不動産投資を検討している人の多くは、物件の適正価格はいくらなのか?と疑問に思われている方も多いでしょう。
不動産価格は物件によって大きく異なるので、適正価格が分かりにくいのは事実です。
そこでこの記事では、投資用物件の適正価格を見極めるときに知っておくべきことを解説します。適正価格の具体的な見極め方はもちろん、そもそも自分にとっての適正価格はいくらなのか?についても解説していきます。
まずは、収益還元法で不動産投資の適正価格を算出する方法を解説します。
収益還元法とは、投資物件の収益性に着目して不動産価格(評価)を算出するという方法です。
収益還元法にも直接還元法とDCF法の2種類あります。
では、それぞれについて見てみましょう。
まずは直接還元法について説明します。
直接還元法とは「1年間の純収益÷還元利回り」という単純な計算式で求める方法です。
例えば、年間の家賃収入が290万円で経費が55万円かかる物件があり、その物件に対し7.5%の利回りを求めるとします。
その場合、直接還元法だと以下の計算式で適正価格を計算することになります。
(家賃収入290万円-経費55万円)÷7.5%=3,133万円
つまり、3,133万円以下で購入することができれば、求めている7.5%以上の利回りになるということです。
続きましてDCF法について説明します。
DCF法は「毎年得られる純収益+将来の売却価格」という考え方です。
つまり、DCF法は将来に渡って期待通りの利益をもたらすか?を算出する指標になります。
DCF法を計算式で表すと以下の通りです。
DCF法=年間収益÷(1+割引率(※1))+年間収益÷(1+割引率)の2乗+…+年間収益÷(1+割引率)のn乗+物件保有終了時の不動産売却価格÷(1+割引率)のn(※2)乗
※1.割引率とは、将来受け取る収入を現在価値に換算するための指標です
※2.n乗とは?: n乗とは物件保有年数のことであり、仮に保有年数が5年であれば5乗となります。
割引する理由は、「将来受け取るお金」は現在手元にあるお金よりも不確実だからです。
また、今手元にあればほかの投資でお金を増やすことができるので、基本的には将来受け取ることができるお金は、現在のお金よりも価値が低いものとされています。
割引率は、国土交通省により「固有の条件(不動産でいうと「立地条件」など)から求める」とされているので、物件によって割引率は変動します。
ただ、不動産投資のDCF法の割引率は一般的に3~5%です。
参考:http://www.mlit.go.jp/tec/hyouka/public/090601/shishin/shishin090601.pdf
では、仮に年間収入300万円、年間経費60万円、保有期間5年、割引率3%(0.03)、売却想定価格が2,800万円の物件を、DCF法を利用して適正価格を算出してみましょう。
DCF法で計算する順番は以下の通りです。
まず、過去5年分の純収益は以下の通りです(千円未満は切り捨て)。
上記1年目~5年目を合計すると純収益は1,099万円です。
つまり、今後5年で得ることができる収益を、現在価値に算出すると1,099万円ということです。
次に、5年後の売却価格2,800万円を現在価値に換算すると以下の計算です。
現在価値:2,800万円÷(1+0.03)5乗=2415.3万円
この金額に前項の1,099万円を足すと3514.3万円になり、この金額がDCF法を利用して算出した適正価格になります。
「不動産投資物件の価格計算方法」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。
関連記事:不動産投資での価格計算方法。積算価格と収益価格とは?
次に、ポータルサイトで周辺物件を調べる方法について以下を解説します。
ポータルサイトとは、SUUMOやHOME’Sなどの「収益物件を検索できるサイト」のことです。
不動産投資の適正価格は「相場」とも置き替えられますが、その相場は実際に売られている物件によってつくられます。
つまり、現在「売却中」の物件をポータルサイトで調べることによって、そのエリアの相場が分かり適正価格を見極めやすいということです。
ただし、厳密にいうと適正価格(相場)は成約価格によってつくられ、ポータルサイトで調べられるのは成約価格ではなく売り出し価格です。
とはいえ、売り出し価格を調べることでざっくりとした相場感を養えます。ポータルサイトで周辺物件の売り出し価格を調べ、参考価格として認識しておきましょう。
前項の通り、適正価格(相場)は成約価格によってつくられるので、ポータルサイトで売り出し価格を調べつつ、成約価格も合わせて調べた方が良いです。
成約価格は以下のサイトで調べることができます。
REINS Market Informationとは、不動産会社しか閲覧できない「REINS(レインズ)」の情報の一部を公開しているサイトです。
REINS Market Informationについては以下を知っておきましょう。
<①検索する方法>
REINS Market Informationを利用して不動産投資の適正価格を検索する方法は以下の通りです。
上記のように、検索したい物件と近い物件を検索し、その物件の成約価格を調べるという流れになります。
<②検索時の注意点>
ただし、REINS Market Informationでは、個人情報保護の観点から住所の詳細は分かりません。
たとえば、「足立区千住」などのように、丁目や番地までの検索はできないということです。
しかし、不動産は道を1本挟むだけで適正価格は異なるので、エリアを絞り込めないとなると正確な適正価格を調べることが難しいです。
そのため、上述した「ポータルサイトで調べた売り出し価格」と同様、あくまで参考価格として認識しておきましょう。
次に、土地総合情報システムについても、REINS Market Informationと同じく以下を知っておきましょう。
<①検索する方法>
土地総合情報システムで物件を検索する方法は以下の通りです。
大まかな流れはREINS Market Informationと同じです。
ただ、REINS Market Informationは物件が箇条書きで出てくるのに対し、土地総合情報システムは地図上でクリックできるので分かりやすいです。
<②検索時の注意点>
土地総合情報システムもREINS Market Informationと同じように、住所は丁目以降が出てきません。
また、REINS Market InformationはREINSのデータを基にしているのに対して、土地総合情報システムは国土交通省が実施したアンケートがベースです。
そのため、土地総合情報システムはREINS Market Informationよりも情報量が少ないので、REINS Market Informationの情報を補足する役目と思っておきましょう。
ここまでで、不動産投資の適正価格の算出方法、ポータルサイト・REINS Market Information・土地総合情報システムなどを使い価格を調べる方法を紹介しました。
最後に、少々違う角度ですが「自分自身の収支を見直すことで適正価格を見極める」という点について、以下を解説します。
まずは、人によって適正価格は違うという点を理解しましょう。
上述した方法で算出した適正価格は、あくまで「○○区の××駅最寄のマンション(土地)」の適正価格に過ぎません。
つまり、そのエリアで不動産投資をするなら○○万円が適性価格であるというだけで、自分にとっての適正価格とは違います。順番としては自分の年収と支出、そして自己資金を加味した上でいくらの物件を購入すべきか?という自分なりの予算をまず考えましょう。
その上で、その予算内に収まる物件を探し、その物件が適正価格かどうか?を調べるという流れが適切といえるでしょう。
また、「収入」を把握するのも重要ですが、自分の年収や月収は基本的に把握している人がほとんどです。次に、支出をきちんと確認するという点について以下を解説します。
しかし、支出に関しては把握していない方も多く、さらに将来的な支出が想定よりも多い…というパターンもあり得るため、支出をきちんと確認する必要があります。
不動産投資は以下の状況のときに、手持ち資金から費用を捻出する可能性があります。
要は、予想外の支出が発生したときに、手持ち資金から費用を捻出する必要があるのです。
また、空室で家賃収入が途切れたとしても、ローン返済などの支出は発生しているので、その場合も手持ち資金から費用を捻出することになります。
前項のような状況になり得るので、プライベートの支出は把握しておく必要があります。
予期せぬ支出によって手持ち資金から捻出しても、プライベートの支出をきちんと計算しておけば「支払うことができない」状況を避けられるからです。
言い換えると、「身の丈に合った借入(予算)ができる」ともいえます。そして、支出は家族数や住んでいる場所、生活スタイルなどによって大きく異なるため、きちんと自分の支出を把握しておかなければいけません。
支出を把握するには、普段の支出を家計簿アプリなどに登録したり、FPに将来的な支出を含めて計算してもらったりという方法があります。
このように、不動産投資の適正価格を調べる方法は色々あります。
重要なのは偏った情報で判断するのではなく、色々な情報を集めて総合的に判断することです。
投資物件を購入するときは、不動産投資会社からも色々な情報を得られますので、情報を総合判断し、自分に合った物件の適正価格を判断する基準を見極めることが重要と言えるでしょう。