不動産投資をしている人の中には、保有している物件で新型コロナウイルス感染が起きることを心配している人も多いでしょう。確かに、マンション内で感染が起きれば、集団感染に発展するリスクがあるので無理もありません。
そこでこの記事では、不動産投資をしているオーナーに向けて、新型コロナウイルス感染の防止策を解説していきます。また、新型コロナウイルスによる不動産投資の今後の動きも解説していきますので、あわせてご確認ください。
まずは、そもそも物件内で新型コロナウイルスが感染するリスクがあるのか?について以下を解説します。
物件内で感染リスクが高いのは、やはり以下の共用部といえるでしょう。
要は、マンションの住人が出入りする場所です。そのような場所は不特定多数の人が接触する可能性があるため、新型コロナウイルスの感染リスクも上がります。
特に、密室空間になるエレベーターは、マンション内で最も感染リスクの高い場所といえます。
また、2003年に流行したSARSでは排水管の不具合による感染事例がありました。洗面所やキッチンなどの水まわりは、マンションの壁内部にある縦菅と呼ばれる配管を通って排水されます。
しかし、例えばキッチンシンクと配管が直接つながってしまうと、配管からの臭いや逆流リスクが高まります。そのため、配管と水まわりの間に排水トラップと呼ばれる「水が溜まる」空間をつくり、その水(封水)によって臭いや逆流を防いでいます。
ただ、排水トラップの不具合によって封水が溜まらない。もしくは長期間放置したことで封水が蒸発すれば、配管から自宅の水まわりに「臭い漏れ」や「排水の逆流」というリスクがあるのです。
つまり、他の住民に感染者がいた場合、配管をたどって自宅の水まわりから新型コロナウイルスが侵入する可能性があります。
このようなリスクがあるため、長期間空き家になっている部屋は水を流して封水を溜めておきましょう。
もしくは、過去に配管の不具合があった部屋などに、異臭や逆流などがないか確認するという対策も必要です。
日本では2003年の建築基準法改正により、全ての住宅に24時間換気システムの導入が義務化されました。24時間換気システムとは室内の換気システムを稼働させて、室内の空気と室外の空気を24時間循環させ続けるシステムです。
しかし、冬場や花粉の時期などは給気口を閉じているケースもあります。もしくは、そもそも給気口の存在を認識しておらず、給気口を閉めたままの人もいるでしょう。
そのような状況だと室内の空気が循環しにくいので、家族内での感染リスクが高まります。そのため、住民に給気口の確認を促すなどの対策は必要といえます。
前項でも新型コロナウイルス感染防止に関する対策をいくつか解説しましが、以下の対策も合わせて知っておきましょう。
1つ目の対策は上述したエレベーターやエントランスなど、共用部の定期的な消毒および清掃です。
一棟の賃貸マンション(アパート)オーナーであれば、管理会社に共用部の清掃を依頼していると思います。ただ、一般的な清掃に「消毒作業」はないため、管理会社に連絡して相談してみましょう。
また、区分マンションのオーナーであれば、管理組合(オーナー全員で組成)で管理会社を選定しているはずです。そのため、最終的には管理組合の承認は必要ですが、消毒作業の依頼ができないか管理会社に問い合わせてみましょう。臨時総会などで対応してくれる場合もあります。
2つ目の対策は、配管などの損傷確認です。
具体的には以下3点を管理会社に問い合わせてみましょう。
まずは、過去の損傷歴を確認します。過去に損傷して修繕した個所があれば、その箇所の損傷確認を優先させましょう。
また、管理会社に「目視できる配管部分」の確認作業を依頼してみることも重要です。そもそも管理内容の中に「定期点検」があると思うので、臨時点検ができないか確認します。
そして、上述したように室内の異臭や逆流がないか、住民に確認してもらいましょう。掲示板や書面などで通知して、何かあれば住民から管理会社へ連絡するようにします。
なお、自主管理している場合には上記を全て自分で行うか、一時的に業者へ依頼するかという対応になります。
3つ目の対策は、感染者が発生した後のアフターケアです。
もし賃借人に感染者が出たことが発覚したら、保健所など専門家の指示に従って消毒作業を行いましょう。
仮に自分が保有しているマンションでクラスターが発生したことで、残念ながら亡くなった人がいたとします。
そうなれば「事故物件」になる可能性もあるため、その後の賃貸経営にも大きな影響を及ぼすでしょう。そのため、感染者が発生した後のアフターケアは徹底することが重要です。
次に、感染者が出た場合の賃貸付けや売却時の対応について解説します。
結論からいうと、2020年5月時点では新型コロナウイルスに関連して、賃貸付け・売却に関するルール変更はありません。
例えば、ほかの入居者から「感染者の退去」を求められても応じる義務はありません。なぜなら新型コロナウイルスに感染しただけでは、賃貸借契約の解除事由にはならないからです。
また、新型コロナウイルスに感染した入居者が退去した後に、次の入居者へ「前入居者に感染歴があること」を告知する義務はありません。これは、不動産売却時にも同じことがいえます。
ただし、物件内で感染者が出ないように、「エントランスに消毒液を設置する」、「チラシを貼って注意を促す」などの対応は必要でしょう。
なお、新型コロナウイルスに関してのルールは、今後集合住宅などで何かしら変更があるかもしれません。そのため、随時情報をキャッチしておく必要はあります。
前項までで、不動産投資家が新型コロナウイルスによって注意する点を解説しました。
次に、現在不動産投資を行っている人もしくは不動産投資を検討している人に向けて、住宅向けの不動産投資は新型コロナウイルスの影響が小さい理由を解説します。
1つ目の理由は、家賃は株価のように乱高下しにくいからです。
例えば日経平均株価は、新型コロナウイルスの影響で2020年2月は24,000円で推移していたものの、2020年3月には16,000円付近まで下落しています。
つまり、たったの1か月間で新型コロナウイルスの影響により株価は30%超も下落しているということです。一方、家賃が1か月で30%下落することは考えにくいです。
このように、不動産投資は「家賃」という乱高下しにくい収入がメインなので、新型コロナウイルスの影響は受けにくいといえます。
この点は、不動産流通推進センターの資料にある以下のデータを見れば分かります。
2007年3月:71,672円
2008年3月:71,940円(前年比+0.37%)
2009年3月:71,817円(同-0.18%)
2008年にリーマンショックが起きて世界的な不況になりましたが、賃料水準はほぼ変わっていません。
参考:https://www.retpc.jp/wp-content/uploads/toukei/201609/201609_4chintai11.pdf
2つ目の理由は、不況下でも賃貸需要は落ちにくい点です。というのも、不況下で賃貸から分譲に切り替える人が増える可能性は低いからです。もちろん、不況下でもマンションや戸建てなどを購入する人はいます。つまり、賃貸から分譲に移り住む人はいるでしょう。
しかし、以下データを見ても分かるように、リーマンショックによって不況下になった年はマンションの契約率は大きく下落しています。そのため、不況下ではマンションの購入者が一時的に減る可能性があるということです。
2007年:69.7%(販売戸数:61,021戸)
2008年:62.7%(販売戸数:43,733戸)
このように、不況下で賃貸需要が落ちる可能性は低いため、新型コロナウイルスの影響で不況になっても不動産投資への影響は小さいといえます。
3つ目の理由は、手厚い補助がある点です。
「住居」は生活必需品なので、真っ先に補助される対象の1つ。
現に、新型コロナウイルスの影響で「住居確保給付金(家賃)」として、以下のような手厚い補助があります。
このように新型コロナウイルスの影響によって現行制度は変更になっており、より幅広い人が給付対象になっています。つまり、不動産投資家からすると「賃借人が家賃を支払えない」というリスクが軽減されるということです。
もちろん家賃未払いリスクはゼロになりませんが、少なくともほかの投資ではここまで手厚い補助はないでしょう。
参考:https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000622924.pdf
このように、新型コロナウイルスの感染防止策として、不動産オーナーができること・すべきことは多々あります。ただ、いずれも管理会社の協力が必要になるため、早めに連絡して連携を取っておくと良いでしょう。
また、新型コロナウイルスの影響で不況になっても、不動産投資への影響は小さい投資という点も頭に入れておくと良いでしょう。
「新型コロナウイルスによる影響」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。