一般的なサラリーマンをしている方には、なじみが薄い確定申告。しかし、不動産投資を始めたら、サラリーマンの方でも確定申告を行う必要があります。
もちろん専業で不動産投資を行って生計を立てている人も、確定申告を行う必要があるのは同様です。
確定申告とは前年にいくらの収入や損失があったかを税務署に申告し、収入の額に応じて税金を支払うための手続きです。
ここでは、不動産投資を行っている方が確定申告を行う方法や、その注意点などについて解説していきます。
ぜひ最後までお読みになり、申告漏れなどのミスで損をすることが無いように正確に確定申告を行う際の一助としてください。
確定申告には、白色申告と青色申告の二つの種類があります。この申告方法の種類の違いは後の章で詳しく説明することにして、ここでは確定申告を行う方法について解説していきます。
申告書は、税務署であればどこに提出しても良いというわけではありません。所得を申告する人の住所地等を所轄する税務署に、申告書を提出する必要があります。
まず、一つ目は必要書類をそろえて税務署へ行き、確定申告を行う方法です。一部の税務署では日時が指定されてはいますが、確定申告の相談を行うこともできます。
しかし、この方法は多くの人が申告書の提出に税務署を訪れるため、提出までにかなりの待ち時間を要することがほとんどですので、時間に余裕をもって税務署に行くようにしましょう。また、時間外であっても税務署に設置してある時間外収受箱に投函して提出することも可能です。
二つ目の方法は郵便または信書便により、住所地等を所轄する税務署に送付する方法です。
このように税務署に郵送する場合は、収受日付印のある確定申告書の控えが必要なことがあります。
その場合複写により作成したものか、複写式でないものについては消えないボールペン等で記載した申告書の控え以外に、住所氏名を記載し所要額の切手を貼付した返信用封筒を同封しておく必要があります。
そしてもう一つ、インターネットにより確定申告を行う方法もあります。
このシステムはe-Taxと呼ばれ、国税局のホームページから確定申告を行うことができます。
このe-Taxには3つの方法があり、
の3つの方法があります。
このうち、マイナンバーカード方式は一度も税務署に行くことなく確定申告を行うことが可能です。
しかし、ID・パスワード方式は一度税務署に行き、本人確認を行ってからe-Tax開始届出証明書を提出し、e-TaxのIDとパスワードの発行をしてもらう必要があります。
当サイトのプロデューサーである、八木チエのYou Tubeチャンネル「不動産投資の女神チャンネル」にて、分かりやすく解説する動画も公開しておりますので、ぜひご覧ください。
不動産所得がある場合に課せられる、代表的な税金の種類は所得税と住民税です。
この二つのうち所得税は累進課税となっており、その一年の所得に応じて税率が変わってきます。
一般的にはサラリーマンの方は会社で年末調整をしてくれるので、不動産所得がある場合のみ確定申告する必要があります。不動産所得は給与などの所得と損益通算することができ、不動産所得が赤字であれば、年間の所得が安くなり確定申告をすることによって、払いすぎた所得税、住民税を還付してもらえます。
一方、不動産所得が黒字の場合、すでに払った所得税に対して追加納税される形になります。その中には、基礎控除(38万円)、給与所得控除(サラリーマンの場合)、社会保険料控除、配偶者控除(38万円)、扶養控除(38万円から63万円)、青色申告を行う場合には青色申告控除(簡易簿記の場合10万円、複式簿記の場合65万円)、医療費控除(医療費ー保険などのお金ー10万円)、生命保険料控除、地震保険料控除、介護保険料や個人年金保険料があります。
なお、住民税の税率は、基本的に所得の10%となっています。
確定申告の二つの方法とその違いについて解説していきます。
白色申告は、簡易な会計帳簿の作成で確定申告を行うことができる申告方法です。
白色申告のメリットは、事前の申請や、複雑な会計帳簿の作成が必要ないという点にあります。納品書や請求書などの控えがあれば、比較的簡単で記帳が可能です。
白色申告の会計帳簿は、青色申告決算書に比べて書類作成にかかる負担はかなり少なくなります。
しかし、平成25年までは免除されていた、合計所得が300万円以下である場合の記帳や帳簿類の保管が現在では義務化されているため、所得が低い場合であってもこれらの書類を保管しておかなくてはいけません。
また、白色申告にはデメリットもあります。それは青色申告のような控除など税額を軽減する制度が利用できない点です。
ある程度の不動産収入がある場合には、メリットが少ない申告方法であるといえます。
しかし、白色申告を行ったほうがよりメリットが大きいケースもあります。それは赤字である場合です。利益がない場合には青色申告による特別控除が必要ないため、書類の作成が簡単な白色申告を行ったほうが良いでしょう。
青色申告は白色申告に比べて複雑な記帳が必要になりますが、税制面でのメリットがあります。
青色申告を行うためには、不動産投資を開始してから2か月以内に「所得税の青色申告承認申請書」を住所地を所轄する税務署に提出しなければなりません。
このように青色申告には、事前の申請の必要や青色申告のルールに則った形で帳簿を作成しなければならないといった煩わしさがあります。
しかし、青色申告を行うことで青色申告特別控除を受けることができ、確定申告時に所得から10万円から65万円の範囲で所得から差し引くことができます。
単式帳簿による記帳を行い損益計算書を作成すれば10万円、複式帳簿による記帳を行い損益計算書と貸借対照表の作成を行うことで65万円の控除を受けることが可能です。
さらに、赤字を3年間繰り越すことができ、減価償却費を30万円まで一括計上が可能といったメリットもあります。
また、青色申告には家族を従業員としている場合であってもその給与を経費として計上できる「青色事業専従者給与」や、年末時点での売掛金や貸し倒れによる損失の見込み額も必要経費として計上できる「貸倒引当金の計上」といったメリットもあります。
さらに、不動産投資を行っている場合、自宅をオフィスとみなすことができるため、家賃や光熱費などの一部を経費として案分することも可能です。
不動産所得がある場合、青色申告を行うことが可能です。しかしこの場合、不動産投資の規模が事業とみなされる程度のものではないため、あまり大きなメリットはありません。
では、どの程度の規模から不動産投資は事業と呼べる規模になるのでしょうか。それは「5棟10室」が大まかな基準となります。
つまり、ばらばらの建物ではあっても10戸以上の物件を所有していたり、5棟以上の物件を貸し出していたりしないと事業とは認められないのです。
青色申告は記帳方法が煩雑であるため、10万円から65万円の控除額がありますが、不動産投資による収入が65万円以下である場合には、還付金は少額しか期待できないため、青色申告にあまりメリットを感じないといった方も多いようです。
しかし、不動産投資の規模が大きく事業として認められるレベルのものであれば、65万円の控除は非常に魅力的です。
また、一戸しか不動産を所有していない場合でも、青色申告を行えば10万円の控除が受けられるため、控除額は少なくとも青色申告を行ったほうが良いといえます。
ここでは確定申告を行う際に、必要になる書類について解説していきます。
ここで紹介する必要書類は、税務署で入手することができます。または国税庁のホームページにある確定申告書等作成コーナーや、一般に販売されている会計ソフトを使用して作成することも可能です。
確定申告書Bとは、どのような確定申告にも使用できる確定申告書です。国税庁の確定申告書等作成コーナーで作成することができます。
参考:https://www.keisan.nta.go.jp/kyoutu/ky/sm/top#bsctrl
記入が簡単な確定申告書Aというものもありますが、申告できる所得が限られているため、全ての所得を申告できる確定申告書Bの使用をお勧めします。
不動産所得用の青色決算書とは、毎日付けた帳簿の結果を決算書の形式で記入する書類のことを言います。
この書類は青色申告を行う際に必要になります。
サラリーマンを行いながら不動産投資を行っている場合、勤め先の会社から入手する必要がある書類があります。それは以下の通りです。
企業は、従業員に支払う給与の中から源泉徴収という形で従業員に代わり納税を行ってくれます。
源泉徴収票とは企業が発行するもので、「一年間のうちいくらの給与を支払い、いくら税金を徴収したか」を記載した文書のことです。
ここでは、確定申告を行う際に不動産会社から入手する必要がある書類について解説していきます。
不動産売買契約書とは、その名の通り不動産の売買を行う際に結んだ契約について記載されている書類のことで、不動産の売買を行った際に作成されます。
不動産を購入または売却した年の確定申告を行う際に必要になります。
売渡精算書とは、不動産購入時に必要となった費用の明細書のことを言います。
譲渡対価証明書とは、マンションを購入した場合、土地と建物の案分割合を示す書類のことを言います。
不動産会社などに家賃の徴収を依頼している場合には、この書類が必要になります。
不動産会社に賃貸契約を委託している場合には、この書類が必要になります。
ここでは金融機関などから融資を受けている場合に、その金融機関から入手する書類について解説していきます。
不動産投資用ローンの返済予定が記入された書類で、融資を受けた金融機関が発行するものです。ローン残高証明書とは異なるので、注意しましょう。
ここでは、所有している物件の修繕を行った場合に必要になる書類について解説していきます。特に修繕を行っていない場合は必要ありません。
物件の修繕を行う前に、修繕を依頼した業者が作成するものです。
修繕を行った後に、その費用を請求するために発行される書類です。
修繕費用が業者に間違いなく支払われたことを証明する書類です。
ここは、投資用物件の所有者に送付されてくる書類について解説していきます。
固定資産税の納税通知書通知書とは、納税の義務がある人の名前や課税標準額などが記載された書類で、市区町村といった自治体から送付されてきます。
所有している物件に掛けている保険の内容が記載された書類です。加入している保険会社から送付されてきます。
不動産投資を行う上で、節税を行うには二つの方法があります。
そのうち一つは、サラリーマンが不動産投資を行っている場合、不動産投資で出た赤字分を本業の給与所得から差し引くことです。
例えばサラリーマンとしての給与所得が700万円であったときに、不動産投資で50万円の赤字を出したとすると、本人の所得は700万円-50万円=650万円と計算されます。
ですので、この650万円が課税対象額となり、所得税や住民税はこの650万円に対して課せられるため、節税することができます。
もう一つの節税方法は、経費を余すところなく計上し、不動産投資によって得られた利益をなるべく少なくすることです。
このような方法をとることで、節税を行うことが可能になります。
経費を余すところなく計上することが、節税を行うために重要であることは前章で述べました。では、どのような出費を経費として計上することができるのでしょうか?
ここでは経費として計上できるものについて解説していきます。
給湯機などの設備や外壁などの修繕、室内の破損によるリフォーム費用は経費として計上できます。
しかし、物件の価値を高めるための大規模なリフォームまたはリノベーションを行った場合の費用は経費として認められないので、注意が必要です。
不動産投資用ローンを組んでいる場合、毎月の返済額のうち金利返済にあたる金額は経費として計上できます。
所有している物件に課せられる固定資産税は、経費として計上できます。
都市計画税は、所有している物件が市街化調整区域にある場合に課せられる税金です。この都市計画税も経費として計上できます。
所有している物件に掛けている火災保険料や地震保険料も、経費として計上できます。
物件の管理業務を業者に委託している場合、その委託料も経費として計上できます。
物件の登記などを司法書士に依頼したり、税理士に会計処理の代行や税金に関する相談を行ったりした場合に発生する報酬も、経費として計上できます。
減価償却費とは、物件の建物部分の価値が年々下がっていき、法定耐用年数が過ぎると建物部分の価値がゼロになるため、その分毎年損失が出ていると考えられる金額のことで、これも経費として計上できます。
この減価償却費は土地の価値には適用されず、また法定耐用年数を過ぎた建物に対しても適用されない点に注意が必要です。
投資用物件の管理を行うために、その物件のある場所に行った場合の公共交通機関の交通費やガソリン代、宿泊費等も経費として計上できます。
管理会社の担当者と喫茶店で打ち合わせを行うなど、物件に関わる事柄で飲食を行った場合も経費として計上することが可能です。
また、物件の管理に自家用車を使用した場合は、その使用割合によってガソリン代や車の維持・整備にかかる費用を案分し、経費として計上することもできます。
このように、こまごまとした投資用物件に掛かる費用も経費として計上できることを頭に入れておきましょう。
前章では、どのようなものが経費として計上できるかを解説してきました。これらの経費を確定申告時に経費として認めてもらうためには、必ずその金額を前章に記した用途に支払ったという証拠が必要です。
その証拠とは、領収書です。たとえば不動産投資のために打ち合わせで喫茶店を利用したとして、そのコーヒー代も経費として計上しようとすれば、必ず領収書をもらっておく必要があります。
このように小さな出費でも、積もり積もれば大きな金額になることもあるため、不動産投資に関する出費があった場合には、必ず領収書を発行してもらい、確定申告時に節税のため役立てるようにしましょう。
「税金関連」については下記カテゴリにさまざまな記事があります。そちらも参照してみてください。
関連記事:→不動産投資コラム - 税金関連
ここまでで確定申告の方法には、白色申告と青色申告があり、青色申告のほうが書類の準備が煩雑であるものの、10万円から65万円の控除が受けられるというメリットがあることがお分かりいただけたと思います。
また、令和元年現在では、確定申告はわざわざ税務署まで足を運ばなくてもインターネットで今までより簡単に済ませることも可能です。
確定申告を行う際には、経費をもれなく計上すれば節税が可能であることも解説してきました。
ここで解説した内容をもとに、適正な節税を行いながらスムーズかつ正確に確定申告を行いましょう。