不動産投資においてローンを組んで借入金の返済を行なっていく際に、一般的には20年から35年ほどで返済する計画を立てている場合が多いですが、それよりも長い期間でローンを組んでキャッシュフローを良くしたいというのは不動産投資家であれば誰もが考えたことがあるのではないでしょうか。
また、20年から35年でローンを完済する計画を立ててしまうと予測している収入と折り合いがつかない為、新しく登場した「不動産投資45年ローン」を考えている方も少なくありません。
そこで今回は不動産投資45年ローンとはそもそもどんな融資商品なのか、そのメリットとデメリット、利用する前に知っておきたい知識などをご紹介していきますので、現在検討中の方はぜひ参考にしてみてください。
まずは「不動産投資45年ローン」がどのような融資商品なのか概要を紹介していきます。
不動産投資に限らず、サービスの全体像を把握していることは投資において非常に重要となりますので、きちんと不動産投資45年ローンについて理解しておきましょう。
不動産投資45年ローンとは新しく打ち出された融資商品です。
これまでの不動産投資ローンの最長期間は35年までだったのですが、不動産投資45年ローンを打ち出したことにより不動産業者や金融機関、投資家の間で大きな話題となりました。
不動産投資45年ローンが打ち出された背景には2018年に発覚したスルガ銀行の不正融資問題があり、個人への融資に消極的になっていた金融機関との差別化、高い利回りを求める個人投資家への融資を積極的に行う姿勢が見えます。
例えばオリックス銀行が打ち出した不動産投資45年ローンの概要は以下の通りです。参考にしてみてください。
なお、借り入れの要件は以下の通りです。
参考:https://www.orixbank.co.jp/personal/rules/pdf/mansion.pdf
不動産投資45年ローンの概要を理解していただいたところで、続いて不動産投資45年ローンを組むことによって発生するメリットをご紹介していきます。借入期間を長くするという以外のメリットも把握しておきましょう。
まず挙げられるのはローンの返済期間が45年に延長されることにより、月々のローン返済額が少なくなります。
ローンの返済額が少なくなることによってキャッシュフローが良くなって幅広い目線を持てるようになりますし、物件が空室で家賃収入が入ってこない期間の負担を減らすことも可能になります。
これまで団体信用生命保険の補償内容は生命保険が中心でしたが、不動産投資45年ローンの団体信用生命保険は生命保険を受けられる期間が延長されるうえに、がんの保障や病気ケガへの保障が追加されました。
さらに、今まで持病などで団体信用生命保険へ加入できなかった場合でも「ワイド団信」というプランが誕生しました。
ローンの審査を行う金融機関はそれぞれ独自の審査基準を設けており、一部の金融機関では返済負担率(返済比率)を重視して融資を行っています。
返済負担率は年収に対する年間のローン返済額のことをいい、ローン期間が延長されることにより返済負担率は低くなるため、返済負担率が低いと積極的に融資を行っている金融機関であれば不動産の買い増し(2件目以降の投資物件購入)が有利になる可能性があります。
メリットがあればデメリットもあるのが融資商品の特性です。
そのサービスの良い面だけではなくデメリットやリスクとなる部分も理解した上で融資の申し込みを検討しましょう。
ローン期間が延長されたことにより、ローンによる金利の負担も大きくなり支払い総額が大きくなります。
金利が借入期間中ずっと同じだったとしても返済期間が長くなることによって支払い総額は高くなるので、これまでの35年の不動産投資ローンと比べるとその差は大きくなります。
このローンの返済期間による支払い総額の差はこの後の「ローン期間延長で返済額がいくら変わる?」にて詳しくご紹介していきます。
不動産投資でローンを組むことで発生するリスクのひとつにローンの返済期間中に金利が上昇してしまうリスクがあります。
金利の上昇リスクを回避することはなかなか難しく、ある程度の金利の上昇を見込んでおくといった先を見る力も不動産投資には必要なのですが、不動産投資ローンの返済期間が長くなることによって金利が上昇してしまうリスクが高くなってしまいます。
では実際に不動産投資45年ローンを組んだ際にどれほど返済額が増えるのかを見ていきましょう。
2,000万円のマンションを購入した場合の25年、35年、45年ローンそれぞれでどれほど月々の返済額と総額が変わるのかをご紹介します。
記事作成時(2019年8月)に公表されていた短期プライムレート「年1.675%」が借入期間中に変動しないと仮定して計算します。
借入期間 | 月々の返済額 | 年間の返済額 | 支払い総額 |
---|---|---|---|
25年ローン | 約81,000円 | 約972,000円 | 約24,300,000円 |
35年ローン | 約63,000円 | 約756,000円 | 約26,460,000円 |
45年ローン | 約53,000円 | 約636,000円 | 約28,620,000円 |
このように2,000万円を年間金利1.675%で借り入れた場合、25年ローンと45年ローンでは支払い総額に約430万円の差が出ます。2,000万円の借入れでこの支払い総額の差ですが、仮に上限の1億円の物件でローンが組めたと考えると返済額に約2,000万円の差がでてしまいます。
そのように支払い総額の差もしっかりと理解した上で不動産投資45年ローンを検討しましょう。
先ほどご紹介したように、不動産投資45年ローンを利用するのであれば支払い総額が増えてしまうため、その支払い総額が増えてしまう分のデメリットを打ち消すことのできる物件の持ち方を考えていかなければなりません。
そこで考えられる不動産投資45年ローンを活用した物件の持ち方は10年前後を一つのスパンとして物件を買い替える方法が挙げられます。
不動産投資ローンの最大のメリットはやはり月々のローン返済額が少なくなる、つまりキャッシュフローが良くなりますのでこのメリットを最大限に生かし、10年前後で利益を出しやすくなります。
そして短期間で利益を出して、新築物件の資産価値が下落し始めると言われている10年ほどで投資物件を売却して再び新しい投資物件を購入します。この物件の持ち方の注意点としては、不動産投資ローンを繰り上げ返済する際には所定の繰上返済解約金が発生しますので、その解約金まで考慮して買い替えを行いましょう。
ここまで不動産投資ローンの特徴や支払い総額の差、運用方法などをご紹介してきました。
最後に不動産投資45年ローンを受ける方法のご紹介です。現在では不動産投資ローンの借り入れ期間を45年に延長している金融機関はいくつかあります。
借り入れ期間を45年に延長することがHPなどで明記されていない場合でも、交渉しだいで利用できる金融機関もあります。不動産投資45年ローンを希望する場合は、担当や希望する不動産投資会社に相談してみましょう。
不動産投資会社ではここで紹介した内容を含め、不動産投資45年ローンのメリットやデメリット、運用方法などの説明も行ってもらえるはずです。
初めて不動産投資を行うのであればこの説明が正確にできるかなどを、不動産投資会社を選ぶひとつの選択肢にしてみてもいいかもしれません。
不動産投資45年ローンは返済期間が延びてキャッシュフローが良く、団体信用生命保険の内容も増加するなどのメリットがありますが、それに伴って支払い総額が増えてしまうなどのデメリットもあります。
不動産投資45年ローンに限った話ではないですが、そのメリットとデメリットをしっかりと理解した上で、投資物件にあっている所有方法や運用方法を検討しましょう。融資に不安がある方は、ぜひ担当者に相談してみましょう。