不動産投資管理

不動産投資において避けては通れない「修繕費」について詳しく解説

2020/05/19
不動産投資において避けては通れない「修繕費」について詳しく解説



不動産投資には様々なコストがかかります。

その中でも大きな割合を占めるのが修繕費。不動産投資を成功させるためには修繕費について詳しく知り、しっかりと対策を練っておく必要があります。また、修繕をする際には費用を抑えて効果的な修繕を行うことも必要です。

この記事では修繕費について詳しく解説するとともに修繕費を抑える方法をご紹介します。



不動産における「修繕費」とは

不動産における修繕費とはどのような費用なのでしょうか。

主に3つの分類に分けることができる修繕費について見て行きましょう。

大規模修繕

大規模修繕とは、一定期間経過後に建物の修繕を行う規模の大きい修繕です。

建物は年数が経過すると外壁等、様々な箇所に修繕する必要が生じます。あらゆる箇所を時間と費用をかけて修繕を行うのが「大規模修繕」です。

小規模修繕(原状回復)

小規模修繕はその名の通り、比較的小規模な修繕です。

小規模修繕は一般的に原状回復のための修繕。例えば、入居者が退去した後の設備の修理やハウスクリーニング、共用部分の修繕です。10万円~20万円程度で行われることが一般的

大規模修繕に比べると費用は小さいものの、こまめに修繕を行っておくことで、物件の魅力度が高まりますので、重要な修繕です。

借主を退去させない、新たな入居者を募集するためにも、しっかりと行っておく必要があります。


修繕予防にかかる費用

修繕予防は大規模な修繕が必要となる前に行う対策で、建物の検査費用等が該当します。

事前に点検・検査をしっかり行っておくことで、大規模修繕の際の費用を大きく軽減できるため、とても重要な対策と言えるでしょう。

また、シロアリ等の将来大きな被害をもたらすような被害には、早めに対策を打っておくことで被害を最小限に抑えることが可能です。

予防的な修繕を怠ると結果としてあとで大きな修繕費用がかかってしまう場合もあります。

マンションの大規模修繕はいつ?いくらかかる?

不動産の修繕費用として圧倒的に金額が大きいのが「大規模修繕」です。

大規模修繕については、しっかりと対策を打っておく必要があります。大規模修繕について詳しくみていきましょう。

国土交通省は12年に1回の大規模修繕を推奨している

マンションは経年劣化により様々な不具合が生じます。

例えば、塗装や防水処理が劣化することにより雨漏りの可能性が出てきます。また、外壁のひび割れやタイルの破損等も起こる可能性があります。このような事象が発生すると借りたいと思う人が減ってしまうため、空室となる可能性が高くなってしまいます。

つまり、費用を抑えるために大規模修繕を怠ると収入を失う可能性が高くなってしまうのです。それではどの程度のスパンで大規模修繕を行えば良いのでしょうか。

一つの目安となるのは国土交通省が推奨している12年に1回というスパンです。必ず12年に1回行わなければならないわけではありませんが、10年~15年に1回は大規模修繕が必要になると考えておいた方が良いでしょう。

いつ大規模修繕をするか判断に迷う場合は、管理会社等と相談してみるのも良いでしょう。

一戸当たり100万円が目安

大規模修繕の費用は、一戸あたり100万円程度が目安といわれています。例えば総戸数が10戸であれば、1,000万円必要となると考えてください。

大規模修繕は多額の費用が必要なので、少しずつ修繕費を積み立てておくことが重要。総戸数10戸で12年に一度大規模修繕を行うとしたら、年間83.3万円を積み立てておく必要があります。

大規模修繕は多額の費用が発生するため、不動産投資を開始した当初から少しずつ貯めておかないと、いざ大規模修繕が必要となった時に資金不足に陥ってしまう可能性があります。計画的に貯めておくようにしましょう。

また、一般的に1回目の大規模修繕よりも2回目の大規模修繕の方が費用は高くなる傾向があります。大規模修繕は一度行ったから終わりというわけではなく、定期的に行う必要があります。

1回目の大規模修繕が終わったらすぐに2回目の大規模修繕費用を貯め始めるなどしっかりと計画をたてて行った方がよいでしょう。

2~3か月ほど時間がかかる

大規模修繕は小規模のマンションであっても、工事が開始してから2~3か月程度はかかります。

修繕中は足場を組んで大がかりな工事を行うので、居住者や近隣住民への配慮が必要です。また、着工までの準備期間は1年以上必要となる場合があります。

業者選定に時間がかかってしまう場合や計画を立てるのに時間がかかる場合もありますので、早めから計画をしっかり立てて大規模修繕に備えるようにしましょう。

大規模修繕で注意すべき点は?

大規模修繕は大きな費用がかかるため、失敗できない事業です。大規模修繕に失敗をすると不動産投資自体が失敗になりかねません。

大規模修繕を行ううえで、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

値段だけで業者を決めない

大規模修繕は大きな費用がかかります。そのため、費用が安い業者に頼む方が良いでしょう。

しかし、値段だけで発注する業者を決めてしまうとマンションの資産価値を維持するという本来の目的が達成できない可能性があります。

手抜き工事をされても、その後業者が倒産してしまった場合には工事のやり直しを求められない可能性もあります。そのため、業者選定は慎重に行う必要があります。

業者に丸投げせずに途中で進捗状況を確認しておく

業者に発注をしてもオーナーの仕事はそれで終わりではありません。オーナーは工事の進捗状況を確認しておく必要があります。

工事が長引いてしまうと居住者や近隣住民にも迷惑がかかってしまうため、定期的に進捗状況を確認し、遅れている場合には業者に工事を急ぐよう依頼した方が良いでしょう。

修繕費用を低く抑えるコツとは

大きな費用がかかる修繕費用はなるべく抑えたいものです。

修繕費用を抑えることで、結果的に不動産投資に収益アップにつながります。修繕費用を抑えるコツをご紹介します。

中間マージンをなるべく排除する

修繕費用は大規模修繕、小規模修繕、修繕予防に関わらず、中間マージンを排除することで費用を抑えることが可能です。

中間マージンがかかる代表的な例が、管理会社を介して修繕を依頼する「管理会社発注方式」といわれる発注方法です。

管理会社発注方式は検査や工事を管理会社に任せ、管理会社が下請けとなる工事業者に依頼する方法。管理会社発注方式は工事業者を自分で選定する必要がないため、発注時のオーナーの負担は減り、工事後の確認も管理会社が行ってくれるため安心です。

しかし、管理会社に依頼する分、中間マージンが発生するので費用は高くなる傾向があります。

一方、オーナーが決定した工事業者に発注する「責任施工方式」と呼ばれる方法では中間マージンを省くことができるため、費用は安く抑えることができます。

その分、管理会社発注方式のように管理会社が間に入って調整してくれるようなことはありませんので、労力は大きくなってしまいます。どちらが正解というわけではありませんので、ご自身に合った方法を選ぶようにしましょう。

「投資用物件のリフォーム費用」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。

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複数社に相見積もりをとる

工事業者を選定する上では、複数社に相見積もりをとることが重要です。

相見積もりをとり値段を比較することで、相場感を養うことができます。また、業者によってどこで費用に差が出ているかを聞くことによって無駄を省くことも可能となります。

複数の工事業者の見積もりを一括で行う事ができるのが一括見積サイトです。一括見積サイトで依頼すると複数の工事業者に一度に見積もりを依頼できますので、比較検討する際に便利です。一括見積サイトを以下にご紹介します。

①マンション管理えらび

マンション管理えらびは複数の工事業者の修繕費を一括見積できます。

修繕費以外にも管理費や売却や賃料査定等も一括で行うことができるので、様々な場面で活用できます。

参考:https://mansionkanri-erabi.com/estimate-repair/

②比較biz

比較bizは様々な業者を比較できるマッチングサイトです。

不動産の修繕費だけでなく、税理士や司法書士なども一括見積をすることが可能です。

参考:https://www.biz.ne.jp/

③Local Works

Local Worksは様々なものを修理・施工してくれる業者の見積りや、検索できるサイトです。

修繕だけでなく、水回りのリフォームや太陽光発電などの見積もりも依頼できるので、不動産投資において様々な場面で役に立つサイトです。

参考:https://localworks.jp/top/index

修繕費は経費として計上できないのもある?

修繕費は基本的に経費として計上できます。

しかし、修繕費が全て経費として計上できるわけではありません。経費として計上できるかどうかのポイントは「資本的支出」であるかどうかです。

資本的支出とはその物件の通常行う維持・管理を超えて価値を上げるために行う支出のことです。たとえば、使用可能期間を延長させるような修繕や価値を向上させるために行った新規設備の導入などは経費とならない可能性があります。

判断に迷う場合は税理士等の専門家に相談してみるとよいでしょう。

参考:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1379.htm


まとめ

不動産の修繕費についてご紹介しました。

不動産投資をする際には物件のスペックや利回り、立地などを重視して投資をするでしょう。もちろん、購入時にそのような条件を重視するのは重要なことです。

しかし、不動産投資は長期間継続するため、定期的なメンテナンスが必要。

定期的なメンテナンスを行う上でキーワードとなるのが修繕費。修繕費を安く抑え、効果的な修繕を行うことが物件の魅力向上に繋がり、利回りを高めるために重要です。

特に大規模修繕は多額の費用がかかるため、投資した当初から計画的に費用を積み立てて、しっかりと計画を立てて効果的な大規模修繕を行う必要があります

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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