不動産売却

不動産投資の9つの売却タイミング~売却費用や注意点について解説~

2021/12/01
不動産投資の9つの売却タイミング~売却費用や注意点について解説~
  • 「購入した不動産の売却を検討しているけど、タイミングがわからない」
  • 「不動産の出口戦略はどうやって立てればいいの?」

不動産投資をしている方の中にはこのような疑問を感じている方も多いでしょう。

不動産は市況や需要によって価値が変わるものであり、売却するタイミングで得られるリターンは変動します。最適なタイミングで売却することによって、資産をいかに効率的に増やせるのがポイントです。

本記事では不動産投資の9つの売却タイミングや、売却時の注意点などを解説します。これから投資不動産の売却を検討されている方は、ぜひ最後までお読みください。

投資した不動産を売却するタイミングは?

不動産の売却に適したタイミングは、以下の9つです。

(1)入居者がいる時

(2)ファミリータイプは空室の時

(3)空室率が上がった時

(4)路線価など不動産の価値が上がっている時

(5)元金返済額が減価償却費を上回った時

(6)減価償却期間が終わる時

(7)大規模修繕の前

(8)築年数が20年を超える前

(9)引っ越しシーズンの前

それぞれについて解説します。

入居者がいる時

入居者がいる不動産は「オーナーチェンジ物件」として売却されます。

オーナーチェンジ物件は入居者を募集する手間を省けるだけでなく、不動産購入時から家賃収入を得られるため、投資家からのニーズが高いです。よって、入居者がいる間に投資物件として売却するのはいいタイミングと言えるでしょう。

ファミリータイプは空室の時

ファミリータイプの不動産は「収益物件」としてだけでなく「マイホーム」として購入する需要もあるため、幅広い売却活動が可能です。

また、空室の不動産は、内覧によって現状を確認することもできます。投資ではなくマイホームとして検討している層をターゲットにする際は、売却するいいタイミングと言えます。

空室率が上がった時

空室率が上がる原因は、不動産の経年劣化や競合の増加など様々です。

空室対策のために、リフォームやリノベーションを行っても、必ず入居者がつくという保証はありません。また、自己資金がかかってしまうのもリスクと言えます。

そのため、入居者がなかなか決まらない場合は、不動産を売却するタイミングの1つとして捉えてもいいでしょう。

路線価など不動産の価値が上がっている時

路線価とは、土地につけられる公的な価格の一つで「相続税評価額」を指します。

路線価は、公示価格の約8割という特徴があり「路線価÷0.8」という計算式を用いることで、おおよその公示価格を求めることが可能です。

路線価が上がっているときは、不動産自体の価格も高くなっていますつまり、高値売却が期待できるタイミングと言えるでしょう。

元金返済額が減価償却費を上回ったとき

減価償却費とは、不動産や車などの固定資産を取得する際にかかった費用を、購入した年にすべて計上するのではなく、耐用年数に応じて分割して計上する仕組みです。

耐用年数に関しては、以下の表を参考にしてください。

出典:国税庁

また、減価償却費は、以下の計算式で求められます。

出典:国税庁

減価償却費が元金返済額を上回った分は、経費に計上できないため、税負担が増えてしまいます

そのため、元金返済額が減価償却費を上回るタイミングを逆算し、それまでに不動産を売ってしまうのも1つの方法でしょう。

減価償却期間が終わる時

減価償却期間(耐用年数)が終わると、経費が減り、所得が増えるため、所得税や住民税が増加します。

所得税や住民税は「収入総額-経費×税率」で算出されます。経費が少なくなると、税負担が増加するため、減価償却期間が終わる前に売却するというのも1つのタイミングです。

大規模修繕の前

マンションでは、10年~20年スパンで大規模修繕が行われます。
マンションを所有している場合、大規模修繕のために修繕積立金を毎月支払わなければなりません

なお、修繕積立金は、マンションの築年数に応じて値上がりすることが多いです。

また、修繕積立金が不足した場合、臨時で一時金を求められるケースもあるため、大規模修繕の前に売ってしまうのもタイミングの1つといえます。

築年数が20年を超える前

マンションの場合、築年数が20年を超えると、値引きされるリスクが高くなります。

また、築年数が20年になると、排水設備等の交換時期となり、修繕費用が高額になるケースもあるため、築年数が20年を超える前に売るのも1つのタイミングです。

引っ越しシーズンの前

2~3月の引っ越しシーズンは、不動産の需要が上がるため、売却するタイミングに適しています

ただし、売却するには3~6ヶ月程度の期間を想定する必要があり、前年の8~11月頃から売却活動を始めるのが良いでしょう。

不動産を売却するための準備と流れ

ここからは下記の2点について解説します。

  • 不動産売却の準備

  • 不動産売却の流れ

不動産売却の準備

不動産を売却する前には、以下の準備が必要です。

①マンション管理会社に連絡する

②不動産市場や価格相場を調査する

③必要書類を準備する

それぞれ解説します。

①マンション管理会社に連絡する

マンション管理会社に連絡し「組合員の資格喪失届の提出」と「管理費・修繕積立金の精算」を行います。

上記の連絡は、マンションの売却が決まってからでも大丈夫ですが、売却の意思を早めに伝えることで、提出方法や精算額が明確になり、その後のやり取りをスムーズに行えます。

場合によっては不動産会社が連絡するケースもあるため、どちらが手続きを進めるかを相談しましょう。

②不動産市場や価格相場を調査する

不動産市場や価格相場を調査することで、自身が所有している不動産に似た物件の市場価格がわかります。

不動産の市場価格は、不動産のポータルサイト等で確認できるため、売却前にはチェックしておきましょう

こちらのサイトで売却査定依頼ができますので、ぜひ活用してみてください。

③必要書類を準備する

不動産の売却で準備する書類は、以下のとおりです。ご自身が所有している物件タイプに合わせて準備するようにしましょう。

  • 写真付きの身分証明書

  • 印鑑証明書、実印

  • 登記簿謄本

  • 登記済権利証または登記識別情報

  • 固定資産税納税通知書、固定資産税評価証明書

  • 建築確認済証、検査済証、建築設計図書、工事記録書

  • 住民票(登記簿住所と現住所が異なる場合)

  • 地積測量図、境界確認書(一戸建や土地の場合)

  • マンションの管理規約

  • ローン残高証明書、ローン返済予定表(ローンの残高がある場合)

  • 銀行通帳

不動産売却の流れ

不動産を売却する際の流れは、以下のとおりです。

①仲介業者に相談・査定を依頼する

②媒介契約を結ぶ

③物件を売り出す

④売買契約を結ぶ

⑤不動産の引き渡し・決済を行う

⑥確定申告を行う

それぞれについて解説します。

①仲介会社に相談・査定を依頼する

不動産仲介会社に、売却に関する旨を相談しましょう。

自身が所有している不動産を「いつまでに」「いくらで売りたいのか」などを相談することで、より良い提案を受けられるでしょう。

なお、一社だけでなく複数社に相談することで、比較検討でき、より好条件で自分に合った会社を選べます。ただし、実際に売却してみないと担当者の対応レベルがわからないケースもありますので、なかなか満足いく対応をしてもらえない場合は、契約が終了になったタイミングで新しい会社に依頼するようにしましょう。

②媒介契約を結ぶ

仲介会社を決定した次は媒介契約です。

媒介契約には、3つの契約方法があり、それぞれメリット・デメリットがあります。それぞれの契約形態のメリットとデメリットを把握した上で、契約を締結するようにしてください。

契約方法メリットデメリット
一般媒介契約複数の不動産会社の契約できるため、より良い条件で売却できる可能性が高まる複数の不動産会社が競争するため、営業活動が積極的に行われない可能性がある
専任媒介契約2週間に1回以上の頻度で、業務報告を受けることができる契約できる不動産会社は一社のみなので、その不動産会社の力量に左右されやすい
専属専任媒介契約1週間に1回以上の頻度で、業務報告を受けることができる仲介売買業者を介さない契約ができないため、自身で買い手を見つけた場合でも、契約ができない(違約金が必要)

著者作成

③物件を売り出す

媒介契約を締結すると、ポータルサイトへの掲載や広告の出稿などにより、購入者の募集が開始されます。

なお、売り出し中の物件が賃貸中で「オーナーチェンジ物件」となる場合は、内覧はできません物件の状況を知りたい買主のために、物件の修繕履歴など、物件の状態がわかる情報をできる限り集めるといいでしょう。

④売買契約を結ぶ

購入希望者が見つかり次第、希望条件の調整を行い、売主と買主の双方が合意したうえで、売買契約を結びます。

売買契約後のトラブルを避けるためにも、物件の欠陥や不具合がある場合は、契約前に通達しておきましょう

⑤不動産の引き渡し・決済を行う

売買契約後、残代金の決済を行い不動産を引き渡します。

ローンが残っている場合、決済前に金融機関にローン返済の申し出を行い、抵当権を抹消しなければなりません

また、不動産会社に支払う手数料は、売買契約時に半額、不動産の引き渡し時に半額支払うケースが多いです。

⑥確定申告を行う

不動産を売却して利益が出た場合は、年度末に確定申告を行い、譲渡所得税を納める必要があります。

また損失が出た場合でも、確定申告を行うことで損失を翌年に繰り越せる場合があるため、制度を必ず確認しましょう

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不動産の売却にかかる費用一覧

不動産売却には、以下の費用がかかります。事前に把握しておきましょう。

(1)仲介手数料

(2)印紙税

(3)ローン返済手数料

(4)抵当権抹消費用

(5)譲渡所得税、住民税

(6)登記名義人表示変更登記費用

(7)測量費用

(8)解体費用

それぞれについて解説します。

仲介手数料

売却依頼をした物件が売れた際には、仲介業務の報酬として、不動産仲介会社に仲介手数料を支払う必要があります。

仲介手数料は法律で上限額が設定されており、多くの仲介会社は、上限額で設定しています。支払う手数料は、上限額と考えておくと良いでしょう

仲介手数料の上限額は「売却価格×3%+6万円+消費税(10%)」で算出できます。

なお、中にはキャンペーンで仲介手数料ゼロ円の会社もあります。法律上では仲介手数料について上限しか設けていないので、つまり、不動産会社がよければゼロ円でも問題はありません。

印紙税

売買契約書には、印紙税として決められた金額の印紙を貼付します。

印紙代は、売買価格によって異なります。

国税庁より抜粋

ローン返済手数料

売却する物件にローン残高がある場合、一括返済のために、金融機関に手数料を支払わなければなりません

ローン返済手数料は、金融機関や返済期間によって異なるため、正確な金額については各金融機関に問い合わせるようにしましょう。

抵当権抹消費用

抵当権抹消費用とは、ローン完済時に発生する費用です。

抵当権とは、住宅ローンを借りる際に、購入する住宅や土地を金融機関が担保にする権利です。

なお、抵当権の抹消は司法書士に依頼することが多く、2万円程度の費用がかかります。

譲渡所得税・住民税

不動産を売却し、利益が出た場合には、所得税住民税を支払う必要があります。税金の計算方法は、以下のとおりです。

  • 譲渡所得税=譲渡所得(売却価格-取得費用-譲渡費用)×所得税・住民税

なお、譲渡所得にかかる所得税・住民税は、不動産の所有期間によって異なります。

出典:国税庁

登記名義人表示変更登記費用

不動産を購入後、引越しなどで住所が変わった場合や、結婚などで氏名が変わった場合は、登記を変更する必要があります

登記上の住所や氏名が現在と異なっていた場合、不動産の所有権を移転できません。

また、登記名義人表示変更登記は、2万円程度の費用がかかります。

測量費用

売却する不動産が戸建てやアパートなどで境界が定まっていない場合は、測量を行う必要があります

不動産を売却する際に、買主から売却範囲の確認を求められる場合があり、不明確な状態で取引してはトラブルになりかねません。

測量方法は複数ありますが、一番費用のかかる「確定測量」は、50万円~100万円程度です。

解体費用

建物が古い場合は解体して売却するケースもあります。その場合は解体費用を負担する形になります。

必要となる費用は、住宅が所在するエリアや作業環境によって異なるため、注意しましょう。首都圏の住宅を解体する際の目安をまとめたので、参考にしてみてください。

建物の種類坪単価
木造3~5万円
鉄骨造4~6万円
RC造5~7万円

著者作成

不動産を売却する際の4つの注意点

最後に不動産を売却する際の4つの注意点をまとめました。

(1)現在と数年後の売却益を比較する

(2)複数の不動産会社に査定を依頼する

(3)所有年数は5年を超えている

(4)物件の内覧前にハウスクリーニングを行う

それぞれについて解説します。

現在と数年後の売却益を比較する

不動産を売却する際には、現在売却して得られる利益と、数年後売却して得られる利益を比較しましょう。

不動産は売却時期によって利益が異なります。不動産投資は売却戦略も重要なため、現在と将来の予測から計画を立てましょう

複数の不動産会社に査定を依頼する

仲介会社に査定を依頼する際は、必ず複数社に依頼しましょう

仲介会社によって査定額が違うため、複数社に査定を依頼することで相場価格を見極めることができます。

数多くある不動産仲介会社から信頼できる会社を選ぶには、「HOME4U」などの不動産一括査定サイトを活用することをオススメします。

所有年数は5年を超えている

不動産の所有年数が5年を超えているかどうかで、譲渡所得税の税率が大きく変化します。

不動産の所有期間が5年以下の場合「短期譲渡」となり、39.63%の税金がかかりますが、5年超えの場合「長期譲渡」となり、20.315%まで抑えられます。

所有期間によって税金を半額近くまで抑えられるため、不動産売却時には、長期譲渡が適用されるまで待つのがおすすめです。

物件の内覧前にハウスクリーニングを行う

物件の内覧が行われる前には、ハウスクリーニングを行い、物件を綺麗にしましょう。

当然のことながら、綺麗な物件の方が購入検討者の印象もよくなるため、売れる可能性が高まります。

まとめ

本記事では、不動産投資の9つの売却タイミングや、売却時の注意点について解説しました。

不動産を売却する際には「入居者の有無」や「築年数」、「現在の相場」などを確認し、適したタイミングで複数の仲介会社に査定を依頼しましょう。

また、不動産の売却には、さまざまな費用がかかるため、不動産の売却を検討されている方は、まとまった資金を確保しておくのがおすすめです。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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