不動産投資を行う場合には、銀行をはじめとした金融機関から不動産投資用ローンの融資を受けて、レバレッジを効かせて行うのが一般的です。
しかし、この不動産投資用ローンを利用すると当然の事ながら金利が発生します。この金利は不動産投資を行う上で経費として計上できるため、節税効果が見込めるものなのですが、やはり低いにこしたことはありません。
では、この不動産投資用ローンの金利は、どのようにして決まるのでしょうか?
ここでは不動産投資用の金利の相場や、金融機関が金利をどのように決定しているかを詳しく解説していきます。
不動産投資用ローンの金利の相場は、金融機関により異なります。
一般的に金融機関の規模が大きくなればなるほど、金利が低くなっていく傾向があります。
ここでは、金融機関ごとの金利の相場について詳しく解説していきます。
日本政策金融公庫とは、100%政府出資の政策金融機関であり、一般の金融機関を補完し国民生活の向上を目的としています。
日本政策金融公庫が担う機能の中に、国民一般向けの融資業務(国民生活事業)があり、これを「不動産経事業」を行うために利用することが可能です。
この場合、金利は1%台半ばから2%台半ばまでが金利の相場となります。
ノンバンクとは、銀行以外の金融機関のことをいい、預金の受け入れを行っていない点が大きな特徴です。
ノンバンクと銀行の大きな違いは、適用される法律にあります。銀行が「銀行法」という法律に基づいて経営されているのに対して、ノンバンクは「貸金業法」という法律に基づいて経営されています。
ノンバンクから融資を受ける場合には、銀行から融資を受ける場合よりも金利が高くなる傾向があります。その金利の相場は、3%台から18%台程度と大きく幅があります。
三井住友L&F、セゾンファンデックスなどがノンバンクに当たります。
ネット銀行とは、対面式の店舗を持たず、インターネット上での取引を中心として営業している銀行のことをいいます。
金利の相場は、3%弱から9%台半ばとなっています。
楽天銀行、住信SBIネット銀行などがそれにあたります。
信用金庫とは、会員制度による共同組織として運営される非営利法人のことをいいます。
信用金庫は「信用金庫法」に基づいて運営されているため、この法律により営業地域が限定されていて、特定の地域の活性化や相互扶助を目的としている金融機関です。
信用金庫から不動産投資ローンの融資を受ける際の金利の相場は、2%台から5%台となっています。
不動産投資ローンを行っているのは、横浜信用金庫や城南信用金庫などです。
地方銀行は「全国地方銀行協会」の会員で、各地方や都道府県内を営業基盤としている銀行のことを言い、略して「地銀(ちぎん)」と呼ばれることもあります。
適用される法律は「銀行法」で、他の銀行と同じですが、各都道府県に本店を置きその地方を中心に営業を行っています。
比較的小口の取引を主体としており、その対象は地元の中小企業や個人がメインです。
このような地方銀行で不動産投資用ローンの融資を受ける際の金利の相場は、各地方銀行によりかなり差があるため、一概にこの程度であると言い切ることはできません。
地方銀行から不動産投資用ローンの融資を受けたい場合は、その銀行に直接問い合わせてみることをお勧めします。
例えば、横浜銀行や千葉銀行などで不動産投資ローンを取り扱っています。
「メガバンク」という言葉を聞いたことがある人は多いと思いますが、このメガバンクは明確な定義があるわけではありません。
基本的に、規模が大きい銀行のことを指して言うことが多いようです。
「三大メガバンク」という言葉もあり、この場合は三菱UFJフィナンシャル・グループ、みずほフィナンシャルグループ、三井住友フィナンシャルグループの三つの銀行のことを言います。
また、「大手銀行5グループ」という言葉もあり、この場合は大手三大メガバンクに加えて、りそなホールディングス、三井トラスト・ホールディングスを加えたもののことをこう呼びます。
このような、規模が大きいメガバンクから不動産投資用ローンの融資を受ける場合の金利の相場は、1%台から3%台中盤となります。
「融資・ローン」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。
関連記事:→不動産投資をする人が融資(ローン)について知っておくべき4つのこと
金融機関ごとの不動産投資用ローンの金利の相場は、前章で説明しました。
同じ銀行から不動産投資用ローンの融資を受ける場合でも、金利にかなり幅があることがお分かりいただけたと思います。
ではなぜ、同じような規模や種類の金融機関から不動産投資用ローンを借りた場合でも、金利に差が出てくるのでしょうか。
それは、不動産投資用ローンを借り入れる人の属性や、購入する投資用物件の資産価値(担保価値)によって金利が決定されるという理由があるためです。
ここでは、不動産投資用ローンの金利決定の重要な要素になる個人の属性の内容と、不動産の属性の内容について解説していきます。
ここでは、不動産投資用ローンの金利決定の要素となる個人の属性について解説していきます。
本人の年収が高額であればあるほど、良い条件で不動産投資ローンの融資を受けることができます。
年収が高額であればあるほど、返済能力が高いと判断されるためです。しかし、この年収も安定して高額であることが、良い条件で不動産投資を受けるために重要な要素です。
その年度に限って年収が高かったという場合には、あまり有利に働くことはありません。
不動産投資用ローンのほとんどは、借入時の年齢が20歳以上65歳又は70歳以下、完済時の年齢が75歳または80歳未満と設定されている場合が多いようです。
そのため、不動産投資用ローンの利用開始年齢は、若いほうが審査に有利に働きます。
実際に何歳程度まで不動産投資用ローンの融資を受けることができるのかといった点についてですが、本人のその他の属性や、投資用物件の価値が非常に高い場合を除いては、50歳程度までが限界であると言われています。
勤務先も金利の高低を左右する重要な要素となります。
安定した勤務先であれば、不動産投資用ローン利用者の収入もまた安定するためです。
勤務先の属性は、高い順に上場企業、非上場の大手企業、非上場の中小企業、自営業の順になります。
しかし、自営業であっても医者や弁護士など高収入が期待できる職業であれば、低い金利で不動産投資用ローンの融資を受けることが可能です。また、公務員も勤務先の倒産の恐れがないことから、高い属性であると判断されます。
勤続年数も、本人の属性として重要となってきます。
勤続年数が長いということは、それだけ安定してその企業から収入を得てきたという実績になるためです。
転職回数が多いと、どうしてもそのたびに年収が下がってしまうケースもあるため、最低でも同じ会社に3年以上勤めていることが融資の条件として求められることが多いようです。
不動産投資ローンの融資を受ける際に、住宅ローンなどの他の融資を抱えている場合、融資の審査に影響があるのでしょうか。
住宅ローンなど他のローンの残債が少なく、また返済が滞ったことが無いなどの状況であれば、むしろ金融機関の審査においてプラスに働くこともあります。
しかし、このような他のローンの残債が大きかったり、返済が滞った履歴があったりすれば、審査の過程において大きなマイナスポイントになってしまいます。
他に不動産投資用物件を所有しており、その不動産投資用ローンの残債が少ないか、または完済している場合には、高い属性であると評価されます。
その理由は、実際に不動産投資を行い成功しているといった実績になるともに、新しく融資を受ける不動産投資用ローンの返済が滞った場合にも、他の物件があればそちらを回収することで、金融機関側のローン残債の「取りはぐれ」が無くなるためです。
逆に他の不動産投資用ローンの残債がまだ多く残っている場合には、金融機関側からあまり良い評価を受けることは難しいでしょう。
次に、購入しようとしている投資用物件の属性について解説していきます。
購入予定の物件の資産価値がどの程度であるかといったことが、不動産投資ローンをいくら借り入れることができるかといった重要な要素となります。
この資産価値は、新築に近いほど高いと評価され、新築であれば不動産投資ローンをフルローンで組むことも可能な場合があります。
なぜ、築年数の低いほうが資産価値は高いと評価されるのでしょうか。建物には法定耐用年数というも
のがあり、これは鉄筋コンクリート造の場合47年、木造の場合22年と定められています。
金融機関は、この法定耐用年数を建物の寿命と考えて融資を行うため、この建物の寿命が長いと資産価値も高いと評価されるためです。
投資用物件の資産価値に加えて、その物件の利回りも金融機関の融資の審査を行う場合の重要な要素です。
当然、利回りが高い物件のほうが良い属性とみなされるため、有利な条件で融資を受けることが可能になります。
不動産投資ローンは長期にわたり返済が続くものなので、少しでも低い金利で融資を受けたいと思われる方がほとんどでしょう。
では、不動産投資用ローンの金利を低く抑える方法はあるのでしょうか。
その方法を以下に解説していきます。
日本政策金融公庫の不動産「事業」ローンの金利は、一般的に極端に低いわけではありません。
しかし、ある条件を満たせば、低い金利で融資を受けることが可能になります。
その条件とは、女性である、または35歳未満か55歳以上の方で新たに事業を始める場合、または事業開始後おおむね7年以内の人であるというものです。
この融資の名称は女性、若者/シニア起業家支援資金というもので、金利が一般的な融資より大幅に低くなっています。
この条件に当てはまる人は、ぜひ日本政策金融公庫の利用を検討してみましょう。
参考:https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/02_zyoseikigyouka_m_t.html
銀行が取引実績と認めるものには、当座預金、普通預金、定期預金、定期積立、定期預金、インターネットバンキング、給与振り込みの実績があるかどうかという点です。
また、その金融機関で住宅ローンや他の不動産投資ローンを組み、順調に返済した場合には、大きな実績として認められます。
このような取引実績がある金融機関で不動産投資ローンの融資を受けることで、その金利を低く抑えることができる可能性が高くなります。
不動産投資ローンの融資を受ける場合には、固定金利制と変動金利制を選択することが可能な場合があります。
このような場合には、変動金利制を選ぶことで、金利を低く抑えることが可能になります。しかし、変動金利制を選択することで、金利変動リスクを抱えることになることを頭に入れておきましょう。
参考:
→https://www.orixbank.co.jp/personal/property/account.html
→https://www.mizuhobank.co.jp/retail/products/loan/apart_yushi/index.html
販売元の不動産会社と提携している金融機関を利用することで、金利を低く抑えることができる可能性が高くなります。
このような提携先の金融機関では、優遇金利で不動産投資ローンの融資を受けることが可能だからです。
販売元の不動会社が提携している金融機関がある場合には、その金融機関の利用を検討してみましょう。
現在取引を行っている銀行があれば、金利引き下げの交渉を行ってみることで、低い金利で不動産投資ローンの融資を受けることが可能な場合があります。
取引がある銀行から不動産投資ローンの借り入れを検討している場合には、ぜひ金利の引き下げ交渉を行ってみることをお勧めします。
下記記事では金融機関一覧を年収別に記載しております。ぜひ参照してみてください。
関連記事:→【年収別】不動産投資ローンを組める金融機関一覧
金融機関によって、金利の相場に幅があることは前述しました。
この幅は非常に大きなものですが、なぜこのように金利に違いが出てくるのでしょうか。
ここでは、金融機関ごとに金利が異なる理由について解説していきます。
金融機関ごとに金利が異なる一番の理由は、審査の基準が異なるという点です。
審査の基準が緩い金融機関では金利が高くなり、逆に審査が厳しい金融機関では金利は低くなります。
審査が厳しいということは、それだけ本人の返済能力が高い人にしか融資を行わないということであり、金融機関側のリスクも低くなることから、低い金利での融資が可能になります。
公的な金融機関と言えば日本政策金融公庫ですが、この日本政策金融公庫は利益を上げることを目的としておらず、民間の金融機関の取り組みを補完し事業に取り組む人を支援することを目的としています。
従って、比較的低い金利で「不動産事業」ローンの融資を受けることが可能です。
それ以外の民間の金融機関は、金利の差はありますが利益を得ることを目的とした金融機関であるため、公的な金融機関である日本政策金融公庫より高い金利での融資しか受けることができない金融機関も多くあります。
ここまで、不動産投資ローンの金利について解説してきました。
不動産投資ローンの金利はどのようにして決まるか、金利を低く抑えるためにはどうすれば良いかといった事柄についてご理解いただけたと思います。
不動産投資を行うにあたって金利はランニングコストの一つであり、低く抑えておくほうが実質利回りも高くなり、キャッシュフローもまた高くなります。
不動産投資ローンの融資を受ける際には、金利を低く抑える方法を理解し、少しでも有利な条件で融資を受けるようにしましょう。