不動産売却

3,000万円特別控除で不動産をお得に売却する方法

2022/03/04
3,000万円特別控除で不動産をお得に売却する方法

不動産を売却し、利益が出た場合には税金が課されます。 

しかし、せっかく高く売却したのに税金を支払いたくない方も多いでしょう。

実は日本には様々な特別控除の制度を設けており、要件が適用すればその税金を減額またはゼロ円になる場合もあります

当記事では不動産売却時の所得控除の制度である「3,000万円特別控除」について詳しくご解説します。

売却益が出て節税対策を検討されている方は、ぜひ最後までお読みください。 

不動産の譲渡所得とは

不動産を売却し、利益が出た場合には譲渡所得税という税金が課されます。 

不動産売却時の譲渡所得の仕組みについて確認しておきましょう。

課税される条件

土地や建物等を売却した場合には営利目的に継続的に行われる場合を除き、譲渡所得として所得税と住民税の課税対象となります。

課税所得となるのは土地・建物自体の売却価格ではなく、購入時より高く売却できた場合の利益です。そのため、5,000万円で購入した土地・建物を3,000万円で売却した場合には譲渡所得は課税されません

一方3,000万円で購入した土地を5,000万円で売却した場合の2,000万円に対して、更に仲介手数料などの諸経費を差し引いた純利益が譲渡所得として課税されます。 

税金の計算方法

不動産の課税所得は譲渡価額(収入金額)―(取得価格+譲渡費用)で計算します。 

譲渡費用には不動産仲介業者の仲介手数料等を含めることができます。

先祖代々引き継いだ土地等、不動産の取得価格が分からない場合は、売却価格の5%を取得費として適用できます。 

例えば、5,000万円で土地を売却した場合は250万円を取得費として、譲渡所得から差し引くことが可能です。 

また、不動産の譲渡所得の税率は所有期間によって異なります所有期間によって「長期譲渡所得」と「短期譲渡所得」に分けることができ、長期譲渡所得は売却した年の1月1日において5年超保有した土地・建物に対して適用できます。 

長期譲渡所得の場合は課税所得に対し「15%」、短期譲渡所得の場合は課税所得に対し「30%」で課税されます。

3,000万円特別控除とは

不動産を売却した際に適用できる特例の代表が「3,000万円特別控除」です。

3,000万円特別控除について詳しく確認しておきましょう。

譲渡所得から控除できる特例

3,000万円特別控除とは譲渡所得から控除できる特例です。 

例えば、1億円の不動産を売却し、取得費と譲渡費用が合計5,000万円だった場合、5,000万円の譲渡所得となります。 

この5,000万円から差し引くことができるのが3,000万円特別控除です。 

10年以上所有していれば、税率が15%なので、譲渡所得税は2,000万円☓15%=300万円になります。

3,000万円特別控除の適用条件

次に3,000万円特別控除の適用条件を確認しておきましょう。 

3,000万円特別控除の税法上の正式名称は「居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35条1項)」となっており、つまり、居住用財産である建物とその敷地または借地権を譲渡した場合に適用できますが、投資などを目的で所有している物件は利用できないことを理解しておきましょう。

建物が店舗併用住宅の場合は居住部分のみ適用できます(居住部分が90%以上の場合は全て適用可能)。 

ただし、現在自分が住んでいない建物でも転勤等で一時的に別の場所に住んでいる場合や自分が住んでいた建物に扶養親族が引き続き居住している場合、自分が住まなくなってから3年を経過する日の12月31日までに譲渡した場合等には、特例を適用することが可能です。

また、建物は自分で土地は親になっているケースなど、土地と建物の所有者が異なる場合でも、土地と建物の所有者が同一生計でその建物に居住し、土地と建物を同時に売却した場合には特例を適用することが可能です。 

ただし、前年または前々年にこの特例を適用している場合や、売却先が直系血族や生計を一にする親族の場合は適用できませんので注意しましょう。 

申請に必要な書類

この特例を適用するためには確定申告書の特例適用条文覧に措法35条1項と記入し、「譲渡所得の内訳書」を添付する必要があります。

譲渡所得の内訳書は税務署または国税庁のホームページからダウンロードして入手することが可能です。 

参考:【国税庁】譲渡所得の内訳書

3,000万円特別控除の注意点

3,000万円特別控除を適用する場合は、どのような点に注意すればよいのでしょうか。

確認しておきましょう。 

①仮住まいや別荘は利用できない

3,000万円特別控除は居住用財産を譲渡した際に適用できる特例です。

居住用財産を転勤等によって一時的に離れていた場合にはこの特例を利用できますが、一時的に住んでいた仮住まいや別荘等には利用できません。

あくまで、生活の本拠として利用している不動産に適用できる特例であるという点は注意が必要です。

②共有名義の場合、控除額が複雑になる

共有名義の不動産を売却した場合には、不動産につき3,000万円の特別控除が適用されるわけではなく、名義一人につき最大3,000万円控除されます。

そのため、2人で共有している不動産であれば最大6,000万円まで控除することが可能です。また、課税はあくまで名義に対して行われますので、特例を適用するためには一人ずつ確定申告の手続きを行う必要があります

その他の不動産売却時の特例

居住用財産の3,000万円特別控除以外にも、不動産を売却する際の特例は複数あります。

代表的な特例を確認しておきましょう。

軽減税率の特例

所有期間10年超の居住用財産を譲渡した場合は、所得税の税率が10%に引き下げられます(通常は15%)

この特例は3,000万円特別控除と併用できますので、3,000万円の控除をした後に、課税譲渡所得が残っている場合には10%の軽減税率が適用できると言う制度です。 

適用する場合には居住している不動産に売却した年の1月1日時点で10年以上所有している必要があります。 

なお、適用を受けるためには確定申告書の特例適用条文覧に「措法31条の3項」と記入し、譲渡所得の内訳書を提出する必要があります。

特定居住用財産の買い替え特例

特定居住用財産の買い替え特例とは居住用の不動産を10年以上保有し、かつ10年以上居住した場合に利用できる特例です。

とはいえ、10年以上の居住とは必ずしも継続して住み続けている必要はありません。例えば、転勤などで一時的に別の場所に住んでいた場合には、再度住み続けた後に通算して10年以上であれば適用することが可能です。

ただし、住民票を残しておけば、居住期間として加算されるわけではなく、あくまで実態として住んでいることが要件となりますので注意してください。

売却する居住用不動産よりも高い金額の不動産を購入し、住み替えを行う場合、元々所有していた居住用不動産の譲渡所得の課税を先送りできます

そのため、元々保有していた居住用不動産の譲渡所得課税は新しく取得した居住用不動産を売却する時まで課税されることはありません。この特例を適用するためには譲渡する不動産の対価が1億円までであることが条件となっています。

また、譲渡した年の翌年の12月31日までに買い替えをしなければ、適用できます。 

元々の住宅よりも低い金額の不動産に買い替えを行った場合は、新しく購入した不動産の住宅購入費を差し引いた金額譲渡所得となり課税対象となります。

この特例は軽減税率の特例とは併用できませんので、両方適用できる場合にはどちらかを選択して適用することになります。

適用を受けるためには確定申告書の特例適用条文覧に「措法36条の2項」と記入し、譲渡所得の内訳書を提出する必要があります。

譲渡損失の繰越控除

土地や建物等を売却し、売却した価格が取得価格よりも低く、譲渡損失が発生した場合、給与所得や事業所得などと損益通算できます。 

また、譲渡損がその年の所得から差し引いても引ききれなかった場合は、譲渡損失を譲渡した年の翌年以降3年間に限り繰越控除を適用できます。繰越控除とは損失金額を翌年以降に繰り越すことができる制度です。

この制度を適用できるのは以下のようなケースです。

取得価格:6,000万円
売却代金:4,000万円

このようなケースでは譲渡損が「6,000万円―4,000万円=2,000万円」(諸経費などは入れおりません)発生します。

この場合、所得から差し引くことができますが、譲渡損よりも所得が低かった場合、譲渡損が残ってしまいます。この譲渡損の残りを翌年以降に繰り越すことができるのが繰越控除です。

例えば、年間所得が500万円の場合、控除しきれない金額が1,500万円残ってしまいますが、翌年以降に損益通算をしてもなお残ってしまった譲渡損の1,500万円を翌年以降の2年間の所得から繰り越して控除することが可能です。

相続した空き家を売却したときの特例

相続した空き家を売却した時の特例とは被相続人が居住用として保有していた不動産を相続した際に相続してから3年を経過する日の属する年の12月31日までの間に限り3,000万円を控除できる制度です。

この特例の趣旨は被相続人が居住していた不動産を売却する場合には相続人本人が居住していなかったとしても居住用財産の特例と同じく3,000万円を控除できるという制度です。

近年は相続した不動産を空き家として放置することが社会問題となっていますので、空き家対策の一環として行われていることから「空き家に係る譲渡所得の3,000万円特別控除」とも言われています。

この特例の適用を受けるためには確定申告書の特例適用条文覧に「措法35条の3項」と記入し、譲渡所得の内訳書を提出する必要があります。

まとめ

不動産売却時の特例については3,000万円特別控除の他にも様々な特例があります。

不動産の特例を知るためにはまずはどのような特例があるかを知っておくことが大切です。特例があることを知らなければ、せっかく適用できる制度があっても適用せずに税金を支払ってしまう可能性があります。 

特例の適用条件については複雑な場合もありますので、判断に迷う場合は税理士に相談するようにしましょう

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八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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