不動産投資の一つの判断基準として、利回りを参考にされている方は多いのではないでしょうか。
しかし、多くの物件の販売図面に記載されているのは表面利回りといって、家賃収入/物件価格という概算になっています。
実際に物件を運用していく上で、管理費、税金など様々な諸経費がかかりますので、表面利回りで判断するのではなく、全ての諸経費を差し引いた時に手元にいくら残るのかという「キャッシュフロー」で物件を判断する必要があります。
そこで今回の記事では、不動産投資のキャッシュフローの計算方法、注意すべきポイントなどについてまとめました。これから不動産投資を検討されている方はぜひ最後までお読みいただき、参考にしていただけますと幸いです。
キャッシュフローとはお金の流れの意味で、不動産投資におけるお金の流れのことを指します。
実際に不動産運営をしていくことによって、家賃という収入に対して、税金などの諸経費という支出も発生します。従って、キャッシュフローは支出も正確把握しておくことが重要です。キャッシュフローは下記計算式にて算出することができます。
「不動産投資のキャッシュフロー=家賃などの総収入−税金、管理費などの諸経費」
例えば、年間の総収入が200万円で、諸経費が140万円かかった場合、その年間のキャッシュフローは60万円の黒字となります。
不動産投資の収入に対して、現在の状況で算出する方が多いようですが、実際にその物件が今得られている家賃は相場家賃なのかの確認が必要です。
また、10年など長いスパンで運営していくのが不動産投資なので、10年間の家賃の動き、また所有している間に空室になる期間もゼロではないので、空室期間を入れるなど様々な条件を想定しながら試算する必要があります。
最初に知っていただきたいのは、現状の家賃だけで計算しないことです。
新築物件の場合は、新築ブランドと言って、本来物件が取れる家賃に新築がプラスされ、最初は最も高い家賃で設定されています。
しかし、1回でも入居者が退去されますと、中古物件の扱いになりますので、中古物件の家賃相場を確認する必要があります。また、新築物件は最も家賃の下落幅が大きいと言われており、下落率を10%前後で見ておくといいでしょう。
一方、中古物件の場合は、物件を買ったときの家賃でキャッシュフローを算出する方が多いですが、ここで注意していただきたいのは、入居者はその物件に入居して何年経っているかをきちんと確認することです。
入居年数が長いから安心して家賃収入を得られると売りポイントとして紹介する業者も多いですが、実は入居年数に落とし穴があります。それは、入居年数が長ければ長いほど、今得られている家賃は現状の家賃相場との乖離率が大きくなっている可能性が高いです。
一般的には、物件の築年数が古くなるにつれ、家賃は少しずつ下がっていくケースがほとんどです。つまり、入居年数が長い物件は入居当時の家賃のままになっているケースが多く、それは今の家賃相場より高くなっている可能性が高いのです。
従って、対象物件の入居年数をきちんと確認し、今の家賃相場との乖離を確認することが重要です。
どんなに人気な物件でも、入居者が続けて入居したとしても、入れ替わりで1か月前後の空室期間が出ます。
従って、家賃収入は満室で計算するのではなく、例えば年間1か月の空室期間を仮定して「1か月/12か月=約8%」の空室率を入れましょう。
新しい入居者が入居するタイミングで、敷金・礼金を受け取るオーナーも多いでしょう。敷金は一時的に預かるお金になりますので、収入に加算しないですが、オーナーが受け取る礼金は収入に加算する必要があります。
例えば、家賃15万円の物件で礼金を2か月分もらった場合は、通常の年間家賃180万円に礼金の30万円が加算され、総収入は210万円になります。
節税のため、不動産経営に関係ない経費も全て不動産経営の経費として計上される方も多くいるようですが、税務署は税金のプロです。
つまり、不動産経営に関係ない経費を計上して、見つかってしまうリスクはゼロではありません。何もかも計上するのではなく、不動産経営に関連する経費は漏れずに正しく計上することを認識しておくことが重要です。
では、不動産経営に関連してどのような経費は計上していいのでしょうか。具体的には下記の経費項目が挙げられます。
など、その他ご自身の物件に関わる費用を計上することができます。
融資を利用した場合、その返済金額は経費として計上できるのではないかと思われている方もいますが、融資返済額で計上できるのは利息だけで、元金は計上できないこと注意しましょう。
上記諸経費の中で減価償却費を紹介していますが、減価償却費は物件や設備などの固定試算が老朽化した部分を数値したものであり、帳簿上では記載されますが、実際に支出したキャッシュではないことを理解しておきましょう。
なお、減価償却費の計上ができる法定耐用年数は建物の構造によって決まっており、対象物件の構造に合わせて計上できる年数を確認してください。
減価償却費は実際に支出がないのに対して経費として計上できるので、長く計上できる物件の方がメリットは大きいと言えます。中古物件の購入をご検討される際に、減価償却費が計上できる年数も合わせて確認するようにしましょう。
「税金関連」に関しては下記カテゴリでも解説していますので参照してみてください。
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最後は実際に、物件のキャッシュフローの計算例を見てみましょう。
物件情報は下記の通りになっております。
こちらの物件の総収入は下記の通りになります。
支出は下記のとおりです。
計算式に当てはめて、キャッシュフローを計算してみましょう。
キャッシュフロー=252万円−173万2,000円=78万8,000円
なお、上記支出の中には、実際に支出をしていない「減価償却費:84万円」も入れています。
この支出していない減価償却費をキャッシュにプラスすると「162万8,000円」です。
一方、経費として計上することはできないが、実際に毎月に返済した元金があります。
今回の場合は借入金額2,800万円に対して、毎月返済していく元金は5万7,000円/月で、それを差し引く必要がありますので、
実際に手元に残るキャッシュは「94万4,000円」になります。
今回は不動産投資のキャッシュフローについて書きましたが、参考になりましたでしょうか。
不動産投資は帳簿上で記載していても、必ず支出が費用になるとは限らない場合や、実際に支払ったのに関わらず帳簿上では計上できない支出もあります。
きちんと帳簿上と手元のキャッシュフローを意識し、帳簿よりも手元に残っているキャッシュを把握するようにしましょう。