相続・税金

不動産投資の消費税還付を行うにはどうする?方法や注意点について

2021/05/10
不動産投資の消費税還付を行うにはどうする?方法や注意点について

不動産投資で消費税還付を受けたという話を聞いたことがある方も多いでしょう。しかし、以前は投資家の中でよく耳にしていた消費税還付も年々聞かれなくなっています。それは、なぜなのでしょうか。また、どのような手法をとると消費税還付を受けることができるのでしょうか。

今回の記事では、消費税還付のからくりや注意点、対策などについて詳しく解説していきます。

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不動産投資でかかる消費税とはなに?

そもそも、不動産投資において消費税は、どのような状況で発生するのでしょうか。まずは、通常の暮らしの中で、消費税がどのように関わっているかを考えてみましょう。私たちが物品を購入すると、購入代金に消費税が発生します。

2019年8月現在、購入代金の8%が消費税として徴収されています。この消費税は、物品を購入したときに税務署ではなく直接販売者へ支払っています。そして、販売者が購入者から支払ってもらった消費税から仕入れ先に支払った消費税を差し引いて納付するという支払方法で納めているのです。

これを踏まえて、不動産を購入したときにかかる消費税について考えてみましょう。物件を購入した時には、購入代金の中に消費税が含まれています。売買代金が5,400万円の物件を購入した場合には、内訳が売買代金5,000万円、消費税が400万円となり、不動産を売却した人へ消費税を支払い納税しています。

普通に物品を購入した時と同じ手順で消費税を支払って納税するのですが、この400万円を返してもらう方法を消費税の還付といいます。

不動産投資における消費税還付のからくり

不動産の購入においても、消費税の納付は一般的な物品購入と変わらないことがわかりました。不動産の購入においては、とても多額のお金が必要です。何百万から何千万単位の購入代金がかかることも珍しくありません。

消費税は、購入代金に対してかかってくる税金なので、購入代金が高ければ高いほど支払う消費税も大きくなるのです。ですので、消費税が何百万円単位になることもあります。不動産投資においてはこの支払った消費税を還付してもらうことが可能なのです。

普通に物品を購入しても消費税は還付されません。なぜ、不動産投資で購入したときにかかる消費税は還付が可能なのでしょうか。

消費税還付は、「払いすぎた消費税を返してもらう」という概念から成り立っています。

不動産投資は事業として位置づけられます。家賃収入などを得ながら不動産を運用して収益を上げることを目的として不動産を購入します。つまり、売上た収益から受け取った消費税と不動産購入時に支払った消費税に差額があると、差額分を還付してもらえるというからくりなのです。ただし、不動産投資の場合は注意が必要です。

なぜなら、家賃収入は非課税ですので、不動産投資を事業として普通に運営しても支払う消費税が生み出せません。

では、どうやって消費税を事業の中で生み出せばいいのでしょうか。よくあるケースが、課税対象となる自動販売機を物件内に設置して売上をあげて、消費税の還付を行うといった方法です。

ただし、税法改正ごとに消費税還付の規制が厳しくなっているのが現状です。これからの章で詳しく説明していきますが、まずは還付を受けるための前提条件について考えてみましょう。

消費税還付を受けるための前提となる条件とは?

不動産投資において、消費税還付を受けるためにはいくつかの条件が必要です。

①会社を新しく立ち上げること

個人事業主では、消費税の還付を受けることができませんので、法人にして会社を設立することがまず第一歩です。つまり、新たに会社を設立する必要があります。既存で法人化していても新しく会社を設立することをおすすめします。

理由は、既に不動産物件を保有している法人であるならば、その物件の家賃収入において、物件を所有した年度に計上されている可能性があり、還付金が減少するためです。新規で会社を立ち上げて消費税還付を受けた方がメリットは大きいです。

②設立した会社において課税業者の届出を出すこと

新しく設立した会社において消費税の納税は初年度のみありません。つまり、せっかく設立してもそのままの状態では課税業者ではありません。しかし、消費税の還付を受けるためには課税業者になる必要があります。

消費税の課税業者になるためには、届出を出すことを忘れないようにしておきましょう。

消費税還付を受けるための4つの対策

消費税還付の前提条件をきちんと満たした後に4つの対策を行いましょう。

4つの対策は下記となっています。

①物件の引き渡しを受けた事業の初年度に課税売上を計上する

物件購入時の消費税を還付する目的ですので、購入年度に課税売上を計上しないと還付が受けにくくなってしまいます。必ず初年度に課税売上を計上しましょう。

②事業所年度の家賃は受け取らない

家賃収入は非課税売上です。非課税売上を計上しないようにしましょう。事業年度の終了時期は引き渡しをされた月の月末に設定しましょう。

③家賃収入以外で課税売上が発生する事業を行う

  • 消費税を還付するためには課税売上がないといけません。
  • 多くは自動販売機を設置して売上を課税売上として計上しています。
  • 課税売上に対して消費税を支払うことで初めて還付が可能となります。

④消費税の申告は、課税方式を申請して一括比例分配方式の税抜き経理を採用する

単純に支払った消費税に課税売上を乗じた額を差し引くことで課税申請ができるのが一括比例分配方式です。計算が非常にシンプルで非課税割合が多い不動産投資の場合は一括比例分配方式を選択した方がメリットは多いです。

また、税抜き経理方式にすれば、売上時の消費税から仕入れ時の消費税を差し引く、比較的簡単な方法で消費税を決定できるため、おすすめです。

このような対策を行うことで消費税の還付が可能になります。

しっかりと対策を行って準備しておかなければいけません。不動産投資で消費税還付を行うのに一番大切な時期は建物の引き渡しまでです。引き渡しまでの対策によって還付を受けられるかどうかが大きく異なるので、引き渡しまでの対策を最重要課題としましょう。

消費税還付を受けるときの流れ

ここまでは消費税還付における前提条件や対策について述べてきました。では、還付を受けるための7つの流れを、前提条件や対策をふまえた上で述べましょう。

  • 物件を購入する前にあらかじめ法人を設立する
  • 設立した法人名義での物件を購入する
  • 物件の引き渡しを受けた事業の初年度に課税売上を計上する
  • 収入を得る月の月末を会計期間に設定する
  • 課税業者の届出を申請する
  • 決算の申告をする
  • 還付金を受け取る

このような流れで消費税還付を行うことによって、スムーズな還付ができるようになります。全てを取りこぼしなく行わないといけません。物件購入から、消費税の還付までをしっかりとスケジューリングして消費税還付に備えましょう。

3年後に還付金を返納しないといけない?

その対策は?税制が改正されるにつき、消費税還付を受けることが難しくなっているといわれています。特に注意が必要なことが3年後には還付金を返納しないといけないケースがあることです。

どのようなケースで3年後に還付金を返納しなければいけないのでしょうか。

また、還付金を返納しないためにはどのような対策を備えておけばいいのでしょうか。還付金の返納理由や対策について詳しく解説していきます。

なぜ3年後に還付金を返納しないといけない?

消費税法上、物件を建築、購入して消費税の還付を受けた場合、課税売上割合が3年後に顕著に下がってしまうと、還付を受けた消費税を返納しなければなりません。

消費税の還付を受ける場合には、家賃収入は売上計上せずに自動販売機の売上のみを計上して還付を受けるという手法を使います。しかし、次年度からは非課税の家賃収入を売上計上しなければいけません。家賃収入を計上すると課税売上の割合は大きく低下します。

そのため3年後には還付された消費税を返納しなければならない状況になってしまいます。せっかく受けた消費税還付を3年後に返納する状況を避けるためには、備えなければいけないいくつかの対策があります。

還付金を返納しないための2つの対策

3年後の還付金返納対策としてここでは2つの対策を紹介しましょう。

  • 還付年度は課税売上しか計上しないようにする
  • 消費税還付を受けた年度と同等の課税売上を計上する

還付年度に課税売上しか計上しないようにするのは今までのスキーム通りです。3年以内に課税売上が著しく変化しなければいいのです。目安としては、事業年度の課税売上割合の50%超を維持しておかなければいけません。

50%以下になれば消費税を返納しなければいけませんので、課税売上の割合を維持できるように調整しておきましょう。

なぜ不動産投資において消費税還付は厳しくなっているのか?

平成22年以前は比較的簡単に消費税の還付を受けることができていました。そのため、「自動販売機スキーム」といわれる手法が流行して、ほとんどの投資家は消費税還付を受けることができていました。

しかし、まず規制がかかったのが平成22年の税制改正です。まず消費税法上、3年以内に課税割合が著しく低下すると還付された消費税を返納しないといけません。しかし、これまでであれば、免税事業者、簡易課税へと変更すると特に問題がなく還付を受けることができていました。

しかし、これを問題とした国は、平成22年と平成28年の税制改正で不動産等における消費税の還付を難しくしたのです。なぜこのようなことを行ったのでしょうか。

もともと、不動産投資を行う場合、多くの目的は家賃収入による投資運用です。国は家賃収入を免税にすることによって、投資家の負担をなくすという配慮をしているにもかかわらず、優遇措置を一定期間外して消費税の還付という恩恵を受け、また免税の恩恵を受ける点を問題視したのです。

そのため、平成22年の改正では、まず簡単に免税業者に戻れないような措置を取りました。課税事業者になって、2年以内に不動産を購入して3年間は免税事業者へ戻れないという改正を行いました。

これによって課税割合が変動したときの還付金返納に適応させようとしたのです。しかし、この税制改正では十分ではありませんでした。課税業者申請を行い課税事業者になって3年後に不動産を購入すると消費税還付を受けられるような抜け道がありました。

この抜け道まで完全に封じたのが平成28年の税制改正です。簡易課税制度を適用されていない課税業者においては、不動産を買った後から3年間は、免税事業者への変更を行うことは不可能であるといった制度変更を行いました。

どんどん規制をかけることで消費税の還付を難しくしているのが現状だといえます。

税制改正前と比較するとあきらかに消費税還付はやりにくくなっているし、税制も複雑化しています。

消費税の還付を受けようとして、知識が伴っていなければかえって損失を受けてしまう場合も十分考えられますので、しっかりと勉強して、消費税還付について知識を蓄えておく必要があります。

消費税還付を受けるには税理士に依頼すべき?

消費税還付を受けるのはとても難しいので税理士に一任しようと考えている方も多いかもしれません。たしかに税理士は税務関係のプロですので、素人が還付に向けて動くよりは、はるかに効率がいいでしょう。

しかし、税理士に依頼するにしてもどのような税理士に依頼した方がよいのでしょうか。また、報酬はどのくらいかかるのでしょうか。

まず、税理士も税金の種類によって強い分野、弱い分野があります。税金は、とても範囲が広いので、それぞれの税理士で分野が分かれるのです。当然ですが、不動産投資や消費税の還付経験などがある税理士に依頼することをおすすめします。

不動産投資や消費税の還付に詳しくない税理士に依頼すると、還付ができないのに報酬だけ発生してしまうことも考えられます。また、不動産投資や消費税還付に詳しい税理士であると、色々な税金が絡む場面でのアドバイスにも期待ができます。

税理士を選ぶときは、まず不動産投資に詳しいのか、消費税の還付を取り扱った経験があるのかを事前に確認しておきましょう。また、報酬に対しても確実に理解する必要があるでしょう。税理士によって報酬は異なります。多くは還付金の20%前後が報酬額の現状です。

税理士に依頼する場合は、まず消費税の還付を税理士に頼んで行うことに金額的メリットがあるのかどうかを自分自身で計算しておいた上で依頼しましょう。

まとめ

不動産購入にかかる消費税は非常に高額なため、消費税還付でお金が戻ってくれば不動産投資においては大きなメリットとなります。しかし、税制改正ごとに還付が難しくなっているので、安易に行うと逆に損失を起こしてしまう場合もありますので、十分に対策を行った上で還付の申請を行いましょう。

税理士に依頼すれば負担は軽減しますが、不動産投資や消費税還付に詳しい税理士を選ばなければうまく進まないので、しっかりと確認しておくことが大切です。

また、一般的に税理士報酬は還付金の20%程度ですが、報酬を払ってでも税理士に依頼した方がよいのかどうかを自分で計算して認識しておきましょう。消費税の還付は、しっかりとリスクを認識した上で行いましょう。

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八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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