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民泊で不動産投資を行う方法とは?メリット・デメリットを解説

2022/03/22
民泊で不動産投資を行う方法とは?メリット・デメリットを解説

近年、よく耳にするようになった民泊。この民泊とは、簡単に言うと一般の民家やマンションに旅行者を泊めて、対価を得るという新しいシステムの宿泊施設のことを言います。

この民泊が、現在の不動産投資業界で注目されていることはご存知でしょうか。

購入した物件を民泊として活用することで、賃貸として活用した場合よりも大きな利回りを得ることも不可能ではありません。

ここでは、民泊での不動産投資の始め方や注意点について解説していきます。

民泊とは

そもそも、民泊とはどのようなもののことを言うのでしょうか。ここでは、民泊について解説していきます。

定義

民泊とは、もともと単に旅行者などを民家に泊めることを指していました。

しかし、近年では一般の住宅やマンションなどを宿泊施設とし、旅行者を宿泊させ対価を得ることを民泊と呼ぶようになりました

この一般的な住宅やマンションは、賃貸物件として民泊の経営者が借りているものや、不動産投資の対象として購入したものが活用されます。

法律

従来の旅館業法とは、「旅館業を経営するものは、都道府県知事(保健所設置市又は特別区にあっては、市長または区長)の許可を受ける必要がある。旅館業の許可は旅館業法施行令で定める構造基準に従っていなければならない。旅館業の運営は、都道府県の条例で定める換気、採光、照明、防湿、清潔等の衛生基準に従っていなければならない」と定められています。

それ以外にも「環境衛生監視員」による立ち入り検査の必要や、宿泊させる義務等細かな定めがあります。

しかし、民泊はこのような基準を満たしていない施設も多く、いわゆる「違法民泊」が増加していました

民泊が増加してきている現在では、この旅館業法が現在の民泊の現状に追いついていないことから、平成29年6月に民泊新法(住宅宿泊事業法)が成立しました。

この民泊新法が成立したことにより、一定の条件を満たす住宅やマンションなどで、届出手続きを行うだけで民泊営業を行うことが可能になりました。

民泊新法で民泊として営業するために必要な条件とは、施設は「住宅」であること、施設内にキッチン、バスルーム、トイレ及び洗面設備があること、届出を行う際に所定の書類や分譲マンションの場合には管理規約等が添付されていることなどとなっています。

なぜ今不動産投資において民泊が注目されているのか

現在の日本では、少子高齢化の影響による住宅余りが懸念されています。

そのため、賃貸住宅のニーズはよほど立地が良かったり、築浅であったりなどの良い条件でない限りは入居者が集まりにくくなることも考えられます。

しかし、日本への外国人旅行者は増加傾向にあり民泊のニーズは高まると考えられています

そのため、不動産投資の方法として民泊が注目され始めています。

民泊で不動産投資を行う場合に必要となるランニングコスト

届出を出して、民泊の経営を始めることになった場合、そのランニングコストにはどのようなものがあるのでしょうか。

以下に解説していきます。

不動産投資ローン返済費用(借入利息を含む)

民泊に利用するマンションや一戸建てなどを購入する場合には、不動産投資ローンの融資を受けるのが一般的です。

そのため、不動産投資ローンの毎月の返済が必要となります。

固定資産税

民泊経営用に不動産を購入した場合は、固定資産税が必要になります。

この固定資産税は、年に四回の納付日があり、その日までに納付することが一般的ですが、自治体によっては一括払いが可能な場合もあります。

このような場合は、分割払いでも一括払いでも固定資産税の納付の総額に違いが出ることはありません

保険料

不動産投資用の物件を貸し出して収益を得る不動産投資を行う場合と同様に、民泊を経営する場合にも火災保険や地震保険に加入しておく必要があります。

近年では民泊の増加に伴い民泊の経営者向けに、「民泊保険」という保険サービスも提供されています。

民泊保険とは、民泊運用において発生する可能性が高い火災や事故、物件の破損をカバーしてくれる保険サービスのことです。

このような保険サービスに加入する場合には、その保険料が必要となります。

インターネット(Wi-Fi)

民泊の運営を行う場合、その施設にインターネットの設備を設置していることが多いようです。

インターネットはもはや重要な生活インフラの一つであり、旅行者が情報や娯楽を得るために必要不可欠なものとなっています。

そのため、毎月のインターネット回線使用料が必要となります。

光熱費(電気・ガス・水道料など)

民泊が賃貸を行う不動産投資と異なる点は、宿泊者が利用する水道光熱費も民泊経営者が負担する必要があるという点です。

この費用も毎月必要となります。

集客サイトに対するコミッション

自分が経営する民泊に宿泊客を集めようと思った場合、口コミだけではなかなかうまくいきません。

そこでAirbnb(エアビーアンドビー)やHomeAway(ホームアウェイ)などの民泊集客サイトに登録することで、多くの宿泊客を集めることができます。

このような集客サイトは、宿泊予約が入った時点で手数料を支払う必要が出てきます。そのためこれらの集客サイトへの手数料も、民泊経営におけるランニングコストとなります。

清掃業者への委託料

宿泊客が退去した後には、室内の清掃が必要になります。この退去後の清掃は民泊を経営する場合、業者に委託するのが一般的です。

この清掃委託料も、民泊を経営する場合のランニングコストとなります。

カードやその他キャッシュレス決済の手数料

民泊は、集客サイトにより宿泊客を募るのが一般的。

そのため、支払いもサイト経由のオンライン決済が一般的です。

また、日本国内でもキャッシュレス決済が一般的になってきている現在においては、クレジットカードや各種キャッシュレス決済によるシステムを導入しておく必要があります

このような決済方法の利用する場合、クレジットカード会社やキャッシュレス決済の業者に数%から十数%の手数料を支払う必要があります。

消耗品費

民泊を経営する場合、室内のトイレットペーパーなどの紙類やシャンプーなどのアメニティなどの消耗品を設置する必要があります。

民泊を経営する場合には、これらの消耗品費が必要になることも頭に入れておきましょう。

民泊で不動産投資を行った場合の利回りはどれぐらい?

不動産を購入し、賃貸に出して不動産投資を行う場合の利回りは、一般的に4%から6%と言われています。

この利回りは建物の築年数や立地、不動産市場の景況感によって異なってきます。

一方、不動産を購入して民泊を経営する不動産投資を行った場合、その利回りは民泊特区であれば、賃貸物件として貸し出した場合の2倍から3倍に上ります

特に築古の物件の場合、賃貸物件として貸し出してもあまり高額の家賃を設定することはできません。

しかし、民泊として運営する場合には立地さえよければ高い宿泊費を設定することができるため、高い利回りが期待できます

民泊で不動産投資を行う際のメリットとデメリット

購入した不動産で民泊を運営し、不動産投資を行う場合には賃貸物件として貸し出す場合とは異なるメリットとデメリットがあります。

ここでは、民泊を経営する場合のメリットとデメリットについて解説していきます。

メリット

ここでは、民泊を経営する場合のメリットを解説していきます。

①高い利回りが期待できる

民泊特区に建っていない民泊では、年間180日以上の営業を行うことはできません。

しかし、民泊特区にある「特区民泊」の場合には、一年中営業を行うことができます

この特区民泊であれば、賃貸物件として貸し出すよりも2倍から3倍の利回りを得ることも不可能ではありません。

「不動産投資における利回りの考え方」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。

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②将来性がある

今後日本ではインバウンド(外国人旅行者)の増加が見込まれており、民泊にもさらなる需要が出てくるとされています。

そのため、人口減少に伴う住宅余りが懸念される現代の日本においては、賃貸による不動産投資よりも民泊による不動産投資のほうが将来性もあると考えられています。

③築古の物件でも高い利回りが期待できる

築古の物件の場合には、賃貸に出したとしても低い家賃しか設定することができません。

しかし、民泊で一番重要視される点は立地であるため、多少築古の物件であっても良い立地であれば高い利回りを得ることも不可能ではありません

④原状回復費が少なくて済む

賃貸により不動産投資を行った場合、入居者の退去時に大掛かりな原状回復を行う必要があります。

しかし、民泊の場合は宿泊客の滞在が短期間であるため建物が劣化しにくく、原状回復に多額の費用が掛かる心配がありません

⑤リノベーションなどを自分の好きなタイミングで行うことができる

賃貸により不動産投資を行う場合、リフォームやリノベーションを行うには入居者の退去を待って行う必要があります。

しかし、民泊の場合には宿泊客の滞在が短期間であることから、民泊の経営者がリフォームやリノベーションを行いたいと思ったタイミングで行うことが可能です。

また、リフォームやリノベーションを行っている最中は宿泊客を募らないでいることができるため、十分な時間をかけることもできます。

デメリット

不動産投資で民泊を行う場合、デメリットもあります。

ここではそのデメリットについて解説していきます。

①場所により採算が取りやすい場所とそうではない場所がある

不動産投資の方法として民泊を選択する場合、利益を上げることができるかどうかはその物件が建っている場所が大きく影響します。

まず、その物件が民泊特区に建っているかどうかが大きな問題となります。民泊特区に建っていない物件では、年間180日しか民泊として営業する事はできません。

年間のうち半分の期間しか営業できないのであれば、大きな利益を得ることは難しいでしょう。

しかし、その物件が民泊特区にある場合には、一年間を通して民泊として営業することが可能です。

このように、不動産投資の方法として民泊を選択する場合には、民泊特区にある物件を選択する必要があります。

②法律が求める要件を満たす必要がある

民泊として不動産投資を行うことができる物件には、いくつかの条件を持たす必要があります。

まず、民泊として利用することができるのは、「キッチンバスルームトイレ洗面設備を備えた住宅」に限られています。

それ以外に、民泊の規模によっては一般の住宅には備えられていない自動火災報知機や誘導灯などの消防設備の設置が必要な場合があります

このような一般的に賃貸物件には求められない条件を、民泊を経営する場合には満たす必要があります。

③各方面への届け出が必要

民泊は宿泊所として旅行者を宿泊させ、利益を上げることを目的としているため、自治体の窓口への届出や消防署での確認などが必要になります。

そのため、賃貸で不動産投資を行う場合より煩雑な手続きが必要になります。

④経費が割高になる

一般的な賃貸住宅で不動産投資を行う場合と異なり、民泊で不動産投資を行う場合には、光熱費、インターネット回線使用料、消耗品費などが必要になります。

そのため、ランニングコストが高額になります。

⑤インバウンドに対応するため各言語での案内書などを準備する必要がある

民泊は宿泊施設であるため、室内の案内書を設置する必要があります。

その場合、外国人旅行者の利用も想定しておく必要があり、英語をはじめとした各言語での案内書を準備しておく必要があります。

その案内書が間違った訳の物であれば、トラブルの原因となることもあるため正確な案内書を準備しなければなりません。

⑥近隣住民とのトラブルになりやすい傾向がある

民泊は宿泊者が深夜までパーティーを行ったり、生活習慣の違いから共用部分にごみを捨てたりと、近隣住民とトラブルを起こす可能性があります。

また、入れ代わり立ち代わりに見知らぬ人物がマンションなどの集合住宅に出入りすることなるため、そのマンションの住民たちがセキュリティー上の不安を抱くことも考えられます。

そのような事態を防ぐためにも、民泊を始める前に近隣住民に十分な説明を行い、民泊として利用する部屋の管理もしっかりと行うようにしましょう。

住宅宿泊管理会社に委託することもできる

民泊を経営するためには、非常に大きな手間がかかります。しかし、このような煩雑な業務のほとんどを委託できる業者があります

そのような業者を、住宅宿泊管理業者と言います。この住宅宿泊管理業者は民泊の運営に関わる業務を委託することは可能ですが、委託料は比較的割高になっています。

まとめ

ここまで、不動産投資の方法としての民泊経営について解説してきました。

民泊は不動産投資を賃貸で行う場合に比べて大きな利回りが得られる代わりに、煩雑な業務が必要となることがお分かりいただけたと思います。

民泊には賃貸と比べて将来性が高いと考えられていることから、今後不動産投資の方法としてメジャーになると考えられます。

これから不動産投資を行う人は、民泊という方法も視野に入れておくことをお勧めします。

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八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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