近年投資の世界で注目を集めている「ESG投資」という言葉をご存知でしょうか。
ESG投資は長期的な投資をするために重要な考え方です。ESGの考え方を取り入れることで、環境や社会に配慮し、長期的に持続可能な投資活動を行うことができると言われています。
不動産投資におけるESG投資とは具体的にどのようなものなのでしょうか。当記事ではESG投資の考え方と不動産投資におけるESGがどのようなものなのか具体的に解説します。
ESG投資とはどのような投資なのでしょうか。
まずはESGの概要について見て行きましょう。
ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取った略語です。
ESG投資は主に株式投資で使われており、ESGに配慮した企業に投資をすることで、投資家としても責務を果たすという考え方があります。
従来の投資手法ではその企業が財務的に健全か利益をあげることができるか等を数値化して投資をする投資家が多かったのに対し、最近では環境に配慮しているか、社会問題を解決しているか、企業統治はしっかりと行われているか、等を重視する投資家が増えています。
このような投資手法をESG投資といい、近年は機関投資家、個人投資家問わず注目されている言葉です。
次に何故ESG投資が注目を集めることになったのか、みていきましょう。
ESGが近年注目を集める理由となっているのが、ESGに配慮した企業のリターンが高いことがわかってきたと言う点です。かつては、ESGというと高尚な投資であるが儲からないという考え方が一般的でした。
しかし、近年ではESGに配慮した銘柄の方が安定した利益を産んでいる傾向となっていることがわかり、投資家の注目を集めています。
ESG投資で特に特徴的なのが危機に強いと言う点です。環境や社会に配慮し、企業統治がしっかりと行われている企業は不況等の外的要因の危機に強く、長期的に見ると高いリターンを産むと考えられています。
次に不動産投資におけるESGについて考えて行きましょう。
主に株式投資において使われるESG投資ですが、不動産投資においてもESGの考え方は重要です。
具体的な不動産投資におけるESG投資の例をみていきましょう。
日本の人口は減少傾向が続いており、空き家の増加が社会問題となっています。
政府は空き家を抑制するために、危険な空き家の固定資産税を引き上げたり、相続した空き家を売却した際の特例等を設けたりすることで税制面の制度を活用して空き家の抑制を目指しています。しかし、それでも空き家は年々増加しています。
空き家が増加すると管理が行き届かないため、周辺住民に危険が及ぶ可能性や犯罪に利用される恐れがあります。
今の高齢者はマイホーム思考が強い年代で、相続が発生すると更に空き家が増えることが予想されています。このような社会問題を解決できる投資手法が空き家の再利用を目指した不動産投資です。
古い空き家を購入し、リノベーションを行って賃貸に出すことで、空き家の再利用につながります。このような不動産投資は社会問題に直結するため、ESGに配慮した不動産投資と言えるでしょう。
「空き家に使える補助金」に関しては下記でも解説していますので参照してみてください。
不動産の建築は、環境面での負担も大きい事業です。
建築は多くの資材を使い、建物の建築にはCo2も多く排出されます。
そのなかでも環境になるべく配慮した建物を建てることも検討する必要があります。
具体的に行われているのは省エネルギー化です。建物の性能をよくすることで、冷暖房の使用効率をよくできるため、省エネルギー化につなげることができます。
建物の長寿命化も環境に配慮するうえで重要です。
建物の取り壊しと再建築をすると環境に対する負荷が大きくかかります。この建築から再建築のサイクルを長くすることで、環境にも配慮した不動産投資ができます。
また、建築資材をなるべく再利用する流れも広がっています。取り壊した際に木材などの建築資材を再利用することで新たな木を使う必要がなく、環境にも配慮できます。
地方活性化につながる不動産投資も立派なESG投資と言えるでしょう。
日本全体での人口も減少傾向ですが、実は東京を中心とする都市部は人口流入が続いています。一方で地方の人口は大幅な流出超過が進んでおり、今後もその流れは加速すると言われています。
地方を活性化するためには魅力的な不動産があることが欠かせません。
観光資源や魅力的な施設や居住空間があることで、人が集まり、移住する人も増えるでしょう。人が集まるような魅力的な街にするための不動産投資は社会貢献にもつながる投資で、ESG投資の一つと言うことができます。
ESG不動産投資にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
具体的に確認しておきましょう。
ESG投資の最大のメリットは長期投資に向いているということです。
ESG投資は持続可能であることが重視されるため、様々な危機に対しても強いと言われています。
例えば、環境に配慮した建物を建てることで、省エネルギー化ができれば、最初の建築コストは上がってしまいます。しかし、入居者募集の際に一つのアピールポイントにできるため、空室になりにくくなります。
また、建物の超寿命化も建築から取り壊しまでのサイクルを長くすることで、将来的なコストを抑制することが可能です。
このように持続可能であることをESG投資では長期的には利益を出しやすいと言われています。また、不動産投資は多額の資金を投じて、賃料収入で長期間かけて回収する投資スタイルが基本となるため、何十年にもわたって行う長期投資が基本です。
そのため、長期投資に向いているESG投資の考え方は不動産投資にも応用するべき考え方と言えるでしょう。
ESG投資は周辺住民の反対を受けにくいというメリットもあります。
建物の建築をする際に地域の住民から反対されるケースも多くあります。
例えば、閑静な住宅街にマンションを建てたり、商業ビル等を建てたりすることで、周辺住民から日当たりや騒音を懸念されて反対にあうケースもあるでしょう。
周辺住民に反対をされると、その不動産としても収益をあげにくい状況になってしまいます。一方、ESG投資では社会に適した不動産を目指すため、その地域の特性を活かした建物の建築やその地域に必要な建物の建築を行うという考え方になります。
このような考えで行われる建物の建築や不動産投資は周辺住民に反対されにくく、長期的に地域社会に根付いて利益をあげることができる可能性が高いと言えるでしょう。
ESG投資にはデメリットもあります。
ESG投資のデメリットについて確認しておきましょう。
ESG投資の考え方は非常に重要で、実際に行うことができれば長期的に利益をあげることができるでしょう。
しかし、実際にESG投資を行う際にはノウハウが必要で、簡単なことではありません。
例えば、空き家の再生は大きな社会貢献につながります。
しかし、空き家を再生して、新たな住人を誘致することは簡単なことではありません。空き家となってしまった家は立地が駅から遠く不便な場合や建物が古く使いづらいなど、さまざまな問題を抱えているケースが多くあります。
このような問題を解消して新たな魅力を付加することは簡単なことではありません。地方の活性化に関しても、空き家の再生と同じく簡単なことではないでしょう。
人口が減少している地域に建物を建築しても人が集まらず空室になってしまう可能性も多いにあります。
社会貢献になることは、利益にならないから多くの人が手を出していないということも多いため、その分野に関してノウハウが無ければうまくいきません。
ESG投資は軌道に乗れば、長期的に利益を上げることができる魅力的な投資方法ですが、ノウハウが無ければなかなか成功することが難しい投資手法であるとも言えるでしょう。
ESG投資は長期的なリターンを重視することが多いため、収益率が低くなる傾向があります。
例えば、環境に配慮した超寿命の建物を建築する場合、建築当初のコストはどうしても高くなってしまいます。不動産投資の収益率は賃料収入÷不動産の調達費用で計算します。
例えば、年間の収入が1,000万円の場合、調達費用が1億円であれば、年間の利回りは10%です。しかし、同じ収入1,000万円でも調達費用が2億円になれば、利回りは5%になっています。
建築にコストをかけて超寿命の物件にすることで、長期的には利益をあげることができる可能性が高くなります。ですが、当初の賃料を大きく引き上げられるわけではないので、投資を開始した直後の利回りは低くなってしまいます。
短期的な利益獲得にはつながりにくいという面があるということはESG投資のデメリットの一つと言えるでしょう。
ESG投資は近年注目を集めている言葉です。
株式投資で使われることが多い言葉ですが、その考え方は不動産投資においても有効。不動産投資におけるESG投資では環境や地域社会に配慮した投資を行うことが中心となるでしょう。
環境や地域に配慮した不動産投資は長期的に利益を上げられる可能性が高くなるため、投資家にとってもメリットが大きいと言えるでしょう。
一方で、ESG投資を行うにはノウハウが必要です。誰でもできる簡単な投資ではないと言うことは覚えておいた方が良いでしょう。
また、建築コストが高くなるケースも多く、不動産の調達コストはあがってしまうため、短期的な収益率は下がってしまう傾向があります。
ESG投資の考え方はメリットも多いため、是非とも取り入れたい考え方ですが、デメリットもしっかり理解しておく必要があります。