不動産投資は、「投資」であるものの「経営」に近いといえます。
なぜなら、物件の収益性や将来価値をきちんと見極め、キャッシュフローなども計算しなければいけないからです。
だからこそ、不動産投資をするときには、何か資格を取得した方が良いのか?と思う人もいます。
そこでこの記事では、不動産投資をするときに資格は必要か?取っておいた方が良い資格はあるのか?という点について解説していきます。
はじめに結論から申し上げますと、不動産投資に資格取得はマストではありません。
つまり、次項より解説する4つの資格を取得していなくても、不動産投資自体は行うことができます。
しかし、今回紹介する不動産投資の資格は実務にも役立つ資格なので、取得可能な方は取っておくのもいいでしょう。しかし、資格を持っているからと言って、不動産投資で成功すると保障されたものではありません。
まずは賃貸不動産経営管理士から解説していきます。
結論からいうと、賃貸不動産経営管理士の資格取得難易度は高くないものの、実務を学べるのでおすすめです。
賃貸不動産経営管理士は、その名の通り賃貸不動産(不動産投資)の経営や管理についての資格であり、賃貸経営に関するあらゆる事項を網羅している資格といえるでしょう。
あくまで「賃貸不動産経営」に特化している資格なので、不動産の売買やリノベーションをして転売…などの投資については学ぶことができません。
また、難易度として「やや易しい」レベルなので、たとえば仕事をしている会社員の方でも資格取得はそれほど難しくないでしょう。
賃貸不動産経営管理士の試験内容は以下の通りです。
なお、ほか3つの資格も試験内容を解説しますが、その理由は試験内容を知っておくことでその資格を取得して「学べること」が分かるからです。
上記については、賃貸経営をはじめて行う人が疑問に思うポイントでしょう。
自分が借主の立場で賃貸借契約を結んだことがある人も多いと思うので、「契約に関する事項は分かっている」と思う人もいるかもしれません。
しかし、オーナー(貸主)の立場だと、注意点や知っておくべきことが借主の立場のときとでは異なるので、この資格を通じて学べるメリットは大きいです。
では、不動産投資で実際には以下のように活用できます。
まず、この資格を取得することで管理業務をイメージすることができ、建物設備などについての知見も深まります。そのため、賃貸経営時に物件の管理・運営を任せる管理会社との話し合いでも、対等に近い立場で話すことができるのです。
言い換えると、管理会社に言われるがままではなく、自分で考えて判断できるということです。
また、この資格を取得することで、賃貸募集に関する流れや賃貸借契約について深く知ることができます。
そのため、借主の募集(仲介業務)を担当する仲介業者とのやりとりもスムーズにいくでしょう。
2つ目に紹介する資格は不動産実務検定です。
不動産実務検定は今回紹介する資格の中でも最も簡単に取得できるため、「時間がないけど不動産投資をする前に勉強して資格を取得したい…」という人に向いています。
不動産実務検定の「実務」とは、不動産投資全般の実務を指します。
つまり、プロの不動産会社の営業マン向け…というよりは、まさに個人が不動産投資を検討しているときのための資格といえるのです。
不動産実務検定はほかの3つの資格とは異なり、試験ではなく講座を受講して取得するタイプの資格です。
コースは2級・1級・マスターコースがありますが、1級と2級は講習時間が10時間、マスターコースは20時間の受講で取得可能なので、難易度は非常に低い資格といえるでしょう。
とはいえ、不動産投資の初心者用の資格なので、不動産運営の基礎を学べる資格です。だからこそ、上述したように「時間がないけど不動産投資をする前に勉強したい」という人に向いています。
資格の試験の内容はコースによって異なるので、3つのコースでそれぞれ紹介していきます。
不動産実務検定2級の講習内容は初心者向けなので、以下のような内容となっています。
上記のように、賃貸経営をはじめて行う方が疑問に思いそうな内容に応える講習となっています。
次に、不動産実務検定1級の講習内容は少し難易度が上がり、以下の通りです。
不動産実務検定1級は、2級を取得していなくても受講できます。不動産実務検定1級か2級のどちらを取得するか悩む場合は、不動産実務検定の試験内容を詳しく確認した上で判断すると良いでしょう。
参考:http://www.j-rec.or.jp/kentei/first.html
最後に、不動産実務検定マスターコースの内容は1級よりもさらに難易度が上がり、講習内容は以下の通りです。
上記のように、不動産実務検定マスターコースは、自身がコンサルタントとして活動できるレベルです。
そのため、一般的な不動産投資に関する知見を得たいのであれば、マスターコースまで受講する必要はなく、2級か1級で十分でしょう。
上述したように、「空室の対策」や「不動産投資の税金」などが学べるので、不動産投資をしたときの実務に活用できます。
たとえば、空室時は空室対策を行うべきですが、何も知らないと仲介会社に任せっきりになるでしょう。
一方、不動産実務検定の講習を受けておけば、自分から広告に関する提案やターゲット選定に関する提案などができるようになるのです。
次に紹介する資格はFPです。FPは不動産投資に特化した資格ではなく、「お金全般」に関する資格です。
また、前項までの資格と比べると難易度も高いので、将来設計をきちんと自分で考える力が欲しい人や、投資や資産運用全般について学びたいという人に向いている資格といえます。
FPの資格は3級と2級(AFP)、そして1級(CFP)があります。
はじめにいっておくと、3級の難易度が「普通」で2級の難易度が「やや難しい」、1級の難易度が「難しい」です。
そのため、不動産投資に関してFPを取得するなら、2級以上を目指すと非常に時間がかかるといえます。
このような事情から、この記事ではFP3級にフォーカスを当て解説していきます。
FP3級の試験内容は以下の通りです。
FPの試験内容は多岐に渡り、上記はほんの一部です。
要は、試験内容は「お金全般について」であり、それを踏まえた上で自分のライフプランが策定できるようになるのが、FPという資格です。
FPは不動産投資に特化した資格ではありませんが、ほかの投資や年金などに精通している資格です。
そのため、FPを取得することで、不動産投資を通じて自分のライフプランを描けるようになるでしょう。
たとえば、不動産投資で年間50万円の手取り収入を得るとします。しかし、将来いくら年金をもらえるか?子供の数を考えるとどのくらいの支出があるか?などは人によって異なります。
これらをきちんと考えれば、もしかしたら不動産投資で年間100万円の収益を目指さないといけないかもしれません。
このように、不動産投資以外のライフプランもきちんと考えることで、将来を見据えた投資ができる点はFP取得の魅力です。
最後に、宅地建物取引士(宅建)について解説します。
前提として、宅地建物取引士はFP2級くらいの難易度があるため、試験勉強に時間がかかります。ただ、宅建はどちらかというと個人の不動産投資家というよりは、不動産会社に勤務する人が取得する資格です。
そのため、費用対効果を考えると時間に余裕のある方以外にはおすすめしない資格となります。
宅地建物取引士の資格を取得すると、不動産売買や賃貸時の重要事項説明ができるなど、実務に置いて専任業務があります。
また、民法や宅地建物取引業など法律関係も学ぶので、「不動産取引」のかなり深い部分まで学ぶことができる資格です。
宅建士の試験内容は以下の通りです。
このように、宅建士は賃貸経営の実務というよりは、契約をするときや建物を建築するときに知っておくべきことが中心です。
宅建士は上記のような資格なので、不動産投資においては主に不動産売買時や物件調査時に活用できます。
なぜなら、売買契約時の重説や売買契約書の確認は「専門分野」なので、すんなりと理解できるからです。
また、たとえば「都市計画道路がないか?」「権利関係に問題はないか?」なども確認できるため、物件に問題がないかも確認できます。
このように、不動産投資に資格はマストではないものの、取っておいても良い資格を4つ紹介しました。
おすすめは、不動産実務検定と賃貸不動産経営管理士のどちらかです。
ただ、投資全般を学びたい人はFP、不動産のエキスパートになりたい人は宅建と、自分のニーズに合わせて検討すると良いでしょう。