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コロナショックで不動産は下落?影響を受ける不動産と受けない不動産の違いとは

2020/06/29
コロナショックで不動産は下落?影響を受ける不動産と受けない不動産の違いとは

新型コロナウイルスの感染拡大が世界的に広がっています。日本も例外ではありません。

新型コロナウイルスの影響で人々は外出を自粛し、日本の経済に大きな影響を及ぼしています。

新型コロナウイルスによる経済の低迷は「コロナショック」と呼ばれていますが、不動産投資にも影響はあるのでしょうか。

この記事ではコロナショックにより影響を受ける不動産と受けない不動産の違いを解説します。

コロナショックで経済に大きくダメージを与えている

コロナショックが世界経済に甚大な影響を与えています。

それでは、新型コロナウイルスの影響でどのくらい経済はダメージを受けたのでしょうか。景気への影響を目安とするために、世界中が注目するものの一つにアメリカの雇用統計があります。

アメリカの雇用統計はアメリカの失業者数を示すもの。アメリカの雇用や消費は世界経済全体に影響するため世界中で注目される重要指標です。

アメリカの雇用統計は非農業部門の失業者数が、2020年3月は失業率4.4%であったのに対して4月は14.7%にも達しました。リーマンショック直後の2009年10月が10.0%でしたので、リーマンショックよりも5%ほど高い失業率となっています

アメリカは経済の中心都市であるニューヨークのロックダウンにより、雇用も消費も一瞬にして蒸発したと言われています。

日本では、アメリカやヨーロッパのような厳格なロックダウンは行われませんでしたが、緊急事態宣言と外出自粛要請により、経済は急激に悪化しています。3月のDI(街角の景況感)7.9はリーマンショック時の19.0を大きく下回る水準となり、事態の深刻さを物語っています。

また、コロナショックによる倒産も増えています。

東証一部上場のアパレル大手「レナウン」が民事再生手続きに入りました。レナウンの破綻は新型コロナウイルスの影響で衣料品の販売が大幅に減少したことが大きいと言われています。

国内で上場企業がコロナウイルスの影響で経営破綻となったのはレナウンが初めてです。レナウンは1902年創業の老舗アパレルメーカーでしたが、コロナウイルスの影響であっけなく倒産することとなってしまいました。

今後もコロナウイルスの影響で倒産する企業が更に増えることが予想されます。

不動産は暴落する?過去の経済危機(リーマンショック)から見る不動産価格の動き

世界的に経済が急速に悪化する中、不動産はどのような推移をたどるのでしょうか。

過去の経済ショックから不動産の価格を予想してみましょう。

過去の不動産価格は国土交通省が年1回発表する公示地価で推移を確認することができます。公示地価は住宅地や商業地等に分かれて発表されており、用途別に価格の推移を確認することができます。

商業地の価格は下落

リーマンショックの際に商業地はどのような価格推移となったのでしょうか。

グラフを見てみましょう。

【商業地の平均価格推移(国土交通省発表の公示地価)】

過去の推移を見ると2008年の起こったリーマンショックをきっかけに中期的な低迷期に入っています。

2013年を底に徐々に回復傾向。2020年に直近ではピークを付けています。

商業地は飲食店や衣料品店等が立ち並ぶ繁華街で景気の影響を受けやすい土地です。雇用の悪化や賃金の下落が起きれば、生活必需品ではないものの消費は急減速します。

そのため、生活必需品ではないものを販売していることが多い商業地に入るテナントは収入が大幅に減少。最悪の場合倒産することになり、空室が多くなってしまいます。

空室が多くなると賃料収入が得られなくなってしまいますので、テナントの家賃を下げざるを得なくなり、結果的に不動産投資の魅力が薄れてしまうため、土地の価格も下落してしまうのです。

次に住宅地はどうだったか確認してみましょう。

参考:https://chika.m47.jp/

(2)住宅価格はわずかに下がった

次に住宅地がどのような推移で変動していたのかみて行きましょう。

【住宅地の平均価格推移(国土交通省発表の公示地価)】

住宅地も商業地と同じくリーマンショック後下落しています。2014年を底に緩やかに回復を続けています。

しかし、住宅地は2000年の価格に比べるとまだ低い水準で保たれています。そのため、2020年の価格が必ずしも高い水準とは言えない状況。

また、リーマンショックによって商業地と住宅地が下落しましたが、同じ下落幅だったわけではありません。

次のグラフで、商業地と住宅地の価格推移の差を確認してみてください。

【公示地価の平均価格推移(住宅地と商業地の比較)】

住宅地は商業地と比較すると変動幅が大きく異なる事がわかります。

先ほどご説明した通り、商業地は価格変動の影響を受けやすい土地です。

リーマンショックにより大幅に景気が悪化した2008年以降は大きく下落し、景気が回復し始めた2013年以降は価格が急速に上昇しています。

また、2020年の価格は20年前の2000年の価格を大きく上回っています。

一方、住宅地の価格は商業地に比べると価格の変動がかなり小さいことがわかります。

2008年のリーマンショック以降緩やかに下落し、その後緩やかに回復していますが、商業地に比べると値動きは穏やかです。

その理由は商業地に比べると、住宅地は景気の変動を受けにくいということがあります。

景気が悪化したことでし、賃金が低下した際に人々はお金を使わなくなります。最初にお金が使われなくなるのはいわゆる贅沢品。贅沢品が多く売られている商業地は、景気の変動を大きく受けるのです。

一方、賃金が低下したから住宅を住み替えると言う方は多くありません。

そのため、住宅地の賃料は下がりにくく、結果として住宅地の価格の変動は商業地に比べるとかなり小さいものとなっているのです。

不動産投資をするうえで、商業地は景気変動の影響を受けやすく、住宅地は景気変動の影響を受けにくいと言うことは非常に重要ですので、覚えておきましょう。

コロナショックはどうなる?不動産の下落幅はどうなる?

ここまで過去の公示地価から、不動産価格のトレンドを確認することができました。

ではコロナショックで、どのような価格推移を起こす可能性が高いのか確認していきましょう。

影響を受けやすい不動産とは

過去の推移からも確認できるようにコロナショックで影響を受けやすい不動産は商業地の不動産であると言えるでしょう。

コロナショックで景気が悪化し、賃金が低下した場合商業地の価格は下落する可能性が非常に高いと言えます。

また、今回のコロナショックはリーマンショックと大きく異なる点はコロナウイルスの感染拡大が続く限り、お金を持っていても外出ができないということです。

リーマンショックの際は経済ショックにより世界中で多くの人が資産と職を失ったため消費が低迷しました。しかし、リーマンショックの影響を受けても豊富な資産を持つお金持ちは世界中にたくさんいます。その方々は自由に外に出歩いてお金を使うことができたのです。

しかし、今回のコロナショックではいくらお金を持っていても感染拡大が続く限り、旅行や飲食店でお金を使うことが難しい状態が続く可能性があります。

そのため、商業地はリーマンショックの時よりも大きな影響を受ける可能性があります。

特に、オリンピックもあり海外からのインバウンド需要が見込まれていたホテルや飲食店は影響が大きいと言えるでしょう。

一方で、コロナウイルスの感染拡大が早期に収束すれば、急激に消費が回復する可能性もあります。そうなった場合には商業地の価格は回復する可能性が高いため、商業地はコロナウイルスの感染拡大の影響を観ながら投資をする必要がありそうです。

「新型コロナウイルスによる影響」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。

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コロナショックの影響を受けにくい不動産とは

コロナショックの影響を受けにくい不動産はどのような不動産なのでしょうか。

結論を言うと住宅地の不動産です。特に都心は人口流入が続いており、需要が旺盛なため、価格が下落する可能性は低いと言われています。

コロナショックで資金繰りが悪化し、企業や個人が安値で不動産を手放す可能性があります。

しかし、資金力が豊富な企業や個人がすぐに買いに動く可能性が高いため、売却の連鎖による暴落は起りづらいと言えるでしょう。安定的に不動産投資をするのであれば、商業地よりも住宅地の方が向いています。

商業地と住宅地のどちらが正解というわけではなく、目的にあわせた投資を行う事が重要です。

不動産の価格が下落した時に購入する?それだと遅い?

コロナショックにより、不動産は短期的に下落する可能性が高いと言えます。それでは不動産は下落した際に購入するほうが良いのでしょうか。

結論としては個人の投資家は下落した時に購入することは難しいと言えます。また、下落した際に購入をしても、必ずしも得になるとは限りません。

下落した際に購入することが難しい理由の一つが融資の問題です。自己資金で不動産を購入することができない場合、融資を受けることになるでしょう。

融資は今審査が下りているからと言って将来も審査が下りるというわけではありません。

特に今は、コロナウイルスの影響を受け、すでに融資の引き締めに入った金融機関も出てきています。いざ購入しようとした際に融資の審査が下りなければ購入することができません。

必ずしも得にはならない理由となるのが、不動産投資は基本的に賃料収入を最大の収入源としている点です。賃料収入は毎年一定額が入ってくるため、長く持てば持つほど収入は多くなります。

例えば、5年後に不動産が下落して購入できたとしても5年間の下落幅が5年間の賃料収入を下回れば、今購入した方が結果として得だったということもあり得るでしょう。

特に変動幅が小さい住宅地では、このようなことが起こりやすくなります。

あまり、購入するタイミングを見極めすぎて、購入することができなくなるということにもなりかねません。

「新型コロナウイルスでの融資の今後」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。

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まとめ

過去の推移から見ると経済的な影響を大きく受けた際は商業地の価格が大きく下落します。

今回のコロナショックはアメリカの雇用統計や日本のDIなどの経済指標でも大きな影響を及ぼしていることが示されています。

また、東証一部上場の大手企業が倒産するなど、今後も経済は厳しい状況が続く可能性が高いでしょう。そのため、コロナショックが長引けば商業地は急速に価格が下落する可能性が高いと言えます。

一方、住宅価格はリーマンショックの際にも価格は大きく値崩れしていません。人々の外出自粛により消費が低迷しても都心の住宅需要が旺盛であることに変わりはありません。

住宅地の価格は堅調に推移する可能性が高いと言えます。住宅地の購入であれば、今後も大きく値下がりする可能性は低いため、優良物件を購入できるチャンスがあれば、買い控える必要は無いでしょう。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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