不動産クラウドファンディング

不動産投資型クラウドファンディングとは?物件種類別に徹底解説!

2020/09/29
不動産投資型クラウドファンディングとは?物件種類別に徹底解説!

不動産投資型クラウドファンディングとは、複数の投資家から投資資金を募集し、借り手が投資家の代わりに不動産投資で得た利益を分配する投資手法です。元手が少ない人や不動産に詳しくない人でもはじめやすいため、近年注目を集めています。

しかし、実はクラウドファンディングにおいても、現物投資と同様に物件選びは重要です。

そこで本記事では、投資を成功に導くためのポイントを交えながら、不動産投資型のクラウドファンディングを物件別に解説します。

不動産投資型クラウドファンディングとは?

不動産投資型のクラウドファンディングには、主に2つの仕組みがあります。それぞれのシステムと今後の動向についてみていきましょう。

不動産投資型クラウドファンディングの仕組み

1つ目の仕組みは「不動産投資型(ファンド型)」です。
不動産投資型とは、投資家の出資により、投資先の上場や売却で利益報酬が得られる仕組みを指します。この場合の「利益」とは、不動産特定共同事業法に則した運用をおこなった結果による、「分配金」です

2つ目の仕組みは「融資型(ソーシャルレンディング)」です。
融資型(ソーシャルレンディング)とは、金融商品取引方と賃金業法に則って運用をおこないます。ゆえに、投資家の出資金は借り手企業にとっては融資としての位置付けです。投資家は、金融機関のように借り手企業への融資に対して支払う「利息」を受けることで利益を得ます

不動産投資型(ファンド型)」と「融資型(ソーシャルレンディング)」の違いは、端的にいうと「投資の枠組み」です。

先述したとおり、融資型(ソーシャルレンディング)は事業運営をする場合の融資部分は賃金業法に、ファンドの募集については賃金業法に則って投資運営をします。

反面、不動産投資型(ファンド型)は、融資型(ソーシャルレンディング)の投資枠組みに依拠するとは限りません。「資金を不動産業に活用して金銭的な報酬を得る」という目的は同じでありながら、切り口の少し異なる投資スタイルであるといえます。

クラウドファンディングなら1万円から不動産投資ができる

現物不動産への投資の場合、都心のマンションなら数千万円から億単位、地方物件でも数百万円の資金が必要といわれます。しかし、クラウドファンディングなら、不動産を購入するための資金を十分に確保できない人でも気軽に投資への参入が可能です。

たとえば、投資商品を購入できる最低金額は運営会社や商品のタイプによりますが、不動産クラウドファンディングなら最低投資金額1万円からはじめられます。このように、不動産投資型クラウドファンディングなら投資金額が低いので、元手が少ない人だけでなく失敗のリスクを避けたい人も抵抗なく、気軽にチャレンジできるかもしれません。

ただし、投資額が少ないと、得られる報酬も比例して少なくなります。たとえば、不動産投資型(ファンド型)なら、利益から運用費用を差し引いた差額である分配金が利益です。

また、融資型(ソーシャルレンディング)なら、利子収入からソーシャルレンディング会社の利益を差し引いた金額が投資家の利益となります。

不動産投資型クラウドファンディングの今後

不動産投資型クラウドファンディングは、今後ますます市場が拡大する投資手法となるでしょう

その理由のひとつとして、2017年の不動産特定共同事業法の改正があげられます。この法改正により、法律に関わる関係事業者は「契約締結前交付書面」「契約締結時交付書面」「財産管理状況報告書」などの書面交付をオンライン上から可能になり、手間が省けたからです。

そのほか、「資本金1億円以上」であった不動産特定共同事業の条件が、「投資家1人あたり100万円の出資金上限」「投資家から集める資金総額が1億円以内」「資本金1,000万円以上」と条件の引き下げがあったことも、より多くの企業が不動産投資に参入しやすい流れとなる起点になると考えられます。

物件種類別!不動産投資型クラウドファンディングの特徴とメリット・デメリット

クラウドファンディングに特化した物件の特徴とメリット・デメリットを踏まえることは、投資を成功へ導くうえで重要です。この章では、物件の種別を4つに区分してみていきます。

宿泊施設のクラウドファンディングの特徴

不動産投資物件としての宿泊施設は、「投資募集金額が大きい」点が特徴的です。宿泊施設は宿泊業法に則りホテルや旅館などを開設する資金を募集して、運用益が投資家に配分されるシステムとなっています。

なかには募集金額が1億円以上のものもあり、投資に慣れていない人でも投資しやすい案件が揃っています

①宿泊施設のメリット

宿泊施設のメリットは「高い利回り性」です
宿泊施設系の物件の利回りが高い理由は、価格変動に伴う分配金減少のリスクが考えられます。ホテルや旅館運営は国内外からの観光客の動向に影響を受けるため、利益率はシーズンや景気に大きく左右されます。

つまり、宿泊施設系の物件はホテルの売上や収益によって賃料の変動が想定されるため、業績予想の不確実性という観点から高い利回りが設定されているともいえるのです。

最近はインバウンド需要の低下もあり、宿泊施設への投資は大きなメリットを感じにくいかもしれません。しかし、今後観光業が内需拡大するに応じて投資家にとって情勢がよい流れに戻る可能性はあります。

観光客の増減に応じて、宿泊料を高めに設定できるという宿泊施設の利点を生し、満室運営を継続させられれば、居住用不動産よりもフレキシブルに収入を増やせるでしょう

②宿泊施設のデメリット

宿泊施設のデメリットは、「投資の価格変動の要因を観光客に大きく影響される」点です。
観光客の減少にともない、収益性も減少するのは想像に難くありません。宿泊施設自体が倒産してしまうと、投資資金は水の泡となるリスクがあります。

また、居住用不動産よりもフレキシブルに収入を増やせるメリットゆえに、収益を下げると投資家に十分な配当がされない、元本を失う危険性があるといった点は気をつけたいところです。

居住用不動産のクラウドファンディングの特徴

不動産投資物件としての居住用不動産は、投資家から募集した資金で中古マンションを購入し、運用利益や転売利益を投資家に配当するという特徴があります。

①居住用不動産のメリット

居住用不動産のメリットは、宿泊施設と比べて「収益が安定している」点です
とくに都心のワンルームマンションは、空室や家賃低下のリスクが地方物件よりも低い傾向にあります。加えて、居住用不動産は生活ベースのニーズがあるので、宿泊施設に比べると景気の変動に依拠しない点が強みです。

しかも、クラウドファンディングでは、都心の億ションを1口1万円から少額投資が可能なので、元手をかけたくない人でも安心して不動産投資をスタートできます

②居住用不動産のデメリット

居住用不動産のデメリットは、「早期に募集期間が終了する可能性がある」点です。
ワンルームマンションの場合、募集資金は1,000万〜2,000万円と小規模のケースが多く、比較的投資額の上限に達しやすい傾向にあります。

したがって、人気物件への投資には、「複数のクラウドファンディングサイトに登録する」「案件情報の通知を受け取りやすくする」など、スピーディーな対応が必要です。

商業施設のクラウドファンディングの特徴

不動産投資物件としての商業施設は、オフィスやテナントなどの商業ビルや商業施設へ投資する点が特徴的です。宿泊施設への投資と同様、募集金額が数億円の単位のケースもあり、投資しやすい物件でといえるでしょう。

①商業施設のメリット

商業施設のメリットは宿泊施設への投資と同じく、「利回りの高さ」にあります。
商業地周辺の知名度や施設の評判などによっても左右されるため、投資家への配当額も高めに設定されているようです。

②商業施設のデメリット

商業施設のデメリットは、「案件数の少なさ」です。
クラウドファンディングとして、商業施設はほとんど案件として運用されていません。したがって、未知数の部分が多くあります。

また、商業施設は景気の影響を受けやすいため、状況によってはテナントの退去や売上の減少や賃料の滞納などが起こり、投資にも悪影響があるかもしれません

保育施設や医療施設のクラウドファンディングの特徴

不動産投資物件としての保育施設や医療施設は、公共性の高い物件である点が特徴的です。

①保育施設や医療施設のメリット

保育施設や医療施設のメリットは、「公共性の高さゆえの安定性」にあります。
保育や医療は社会的に重要性の高い施設なので国からの補助も多く、民間企業と比較すると倒産リスクも低めです。

投資利回りはそれほど高くありませんが、案件の募集規模は大きいため、参入しやすさがあります

②保育施設や医療施設のデメリット

保育施設や医療施設のデメリットは、「想定外の事態による倒産リスクがある」点です。
たしかに保育施設や医療施設は公共性が高いため、時流による倒産リスクは低めですが、需要のアップダウンはあります。

たとえば、「保育運営側と保育士との間で軋轢が生じ、保育士の一斉退職があって運営が立ち行かなくなる」「予期せぬ感染症の拡大によって通院患者数が減り、運営業績が悪化する」などのケースも考えられるでしょう。

不動産投資型クラウドファンディングのポイント3つ

ここまでは、不動産投資型クラウドファンディングについて物件別の特性を交えながら解説しました。この章では、投資を成功に導くための具体的なポイントについて3つみていきます。

ポイント1:信頼できる運営会社か?

クラウドファンディングでは、募集案件の選別も大切ですが、運営会社選びも重要な要素です。なぜなら、投資先の企業によっては倒産による貸し倒れのリスクがあるからです。倒産のリスクについては企業の公式サイトにある「IR(投資家向け広報ページ)」から確認できます。IR情報でとくにチェックすべき観点は、次のとおりです。

  • 預けた資金は分別管理されているか?
  • 貸し倒れがあった場合にどのような回収方法があるか?
  • 過去に返済遅延があった際、どのような対処法がなされたか?

そのほか、「運営会社の業績」「会社の規模」「大手からの出資の有無」などもあわせておくと、体系的に企業の背景を理解できます。企業の公式サイトではっきりしない情報は、電話やメールなどで問い合わせておくと安心です。

ポイント2:利回りにこだわりすぎていないか?

高利回り物件への投資ほど収益性は高くなりますが、投資先の選定を利回りばかりに着目するのは避けましょう。なぜなら、高利回り案件は、相応のリスクがあるからです。たとえば、先述した宿泊施設は物件の中では高利回りに該当しますが、景気による価格変動のリスクを大きく受けるという難点があります。

したがって、利回りだけで案件を吟味するのではなく、元本割れや返済遅延など、予期せぬリスクを洗い出して投資先の選定をおこなうようにしましょう。

ちなみに、2019年に金融庁は、ソーシャルレンディングの利回り性の高さについて注意喚起する公文書を発表しています。投資をはじめる前に、ぜひご確認ください。

ポイント3:投資リスクを分散しているか?

投資リスクを分散するためには「分散投資」が基本です。分散投資とは、ひとつの投資商品だけに資金をかけるのではなく、複数の投資商品に分けて投資することを指します。

この分散投資によって、すべてがゼロになるリスク回避が可能です。たとえば、不動産投資型クラウドファンディングとしては、次のような投資方法が可能です。

  • 投資先案件の分散
  • 投資する地域の分散
  • 運営会社の分散
  • 投資対象(物件の種類)の分散

不動産投資型クラウドファンディングは、現物資産と比べて分散投資に向いています。万が一に備え、投資リスクは分散しましょう。

まとめ

今回は、最近注目を集めている不動産投資型のクラウドファンディングについて徹底解説しました。要点は次のとおりです。

  • 不動産投資型クラウドファンディングには、「不動産投資型(ファンド型)」と「融資型(ソーシャルレンディング)」という2つの仕組みがある
  • 不動産投資型クラウドファンディングには、物件によってメリットとデメリットがある
  • 不動産投資型クラウドファンディングを成功に導くためには、物件の強みを活かした投資運営が重要

少ない投資額から投資がはじめられ、分散投資に向いている点は、不動産投資型クラウドファンディングの大きな強みです。

投資の際には募集案件の内容だけでなく運営会社のチェックも行い、損失のリスクを抑えましょう。本記事を、ご自身の不動産投資にぜひご活用ください。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

関連コラム