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中古一棟物件の投資をするなら知っておくべき4つのこと

2020/01/15
中古一棟物件の投資をするなら知っておくべき4つのこと

不動産投資をするときは、大きく分けて区分(一室)と一棟の2種類があります。

更に一棟投資物件の中に中古と新築と分かれています。新築物件と比較して中古一棟物件は比較的価格が安く、収益性が高いことから人気を集めています。

しかし、中古一棟物件投資にはリスクもあります。具体的にはどのようなリスクがあるのか?購入する前に把握しておくことが重要です。

そこでこの記事では、中古一棟物件を始める前に知っておくべきことを4つのポイントについて解説します。これから中古一棟物件投資を検討されている方はぜひ参考にしてみてください。

中古一棟物件投資とは?

中古一棟物件投資を検討する際にまず知っておきたいのは仕組みです。

中古一棟物件投資とは、アパートやマンションなど土地も含めた中古一棟物件を購入し、その物件の賃貸収入をメインとする投資です。

マンションなどの一室(区分)「区分物件投資」と比較して、部屋数が多いことからキャッシュフローがよくなることが特徴です。

「新築物件の選び方」は下記で解説していますので参照してみてください。

関連記事:→不動産投資で新築物件を検討されている方へ!知っておきたい5つのこと

中古一棟物件投資の4つのメリット

中古一棟物件投資を検討している方が知っておくべき2つ目のポイントは、中古一棟物件投資のメリットです。

大きく下記4つのメリットが挙げられます。

  1. 規模が大きく収益性が高くなりやすい
  2. 土地の価値も大きい
  3. 運営する際の自由度が高い
  4. リスク分散できる

規模が大きく収益性が高くなりやすい

1つ目のメリットは、中古一棟物件投資は規模が大きく収益性が高くなりやすい点です。

もちろん物件価格は高くなりますが、例えば1棟10部屋の一棟物件を購入した場合、1部屋が7万円の家賃で10部屋もあれば、月70万円の家賃収入を得ることができます。

区分マンション投資を比較して収益性が高くなりやすいと言えるでしょう。

土地の価値も大きい

2つ目のメリットは土地の価値が大きいという点です。

中古一棟物件を保有しているということは、その建物が建築されている土地も自分の所有となるケースがほとんどです。土地の価値は建物と違い変動しにくいため、築年数が経過しても土地の価値(売却価格)が大きく減額するリスクが小さいです。

また、一棟物件なら将来的に賃借人がいない状態であれば、建て替えなどの「用途変更」も自分だけの意志で行うことができます

一方、区分投資の場合は、建物が建築されている土地は、建物の区分所有者全員で持ち分という形で所有することになります。土地もご自身で所有できることは非常に大きなメリットと言えるでしょう。

運営する際の自由度が高い

3つ目のメリットは、区分マンション投資と比較して中古一棟物件の場合は以下のように運営する際の自由度が高い点です。

  • 空室なら全室を自由にリノベーションできる
  • 共用部の修繕計画などは自分で策定できる
  • 管理会社は自分で決めることができる

一方、区分投資するときには、室内は自分でリノベーションを行うことができますが、共用部は管理組合が主導します。そのため、修繕計画も予め決まっていますし、管理会社も自分だけの意志では決めることができません。

なお、ご自身で自由に決められるのはメリットではありますが、初心者の場合は予算の決め方、リノベーションの必要性の判断はなかなか難しいので、ぜひ管理会社のプロに相談しながら進めることオススメします

リスク分散できる

4つ目のメリットは、中古一棟物件はリスク分散できるという点です。

中古一棟物件は一棟丸ごと保有するので、一部屋ではなく複数の部屋を保有するということだからです。

例えば、10部屋の中古一棟マンションを購入したとした場合、仮に、10部屋が同じ賃料で、10部屋中2部屋が年間で1か月間空室になったとします。

このような状態でも、ほかの8部屋からの賃料収入があるので、年間の賃料減収率はわずか「空室2か月÷マンションの全体収益120か月=約1.6%」となります。

一方、区分投資であれば一室の保有なので、1年間で1か月空室が出れば、8.3%(1か月÷12か月)も家賃収入は減額となります。

このように、中古一棟投資の場合は空室時もリスク分散できる点はメリットといえるでしょう。

中古一棟物件投資の6つのデメリットと対策

中古一棟物件の購入を検討している方が知っておくべき3つ目は、中古一棟物件投資のデメリットです。デメリットの対策も合わせて把握しておきましょう。

  1. 初期費用が高くなりやすい
  2. 物件価格が高く返済が厳しくなりやすい
  3. 失敗すると自己破産に追い込まれるリスクが高い
  4. 高額なので流動性が低い
  5. 区分よりも管理手間はかかる
  6. 融資が非常に厳しくなった

初期費用が高くなりやすい

1つ目のデメリットは初期費用が高くなりやすいという点です。中古一棟物件の購入には下記のような初期費用がかかります。

  • ローン関係費用:手数料や保証料
  • 登記関係費用:名義変更による移転登記に伴う費用
  • 仲介手数料:仲介した不動産会社に支払う手数料(売主の場合はかかりません)
  • 保険料:火災保険や地震保険など
  • 固定資産税精算分:引渡し日以降の固定資産税支払い分

上記の金額は物件によって異なりますし、ローンを組む金融機関や借入金額によっても変わってきますが、目安としては物件価格の7~8%ほどと思っておきましょう。

回避策ではないですが、物件を購入するには物件本体価格の他に諸経費もかかることきちんと認識し準備することが大切です。

なお、これはフルローンを想定したケースの初期費用です。「(6)融資が非常に厳しくなった」で詳しく説明しますが、一棟投資物件の融資が厳しくなり、大体3割前後の頭金が必要となり、諸経費の他に頭金の準備も認識しておかなければなりません。

また、不動産投資は物件を所有している間も修繕による突発的な支出や、空室時に手持ち資金からの捻出が必要なので、初期費用とは別にそういった運用資金を確保しておく必要があります。

物件価格が高く返済が厳しくなりやすい

2つ目のデメリットは物件価格が高く返済が厳しくなりやすい点です。対策は以下の点として挙げられます。

  • 借入可能額は返済可能額ではないことを認識する
  • プライベートの収支を計算する

まず、金融機関で借入額の承認がおりたからといって、その金額が返済可能額ではないという点です。

例えば、単身者なのか子供がいるファミリーなのかで支出は異なりますし、住んでいる場所によっても支出が異なります。また、職業によっては収入の変動が激しいこともあるでしょう。

ファミリーの方であれば子供の養育費も加味して考える必要がありますし、自営業者であれば収入の変動を加味する必要があります。

つまり、購入する物件価格やローンの借入額は、将来を見据えたプライベートの収支を考えて判断しなければいけないということです。

失敗すると自己破産に追い込まれるリスクが高い

3つ目のデメリットは、失敗すると自己破産に追い込まれるリスクが高いという点です。

失敗しないためには、以下の対策があります。

  • 空室や家賃下落も加味した長期スパンの収支シミュレーションをきちんとする
  • 突発的な出費に備えた運用資金を持つ

不動産投資は長期投資なので、途中で売却する可能性があっても20年程度のスパンで収支を考えましょう。

その際は、現状でシミュレーションするのではなく、周辺物件の調査や不動産会社などのヒアリングから、家賃下落率と空室率を予測し、それも加味したシミュレーションをする必要があります。

また、設備が故障したときの設備交換費用など、突発的な出費に備えた運用資金を持つことも重要です。要は、物件運用によって発生するランニングコストを支払っても、突発的な支出に耐えられるくらい手持ち資金が残っている状態にする必要もあります。

その上で、長期的に見ても収益を確保できる物件を選ぶことが、中古一棟物件投資に失敗しないための対策になります。

高額なので流動性が低い

4つ目のデメリットは高額なので流動性が低いという点です。

対策としては売却しやすい物件を選ぶのと、相場に合った売却価格の設定です。

  • エリアを選ぶ
  • 相場に合った価格設定

一棟物件は価格が高く購入できるターゲット層が狭いことから流動性が低いのですが、高立地、人気のあるエリアであれば買手が集まります。

また、いくら需要があるエリアでも、価格の設定が相場より高くなるとなかなか売れにくくなるでしょう。

所有期間が短く、残債がほとんど減らずどうしても相場より高く設定しないといけない場合は、売却期間が長くなるのと、大きく値引き交渉されることを認識しておく必要があります。

区分よりも管理手間はかかる

5つ目のデメリットは、区分よりも一棟の方が手間はかかるという点です。

なぜなら、上述したように中古一棟物件投資の場合は共用部の自由度が高いので、自ら修繕計画や管理会社の選定を行う必要があるからです。

このデメリットへの対策は、やはり管理ノウハウが豊富で、安心して管理を任せる管理会社に管理を依頼することです。

また、一棟物件は管理する項目が多く、区分マンションより管理コストがかかることを認識しておく必要があります。なお、信頼できる管理会社の選び方は後述する「信頼のおける管理会社の選定」を参考にしてみてください。

融資が非常に厳しくなった

6つ目のデメリットは、融資が非常に厳しくなったという点です。昨年に立て続け起きた融資の不祥事が背景と言えます。

実際に、野村不動産アーバンネット株式会社が行っている「不動産投資に関する意識調査(第10回)」では52.8%が不動産投資について「変化を感じる」としており、その内87.7%が融資について「審査が厳しくなった」と回答しています。

融資に対する対策としては、

  • 自己資金を用意する
  • 不動産投資会社に提携金融機関を紹介してもらう

が挙げられます。

なお、融資の審査が厳しくなり、ほとんどの金融機関は頭金を3割ほど用意するのが条件として出しており、以下で算出する積算価格が高い物件を選ぶ必要があります。

  • 土地:相続税評価額×土地面積
  • 建物:再調達原価×建物延べ床面積×(残存年数÷耐用年数)

積算価格は担保価値を算出する計算式であり、築年数が浅い物件や路線価などが高いエリアの不動産の方が高く算出されやすいです。あとは、無理して一棟物件を購入するのではなく、自分に合った価格の物件にすることも審査に通る対策といえるでしょう。

収益性の高い一棟物件を選ぶコツとは?

中古一棟物件の購入を検討している方が知っておくべき4つ目は、収益性の高い一棟物件を選ぶコツである以下についてです。

  1. 物件の立地
  2. 信頼のおける管理会社の選定
  3. 初心者はリノベーションが必要な物件は避ける

物件の立地

1つ目のコツは、物件の立地については以下を調べて、なるべく需要の高い地域で物件を購入することです。

  • 市区町村の人口推移
  • 最寄り駅の乗降客数

例えば、渋谷区であれば人口推移と将来的な人口予測の資料があります。

また、行政単位よりさらにミクロなエリアを調べる方法としては、「鉄道会社で最寄り駅の乗降客数を調べる」という方法があるので、この2つの方法でエリアの需要を調べましょう。

信頼のおける管理会社の選定

2つ目のコツは、信頼のおける管理会社を選定することであり、優良な管理会社を選定するにあたって以下のポイントをおさえましょう。

  • 管理実績:管理ノウハウが豊富
  • 一棟物件に強い:修繕計画など一棟投資のノウハウが豊富

管理実績はそのまま管理会社のノウハウに直結し、そのノウハウは良質な管理につながります。また、一棟物件のノウハウが豊富であれば、良質な修繕計画の策定などにつながるというわけです。

初心者はリノベーションが必要な物件は避ける

3つ目のコツは、初心者はリノベーションが必要な物件は避けるということであり、その理由は以下の点です。

  • リノベーション費用が読みにくい
  • リノベーションすべき箇所が分かりにくい
  • リノベーション工期が分かりにくい

仮に、今まで何物件も中古一棟物件投資を行っており、リノベーション物件も成功させているのであれば、リノベーションが必要な物件を購入しても問題ありません。

しかし、上記のようにリノベーションが必要な物件は不確定要素が多く、初心者にはハードルが高いため、経験豊富でない限りは避けた方が賢明でしょう。

「区分や一棟の違い」は下記で解説していますので参照してみてください。

関連記事:→区分、一棟など収益物件の種類を知る

まとめ

このように、中古一棟物件投資をするなら、その仕組みとメリット・デメリット、および収益性の高い物件を選定するコツを知っておきましょう。

それらを事前に知っておくことで、物件購入前に事前準備ができ、その準備が投資の成功へとつながります。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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