「購入した物件を他人に貸したいけど、契約方法が分からない」
「賃貸借契約書を作るときの注意点や特約について知っておきたい」
不動産投資で賃貸収入を得るためには、オーナーと入居者が賃貸借契約を結ぶ必要があります。賃貸借契約書は契約内容を記載した書類であり、契約者が自由に内容を決められるもの。
賃貸借契約によりオーナーが不利にならないためには、契約前に契約書の中身を知っておくことが重要です。この記事では賃貸借契約書の内容や注意点、特約について解説します。
他人に自分の所有物を使用させることを許可して、その対価として借主からお金を受け取れる契約が賃貸借です。
一般的に物件のオーナーは入居者と賃貸借契約を締結して、毎月定められた家賃を貰います。
そしてオーナーが入居希望者に物件を貸すときに用いられる書類が賃貸借契約書です。たとえ入居者の募集や物件管理を外部に委託していても、オーナーが賃貸借契約を締結する必要があります。
オーナーは賃貸借契約に関わる当事者であり、不利にならないためには契約書の内容を知っておくことが重要。イメージを掴むために賃貸借契約の流れと契約書の項目を見てみましょう。
賃貸を探している人はチラシやインターネットなどで物件を調べて、条件にあった物件を選ぶもの。
社会的属性や支払い能力を見るために、入居希望者が現れたら入居審査を始めます。
オーナーまたは不動産業者が書類により審査して、問題がなければ契約段階に進めます。貸主と入居希望者が契約内容や物件情報を確認したうえで、異議がなければ契約を締結します。
そして指定された日にちに貸主は鍵を引渡して、借主は入居日から物件を利用できます。
入居審査によってリスクがある希望者を避けられるため、問題なく家賃収入が得られるか心配する必要はありません。
貸主と借主が賃貸借契約を締結するとき、賃貸借契約書を交えて契約することが必要です。
国土交通省により賃貸借契約書の雛形である「賃貸住宅標準契約書」が公開されています。
賃貸住宅標準契約書に記載されている項目は次の6つです。
それぞれの項目について詳しく見てみましょう。
不動産オーナーが入居希望者に提供する賃貸物件について、詳しく記載する項目が賃貸借における目的物です。
具体的には次のような情報を項目内に記入する必要があります。
契約書に記載された内容と実際の物件に差異がある場合、賠償責任などのトラブルになります。しっかりと物件を確認したうえで、契約書の賃貸借における目的物を記入しましょう。
不動産オーナーが入居希望者に賃貸物件を貸し出す期間を記入する項目です。
始期と終期を1日単位で決めることができ、始期から終期までの契約期間を定めることができます。
ただ、契約期間が終了しても入居者が住み続ける場合、契約を更新し続ける必要があるため注意しましょう。貸主が契約更新を拒否するには正当事由が必要であり、特殊な事情がなければ更新を拒否するのは難しいです。
もし短期間だけ物件を貸したいときは、定期借家契約を結ぶことで契約の更新を防げます。定期借家契約を結ぶには公正証書などの書面で契約して、更新がないことを入居者に書面で説明することが必要です。
賃貸借契約書には家賃を定める項目もあり、契約内容に従って借主は毎月家賃を支払います。
賃料等で定める内容は次の通りです。
契約で定めた賃料等は条件を満たして、貸主と借主が協議したうえで賃料・共益費を変更できます。「賃料」や「共益費」の条文を確認して、賃料を改定できるよう設定しましょう。
賃貸借契約書には貸主と借主の名前や住所、電話番号を記載する項目も含まれています。
不適切な賃貸契約を避けるために、正しい個人情報を契約書に記入しましょう。
また、管理業者や建物の所有者がいる場合、その人たちの個人情報を契約書に記入することも必要です。
賃貸借契約書の条文には「禁止又は制限される行為」という項目があります。
オーナーから許可されずに入居者が禁止・制限行為をした場合、貸主は契約を一方的に解除することが可能です。
禁止行為には次のような項目例があります。
賃貸物件を適切に利用してもらう為に、オーナーは禁止行為・制限行為を細かく定めましょう。
賃貸借契約書には目的物や利用方法以外にも、原状回復の条件や特約を設定できます。
借地借家法の規定から外れた部分であれば、貸主と借主が自由に契約内容を設定することが可能です。
「契約全般や手続きの流れ」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。
「契約を結んだ後にトラブルにならないか不安」と思う不動産オーナーは多くいるでしょう。
物件を貸し出すことにはリスクもあり、問題が発生したときにオーナーが対処できることが重要です。
これから賃貸物件を提供する人が注意すべきポイントは次の3つです。
それぞれのポイントについて解説します。
「貸した物件を家族に使わせたい」「入居者が気に食わない」という理由があっても、オーナーが勝手に契約解除するのは不可能です。
賃貸借契約書に定められた期間は借主に物件を利用させる必要があり、正当事由がなければ貸主が契約を終了させられません。
また、貸主が賃貸契約を解除するには、契約期間が終了する6ヶ月前までに更新拒絶の通知を出すことが必要です。たとえ物件の所有者であっても、賃貸契約を解除するには時間がかかります。
借地借家法では契約解除の正当事由が定められていて、事由があると判断されればオーナーが契約を解除できます。
一般的に入居者が物件を目的外利用しているときに、正当事由は認められやすいです。
例えば、住居のみを目的として利用できる物件の場合、入居者が事業所として利用すると目的外利用に当たります。この場合は賃貸借契約書に違反するため、貸主が賃貸契約を解除することが可能です。
賃貸契約でトラブルになることを防ぎたい場合、賃貸借契約書に特約を設定することがオススメです。
貸主が複数の特約を設定しておくことで、物件の利用方法を細かく指定できます。
ただし、借主に不利な特約は借地借家法によって無効となるため注意しましょう。あくまでも貸主が不利にならないよう、賃貸借契約書に特約を設定することが重要です。
「どのような特約を設定すれば良いのか分からない」と思う人はいるはず。
一般的な賃貸借契約書は貸主に不利なパターンが多く、特約がないと予想外の費用が発生する場合があります。
設備やお金に関する特約であれば借主に不利にならず、貸主はリスクを抑えることが可能です。
これから賃貸借契約書を作成する人が知っておくべき特約の例は次の4つです。
それぞれの項目について解説します。
最近では電力・ガス会社を入居者が選び、光熱費を節約しようとする場合があります。
料金の安い会社は3年契約などの縛りがある場合が多く、違約金などのリスクがあります。
電力・ガス自由化によるリスクを減らすためには、次のような特約を記載することがオススメです。
「借主が電力(ガス)会社を変更するとき、貸主に書面で説明して、貸主の許可があるときのみ変更できる」
所有している物件にエアコンなどの古い設備があるときは、修繕義務を回避することが重要です。
もし設備が故障してしまうと、特約がなければ貸主に対して修繕費用が求められます。
古い設備の修繕義務を回避できる特約の例は次の通りです。
「物件に設置された○○(設備名)は本物件の設備でないことを貸主、借主は確認し本○○について借主は無料で利用できるが、貸主は交換修繕の義務を追わない」
一部の地域ではCATVがなければテレビが見られず、番組を見るために高い通信費が発生する場合があります。
オーナーがCATVの費用を免れるためには、次のような特約を設定することが必要です。
「CATVについて貸主には設置・費用負担義務はないものとする。ただし、借主は費用の自己負担によりCATVを設置することが可能であり、設置したときのCATVの権利は借主が所有する」
ソファや寝具など借主の所有物を貸主に買い取ってもらう権利として、造作買取請求権があります。入居者が造作買取請求権を行使した場合、オーナーには追加の負担が発生するもの。
無駄なコストを増やさないためには、賃貸借契約書に次のような特約を記載して、造作買取請求権を無効にすることが重要です。
「借主は持ち込んだ造作物などについて、貸主に買取を請求できない」
不動産のオーナーは入居者と賃貸借契約を結ぶことで、家賃収入を得ることができます。
ただし、一般的な賃貸借契約書は貸主に不利な内容となっているため、契約する前に内容を修正することが重要です。
契約内容を修正したり特約を増やしたりすることで、貸主が契約上不利になることを防げます。細かく賃貸借契約書の内容を確認してから、入居希望者との契約に進みましょう。