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不動産投資におけるレバレッジの有効性を徹底解説

2020/01/16
不動産投資におけるレバレッジの有効性を徹底解説

不動産投資に限らず、投資を行う際に「レバレッジを効かせる」という言葉を聞いたことがある人も多いと思います。

この「レバレッジ(leverage)」とは直訳すると「てこの原理」となり、投資用語としては自己資金に他人資本を使って自己資本以上の投資効果を得ること、またはレバレッジによって高まる倍率のことをいいます。

ここでは、不動産投資を行う場合にレバレッジを効かせる方法や、そのメリット・デメリット、レバレッジの妥当な倍率などについて解説していきます。

不動産投資におけるレバレッジとは

不動産投資におけるレバレッジの意味は、銀行などの金融機関から投資用の資金を借りて、自己資金以上の投資を行うことです。自己資金に金融機関から借り入れた資金をプラスすることで、同じ利益率の物件を購入する場合でも、より高額な投資用物件を購入することが可能になります。より多くの利益を手にすることができるようになるのです。

例えば同じ利益率5%の物件であっても、1,000万円の物件では年間50万円の利益しか期待できませんが、5,000万円の物件であれば5倍の250万円の利益を得ることも可能です

しかし、このような高額の物件を購入する際には自己資金だけでは難しいケースが多く、そのため金融機関から不動産投資用ローンの借り入れを行うことが一般的です。

このように、自己資金だけではなく、金融機関から借り入れた不動産投資用ローンなどを利用して、自己資金のみで不動産投資を行う場合より多くの利益を得ることを「レバレッジを効かせる」といいます

「不動産投資における融資全般」に関しては下記カテゴリで解説していますので参照してみてください。

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不動産投資でレバレッジを効かせる方法

自己資金が1,000万円ある場合、そのすべてを投資用物件の購入に使ってしまうのは大変危険なことです。不動産投資には設備の故障による修繕費用の発生など、予定外の出費があることが想定されます。

そのような事態が起こったときに、すぐに対応できるようある程度の自己資金を手元に残しておかなければなりません。そのため、自己資金のうち500万円を投資用物件の購入費用に充て、残りはプールしておくといった対策を取っておく必要があります。

そこで、この500万円を元手に不動産投資を始めることになるわけですが、500万円で利回り5%の物件を購入した場合、年間25万円の利益しか得ることができません。さらに大きな利益を得ようとすると、高額の投資用物件を購入する必要が出てきます

オリックス銀行を例にとると、原則として物件の金額の90%までの金額をアパートローンで借り入れることが可能であるため、単純計算で考えると500万円の自己資金があれば、アパートローンを利用して最大4,500万円の投資用物件の購入が可能です

5,000万円の投資用物件の利回りが、500万円で購入できる物件と同様の5%の利回りの物件であった場合、一年間に得ることができる利益は250万円となります。

このように金融機関の不動産投資用ローンを活用することによって、大きな利益を得ることが可能になります。不動産投資においては、不動産投資用ローンを利用してレバレッジを効かせることが一般的です。

効果的なレバレッジとはどのようなものか?

ここまで不動産投資を行う場合には、レバレッジを効かせることでより大きな利益を得られるという点について解説してきました。しかし、不動産投資用ローンを利用して投資用物件を取得した場合、忘れてはならないリスクがあります。

返済リスク

返済リスクとは、毎月決まった金額を返済していかなければならないというものです。いくらレバレッジを効かせて大きな利益を得ることができても、返済金額が多すぎると手元に残るお金は少額になってしまい、レバレッジを効かせた意味がなくなってしまいます。

そこで考えなければならないのが、返済比率です。返済比率とは家賃収入に占める返済金額の割合のことで、返済金額を家賃収入で割った数値のことをいいます。

一般的には返済比率が50%までは安全な不動産投資の目安とされており、50%を超えた場合には危険であるとされています。そのため、何倍レバレッジを効かせることが一番効果的であるとは一概に言うことはできません。

あくまでその物件の利回りと借入金額、借入期間による月々の返済金額により効果的なレバレッジの倍率は異なります。また、利回りには表面利回りと実質利回りがあり、一般的に不動産購入時に提示されるのは表面利回りです。

表面利回りとは、年間の家賃収入を投資用不動産で割ったものをいい、これは常時満室であることを想定しています。しかし、不動産維持に必要な諸費用が考慮されていないため、やや現実味に欠けることがあります

それに対して実質利回りは固定資産税や管理費、保険料、修繕積立金などの諸費用を考慮して導き出される数値であるため、より現実的な利回りの目安であるといえます

そのため、効果的なレバレッジのシミュレーションを行う場合には、実質利回りを用いるようにしましょう。このような数値をもとにして、効かせるレバレッジが有効なものであるかどうかを判断するためことが可能です。

もし、年間の返済比率が物件の実質利回りを上回ってしまった場合には、どんなに低い金利で不動産投資用ローンの借り入れを行っていても、レバレッジを効かせる意味がなくなってしまうという点に注意しましょう。

金利上昇リスク

レバレッジを効かせる場合に忘れてはならないもう一つのリスクは、金利上昇リスクです。変動金利商品で不動産投資用ローンを組み、レバレッジを効かせた場合、金融市場の動向によっては金利が上昇し、毎月の返済金額も上昇してしまうことがあります

不動産投資用ローンの金利が、収益物件の実質利回りを超えてしまうと、不動産投資自体が金融機関への返済金額によりマイナスになってしまい、家賃収入による利益が期待できなくなってしまいます。不動産投資用ローンを組んでレバレッジを効かせる場合には、この金利上昇リスクがあることも忘れないようにしましょう。

逆レバレッジに注意

ここでは逆レバレッジについて解説していきます。

逆レバレッジとは

レバレッジは投資効率を上げるために行うものです。しかし、不動産投資におけるレバレッジとは銀行から融資を受けることなので、金利変動リスクによる金利の上昇により金融機関への返済金額も上昇することが考えられます

また、投資用物件の利益率の低下により利益が減少する可能性もあるなどの理由により、手元に残る利益が減少し、レバレッジを効かせず自己資金のみで運用していたほうが大きな利益を得ることができるようになることがあります。

つまり、借り入れている不動産投資用ローンの金利が、投資用物件の利益率を上回ってしまうことも考えられるのです

このように、レバレッジを効かせたことが原因で透視用物件から得られる利益が減少してしまうことを「逆レバレッジ」といいます

逆レバレッジにならないための対策と逆レバレッジへの対処法

逆レバレッジになる原因は、金利変動リスクや物件の利益率が低下することであることは前述しました。逆レバレッジにより手元に残るお金が少なくなると、不動産投資用ローンの返済や、その他投資用物件の維持に必要な費用の捻出が困難になることも予想されます

このような逆レバレッジの状態に陥らないためには、まず金利変動リスクを避けるため、不動産投資用ローンを組む際に固定金利制を選択することが対策の一つとして挙げられます

固定金利制は借入期間が長期になるにつれ金利が高額になりますが、その分返済すべき金額が変動しないため、金融市場の動向により変動金利制の金利が大きく変化した場合にも、返済の金額は一定のままです。

固定金利制を選ぶことで金利変動リスクを低く抑えることができ、逆レバレッジに陥る危険性も低くすることが可能です

また、物件の利益率低下による逆レバレッジを防ぐためには、空室リスクと経年劣化による投資用物件の価値の低下に注意することが重要です

空室リスクを下げるために集客力の高い管理会社や不動産会社に新規入居者の募集を依頼したり、物件の劣化を防ぐためにこまめなメンテナンスを行ったりすることで、投資用物件の利益率の低下を防ぐことがある程度可能です。

しかし、万が一逆レバレッジの状態に陥ってしまった場合のために、ある程度の自己資金を準備しておくようにしましょう。

逆レバレッジになったしまった場合に、金融機関への不動産投資用ローンの返済が滞ってしまうと、破産状態になってしまうことも考えられます。そのような事態をさけるためにも、ある程度の自己資金をプールしておくことは非常に重要です

不動産投資におけるレバレッジのメリットとデメリット

ここでは不動産投資におけるレバレッジを効かせることのメリットとデメリットについて解説していきます。

メリット

不動産投資を行う際にレバレッジを効かせることのメリットは以下の通りです。

①自己資金だけでは購入できない高額な物件の取得が可能になる

投資用物件は利回りが同じ5%であっても、1,000万円の物件と1億円の物件では実際に手にできる利益は10倍もの差があります

自己資金が1,000万円しかない場合でも、不動産投資用ローンで9,000万円の借り入れを行い、レバレッジを効かせることで、手にすることができる利益を高額なものにできます。

②自己資金で他の投資を行うことができ、リスクヘッジを行うことができる

不動産投資には空室リスクなどいくつものリスクがあり、そのリスクにより不動産投資自体が失敗してしまう可能性があります。

さまざまなリスクを回避するために、手持ちの資金の全てを不動産投資に回すのではなく、一部の自己資金にレバレッジを効かせて投資用物件を購入することで、自己資金の一部を利用して投資用物件を購入できます。

このようにして手元に残った自己資金を、株などの他の投資方法で運用することによって、不動産投資に失敗してしまった場合に無一文になってしまう可能性を低くすることが可能です

③団体信用生命保険により高い保険効果が期待できる

不動産投資用ローンを借り入れる際には、ほとんど場合団体信用生命保険への加入が義務付けされています。

この団体信用生命保険とは、不動産投資用ローンの契約者に万が一の事態が起こった場合に、ローン契約者に代わって保険会社が不動産投資用ローンの残債を支払ってくれるというものです。

そのため、ローン契約者が死亡してしまった場合にはローンの残債のない投資用物件を残された家族に相続させることができます

この万が一の事態の場合には、ローン契約者が重度の障害を負ってしまう状況も含まれています。ローン契約者が就労困難な状況になった場合には、家賃収入のほとんどをそのまま生活の糧とすることができます。

このように不動産投資用ローンによりレバレッジを効かせることで、ローン契約者に万が一の事態が起こった場合に高い保険効果が期待できるのです

デメリット

不動産投資用ローンを組んでレバレッジを効かせる場合のデメリットは以下の通りです。

①高額な借り入れによる心理的負担

不動産投資用ローンは、住宅ローンとは比較にならないほど高額な借り入れを行うことも珍しくありません。このように多額のローンを組むことは、ローン契約者に心理的な負担を与えることもあります

②金利変動リスクによる返済金額上昇の可能性

不動産投資用ローンを借り入れる際に変動金利制を選択することで、金利上昇リスクを抱えることになります。

金融市場の変化により金利が上昇した場合、月々の返済額が高額になり手元に残るお金が少額になったり、時には家賃収入より返済額のほうが大きくなったりしてしまうことも考えられます

③借入リスク

不動産投資用ローンでレバレッジを効かせ、投資用物件を購入した場合には、毎月不動産投資用ローンの返済を行っていく必要が出てきます。不動産投資には空室などのリスクが付き物であるため、毎月必ず決まった家賃収入が得られるとは限りません。

そのため家賃収入が減少してしまった場合には、手元に残るお金が少なくなったり、場合によっては手出しをする必要が出てきたりする可能性もあります

良い借金・悪い借金

不動産投資用ローンを組むということは、簡単に言ってしまえば金融機関から借金をするということです。この「借金」という言葉に抵抗感を持つ人は決して少なくないでしょう。しかし、借金には「良い借金」と「悪い借金」というものがあります

悪い借金とは、生活費や遊興費に消えてしまい、後に何も残らない借金のことをいいます。逆に良い借金とは、借りたお金で利益を生みだし、全体で見ると資産をプラスにすることができる借金のことです。不動産投資用ローンを用いてレバレッジを効かせることは、この良い借金に含まれます。

まとめ

ここまで、不動産投資におけるレバレッジについて解説してきました。不動産投資におけるレバレッジとは何かということや、そのメリット・デメリットについてお分かりいただけたと思います。

不動産投資用ローンを有効に使ってレバレッジを効かせ、自己資金でできる不動産投資以上の利益を得ましょう。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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