投資不動産を購入するときに利用するローンは「不動産投資ローン」と呼ばれています。同じく不動産を購入する時のローンとして、自宅用の場合は「住宅ローン」と言います。
同じ不動産を購入するのに、なぜローンの種類が違うのはについて疑問を持たれている方も少なくないでしょう。
実は、不動産投資ローンは、同じく不動産取得時に利用するローンである「住宅ローン」とは根本的に異なるローンです。
そこで今回は、不動産投資ローンと住宅ローンの違いを解説し、ローンを組む時の注意点などについても詳しく解説していきます。
まずは、不動産投資ローンと住宅ローンの概要から簡単に解説します。
不動産投資ローンとは、投資用物件を取得するときのローンであり、「アパートローン」という呼び方もします。
一方、住宅ローンとはマイホームを取得するためのローンです。
不動産投資ローンと住宅ローンの違いである、以下4点について詳しく解説していきます。
1つ目の違いは、借入の目的と返済原資です。
結論からいうと、同じ不動産用のローンではありますが、この2つのローンは根本的に目的が異なります。
上述したように、不動産投資ローンは投資用物件を取得することが目的であり、住宅ローンはマイホーム購入が目的となります。
つまり、その不動産に
という点が異なるということです。
投資用の不動産といっても色々種類がありますが、投資物件がアパートでも区分マンションでも、利用するローンは全て不動産投資ローンとなります。
一方、住宅ローンも同じで、一戸建てでもマンションでも住宅ローンを利用します。
取得する目的が異なるので、当然ながら返済原資も以下のように異なります。
住宅ローンは借入者が会社員であれば給与収入、個人事業主であれば事業収入が返済原資になるため、住宅ローンの返済原資は「本業の収入」といえます。
一方、不動産投資ローンは、投資物件の家賃収入が返済原資です。
2つ目の違いは融資金利の違いです。
なお、融資金利は不動産投資ローンか?住宅ローンか?の違いだけではなく、借入者や金融機関によっても異なる点も頭に入れておきましょう。
不動産投資ローンの金利は、住宅ローンの金利と比べて高めに設定されています。
金利はケースバイケースではありますが、低くても1%前後で一般的には2%~3%前後です。というのも、上述したように不動産投資ローンの返済原資は、取得した物件からの家賃収入であり、給与収入や事業収入よりも不安定な収入と判断されるからです。
不動産投資ローンに限った話ではありませんが、ローン(融資)は安定性が低いほど金利は高く設定されます。
そのため家賃収入は、給与収入や事業収入よりも安定性が低いと判断されているので、金利も高くなるというわけです。
一方、住宅ローン金利は、不動産投資ローンを含めたほかの金利と比較しても非常に低く設定されています。
金融機関によって設定金利は異なりますが、変動金利だと0.5%を切る金融機関もあるほどです。
この「金利差が大きい」という点が、不動産投資ローンと住宅ローンの大きな違いになるため、借入時には注意しましょう。
上記の金利差によって返済額がどのように変わるかを見ていきましょう。
仮に、借入金額2,000万円、元利均等返済でローンを組んだ場合、借入金額および金利による毎月返済額の差は以下の通りです。
借入金 | 0.50% | 1.50% | 2% | 2.50% | 3% |
---|---|---|---|---|---|
1,000万 | ¥35,467 | ¥39,853 | ¥42,861 | ¥44,861 | ¥47,421 |
1,500万 | ¥53,200 | ¥59,780 | ¥63,578 | ¥67,292 | ¥71,132 |
2,000万 | ¥70,934 | ¥79,704 | ¥84,770 | ¥89,723 | ¥94,842 |
3,000万 | ¥106,400 | ¥119,559 | ¥127,156 | ¥134,583 | ¥142,263 |
5,000万 | ¥177,334 | ¥199,256 | ¥211,926 | ¥244,306 | ¥237,105 |
3つ目の違いは審査項目の違いです。
上述したように、この2つのローンは目的も返済原資も違うので、審査項目にも違いがあります。
住宅ローンの審査項目は以下の通りです。
まず、借入者の年収や年齢などを確認し、かつ勤務先の規模や勤続年数・契約形態も確認します。要は、金融機関が「借入者は安定して継続的に収入があるか?」をチェックするというわけです。
また、たとえば過去にカードローンなどの延滞歴があると履歴に残りますので、その履歴も「信用情報」として審査項目の1つとなっています。
そして、万が一返済不能になったときは取得した物件を処分するので、取得する物件の担保価値も審査項目になります。
不動産投資ローンは、前項の住宅ローンの審査項目に「物件の収益性」が加わります。
不動産投資ローンの返済原資が家賃収入なので、その家賃収入が継続的に得られるか?を審査するというわけです。
そのため、たとえば大企業の正社員で高年収の人でも、地方の築古物件で空室ばかりの物件であれば、収益性に疑問を持たれローン審査が否決になることもあります。
4つ目の違いは金融機関を見つけるときの違いです。
これは、ローンを組む際の実務に関係してくれるので覚えておきましょう。
住宅ローンを組むときは、基本的に不動産会社が金融機関を斡旋します。
新築物件を購入するなら売主である不動産会社が斡旋し、中古物件を購入するなら仲介する不動産会社が斡旋するというわけです。
もちろん、自分で金融機関を見つけてくることもできますが、「昔から付き合っている金融機関」などがない限りは、不動産会社から斡旋してもらうのが一般的です。
一方、不動産投資ローンの場合は、自分で金融機関を見つけてくる場合もあります。
多くのケースでは住宅ローンと同じく不動産会社が斡旋してくれますが、たとえば属性の高い人は自分で金融機関を引っ張ってくることもあります。
たとえば、経営者の方で「事業の融資もしてくれている付き合いのある金融機関」があれば、その金融機関へ不動産投資ローンも依頼する…というようなイメージです。
ただ、一般的には不動産会社に斡旋してもらうことが多いため、自分で金融機関を見つけるケースが少ないと認識しておいて問題ないでしょう。
「不動産投資の融資(ローン)」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。
ここまでご覧いただいた方は、不動産投資ローンと住宅ローンの違いが分かったと思います。
次に、不動産投資ローンの現状、有利な条件で借りる場合のポイントなどを説明します。
まずは、不動産投資ローンの現状が「審査が厳しい状況である」ことを認識しておきましょう。
野村不動産アーバンネットが不動産投資家に行った意識調査(2019年6月)によると、金融機関の融資状況について「変化を感じる」と回答した人は58.7%で、その中の95.1%が「審査が厳しくなった」と答えています。
つまり、この意識調査に回答した不動産投資家の半数以上が、不動産投資ローンの審査は厳しくなったと感じているということです。
というのも、2018年に起こったシェアハウス事業者倒産により、金融機関の不正融資が明らかになったのが理由です。
これによって、金融庁も金融機関に立ち入り検査をするなど対応に追われ、金融機関は金融庁に指摘されないように審査ハードルを上げたのです。
審査が厳しい状況への対策は、優良な不動産会社を見つけることです。
上述したようにローンは不動産会社に斡旋してもらうケースが多く、不動産会社によって斡旋できる(提携している)金融機関が異なります。
優良な不動産会社だと斡旋できる金融機関も豊富ですし、自分と相性の良い金融機関を斡旋することが可能です。
また、たとえば「勤続年数をあまり重視しない」や「物件の収益性を第一に見る」など、金融機関にも色々な特徴があるので、金融機関によって相性が良いかどうかは違います。
そのため、優良な不動産会社を見つけることは相性の良い金融機関との出会いにつながり、結果的にローン審査に通過しやすくなるというわけです。
ほかにも、「自分の属性が良いときに審査する」という対策もあります。
たとえば、もうすぐ転職を考えているなら、転職する前にローン審査をした方が良いです。金融機関の審査項目には「勤続年数」もあるため、転職することで「勤続0年」になり、そもそも審査の土台に乗らないこともあるからです。
ローンの実行(物件の引渡し後)後であれば転職しても問題ないので、属性が変わるなら属性が良い状態で審査した方が良いでしょう。
「不動産投資会社」に関しては下記カテゴリでも解説していますので参照してみてください。
このように、不動産投資ローンはあくまで投資用物件の取得を目的にしており、住宅ローンはマイホームの取得を目的にしています。
色々な違いがありますが、やはり審査基準や金利面での違いが大きいでしょう。
そして、その金利面は不動産投資ローンの中でも金融機関によって異なるので、相性の良い金融機関を紹介してもらえるように、優良な不動産会社を見つけることが重要です。