不動産投資のメリットの1つに「相続税の節税対策として適している」が挙げられます。
しかし、相続税が節税される仕組みについて、実際は良く分かっていない方も多くいらっしゃるでしょう。
そこでこの記事では、そもそも相続税の仕組みとは何かを詳しく解説した後に、不動産投資が相続税時に得する理由を解説していきます。
まずは、相続税の計算式と、実際に不動産の評価額をどのように算出するか?を解説していきます。
相続税を計算するときには以下の順番です。
相続税を計算するときは、単純に税率を掛けるだけではなく、まず評価額から基礎控除を差し引きます。
そして、課税額に応じて税率を掛けて相続税を算出する流れになります。
まずは、法定相続人の数を確認します。
というのも、法定相続人の数によって以下のように基礎控除額が異なるからです。
基礎控除=3,000万円+法定相続人×600万円
仮に、法定相続人が妻と子供2人の合計3人だとします。
その場合は、基礎控除として「3,000万円+600万円×3人=4,800万円」を差し引くということです。
この基礎控除額は2015年1月より改正されており、以前は「5,000万円+法定相続人×1,000万円」という高額な基礎控除でした。
しかし、現状は上述のように基礎控除額が小さくなっているので、注意が必要です。
前項①で、相続する資産の評価額から基礎控除を差し引いたら、次に相続税率を掛けて控除額を差し引きます。
相続税率と控除額は、以下のように評価額によって異なるので、前項①で算出した評価額に応じて税率と控除額は確認しましょう。
課税評価額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
【平成27年1月1日以後の場合】相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | - |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
参考:【国税庁】相続税の税率
たとえば、評価額が3,000万円であれば「3,000万円×15%-50万円=400万円」が相続税額になります。
詳しくは後述しますが、不動産の評価額は以下のように建物と土地に分かれており、それぞれ算出方法が異なります。
このように、建物と土地は評価額の算出方法が異なるものの、基本的には時価で評価される現金で相続されるよりも不動産で持っている方が評価額が下がる、つまり相続税額が下がります。
たとえば、5,000万円のマンションを購入すると、不動産評価額は3,000万円~4,000万円ほどまで下がるのです。
これが、不動産投資をすると相続税がお得になる理由です。
ここでは、建物の評価額について詳しく説明していきます。
上述したように、建物の評価額は固定資産税評価額によって決まります。
固定資産税評価額については以下を知っておきましょう。
固定資産税評価額は各市町村が算出し、3年ごとに評価額の見直しを行います。
建物の固定資産税評価額は、その建物の規模や構造、そして築年数などによって変わってくる点は覚えておきましょう。
固定資産税評価額を調べる方法は、毎年送られてくる「固定資産税の納税通知書」の「課税明細書」の欄で確認することができます。
マンションや一戸建ての場合には、土地と家屋に分かれているので、家屋(建物部分)の評価額を確認しましょう。
調べるのは「固定資産税額」ではなく、その建物の評価額である「課税明細書」である点は注意が必要です。
また、不動産を居住用ではなく貸家にしていると評価額はさらに下がるので、不動産投資をしている建物は前項で調べた評価額よりもさらに下がります。
貸家の場合には、固定資産税評価額の計算式は以下になります。
貸家(建物)=建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合(通常30%)×賃貸割合)
賃貸割合とは、その不動産が実際に賃貸されている割合のことです。
たとえば、10室のアパート経営をしており、10室中8室が入居中であれば、賃貸割合は80%(8÷10)となります。
前項までを踏まえ、実際に以下のケースで相続税を計算してみましょう。
なお、比較しやすいように、ここでは土地部分は考えず建物部分だけで相続税額を計算します。
また、5,000万円の現金を持っているという前提です。
5,000万円を現金で持っている場合の相続税額は以下の通りです。
相続税:評価額5,000万円×税率20%-控除額200万円=税額800万円
このように、現金の場合には評価額はそのまま5,000万円で計算します。
仮に、5,000万円で不動産(建物部分)を購入したら、固定資産税評価額は5~7割ほどまで下がります。
つまり、評価額が5,000万円から2,500万円~3,500万円ほどまで下落するということです。
仮に、評価額が3,000万円の場合には、相続税額は以下になります。
相続税:3,000万円×税率15%-控除額50万円=税額400万円
このように、現金で持っているよりも、相続税は400万円も安くなります。
さらに、5,000万円の不動産(建物部分)が投資用の貸家であれば、さらに税額は下がります。
たとえば、その不動産が10室のアパートであり、入居率が80%の物件の場合には、相続税額は以下の計算になります。
貸家の評価額:建物の固定資産税評価額3,000万円×(1-借家権割合30%×80%)=2,280万円
相続税:2,280万円×税率15%-控除額50万円=292万円
このように、貸家になると相続税の課税額はさらに108万円下がるので、現金で持っているよりも相続税額は508万も安くなるというわけです。
不動産で持っているだけでも評価額は下落する上に、投資用だとさらに税額は小さくなるため「不動産投資は相続税の節税対策」に適しているのです。
前項では不動産の建物部分の相続税算出方法を分かって頂けたかと思います。
次に、土地の相続税について以下を解説してきます。
土地の評価額は路線価で算出されるので、路線価について以下を知っておきましょう。
路線価は、土地取引の指標となる公示価格の8割程度を目安に設定している価格であり、道路ごとに評価額が設定されています。
そのため、土地の路線価(相続税評価額)を算出するときには、その土地が面している道路の路線価を基に算出するという流れです。
路線価は、国税庁によって毎年7月に、その年の1月1日時点の路線価が公表されます。
路線価を確認する方法は、まずネットから「路線価図・評価倍率表」を確認します。
そして、道路ごとに千円単位で路線価が設定されているので、該当する道路の路線価を確認します。
たとえば、「230」という表記であれば、路線価は1㎡あたり23万円(230千円)です。
そのため、仮に200㎡の土地であれば、「200㎡×23万円=4,600万円」が評価額になります。
また、路線価には「230B」のように、数字の後にアルファベットが付いています。
これは借地の場合の係数であり、アルファベットによって以下の通りパーセンテージが決まっています。
たとえば、前項のように200㎡の土地で路線価が「230B」であれば、その土地の路線価は以下の通りです。
200㎡×23万円×80%=3,680万円
小規模宅地等の特例とは、一定の条件の元で相続税評価額が減額される特例のことです。
投資物件の場合は、「貸付事業用の宅地等」に該当するので、以下の条件に合致すれば200㎡までなら評価額が50%減額されます。
つまり、賃貸物件(土地+建物)を相続した場合には、その賃貸物件は継続して投資用(貸家)として運用し、かつ宅地を相続税の申告期限までに保有していることが条件になります。
この特例を利用できれば、仮に評価額が2,000万円(200㎡)の土地であれば、評価額は「2,000万円×50%=1,000万円」まで下がるということです。
また、土地も建物と同じく、投資用(貸家)にしているとさらに評価額は下がります。
貸家の場合には、評価額の計算方法は以下になるので理解しておきましょう。
上記の「借地権割合」は上述したアルファベットのパーセンテージになります。
また、賃貸割合は貸家と同じく30%です。
仮に、「230B」で200㎡の土地の相続税評価額を算出してみましょう。
4,600万円の評価額に対しては720万円の相続税がかかりますが、441.6万円の評価額にはわずか44.16万円の相続税評価額しかかかりません。
このように、現金ではなく不動産で所有していることで、建物も土地も相続税評価額が下がります。
そして、貸家(投資用)にすることで相続税評価額はさらに下がるので、相続税の節税につながるというわけです。
この仕組みを理解しておくことで、不動産投資のメリットが深く理解できるでしょう。