不動産投資管理

不動産投資における債務超過とは?3つの対策法を解説

2020/04/13
不動産投資における債務超過とは?3つの対策法を解説

不動産投資を検討している人の中には、情報収集する過程で「債務超過」という言葉を目にして、不安を覚えている人もいるでしょう

不動産投資で債務超過すると、最悪の場合は自己破産や強制売却もあり得る話です。

そこでこの記事では、債務超過とは何か?債務超過しないための対策は何か?という点について解説します。

漠然と債務超過という言葉に不安を覚えている人は、ぜひ参考にしてください。

債務超過になるとどうなる?

まずは、債務超過になるとどうなる?という点を、そもそも債務超過とはどのような状態か?および債務超過によって自己破産した場合のリスクについて解説します。

債務超過とは?

債務超過とは、借金などの「債務」が不動産などの「所有している資産」を上回る状態です。

分かりやすく言い換えると、現金や不動産などの全財産を借金返済に充てても完済できない状態のことを債務超過といいます。

そして、不動産投資における債務超過は物件単位で見ます

たとえば、3,000万円の投資用マンションを、3,000万円全額ローンを組んで購入したとします。

そして、購入直後に何かしらの事情でそのマンションの資産価値(≒売却価格)が2,000万円まで下がったら、1,000万円債務超過(2,000万円―3,000万円)している状態ということです。

自己破産するリスクもある

債務超過になると自己破産するリスクもあります。

この点について、自己破産する理由と、自己破産したときのリスクについて解説します。

①自己破産する理由

自己破産する理由は、物件を売りたくても売れないという状態になるからです。

仮に、保有している投資物件で空室状態がつづき赤字運営になれば、手持ち資金はどんどんなくなっていきます。

そのような状態になったら物件を売らざるを得ない状態になるかもしれませんが、物件を売却するときは基本的にローンを完済しないといけません。

しかし、債務超過ということは売却益でローンを完済できないので、物件を売るに売れないということです。

その状態がつづいても赤字運営が変わらなければ、手元資金がどんどん減ってします。

そのため、やがては貯蓄がゼロからマイナスになり、自己破産せざるを得ない状態になる可能性があるということです。

②自己破産するリスク

そして、仮に自己破産してしまうと以下のようなリスクがあります。

  • しばらくの間、ほかの借入ができなくなる(7年~10年ほど)
  • 保有している資産は全て売却される可能性が高い
  • 制限される職種や資格が出てくる(警備員や宅建士など)
  • 官報に掲載され周囲に知られる可能性がある

このように、自己破産をすることで、生活が制限されたり、借入ができなくなったりという大きなリスクがある点は理解しておきましょう。

対策1:バランスシートを管理する

次に、不動産投資において債務超過にならないための対策を紹介していきます。

1つ目の対策はバランスシートを管理するということです。その点については以下を知っておきましょう。

  1. バランスシートの概要
  2. バランスシートの管理をする方法
  3. 新築物件購入時は要注意

バランスシートの概要

そもそもバランスシートとは、資産と負債が左右に記載されている資料のことであり、その資産と負債は同額(バランス)になります。

たとえば、3,000万円の投資物件を全額ローンで購入し、購入直後に建物が損傷して不動産価値が2,000万円まで下がったとします。

  • 資産:不動産2,000万円
  • 負債:ローン3,000万円

上述のように資産の負債は同額になる必要があるので、言い換えると資産が1,000万円足りないということです。

つまり、この状態は「1,000万円の債務超過に陥っている」というわけです。

さすがに、物件購入直後にここまでの状態になることは稀ですが、バランスシートの概要として上記の仕組みは覚えておきましょう。

バランスシートの管理をする方法

不動産投資をしているときに債務超過しているかどうかは、前項のようにバランスシートを作成することで分かります。

そんなバランスシートを管理する方法は簡単で、以下の2ステップです。

  • ①ローン償還表で負債部分を確認する
  • ②査定をして資産を確認する

①ローン償還表で負債部分を確認する

まずは、借入をしている金融機関から受け取る「ローン償還表」で、現時点のローン残高を確認しましょう。

その残高がそのままバランスシートの「負債部分」です。

②査定をして資産を確認する

次に資産部分の金額ですが、不動産投資における資産は物件の売却価格です。

そのため、資産部分を算出するのは自力では難しいため、今ならいくらで売却できるか?を不動産会社に算出してもらう「査定」を行います。

物件の売却価格と実際の査定額に乖離がある場合もありますので、念の為無料で利用できる「HOME4U」などの一括査定サイトを利用して査定してみると良いでしょう。

そして、その査定価格をバランスシートの資産の欄に記入すれば、バランスシートは作成完了。

このように、バランスシートと聞くと難しく聞こえますが、ローンと査定額を調べればすぐに分かることです。

そのため、投資物件を購入した後も定期的に資産額は算出しておいた方が良いでしょう。

新築物件購入時は要注意

新築物件購入時は、バランスシート上で債務超過になりやすいので要注意です。

なぜなら、新築物件は誰かが住んだ瞬間に不動産価格が大きく下落します。そのため、債務超過の状態になりやすいからです。

とはいえ、新築の投資物件にも以下のようなメリットがあります。

  • 賃借人がすぐ付きやすい
  • 設備や仕様面などで賃借人が長く居住しやすい
  • 減価償却費用による節税効果が高い

つまり、新築物件がNGというわけではなく、新築物件を購入して不動産投資するなら、中古物件よりもさらにバランスシートは意識すべきということです。

対策2:債務超過しないような物件を選ぶ

不動産投資において債務超過の状態にならないための2つ目の対策は、債務超過しないような物件を選ぶことです。

厳密に言うと、債務超過の状態でも「物件を売らざるを得ない状態」になることを避けるために、家賃収入を継続して安定的に得られる物件選びをするということです。

この点については以下を知っておきましょう。

  1. 長期スパンでキャッシュフロー表をつくる
  2. 身の丈にあった借入をする
  3. キャッシュを潤沢に用意しておく

長期スパンでキャッシュフロー表をつくる

まずは収支と支出を、年ごとに計上したキャッシュフロー表を長期スパンで作成しましょう。

不動産投資で債務超過になり困る原因は、物件売却時に「売却益でローンを完済できない状態」になるからです。

つまり、そもそも物件を売却する状態にならなければ良いのです。

そして、不動産投資の本質は家賃収入を継続的に得ることであり、それは長期的スパンでキャッシュフローがプラスのときになります。

そのため、物件購入前に長期スパンでキャッシュフロー表を作成し、継続的に安定した家賃収入を得られる物件選びをしましょう。

そうすれば、仮に債務超過の状態でも物件を売却する必要はなく、さらに継続的に安定した家賃収入を得ているので問題ありません。

身の丈にあった借入をする

次に、身の丈に合った借入をするということです。

身の丈に合った借入をすることで、無理のないローン返済額になります。

その状態になれば、空室期間が多少つづいても手持ち資金でローンを返済できるので、前項と同じく「物件を売らざるを得ない状況」にならないということです。

そのため、プライベートの支出なども加味して、自分はいくらのローンを組むべきか…言い換えるとどのくらいの返済額であれば問題ないか?を考えて借入額を設定しましょう。

キャッシュを潤沢に用意しておく

そして、手元にキャッシュ(現金)を潤沢に用意しておくことも対策になります。

不動産投資は自己資金が少額でも、ローンを借り入れることで高額な資産が取得できる点も魅力の1つです。

つまり、キャッシュを潤沢に確保し過ぎると、その魅力が半減してしまう可能性があります。

ただ、債務超過の状態になると上述した自己破産リスクもあるため、せめて半年程度の空室がつづいても問題ないキャッシュは手元に残しておきましょう

そうすれば、空室がつづいても物件を売らざるを得ない状態にならないため、仮に債務超過の状態になっても問題ありません。

「物件の選び方」に関しては下記カテゴリで解説していますので参照してみてください。

関連記事:不動産投資物件選び

対策3:債務超過になった物件の売却方法を知る

不動産投資において債務超過の状態にならないための3つ目の対策は、債務超過になった物件の売却方法を知ることです。

要は、「物件の売却利益 < ローン残債」の状態になったときでも、物件を売却する方法を知るということです。

差額分を自己資金で支払う

1つ目は、単純に差額分を自己資金で支払うことです。

自己資金から差額分を賄うことでローンは完済できるので、問題なく物件は売却できます。

ただし、差額分を自己資金で支払うということは、当然ながら「手持ち資金が減る」というデメリットはあります。

差額分を新たに借り入れる

差額分を自己資金から賄えない場合は、差額分を新たに借り入れるという方法もあります

しかし、その場合は以下のデメリットがあるので理解しておきましょう。

  • フリーローンなど金利が高い借入になる
  • そもそも借入可能かは分からない

差額分は再度審査してローンを組むので、そもそも借入できるかは分かりません。

そのため、差額分を別のローンで補填するなら、早めに金融機関へ相談することをおすすめします。

任意売却という選択肢もある

さらに、任意売却という方法もあります。

任意売却とは、金融機関と合意して、ローンを完済できなくても物件を売却できるようにすることです。

しかし、任意売却する際は以下のデメリットがあります。

  • 金融機関の合意が取れるかは分からない
  • 競売になり極めて低価格で売却される可能性もある
  • 自己破産と同じく一定期間借入できないなどのデメリットがある

任意売却は金融機関との交渉が難航することもあるので、不動産コンサルティング会社に依頼することが多いです。

そのため、任意売却を検討しているなら、早めに不動産コンサルティング会社に相談しておいた方が良いでしょう。

まとめ

不動産投資における債務超過は、不動産の売却益でローンを完済できない状態のことです。

しかし、債務超過の状態だとしても、不動産投資は物件を保有して家賃収入を得るのが本質なので、安定した物件運営ができれば問題ありません

そのため、まずは物件を売却する必要がない、継続的に安定的に家賃収入を得られる物件選びが重要です。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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