です。

家賃収入が100万円、必要経費が20%の20万円、空室損が10%の10万円、不動産投資用ローンの月々の返済が40%の40万円となり、最終的に手元に残るのは30万円となります。

これだけの割合のお金が手元に残れば、突発的な出費にも対応できるためより安全な不動産投資ができます。

しかし、このレベルの物件はなかなか市場に出回らないため、これから不動産投資をはじめようという人には現実的な返済比率であるとは言えません。

返済比率50%の場合

返済比率50%の物件は、前述したようにぎりぎりの安全ラインにある物件であるといえます。

この場合、満室時家賃100万円、必要経費が20%の20万円、空室損が10%の10万円、不動産投資用ローンの月々の返済額が50万円となり、手元には20万円が残る計算になります。

この計算にも空室損を見込んであるため、一時的にこれ以上の空室が出ても、また急な修繕などが必要になった場合でも収支を回していく見込みが立ちます。

返済比率50%の物件は、東京や東京のベッドタウンである神奈川などでは見つけることが難しいものの、地方であれば比較的見つけやすいため、地方を中心に探してみるようにしましょう。

返済比率60%の場合

参考までに、安全ラインを超えた返済比率60%の物件のケースを見ていきましょう。

満室時の家賃収入が100万円、必要経費が20%の20万円、空室損が10%の10万円、不動産投資用ローンの月々の返済額が60%の60万円となり、手元には10万円しかのこりません。

この状態は、些細な状況の変化により赤字に転落してしまうリスクが非常に高くなります。特に高い金利で不動産投資用ローンを組んでしまうと、このような状態に陥りやすくなってしまいます。

多くの不動産投資家がこの返済比率60%の物件で不動産投資を行っているのが現状ですが、不動産投資初心者の方は注意しておくといいでしょう。

返済比率により物件の購入しやすさが変わるので注意!

不動産投資用物件は、非常に多く市場に出回っています。

その中には、利回りが良い魅力的な物件も多数あることでしょう。しかし、小額の不動産投資用ローンを組んで返済比率を抑え、魅力的な物件を購入するのは至難の業です。

一般的に満室時の家賃収入が高い不動産投資用物件は、物件自体の価格も高額であることがほとんどだからです。そのため、不動産投資用ローンを組んで購入しても、月々の返済額が高額になり、したがって返済比率も高くなってしまいます。

ですので、返済比率が高い物件は見つけやすく購入しやすいのですが、返済比率が低い物件はなかなか見つからないという現実があります。このように、返済比率によって物件の購入しやすさに差が出てきてしまうのです。

返済比率に注意して不動産投資用ローンを組む必要がある

返済比率には、不動産投資用ローンの月々の返済額が大きく影響します。ですので、事前に不動産投資用ローンの月々の返済額を十分にシミュレーションしておく必要があります。

このようなシミュレーションは、各金融機関のホームページの借り入れシミュレーターを利用すると良いでしょう。

一例を挙げると、オリックス銀行のホームページにもローンシミュレーターがあります。

参考:https://www.orixbank.co.jp/personal/house/simulation.html

このような機能を活用して月々の返済額を割り出し、返済額が物件の満室時の一か月の家賃収入の何%を占めるのか計算してみましょう。

しかし、実際の金利や借入可能額、期間はシミュレーション通りにいかないこともあるため、いくつかの金融機関に実際に相談してみることをお勧めします。

まとめ

ここまで、返済比率とは何か、返済比率は不動産投資にどのような影響を与えるのか、返済比率を下げるにはどうすればよいのかといった点について解説してきました。

返済比率が不動産投資を行う上で、重要な指標であることがお判りいただけたと思います。

不動産投資を行う場合には、利回りなどさまざまな点に注意して物件を選ぶことも重要です。しかし、その物件を運用していく際に、返済比率が何%になるかという点にも十分に注意して不動産投資を始めるようにしましょう。

特に不動産投資の初心者の方は、返済比率が50%を超えないように不動産投資用ローンの借入金額や返済方法に注意してください。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

関連コラム