不動産投資を行う場合に収益物件を購入する場合、すべてを自己資金で賄うケースはまれで、ほとんどの場合は不動産投資用ローンの融資を受けてレバレッジを効かせることが一般的です。
その不動産投資用ローンは多くの金融機関では、変動金利を採用しています。しかし、変動金利で不動産投資用ローンの融資を受けると、「金利変動リスク」が発生します。
この金利変動リスクとはどのようなもので、どのような方法で回避できるのでしょうか。ここでは、金利変動リスクについて詳しく解説していきます。
金利変動リスクとは、不動産投資用ローンの融資を変動金利で受けた場合に発生するリスクのことを言います。
変動金利で不動産投資用ローンの融資を受けた場合、その金利は市場の動向などに連携する形で上下します。
この市場の動向が金利を大幅に上げる方向に動いた際に、不動産投資用ローンの毎月の返済額が上昇する可能性があり、これを金利上昇リスクといいます。
この金利変動リスクにより毎月の不動産投資用ローンの返済額が上昇すると、キャッシュフローが少なくなったり、家賃収入よりも返済額のほうが大きくなったりすることが考えられます。
そのため、不動産投資自体が破綻してしまう危険性があります。これを「金利変動リスク」と呼びます。
変動金利には長期プライムレートと短期プライムレートの2種類があり、金融機関によっては金利がどちらのプライムレートに連動するものかを選ぶことができるケースがあります。
この長期プライムレートと短期プライムレートは、それぞれ影響を受ける要素が異なります。ここでは、その2種類の要素について解説していきます。
長期プライムレート連動型の変動金利は、金融機関が一年以上の長期にわたり融資を行う際の基準金利のことをいい、債券市場の影響により変動します。
しかし、近年では新長期プライムレートというもののほうがよく使われている傾向です。
この新長期プライムレートとは、銀行が長期で融資を行う場合の金利のことをいい、長期国債など債券市場の影響ではなく、後述する新短期プライムレートに連動する長期変動基準金利のことを言います。
短期プライムレートとは、高い信用がある優良企業に対して金融機関が期間一年以下の短期間の融資を行う場合の基準となる金利のことを言います。
この短期プライムレートは、以前は公定歩合と連動していましたが、現在では市場金利に連動させる新短期プライムレートとなっています。
短期プライムレートは、長期プライムレートに遅れて動くという傾向があります。そのため長期プライムレートの動きをチェックしておくことで、短期プライムレートの変動を予測することもある程度可能です。
このような方法である程度短期プライムレートの動きを予想できるため、金利の上昇に備えることも不可能ではありません。短期プライムレートは、ある一定の数値以下に下がることはないと言われています。
その理由は、短期プライムレートは市場の動向を鑑みつつも各金融機関が独自に決定するものなので、ある一定の数値以下に下げてしまうと、金融機関の貸出金利が下がり過ぎてしまい、金融機関が手にできる利益が少なくなってしまうという理由があるからです。
不動産投資ローンを金利変動で借り入れると、どのようなメリットがあるのでしょうか。ここ、ではそのメリットについて解説していきます。
変動金利は固定金利に比べて、一般的に低くなっています。金利は毎月の返済額にダイレクトに影響するものなので、低いに越したことはありません。
不動産投資ローンは融資を受ける金額がかなり高額になるため、たとえ0.1%の金利の差であっても、支払総額は非常に大きく変わってきます。
バブル時代以降金利は右肩下がりとなっていることから、低金利時代はまだまだ続くと考えられています。そのため、変動金利で不動産投資ローンの借り入れを行ったほうが低い金利で不動産投資を行うことが可能になります。
そのため、不動産投資ローンの総支払金額も固定金利を選択した場合より低く抑えることが可能です。
不動産投資ローンを借り入れている場合に、手持ちの資金がある程度溜まったら、不動産投資ローンの繰り上げ返済を行うこともできます。この繰り上げ返済の目的には、月々の返済額を安くするためと、返済期間の短縮を行うための2つの目的があります。
繰り上げ返済を行う場合に固定金利を選択していた場合には、違約金(手数料)を支払う必要があることが多いのです。しかし、変動金利を選択していた場合には、この違約金(手数料)を支払う必要がありません。
金融機関によっては「事務手数料」などといった名目の手数料を支払う必要があることもあります。その金額は固定金利で不動産投資ローンの融資を受けている場合に繰り上げ返済を行う際に支払う必要がある違約金(手数料)に比べると、安価な場合がほとんどです。
そのため、無駄な出費をすることなく繰り上げ返済を行うことが可能です。
同じ金額の不動産投資ローンの融資を受けても、変動金利のほうが固定金利より低い金利で資金を借り入れることができます。
そのため大幅な金利の上昇が起こらない限り、総支払額は変動金利のほうが低く抑えることができます。このような理由から、固定金利を選択した場合よりも多くのキャッシュフローを残すことが可能です。
変動金利とは、前述した長期プライムレートまたは短期プライムレート連動して金利が変動するタイプの不動産投資ローンの借り方です。
そのため、この基準となるプライムレート大きく上がった場合には、変動金利で借り入れている不動産投資ローンの金利も変動します。
変動金利で不動産投資ローンの融資を受けた場合、多くの金融機関では基準となるプライムレートに沿って一定の期間ごとに金利を見直す方式を採用しています。
この金利見直しの時点で基準となるプライムレートが大幅に上がっていても、返済額は1.25倍までしか上げることができないという決まりがあります。そのため、プライムレートの上昇に伴って月々の返済額が2倍、3倍と非常に高額になってしまうという恐れはありません。
しかし、金利が1.25倍以上上昇していた場合には、次の返済額の見直しの際にその差額分が上乗せされるため、1.25倍以上の金利分の返済額が免除されるわけではないことを覚えておきましょう。
変動金利で不動産投資ローンの融資を受ける場合には、金利上昇リスクがついて回ることはすでに説明しました。
では、この金利上昇リスクに備えるための方法はあるのでしょうか。ここでは、金利上昇リスクに備える方法について解説していきます。
不動産投資ローンを取り扱っているほとんどの金融機関では、変動金利制の商品のみ取り扱っているところがほとんどです。
また、今後も低金利時代が続くと見込まれている現在の状況においては、固定金利より金利が低い変動金利で不動産投資ローンの融資を受けることがセオリーとなっています。しかし、だからと言って金利上昇リスクが全くないという訳ではありません。
そのため、金利上昇リスクを下げるためには、数は少ないですが固定金利で不動産投資ローンの融資を行っている金融機関から融資を受けることで、金利変動リスクを回避することが可能です。
不動産投資ローンの融資を固定金利で受けることができる金融機関には、みずほ銀行、三井住友銀行などの金融機関があります。
このように、一つの金融機関だけではなく複数の金融機関の不動産投資ローンの特徴をよく調べてから、不動産投資ローンの融資を受ける金融機関を決定するようにしましょう。
参考:
https://www.mizuhobank.co.jp/retail/products/loan/apart_yushi/index.html
https://www.smbc.co.jp/kojin/apartment/
変動金利で不動産投資ローンの融資を受けた場合、金利が低いため固定金利で同じ期間の借り入れを行った場合よりも月々の返済額は低くなります。
だからと言って、返済期間を短くするために毎月の返済額をぎりぎりまで高い額にした返済計画を立ててしまうと、金利が上昇した場合に家賃収入と返済額のバランスが崩れてしまい、収支がマイナスになってしまう恐れがあります。
そのような事態を避けるためにも、余裕を持った返済計画を立て、金利の上昇によって返済額が増加しても対応できるようにしておきましょう。
変動金利で不動産投資ローンの融資を受けた場合には、金利の上昇により月々の返済額も高額になる可能性についてはお判りいただけたと思います。では、そのようにして返済額が高額になってしまった場合には、どのように対処すればよいのでしょうか。
ここでは、金利の上昇により月々の返済額が増加してしまった場合の対処法について解説していきます。
もし、金利上昇に伴う返済額の増加が起こった時点で、不動産ローンの残債を一括返済できる自己資金があるのであれば、思い切って一括返済を行うことをお勧めします。
金利は一度上昇傾向に向かうと、そのまま上昇し続けることが多いため、不動産投資ローンをそのまま変動金利で借り続けていると、さらなる返済額の増加が予想されるためです。
そのような状況になってしまうと、低金利であるという変動金利のメリットが無くなってしまい、キャッシュフローも少なくなったり、マイナスになってしまったりすることも考えられます。
このような状況を避けるためにも、自己資金に余裕がある場合には不動産投資ローンの一括返済を行い、それ以上金利を支払わずに済むようにしましょう。
不動産投資ローンの残債を一括で返済するほどの自己資金はなくとも、ある程度まとまった自己資金があるのであれば、不動産投資ローンの一部を繰り上げ返済するという方法もあります。
この場合の繰り上げ返済の目的は、返済期間の短縮ではなく月々の返済額の軽減です。このような目的で繰り上げ返済を行い、月々の返済額の軽減を図ることで、不動産投資の破綻を防ぐことが可能になります。
不動産投資ローンの借り入れを行って購入した収益物件に買い手がつきそうな場合は、その収益物件を売却してその売却益で不動産投資ローンの完済を行うという方法もあります。
この方法は不動産投資ローンの残債が、収益物件の売却益より少ない場合に有効な方法です。このように収益物件の売却益で不動産投資ローンの一括返済を行うことで、手元にその差額となるお金を残すことも可能です。
金利の上昇が今後も続くという見通しが高いのであれば、固定金利で不動産投資ローンの融資を受けることができる金融機関に借り換えを行うことをお勧めします。
一般的に固定金利は変動金利より金利が高く設定されています。しかし、その後も金利の上昇が見込まれる場合には、固定金利に借り換えることにより一時的に金利が高くなっても、長期的な視点で見た場合に総支払額が低くなることもあります。
このようなケースもあるため、固定金利への借り換えも視野に入れておくことをお勧めします。
「不動産投資におけるその他のリスク」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。
関連記事:不動産投資行う前に知っておくべき6つのリスクの種類
ここまで不動産投資ローンの変動金利と、それに伴う金利変動リスク、また金利変動リスクへの対処法について解説してきました。
金利変動リスクとは何かといったことや、どのような方法を取れば金利変動リスクを低く抑えることができるか、金利が上昇した場合にはどのように対処すればよいかといったことについてお分かりいただけたと思います。
変動金利と金利変動リスクは、切っても切れない関係にあります。変動金利で不動産投資ローンの融資を受ける場合には、必ず金利変動リスクに備え、万が一金利が上昇した場合にも適切に対処できるよう準備しておきましょう。