不動産投資とは

不動産投資における元手の目安は?元手を出さなくても持っていないのとは違う

2020/09/07
不動産投資における元手の目安は?元手を出さなくても持っていないのとは違う

不動産投資でよく目にする「元手ゼロ」というフレーズは、「自己資金が不要」という意味ではありません。むしろ「元手を出さなくてもいい」と誤った形で情報を受け取とったために、思わぬ落とし穴にハマるリスクすらあります。

そこで本記事では、不動産投資の元手について、投資初心者が成功するためのポイントも交えて解説していきます。

不動産投資の「元手」とは?

不動産投資の「元手」とは、一体どこから拠出されどのくらいの金額が必要なのでしょうか。この章では、不動産投資における元手の目安について解説します。

不動産投資は基本的に融資を元手に始める

不動産投資は、基本的に自己資金だけを元手にして始めるものではありません。なぜなら、確実に黒字の収支をあげられる収益物件は最低でも数千万から数億円以上はする場合が多く、それだけ高額な物件を現金で一括購入できる投資家は、そう多くいないでしょう。

したがって、不動産投資を始めるにあたり、多くの人は不動産購入にかかる資金は金融機関からの融資で調達することになります。このように、金融機関から融資を受けて元手を確保することが前提という点が、不動産投資が株やFXなどの他の投資活動と異なる点です。

元手の目安は物件価格の約1〜3割

原則として、不動産投資の元手の目安は「物件価格の約1〜3割」とされています。

なぜなら金融機関から融資を得る際には、物件価格の約1〜3割の頭金が必要になることが多いからです。したがって、たとえば物件価格が5,000万円なら、500万〜1,500万円ほどの元手が必要になります。元手になる自己資金は多ければ多いほど収益物件の選択肢は増えますが、必要になる自己資金の目安は絶対的でなく、投資方法や投資家の社会的な信用度などによっても変わってきます。

不動産物件価格における融資限度額の差額とは?

金融機関の提示する融資金額と物件価格の差額を埋められるだけの自己資金がなければ、不動産投資を始めることは非常に難しくなります。そこで、金融機関への融資の申し込みで重要となるのが、金融機関から求められる「一定額の頭金」です。この頭金の金額は、金融機関の提示する融資限度額と物件購入価格の差額で決定します。融資限度額は、「投資者の自己資金力」や「物件の担保価格」などによってもアップダウンがあり、頭金の額に関しても、投資家の経済面や社会的な信頼度が影響を及ぼすのです。

元手は出さなくてもいいが、持っていないとは違う

「元手なしで始められる不動産投資」とは、「元手は頭金として出さなくてもよい」という意味であり、「自己資金をまったく持っていなくてもよい」というわけではありません。したがって収益物件が空室になった場合のローン返済や、突発的に設備の修理が必要になった場合などの不測の事態において、その費用がオーナー負担になる可能性があるとの認識が必要です。

また不動産会社が提示する収支シミュレーションには、毎年かかる固定資産税が含まれていなかったり、金利変動のリスクが明記されていなかったりと、投資者にとって都合の悪い事実が隠されているケースもあります。ゆえに、「元手を出さなくてもいい」という情報を字義通りに鵜呑みにするのではなく、「提示された収支シミュレーションが本当に正確な情報かどうか」の確認が大切です。

フルレバレッジ(フルローン)のメリットとデメリット

フルレバレッジ(フルローン)とは、不動産を購入するために必要な諸経費以外(登記費用や仲介手数料など)の不動産物件価格のすべてを、金融機関からの融資ローンで資金調達するという方法です。この章では、このフルレバレッジ(フルローン)のメリットとデメリットについて解説します。

フルレバレッジ(フルローン)のメリット

フルレバレッジ(フルローン)のメリットは、主に3つあります。

①少ない元手で不動産投資が始められる

1つ目のメリットは、「少ない元手で不動産投資が始められる」という点です。不動産投資を始めるためには最低限の諸経費を準備する必要があるとはいえ、初期投資として必要な金額は数十万円程度の場合がほとんど。したがって、金融機関からの融資がおりれば、自己資金がほぼゼロの人でも不動産投資を始められます。

②投資効率が高い

2つ目のメリットは、「投資効率が高い」という点です。不動産投資は自己資本利回りがよく、とりわけフルレバレッジ(フルローン)は投資効率を最大限に高められるといわれています。自己資本利回りとは自己資金の拠出額に対し、どれくらいの利益があったかという割合のこと。フルレバレッジ(フルローン)は、手元に現金を残しながらも、家賃収入で得た資金を元手に新しい投資先へと投資を繰り返して、資産規模を拡大することも可能になります。

③手元に自己資金を多く残せる

3つ目のメリットは、「手元に自己資金を多く残せる」という点です。フルレバレッジ(フルローン)を組めば、自己資金を手元に多く残せるので、突発的なトラブルや緊急のリフォームなど、思わぬ出費が生じた際に役立ちます。また家賃収入が安定しない時期においても、ある程度ローンを返済できるだけの自己資金があれば、自己破産のリスクを回避できて投資者にとって安心です。

フルレバレッジ(フルローン)のデメリット

フルレバレッジ(フルローン)のデメリットは、主に3つあります。

①金融機関の審査が厳しい

1つ目のデメリットは、「金融機関の審査が厳しい」という点です。フルレバレッジ(フルローン)の融資は、金融機関にとってリスクの高い融資なので、基本的に審査のハードルは高い傾向にあります。

金融機関が審査する項目は、主に次のとおりです。

  1. 借入者の雇用形態、年収、勤務先
  2. 借入者の信用履歴
  3. 自己資金をどれだけ持っているか
  4. 収益性の高い物件かどうか
  5. 実績のある不動産会社が仲介しているか

金融機関の審査は「借入者がローンを返済できる能力があるかどうか」という点を確認することが目的であるため、ローンの借入金額が上がるほど審査は厳しくなります。

②キャッシュフローが少なくなる

2つ目のデメリットは「キャッシュフローが少なくなる」という点です。フルレバレッジ(フルローン)では、自己資金をほとんど投入しない分、借入金額が増えるため、必然的にローンの返済額も大きくなります。

したがって、購入資金の多くに自己資金を投入するケースと比べフルレバレッジ(フルローン)で不動産投資をおこなう場合は、キャッシュフローが少なくなることは避けられません。空室率が高くなったり修繕費などが嵩んだりすると、場合によっては毎月自己資金から持ち出して、ローンを返済しなければならないリスクがあります。

③金利が上昇することで、キャッシュフローを圧迫するリスク

3つ目のデメリットは「金利が上昇することで、キャッシュフローを圧迫するリスク」です。

日銀のマイナス金利政策の影響により、現在は不動産投資に対する融資も非常に低金利ですが、一般の住宅ローンと比較すると、不動産投資の金利は高い傾向にあります。さらに、フルレバレッジ(フルローン)のような自己資金なしのローンでは、不動産購入価格のすべてを融資ローンで調達するため、金利が少しでも上がるとキャッシュフローをすぐに圧迫する恐れがあります。

少ない元手で始められる不動産投資先

自己資金のない人が「融資なしで不動産投資を始める」というのは、かなり厳しいのが現実です。しかし、今では少額から不動産への投資をすることもできます。この章では、融資を受けられない事情のある人が、少額の元手で不動産投資を始められる投資先についてご紹介します。

不動産投資信託(J-REIT)

不動産投資信託(J-REIT)とは、複数の投資家が少額で不動産投資法人に投資資金を預け、投資資金を元手に投資運用してもらうという方法です。

一口4万〜60万円ほどの資金でスタートでき、運用してもらって得た利益が分配されて、投資家は利益を得られます。不動産投資信託(J-REIT)は、運用する不動産が証券化されて市場で売買取引されるため、値動きや流動性が通常の不動産取引よりも大きいという点が特徴的です。また、不動産投資信託(J-REIT)は不動産投資のプロに投資そのものを任せられるので、個人レベルでは難しい投資案件から利益を得ることもできます。

不動産小口化商品

不動産小口化商品とは、「不動産特定共同事業法」に基づいた組合事業の形式をとっている投資方法で、不動産投資信託と似たような投資システムといわれています。

不動産投資信託は不動産投資事業をおこなう法人の証券を購入して出資をする株式投資に近い出資方法ですが、一方で不動産小口化商品の投資先は証券化された金融商品ではなく、不動産そのものに出資をしてなされる点が異なります

クラウドファンディング

クラウドファンディングとは特定の事業に対して投資することで、その事業の売上高に応じて分配金を支払うという投資方法です。

クラウドファンディングは元々、資金の不足している個人事業主が不特定多数から資金を募る手段として注目されてきました。しかし、不動産投資においても、この手法によって不動産投資のための元手を複数の投資家から集め、運営会社が不動産投資によって利益を還元するという形式を取ることが可能です。

投資の事業者は「不動産特定共同事業法」と呼ばれる法律に則した許可を得た会社しか運用できず、素人が簡単に事業を展開することはできません。しかし、個人投資家であっても、ネット上からだけで簡単に不動産投資を始められる手法として注目されています。

不動産投資の初心者が成功するには?

不動産投資の初心者が安定した不動産収益をあげるためにはどうしたらよいのでしょうか。

この章では、不動産投資の初心者が成功するためのポイントについて解説します。

不動産投資について情報収集をしながら勉強する

不動産投資を考え始めたばかりの方は、まず不動産投資にかかる税金や費用、専門用語など、目的に合わせて情報収集をしながら勉強をしましょう。なぜなら、不動産投資を始める動機や目的は人によって異なるので、ご自身に最適な投資プランを考えることが、不動産投資で成功するポイントだからです。

また、自主的に不動産投資の勉強をすることは、不動産投資の将来的なリスクや失敗例を通して、正しい情報かどうかの判断ができるようになることに役立ちます。

身の丈に合った投資プランにする

不動産投資が始めての人は、最初は少額からスタートすることをオススメします。なぜなら、大きな利益を狙っていきなりすべての預貯金をひとつの不動産に投資することは、不動産投資にまだ慣れていない初心者にとっては非常にリスキーだからです。

したがって、まずは少額投資で成功体験を積み重ねながら、経験で得た知識や情報、有料物件の見極め方などを身につけることが、不動産投資で高いリターンを得るための近道といえるでしょう。

信頼できる不動産投資のプロを見つける

不動産投資について疑問点があれば、信用できる不動産投資のプロへの相談をオススメします。また、信頼できる不動産投資のプロを不動産会社から選ぶ際には、収益物件を顧客目線で紹介してくれる業者を選ぶことがポイントです。加えて、メリットや儲け話だけでなく、将来的なリスクや失敗事例などもしっかりと教えてくれる不動産会社に相談するようにしましょう。

最近では不動産投資について相談できるコンサルティングやネットワークも充実しているので、積極的に行動することで不動産会社の提案や投資戦略に関するアドバイスを得られる機会も多いはずです。

まとめ

今回は、不動産投資における「元手」に着目して解説してきました。要点は次のとおりです。

  1. 「元手を出さなくもよい」とは「自己資金が不要」とは違う
  2. 「融資なしで不動産投資を始める」のは、かなり厳しい
  3. 自己資金が不足している人は現物不動産以外に投資する方法もある

不動産投資は少ない元手で始められる方法はありますが、その分金融機関から多額のローンを組む必要があります。不動産投資を成功させるためには、正確な知識や情報を収集して準備を怠らないことが大切です。本記事を、ご自身の不動産投資にぜひご活用ください。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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