不動産投資を行う際に金融機関で不動産投資用ローンを組む方も多いと思いますが、その時に「団体信用生命保険」への加入を義務付けにされる場合がほとんどではないでしょうか。
この「団体信用生命保険」、一体どのようなものなのでしょうか?
ここでは不動産投資を行う際に、重要な役割を果たす団体信用生命保険について解説していきます。ぜひ最後までご覧になり、団体信用生命保険の仕組みについてきちんと理解するようにしましょう。
不動産投資を行う際に、団体信用生命保険はどのような役割を果たすのでしょうか。そもそも、団体信用生命保険とは何かといった点から解説していきます。
「団信」呼ばれることもある団体信用生命保険は、不動産投資を行う際に組んだ不動産投資用ローンの契約者が、返済途中に死亡または病気やけがによって身体に重い障害を負ってしまう高度障害状態になるなどして返済が難しくなった場合に、金融機関などの債務者に対してローン残高分の金額を支払ってくれる保険のことを言います。
一般的に団体信用生命保険の保険料がおりるのは、不動産投資用ローンの契約者が死亡または高度障害状態になった場合のみです。
しかし、特約を付けることでがんや脳梗塞、急性心筋梗塞などの病気になった場合にも団体信用生命保険の保険金が下りるようになります。
団体信用生命保険は、特約を付けることで保険料が上がりますが、不動産投資用ローンの契約者やその家族にとってどこまでの保証が必要かよく考えて保証の範囲を決めることが大切です。
ちなみに特約は、団体信用生命保険の加入後、途中から付けることはできないので、団体信用生命保険加入時に特約を付けるかどうかよく検討しておきましょう。
不動産投資用ローンは完済までに20年、30年と長い期間がかかるのが一般的ですが、その間に不動産投資用ローンの契約者にもしものことが起こった場合、遺族が投資用ローンの返済を続けることができなくなることも考えられます。
そのような、困難な状況を避けるため、不動産投資用ローンの契約者に万が一のことが起こった場合に、ローン残高を保険金として金融機関などの債務者に返済し、遺族に負担を掛けないようにするための保険が、団体信用生命保険です。
団体信用生命保険に加入することで、遺族に不動産投資用物件が残り、不動産投資用ローンの返済の必要もなくなります。
ですので、不動産投資用物件を売却したり家賃収入の中から生活費に回すことができる金額が増えるため、団体信用生命保険は一般的な生命保険の代わりになるとも考えられます。
団体信用生命保険には次の4つの種類があります。
不動産投資用ローンの契約者が死亡、または高度障害状態になった場合に不動産投資用ローンの残高が完済される最も基本的な団体信用生命保険です。
不動産投資用ローンの契約者が死亡または高度障害状態になった場合以外にも、がん・脳卒中・心筋梗塞の三大疾病になった場合に、ローンの支払いの一部が補填される、または完済される団体信用生命保険です。
この三大疾病特約付き団体信用生命保険は、この三大疾病に罹り約款により定められた状態になることが保証の条件となります。
不動産投資用ローンの契約者が、死亡または高度障害状態になった場合以外にも、がん・脳卒中・心筋梗塞・糖尿病・高血圧性疾患・肝硬変・慢性腎不全・慢性膵炎の八大疾病に罹り約款に定められた状態になった場合にローンの支払いの補填やローン残高の完済が保証される団体信用生命保険です。
糖尿病や肝機能障害などで、①から③までの団体信用生命保険に加入できない人でも加入することができるよう、条件が緩和された団体信用生命保険です。しかし、必ずしも全員が加入できるとは限りません。
契約者に万が一の事態が起こった場合に、一般的な生命保険の場合には契約時に決められた保険金が遺族に支払われます。
しかし、団体信用生命保険の場合には、不動産投資用ローンの契約者に死亡などの万が一の事態が起こった時点での不動産投資用ローン残高と同額の金額が保険金として債務者である金融機関などに支払われます。
団体信用生命保険の特徴は、このローン残高に応じた金額の保険金が支払われるという点です。従って、返済を始めた時点で契約者に何かがあれば多額の保険金が支払われますが、完済間近の場合には、小額の保険金しか支払われません。
どのような場合でも、ローン残高と同額の金額しか下りないということを頭に入れておきましょう。
不動産投資用ローンを組む際に、団体信用生命保険に入っていないとどうなるのでしょうか?
不動産投資用ローンの契約者に万が一の事態が起こった際に、相続人は不動産投資用物件と不動産投資用ローンを相続することになります。
相続人に不動産投資を引き継ぎ、家賃収入から不動産投資用ローンの残高を毎月支払っていければよいのですが、それが不可能な場合、相続人に大きな負担を掛けることになります。
しかし、相続人が不動産投資用物件を相続して不動産投資を継続していくことが可能な場合、不動産投資用ローンの残高が残っているほうが、負債という形で相続を受けることになりますので、相続税を支払う際に税制上有利に働くこともあります。
相続税の課税対象になる場合は、投資用物件の評価額から不動産投資用ローンの残高を差し引いた金額で、遺産の合計が相続税の控除額を超えた部分になります。
なので、不動産投資用ローンが残っていたほうが相続税を節税することができる可能性があります。
団体信用生命保険への加入は、不動産投資用ローンを組む際に金融機関から強制されることもありますが、任意で加入するかしないかを決めることができるケースもあります。
そこで、ローンを組む際に金融機関の担当者に確認することをお勧めします。
しかし、不動産投資用ローンの契約者に万が一のことが起こり、ローン返済ができない状態になってしまった場合、一番困るのは金融機関です。
そのため、金融機関が団体信用生命保険の保険料を負担し、団体信用生命保険の加入を条件としローンを組むケースが多いようです。
では、団体信用生命保険の保険料はどの程度必要になるのでしょうか?その金額は不動産投資用ローンの借入金額により異なります。
なぜなら、団体信用生命保険の保険料は一般の生命保険料と同じように月払いまたは年払いで保険料として支払うものではなく、不動産投資用ローンの金利に上乗せされるものだからです。
上乗せされる金利は不動産投資用ローンを組む金融機関や団体信用生命保険の補償内容にもよりますが、おおむね0.3%程度と考えておきましょう。
基本的に一般的な団体信用生命保険の場合には上乗せされる金利は低く、補償範囲が広い団体信用生命保険の場合には高くなります。
団体信用生命保険に加入する場合には、金融機関により異なりますが条件があることが一般的です。
基本的に不動産投資用ローンの契約者の健康状態の告知の必要があり、それ以外にも年齢条件が付いていることもあります。
一般的な金融機関で不動産投資用ローンを組む場合に団体信用生命保険への年齢の加入条件は、借入時に満20歳から満70歳まで、完済時に満80歳までであることを条件にしていることが多いようです。
団体信用生命保険への加入が任意であった場合に、団体信用生命保険に加入せず、一般的な生命保険に加入するという選択肢もあります。
この団体信用生命保険に加入せず、生命保険に入るという選択肢にはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。
ここでは、そのメリットとデメリットについて解説していきます。
団体信用生命保険と通常の生命保険の大きな違いは、団体信用生命保険のローン返済が進むにつれて万が一の際の保険金が少なくなることです。通常の生命保険は受け取れる保険金が契約している期間内であれば変わることが無いという点です。
また、通常の生命保険は団体信用生命保険と異なり、保険金の金額や受取人についても自由に設定することが可能になります。
団体信用生命保険の保険料と同じ程度の保険金で、不動産投資用ローンの残高以上の生命保険に加入することができるのであれば、上記の点がメリットとなります。
さらに通常の掛け捨てではない生命保険の場合には、解約時の「解約返戻金」や保険の期間が満期を迎えた際の「満期保険金」があります。
団体信用生命保険には、不動産投資用ローンを完済した場合であっても、どのような形でも払い戻しがあるわけではないので、この点も通常の生命保険のメリットであるといえるでしょう。
このようなことから、貯蓄性という点においては団体信用生命保険より通常の生命保険にもメリットがあるといえます。
団体信用生命保険の保険料は不動産投資用ローンの金利に含まれるため、不動産投資を行う際の経費として計上でき、節税に役立てることができます。
しかし、通常の生命保険に加入した場合、その保険料は不動産投資の経費として計上できないことがほとんどなので、節税の役に立たない点がデメリットであるといえます。
生命保険の保険料が不動産投資の経費として認められるためには、「生命保険への加入が不動産投資用ローンを組む際の条件である」、「生命保険の保険金の受取人がローンを組んでいる金融機関から指定されている」という2つの条件を満たしていなければなりません。
不動産投資を行う場合には、不動産投資に関わる出費を経費に計上できるかという点が非常に大きな問題になります。
団体信用生命保険の代わりに生命保険に加入する場合には、この点に十分注意するようにしましょう。
不動産投資と団体信用生命保険について解説してきました。
団体信用生命保険とは何か、その種類にはどのようなものがあるのか、通常の生命保険とはどのような違いがあるかといった点についてお判りいただけたと思います。
団体信用生命保険は、不動産投資用ローンの契約を行う際に加入が義務付けられることが多い保険ですが、加入が任意である場合には団体信用生命保険に加入するかどうかを慎重に検討するようにしましょう。
また、団体信用生命保険には4つの種類があり、それぞれ保険が適用される範囲が異なるため、どの種類の団体信用生命保険に加入するかという点に関してもよく検討することをお勧めします。