不動産投資をするときには、空室リスクの回避策として「サブリース契約を結ぶ」という選択肢もあります。
きちんとサブリース契約の内容について理解した上でのご活用はいいと思いますが、しかし、サブリース契約についてあまり理解ができておらず、トラブルになったりなどネガティブな情報が多いのも事実です。
この記事では、そんなネガティブな情報も踏まえ、サブリース契約のメリット・デメリットを解説していきます。
一般的なサブリース契約とは、サブリース会社(不動産会社や管理会社)がオーナーと賃貸借契約を結び、サブリース会社が第三者に転貸する契約のことを指します。
つまり、実際に入居者がいなくてもオーナーはサブリース会社と賃貸借契約を結んでいるので賃料をもらえるということです。
サブリース契約は「空室保証」がある契約ですが、オーナーは満額(相場通り)の賃料を受け取るわけではありません。
サブリース会社は相場賃料で転貸するので、オーナーが受け取るお金は満額賃料から2割前後差し引かれた賃料になります。
そのため、空室保証はあるものの、通常賃貸よりも賃料収入は減るのがサブリース契約の特徴です。
「空室保証」については別ページでも解説しています。そちらも参照してみてください。
関連記事:不動産投資で空室保証は危険!?知っておくべき6つのポイント
そんなサブリース契約のメリットは以下の点です。
最も大きなメリットは、やはり空室リスクを回避できるという点です。
そもそも不動産投資の最大のデメリットは空室になることです。
空室になれば家賃収入はゼロになるにも関わらず、運営していく上で以下のような支出はかかります。
家賃収入がゼロになれば上記の支出分だけで赤字になってしまいます。
そのため、サブリース契約を結ぶことで「家賃収入がゼロになる」という状況を回避できるのは、大きなメリットなのです。
サブリース契約を結ぶ2つ目のメリットは、オーナーの手間がかからないということです。
一般的には不動産投資をするときには以下のような作業はオーナーが対応する必要があります。
不動産投資をする場合、入居者を募集して内見を経てから申込み・賃貸借契約の締結…という流れです。
一般的には、サブリース契約でなくても管理会社に一連の流れは委託するので、オーナーの手間は小さいです。
ただ、それでもオーナーとして賃貸借契約を結ぶか否かの最終判断をしたり、家賃滞納時に家賃を保証してくれる「保証会社」を付けるかの判断をしたりと、オーナーが最終決定する機会はあります。
一方、サブリース契約の場合はサブリース会社が全ての責任を持って賃借人を付けるので、オーナーには一切手間がありません。
また、上述のように入居者との賃貸借契約はサブリース会社が結びます。
そのため、入居者とトラブルがあった場合でも対応するのはオーナーではなく、サブリース会社です。
入居者とのトラブルとは、具体的に以下のようなことです。
そもそも、入居者と結ぶ賃貸借契約は、賃借人(入居者)に有利な契約となっています。
そのため、仮に入居者が家賃を滞納していたとしても、強制的に退去させるのは非常に難しいです。
また、訴訟問題になればオーナーの費用負担や手間がかかりますが、サブリース契約の場合は基本的にサブリース会社が主導し費用負担もします。
前項でサブリース契約のメリットが分かったと思いますが、一方で以下のようなデメリットもあります。
1つ目のデメリットは手数料が高いということです。
つまり、通常の賃貸で満室稼働している場合の収益と、サブリース契約することで得る収益を比較すると、「通常の賃貸で満室稼働している場合の収益」の方が高くなるということです。
上述したようにサブリースの仕組みは「オーナーが受け取るお金は満額賃料から何割か差し引かれた賃料になる」というものでした。
というのも、サブリース会社がオーナーに満額(相場通り)の賃料を支払ってしまうと、サブリース会社は相場以上の賃料で募集をかける必要があります。
そうなると、賃付けに苦労して空室期間が長くなる可能性がありますが、空室期間もサブリース会社はオーナーに賃料を支払わなければいけません。
このような背景があるため、サブリース会社がオーナーに支払う賃料は、満額賃料から何割かの手数料を差し引いた「保証賃料」になります。
どのくらいの割合を差し引くかはサブリース会社や物件によって異なりますが、一般的な保証賃料は満額賃料の80%~90%ほどです。
つまり、オーナーは満額賃料から10%~20%下落した金額が家賃収入になるというわけです。
2つ目の注意点は、家賃保証額の改定についてです。
この注意点については以下を知っておきましょう。
家賃の保証額の改定とは、サブリース会社がオーナーに支払う保証賃料を定期的に見直すことです。
建物は築年を経るほど劣化していくので、基本的は築古になるほど家賃も下落していきます。
また、経済情勢の変化や周辺環境の変化などでも賃料は変わります。
それらの事情を踏まえて、サブリース会社が定期的に家賃の保証額を2年毎に改定するのです。
ただし、保証賃料を定期的に見直す旨がオーナーに伝わっておらず、保証賃料の改定についてオーナーとサブリース会社が揉めるという事例が多発しました。
これは国土交通省も「サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!」という資料で注意喚起するほどです。
サブリース契約の3つ目のデメリットは、サブリース会社が倒産したときです。
たとえば、土地所有者Aさんが自分の土地にマンションを建築して、全戸をX社とサブリース契約を結んだとします。
その場合、当然X社はAさんに毎月賃料を支払いますが、X社が上手く賃付けできなかったとしましょう。
当然、賃付けできなったとしても、X社はAさんに賃料を支払う必要はありますが、X社の会社状況によっては支払いが厳しい場合もあります。
仮に、X社からAさんへの賃料支払いの未払いがつづき、結局X社が倒産してしまえば、Aさんは未払いの賃料をもらえない可能性があるのです。
このような状況でも、Aさんはローンの支払いや固定資産税の支払いなどはあるので、最悪の場合にはAさんもローン返済不能の状態になってしまいます。
サブリース契約には、このような「サブリース会社の倒産」というデメリットもあるのです。
だからこそ、サブリース契約を結ぶときは、サブリース会社の業績なども確認する必要があります。
前項までで、サブリース契約のメリット・デメリットが分かったと思います。
その上で、サブリース契約を結ぶときには以下の点に注意しましょう。
1つ目の注意点は保証賃料の設定に関することです。
というのも、サブリース会社によっては契約時に保証賃料を高めに設定し、オーナーに魅力的に映るようにするケースがあるからです。
そして、上述したように契約更新時に「保証賃料の改定」を迫られるというケースがあります。
このようなことを防ぐために、サブリース契約時に提示された保証賃料が他社と比較して高すぎないか?将来に渡って保証賃料をきちんと考えているか?という検証は必要になります。
2つ目の注意点は、原状回復費用に関することです。
原状回復費用とは、賃借人が退去する際に劣化した部分を修繕することであり、経年劣化に関しては賃借人ではなく賃貸人が負担します。
その原状回復費用の負担はサブリース会社によって色々な取り決めがあり、たとえば以下の2つから選択するプランがあります。
このケースの場合は、原状回復費用はサブリース会社が負担するので、入居者の退去時もオーナーが費用負担することはありません。
ただし、この場合にはサブリース会社の負担が増えるので、手数料が高く(保証家賃が低く)なるケースが大半です。
一方、原状回復費用をオーナーが定額負担するタイプもあります。
つまり、原状回復費用をオーナーが積み立てておき、いざ退去の際に原状回復費用が発生したら、その積立金から費用を支払うということです。
この場合は、前項の「原状回復費用はサブリース会社の負担」よりも保証家賃は高くなる上に、積み立てていないときと比べて過度な支払いリスクも抑えられます。
ただし、積立金は支出になるので、その金額を踏まえた収支計算が必要です。
さいごの注意点は、解約条件や免責期間の確認をすることです。
サブリース契約をオーナーの一存で解約するときには、解約のタイミングによっては違約金がかかる場合があります。
そのため、サブリース契約を結ぶ際は、解約時の条件は良く確認しておきましょう。
また、新築物件をサブリース契約するときや、賃借人が退去した後の一定期間は「保証家賃が免責」になる…つまりオーナーが得る家賃収入がゼロになる場合もあります。
そのため、免責になるときはどのようなときか?どのくらいの期間が免責になるか?は必ず確認しておきましょう。
このように、サブリース契約は空室時でも安定して家賃収入を得られるというメリットがあります。
一方、保証家賃の改定や解約条件・免責期間など確認すべき点も多いです。
そのため、メリットだけでなくデメリットも加味した上で、サブリース契約を結ぶべきかどうかを判断しましょう。