不動産投資をするときは、オーナーとして賃貸経営していく際に、トラブルにならないように「借地借家法」という法律を知っておく必要があります。
借地借家法は賃貸借契約に深く関係している法律なので、賃貸人より賃借人を守る主旨があり、借地借家法を知らないとトラブルリスクが高まるからです。
そこでこの記事では、不動産投資するときに注意すべき借地借家法について解説していきます。
特に、賃借人を退去させることが難しかったり、家賃の減額請求が難しかったりする点は必読です。
不動産投資するときに注意すべき借地借家法1つ目は、借地借家法の概要を把握しておきましょう。
結論からいうと、借地借家法は賃借人(家を借りている人)に有利な法律です。言い換えると、大家さんには不利な法律といえます。
そして、大家さんと賃借人で結ぶ賃貸借契約は、この借地借家法を元に作られている契約になります。そのため、賃貸借契約を結ぶときは借地借家法について知っておくべきです。
借地借家法に関する注意点を以下より詳しく見ていきましょう。
不動産投資するときに注意すべき借地借家法2つ目は、オーナーがおさえるべき借地借家法についてです。
具体的には以下3つの注意点をおさえておきましょう。
詳しく解説していきます。
1つ目の注意点は、家賃滞納者を強制退去させにくいという点です。
たとえ賃借人が家賃を滞納していても、賃借人に対して強制退去はさせにくく、退去させたことで損害賠償請求された事例もあります。
以下より、大家さんと家賃滞納者の裁判事例、および家賃滞納者を出さないための対策について解説します。
1つ目の裁判事例は、賃借人が家賃を滞納したため、管理会社が室内へ勝手に立ち入り扉や窓の施錠をしたことによって起きた裁判です。
扉や窓を施錠された賃借人は、「やり過ぎだ」と裁判を起こしました。
裁判結果は、「通常の権利行使の範囲を超えている」として、管理会社が賃借人に慰謝料を支払うことになりました。
また、賃貸借契約書には「賃料を滞納したら本件建物に立入り適当な処置を取ることができる」という旨の内容がありました。
つまり、このような内容を賃貸借契約書に記載していたにも関わらず、管理会社が室内に立ち入ったことは「権力行使の範囲を超えている」と判断されたのです。
この事例からも、借地借家法の「賃借人保護」の観点が強いことが分かるでしょう。
参考:http://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/67-096.pdf
2つ目の裁判事例は、強制退去させられた賃貸借人が大家さんや管理会社に損賠賠償請求した事例です。
この事例は、家賃を滞納した賃借人を強制的に退去させたものの、賃借人に訴えられて大家さんと管理会社が損賠賠償金を支払った事例です。
具体的には、大家さんと管理会社は「家財の廃棄処分による損害100万円」「慰謝料100万円」「弁護士費用20万円」の合計220万円の損害賠償を支払っています。
この事例では、管理会社の担当者が「玄関の扉を強く叩きながら大声を出して退去を促す」など、管理会社の行き過ぎた行為がありました。
とはいえ、家賃を支払わないという賃貸借契約違反をしているので、退去するのは当然といえば当然でしょう。
ただ、やはり借地借家法の「賃借に保護」が優先され、賃借人の損害賠償請求が認められたという事例です。
このように、賃借人が家賃を滞納しても強制退去はさせにくく、強制退去させたとしても損害賠償を支払う事例があることが分かったと思います。
参考:http://www.retio.or.jp/case_search/pdf/retio/89-086.pdf
では、不動産投資家(大家)の立場で何をすれば良いかというと、賃借人を慎重に選ぶということです。
言い換えると、そもそも「家賃を滞納しないような賃借人を選ぶ」ということです。
最終的に賃貸借契約を結ぶかどうかの判断は大家さんが行いますが、賃借人の募集は管理会社で行います。
ただ、大家さんの立場で「年収○○万円以上」や「職業○○はNG」のように基準を設けることは可能です。
もちろん条件を厳しくしすぎると賃貸借契約を結べなくなってしまうため、管理会社と相談しながら基準を決めた方が良いです。
ただ、ある程度厳しい基準を設定することで、安定して家賃を支払える人とだけ賃貸借契約を結べるようになるため、上記のような裁判になるリスクは小さくなるでしょう。
2つ目の注意点は、賃貸借契約の契約期間は最低1年以上という点です。
これは、大家さんが賃貸借契約を結ぶ際の義務に当たるので、不動産投資をはじめる前に知っておくべきです。
ここでは、契約期間が最低1年以上となっている根拠や注意点、および例外について解説していきます。
賃貸者契約の契約期間を最低でも1年以上に設定しなければいけない理由は、借地借家法第29条が関係していきます。
借地借家法第29条に「期間を1年未満とする建物の賃貸借は、期間の定めがない建物の賃貸借とみなす」という旨の記載があるからです。
このように「契約期間は1年以上」というルールがあるので、不動産投資をする際は賃貸借契約書の作成時に注意が必要です。
なぜなら、賃貸借契約書を作成するときに「賃貸借契約を1年未満」に設定しても、その契約は無効になるからです。
たとえば、半年間海外に滞在するため、自宅を半年だけ貸したいとします。その際、賃貸借契約に「契約期間は半年」としても無効になるということです。
さらに、上述のように賃借人を強制退去させるのは難しく、ましてや家賃をきちんと支払っているのであれば、強制退去させるのは不可能でしょう。
定期借家契約とは、その期間が満了すれば賃借人が必ず退去するという契約であり、1年未満の契約も可能です。契約期間を1年未満にして良い場合は以下のようなときです。
そのため、前項のような「自宅を半年間貸したい」などの場合は、1年未満で定期借家契約を結ぶと良いでしょう。
また、例外として建物が老朽化していたり、法律で1年以内に取り壊しが決まっていたりする場合も、取り壊しまでの期間で賃貸借契約を定めることができます。
不動産投資するときに注意すべき借地借家法3つ目は、家賃の値上げは一方的にできないという点です。
この点について、家賃の値上げは一方的にできない理由と、不動産投資家として知っておくべきことを解説します。
家賃の値上げが一方的にできない理由も、やはり借地借家法に定められているからです。
具体的には、借地借家法第32条に以下のような内容の「借賃増減請求権」が定められています。
要は、賃借人が納得するような正当な理由がないと、大家さん側の都合で一方的に家賃の値上げはできないということです。
この点について不動産投資家が知っておくべきことは、最初の家賃設定を間違えるとリスクが大きいということです。
たとえば、空室を恐れて家賃を相場よりも安く設定したとします。しかし、意外と空室リスクが小さいことが分かり、途中で家賃を上げようと思っても難しいです。
仮に、「家賃相場と同じくらいにする」としても、そう簡単に賃借人は納得しないでしょう。そして、裁判まで争うメリットは小さいので、結局家賃は据え置きになるケースが多いと考えられます。
その場合、次に家賃を変えられるチャンスは現在の賃借人が退去した後ですが、賃借人がいつ退去するかは分かりません。
このように、賃借人が居住しているときは簡単に家賃を変えることはできないため、最初の家賃設定は慎重に行いましょう。
最後に、オーナーを守る方法である「信頼できる管理会社に依頼すること」について、以下を解説します。
まず、信頼できる・実績のある管理会社に依頼しましょう。
具体的には以下のような管理会社が信頼できる管理会社です。
管理戸数が多い管理会社は、管理に関するノウハウが豊富という点が信頼できます。
また、建物管理と賃貸募集の両方を行っていると、わざわざ2社の管理会社に依頼しなくて良いのでリレーションが取りやすくなります。
さらに、管理会社が自社で運営している物件サイトをチェックしてみましょう。
調べ方は、「(管理会社名)賃貸物件」などで検索するという方法です。
実際に賃貸検討者を集めるときは、SUUMOなどのプラットフォームを見た人が、エイブルやホームメイトなどの大手賃貸仲介会社へ訪問するケースが多いです。
とはいえ、管理会社のサイトから集客することもあります。
そして、何よりも管理会社の自社サイトがしっかりしていれば、それだけ賃貸募集に力を入れていると考えられるのです。
管理会社選びは、上述した点を参考に信頼できる管理会社を選定しましょう。
「管理会社の選び方」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。
関連記事:→不動産管理会社の選び方とは?信頼できる業者の探し方を徹底解説
万が一トラブルになったら、以下の方法で不動産に詳しい弁護士に相談すると良いです。
上記のような窓口に相談することで、ニーズに合った弁護士の紹介をしてくれたり、相談に乗ってくれたりします。
また、「不動産弁護士」と検索してみると、不動産を専門にしている弁護士を探すことも可能です。
このように、不動産投資をする際は信頼できる管理会社を選定し、弁護士への相談方法を知っておきましょう。
参考:
→https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/search/center.html
→https://www.nichibenren.or.jp/legal_advice/search/himawari110.html
→https://www.houterasu.or.jp/
不動産投資をする際は、賃貸借契約に深く関わっている「借地借家法」を理解することが重要です。
特に、賃借人の権利は非常に強いので、そう簡単に退去させられない点はよく覚えておく必要があります。
また、トラブルに巻き込まれないためには管理会社の選定も重要なので、物件選びと同じくらい管理会社選びにも力を入れた方が良いでしょう。