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元利均等返済と元金均等返済・不動産投資用ローン2つの返済方法とは?

2022/03/30
元利均等返済と元金均等返済・不動産投資用ローン2つの返済方法とは?

不動産投資を行う際には、その初期費用を全額自己資金で賄うことはほぼなく、銀行などの金融機関から不動産投資用ローンの借り入れを行うのが一般的です。

金融機関から不動産投資用ローンの借り入れを行うと、当然ですが毎月ローンの支払いをしていくことになります。

その不動産投資用ローンの支払い方法には、二つの種類があることをご存知でしょうか?その二つの方法とは、元利均等方式元金均等方式です。

こちらの記事では、その二つの支払い方法の違いなどについて解説していきます。

ぜひ最後までお読みになり、不動産投資ローンの支払い方法の決定にお役立てください。

不動産投資ローンの返済方法には二種類ある

不動産投資ローンの返済方法には二つの方法があります。その二つの返済方法である元利均等方式と元金均等方式の大きな違いは、「利息」と「元金」の返済方法です。

最初に借りた金額を元金と呼びますが、この元金には当然利息が付きます。毎月この元金と利息の合計を、借り入れを行った金融機関に返済していくことになります。

同じ金額で同じ返済期間の不動産投資用ローンを借り入れた場合でも、元利均等方式と元金均等方式では、毎月の支払い金額や総支払額に違いが出てきます

ここでは、元利均等方式と元金均等方式の二つの返済方法の違いを解説していきます。

元利均等方式

元利均等(がんりきんとう)方式とは、毎月の支払額が一定の金額になる不動産投資用ローンの返済方法です。

不動産投資用ローンだけではなく、一般的な住宅ローンにおいてもこの方法でローン返済を行うケースがほとんどです。

元利均等方式で不動産投資用ローンの返済を行う場合、借入期間を定めて長期間にわたり毎月返済するときに、毎月の支払額が一定となるように元金と利息を合計して返済を行います

元利均等方式は毎月支払う金額は一定ですが、返済の初期のうちは返済金額のほとんどを利息が占めるため、元金はなかなか減りません

元金の返済が遅れるということは、その分元金にかかる利息も多くなるため、支払総額は元金均等方式に比べて高額になります。

例えば、1億円を3%の利息で30年かけて返済する不動産投資用ローンを、元利均等方式で支払った場合の支払総額は、151,777,166円(※)となります。

※30年間固定金利で計算しています。

元金均等方式

元金均等(がんきんきんとう)方式とは、借り入れた元金を返済終了時まで毎月同額を支払いつつ、元金にかかる利息を毎月支払う元金に上乗せして同時に返済するという支払い方法です。

このとき上乗せされる利息は、その年に発生する利息となります。

利息はその年の借入残高に応じて発生するため、返済すべき元金が多い返済初期の時期は多額の利息が発生します。

そのため、元金均等方式で不動産投資用ローンの返済を行う場合、返済初期の時期には月々の返済額が高額になるのです

しかし、返済すべき元金は元利均等方式に比べて速く減っていくため、元金均等方式の場合の毎月の返済額は利息の減少と共に徐々に低くなっていきます

元金均等方式では、返済すべき元金の減り方が速いためそれにかかる利息も少なくて済み、結果として同じ期間で同じ金利の不動産投資用ローンを組んだ場合には、元利均等方式に比べて総支払額は少なくなります

例えば、1億円を3%の利息で30年かけて返済する不動産投資用ローンを、元金均等方式で支払った場合の支払総額は、145,124,947円(※)となります。

※30年間固定金利で計算しています。

元利均等方式と比較して、総返済額は約600万円も安くなります。

元利均等方式と元金均等方式それぞれのメリットとデメリットは?

元利均等方式と元金均等方式については、前章でそれぞれ解説してきました。これら二つの支払い方法には、どちらにもメリットとデメリットがあります。

ここでは、元利均等方式と元金均等方式のメリットとデメリットについて解説していきます。

元利均等方式

元利均等方式のメリットとデメリットについては、以下の通りです。

①メリット

元利均等方式の一番の特徴は、毎月の支払金額が一定であるという点です。不動産投資は、不動産経営でもあるため、毎月の支出が一定しているという点は、経営上大きなメリットであるといえます。

毎月の収支の予測が立てやすいため、不動産投資を行う上でキャッシュフローの把握も容易です。

また、不動産投資用ローンを組む時点で、本業から得られる収入がそれほど多くない場合でも、元利均等返済であれば、無理のない金額を設定しやすいため支払いがしやすいという点もメリットであるといえるでしょう。

②デメリット

元利均等方式のデメリットは、元金均等方式に比べて支払う利息が多くなるという点です。

この理由から同じ期間の不動産投資用ローンを組んだ場合には、支払総額が元金均等方式より高額になってしまいます。

このような理由から、元利均等方式による不動産投資用ローンの返済を選んだ場合には、積極的に繰り上げ返済を行うことがお勧めです。

しかし、不動産投資用ローンの利息は経費として計上できるため、この返済方法を上手に利用することで元金均等方式より多い金額の税金を節税することができる可能性もあります。

元金均等方式

ここでは、元金均等方式のメリットとデメリットについて解説していきます。

①メリット

元金均等方式の一番のメリットは、不動産投資用ローンの総支払額が安く済むという点です。

一億円を3%の利息で30年間の返済期間で借りた場合、総支払額は元利均等方式に比べて665万円程度安くなります。

また、元金と利息を合計した毎月の返済額は、返済が進むにつれ安くなっていきます。

ですので、購入した不動産の老朽化が進み、修繕費が多くかかるようになるころに毎月の不動産投資用ローンの返済額が安くなっているというメリットもあります。

②デメリット

元金均等方式では、銀行から借り入れた元金の支払い額がローンの当初から終了まで一定の金額であることが特徴です。

月々一定の元金を返済しながら、元金の残額に対する利息を支払う必要があるため、当初の月々の支払総額は高額なものになっていまいます。

投資用不動産購入時には、投資用物件の購入費用のほかにさまざまな費用が掛かるので、返済当初のひと月当たりの支払額が高額であるという点は、元金均等方式のデメリットであるといえるでしょう。

元利均等方式と元金均等方式どちらが自分には向いている返済方法なのか?

元利均等方式と元金均等方式の違いやメリット・デメリットはお分かりいただけたと思います。では、これら二つの支払い方法は、どのような人に向いているのでしょうか?

ここでは、それぞれの支払い方法にはどのような人が向いているのかを解説していきます。

元利均等方式が向いている人

元利均等方式が向いているのは、比較的若い時期に不動産投資をはじめようとしている人です。

そのような人は、スタートしたときはまだ独身の方が多く、この先結婚や子どもの誕生や子育てにお金がかかることが予想されます。元利均等方式を選択していれば、先々のライフプランが立てやすいといったメリットがあります。

また、本業を続けることで、そちらから得られる収入が増えてくることも予想されます。その時点で繰り上げ返済を行えば、元利均等方式の総支払金額が高額になるというデメリットもあまり気にならなくなるためです。

さらに、若い時期に不動産投資を始めるということは、それだけ長期間本業の方から収入を得続けることができます。ですので、不動産投資用ローンの総支払い金額が多くなっても、または期間が長期間に及んでも無理なく返済を続けることができるという理由もあります。

このような理由から、若くして不動産投資をはじめようとお考えの方に、不動産投資用ローンの元利均等方式による支払いが向いていると言えるでしょう。

元金均等方式が向いている人

元金均等方式による不動産投資用ローンの返済は、返済当初の月々の支払額が高額であるという特徴があります。元金均等方式は本業で十分に収入を得ることができている、返済に少し余裕がある方が不動産投資を始める際にお勧めの返済方法です。

元金均等方式には、月々の返済金額が徐々に少なくなるという特徴もあります。

例えば40歳で不動産投資用ローンを借り入れ、30年で支払うといった計画を立てることもありますが、60歳以降に定年を迎えた際に収入が減少したときに、月々の返済額が安く済むということは非常に大きなメリットです。

このようなローンの組み方をした場合、ほとんどの人は繰り上げ返済で定年後の負担を軽くしておく計画を立てていることが多いのですが、その計画がうまく行かなかったときのためにも、元金均等方式による不動産投資用ローンの返済をお勧めします

元金均等支払いを選択できない金融機関もあるので注意しよう

不動産投資用ローンを取り扱っている銀行などの金融機関の中には、元金均等方式での返済を取り扱っていないところもあります。

なぜなら、同じ金額を同じ金利で同じ期間融資しても、元金均等方式のほうが元利均等方式よりも金融機関が得ることができる金利の金額が少なくなるためです。

要するに元金均等方式は、元利均等方式に比べて「儲けが少ない」金融商品だといえるからです。

同額のローンを組んだ場合の元利均等支払いと元金均等支払いのシミュレーション

ここまで、不動産投資用ローンの二つの返済方法である元利均等方式と元金均等方式について解説してきました。

ここで、不動産投資用ローンを利用する前にシミュレーションを行ってみることをお勧めします。インターネット上には、さまざまな不動産投資用ローンシミュレーターが存在し、例えばオリックス銀行のホームページには以下のようなシミュレーターがあります。

参考:https://www.orixbank.co.jp/personal/loan/simulation/apartment.html

きちんとシミュレーションを行うことで、不動産投資に対するリスクを低く抑え、安定した投資を行うための準備をしておきましょう。このようなシミュレーターを使用する前には、まずは不動産投資を行う物件についてのデータを十分に集めておく必要があります

また、シミュレーションを行う場合にも、一つのシミュレーターだけではなく、複数のシミュレーターを利用して、それらの結果から目当ての投資用物件で安全かつ安定的な投資ができるかを総合的に判断しましょう。

まとめ

ここまで、不動産投資用ローンの返済方法には元利均等方式と元金均等方式の二つがあり、それぞれにメリットとデメリットがあることがお分かりいただけたと思います。

元利均等方式と元金均等方式には大きな違いがあり、自分の年齢やライフステージによって有利な返済方法が異なってくることも合わせて解説しました。

不動産投資用ローンは、非常に大きな金額を借り入れるため、一般的な住宅ローンに比べるとリスクも高くなりがちです。リスクを避けるためにも、事前に詳細な情報を集めて返済方法のシミュレーションをしておきましょう。

元利均等方式と元金均等方式、この二つの返済方法の選択を誤ることで不動産投資自体が失敗に終わる可能性もないとは言えません。

この二つの返済方法の違いとメリット・デメリットをきちんと把握したうえで、現在の自分に合った返済方法で不動産投資用ローンを組むようにしましょう。

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八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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