不動産投資をするときは、ほとんどの方が金融機関から融資を受けて不動産を購入します。
しかし、はじめて不動産投資をする方は不動産投資ローンの審査基準などの情報がなく、不安に思う方もいるでしょう。
仮に良い物件が見つかっても、不動産投資ローンが組めなければ意味がありません。
また、そもそも自分はいくらまでの資金調達ができるのか?という点が分からなければ物件探しの基準も定まりません。
そこで、この記事では不動産投資における融資の審査基準、および住宅ローンとの違いについて解説します。
まずは個人の収入が審査における重要な基準になります。
金融機関はお金を貸すか否かを検討するので、当然その人の返済能力については厳格に審査します。そして、収入の審査においては以下の3点を中心に審査されます。
(1)年収額
(2)収入の継続性や安定性
(3)年齢
つまり、その方がいくら・どの程度安定的に・いつまで稼ぎ続けられるか…という点を金融機関は見ているということです。
以下より詳しく解説していきます。
不動産投資を検討できる年収のラインは一般的に500万円といわれています。この金額が金融機関からの融資を受けられるか否かの分かれ目です。
一方、一棟投資物件をご検討される場合は、年収700万円以上が一つの目安となっています。中には1,000万円を目安にされている金融機関もあります。
年収額に加えて、その収入をどれだけの期間に渡って安定的に稼ぎ続けることができるかという点も審査対象です。
なぜなら、不動産投資におけるローンは最長45年で組まれることもあるので、金融機関にとっては「安定性・継続性」は非常に重要だからです。
そして、この点を測る具体的な項目は以下の4点です。
①勤務先の規模
②雇用形態
③勤続年数
④職業
本項目において一般的に金融機関が好むのは、一部上場企業およびその子会社…もしくは公務員です。
なぜなら、一部上場企業や公務員は社会的信用が高く、倒産や解雇のリスクがそれ以外の企業と比べて低いからです。
そのため、一部上場企業や公務員は不動産投資ローンの審査において有利に働きます。
雇用形態は正規社員および非正規社員に分類され、非正規社員はさらにパートタイマー、アルバイト、派遣に分類されます。
そして、本項目において審査に有利なのは正規社員です。
なぜなら、正規社員は労働契約に期間の定めがなくフルタイムで働くことができ、直接雇用で企業に属しているためです。
すなわち、解雇のリスクが非正規社員と比べて低いため、収入が継続的かつ安定的に得られるという理由で金融機関からの評価が良くなるのです。
勤続年数も重要な指標になります。というのも、勤続年数が長いほど収入の安定性・継続性が見込めるからです。
つまり、勤続年数が長ければ離職リスクが小さくなるので、収入の変動リスクが小さいと判断されるのです。
一般的には「勤続3年以上」が一つの目安となっていますが、ヘッドハンティングなどプラスになって転職される場合は、勤続1年でも融資がおりるケースがあります。詳しくは担当者に相談してみてください。
次に職業です。上述した、一部上場企業およびその子会社の正規社員・公務員以外には、医師、士業(弁護士や公認会計士、税理士など)の方は審査に通りやすいです。
やはり、高年収かつ安定しているという点が理由になります。
一方、自営業やフリーランスの方は収入の継続性および安定性の観点から、上記の方々と比べると審査上は弱いのが実情です。
上述したように、不動産投資ローンは最長で45年で組むことができます。したがって完済時の年齢、または借入れ時の年齢に条件を設けている金融機関も多くあります。
借り入れする時の年齢が高ければ高いほど、借り入れできる期間が短くなります。また、年齢が高いと融資の条件が悪くなるケースもあるため、早いうちから始めることをオススメします。
次に審査の基準になるのは、個人信用情報です。この章では、個人信用情報について以下3点を解説します。
(1)個人信用情報とは
(2)個人信用情報の履歴があると審査は厳しい
(3)個人の金融資産
そもそも個人信用情報とは、クレジットカードやローンの契約・申込に関する情報のことで、客観的な取引事実を登録した情報のことです。
この個人信用情報は以下の信用情報機関に登録されています。
そして、金融機関は顧客の信用を判断するために、上記の機関に借入れ希望者の信用情報を照会するというわけです。
たとえば、上述したCICはクレジットカードに関する個人信用情報が登録されています。
そのため、クレジットカードの支払いを延滞したことがある場合は、「延滞」の履歴が登録されています。いわゆる「ブラックリストに載っている」という状態です。
そうなると、いくら年収が高くて安定している職業でも、審査に通過するのは極めて困難になります。
そして、その遅滞歴は5年間CICに残るため、過去に遅滞歴がある方はそこから5年間は融資が下りないということです。
次に個人の金融資産に関することです。金融資産とは現金や無担保の不動産、有価証券(株式や債券など)などを指します。
これらの金融資産があれば金融機関の審査に通りやすいです。なぜなら、仮に年収が低くても金融資産があれば「返済能力あり」と判断されるからです。
金融機関は返済能力を重視するので、年収以外で自分の返済能力を証明できれば審査に通りやすいということです。
個人の次に購入する不動産の担保価値や収益性です。不動産の担保価値や収益性については、以下2点を解説していきます。
(1)不動産の担保価値
(2)不動産の収益性
不動産投資ローンを組むときは、融資を受ける不動産に金融機関が抵当権を設定します。抵当権とは「担保」のことです。
つまり、借入れ者が不動産投資ローンの返済ができなくなった場合に、その不動産を売却して返済に充てるということです。
そのため、不動産の担保価値が低いと融資を受けにくくなります。
担保価値は土地と建物の評価額(時価)をそれぞれ別個に算出し、その合計額に掛け目(0.7〜0.8)を乗じて決められます。
なお、掛け目は金融機関や当該不動産の立地によって異なりますので、一概には言えません。
主に構造と築年数、およびエリアによって担保価値は決まります。たとえば、地方の築古木造アパート…のような建物は担保価値が低くなります。
一方、都心の築浅マンション(鉄筋コンクリート造)…などは比較的担保価値が高くなりやすいでしょう。
不動産投資ローンの審査は不動産の収益性も重視します。なぜなら、その不動産から得る収入は不動産投資ローンの返済原資になるからです。
不動産の収益性を測る上で重要なことは「返済比率」と「利回り」という考え方です。以下より詳しく解説していきます。
まず、返済比率とは「物件の賃料収入に対するローン返済額(年間)の比率」のことです。
たとえば、賃料収入が年間1,000万円の物件で、ローン返済額が年間400万円だったとします。その場合の返済比率は40%(400万円÷1,000万円)です。
一般的な返済比率の目安は「50%以下」の水準なので、この水準を大幅に超えてくると、ハイリスクな投資をしている状態といえるでしょう。
なお、もう1つ「年間のローン返済額÷年収」も返済比率と言われます。
ただ、こちらの返済比率は主に住宅ローンに利用される指標なので、不動産投資ローンの返済比率は上記と認識しておきましょう。
利回りとは、物件価格に対する年間賃料収入の割合のことです。利回りには以下3種類あります。
一般的には表面利回りを利用するケースが多いでしょう。
たとえば、年間賃料収入が500万円の物件を、5,000万円で購入する場合の表面利回りは10%(500万円/5,000万円)になります。
当然ながら、利回りが高い方が収益性も高いと判断されます。しかし、見かけ上(満室想定時)の利回りが高くても、空室率が高い物件などの評価は低いです。
つまり、返済比率や利回りという指標は重要ですが、空室率などあらゆる要素を加味した「収益性」が審査されます。
なお、利回りについて詳しくは下記の記事を参照にしてみてください。
最後に、不動産投資ローンと住宅ローンの違いについて解説します。
不動産投資ローンも住宅ローンも、不動産を購入するためのローンという点では同じです。しかし、以下3つの違いがあります。
(1)購入する物件
(2)金利
(3)審査基準
特に住宅ローンを組んだことがある人は混乱する可能性があるので注意しましょう。以下より、詳しく解説していきます。
まず、購入する物件の用途が明確に異なります。
不動産投資ローンは「収益を得るための投資用物件」が購入対象であるため、購入した物件には住まない前提です。
一方、住宅ローンは「自己居住用の物件」が購入対象であるため、購入した物件には購入者自身が住むことになります。
金利についても、両者において大きく異なります。
不動産投資ローン金利は2%~3%前後がボリューム層です。一方、住宅ローン金利は高くても1%台で、金融機関によっては変動金利で0.5%を切ることもあります。
借入れ者・物件・金融機関などによって金利は変動しますが、相場は上記の通りです。
いずれも「不動産を購入する」という点が同じである以上、個人の収入や信用情報に関する審査基準に大差はありません。
しかし、不動産投資ローンは「不動産の収益性も加味される」という点が住宅ローンと違う点です。
不動産投資は不動産賃貸業という事業経営の一種ですので、事業自体の収益性も審査項目に入ってくるのです。
このように、本記事では不動産投資ローンの審査について知っておくべきことを解説しました。
冒頭でも言ったように、不動産投資は融資を受けて不動産を購入するケースが大半です。
そのため、金融機関が融資審査で何を基準としているか?どのような判断をするか?という点を理解することは重要といえるでしょう。
特に「個人の収入に関すること」と「信用情報に関すること」は非常に重要なので、融資審査を受ける前に知っておいた方が良いでしょう。