不動産売却

両手仲介と片手仲介の違いは?それぞれのメリット・デメリットについて解説

2022/03/03
両手仲介と片手仲介の違いは?それぞれのメリット・デメリットについて解説
  • 「片手仲介と両手仲介の違いって、何?」
  • 「両手仲介は顧客にメリットのない取引って、聞いたけど本当?」

不動産取引を検討されている方で、このような悩みを持ったことがある人も少なくないのではないでしょうか。

特に、両手仲介は悪い取引の代表のように紹介されるので、知っている人も多いと思います。

しかし、一概に両手取引だから悪いといえるような物ではありません。

では、片手仲介と両手仲介とはどういったものなのでしょうか?

また、片手仲介と両手仲介ともに利点があるが、デメリットのない取引を依頼するには、2つの違いや気をつけるポイントを理解する必要があるのです。

そこで、この記事では、片手仲介と両手仲介の違いや気をつけるポイントについて詳細に解説していきます。

ぜひ最後まで読んで、参考にしていただけると幸いです。

両手仲介とは

両手仲介とは、不動産業者が売り主と買い主の双方を仲介する取引手法のことです。

双方を仲介するため、公平性に問題があるという意見も多い取引手法になります。

両手仲介の問題点

両手仲介の問題点は以下の3つです。詳しく解説していきます。

①利益相反である

両手仲介では、高く売りたい売り主と、安く買いたい買い主の双方を1つの業者が担当するため、双方の利益を追求できません。なぜなら、片方の利益を追求すると、もう片方が不利益になるからです。
理想的な仲介というのは、売主側から見ると、売り主の利益を最大化するために、物件を高く売ろうとする必要があります。一方、買主側から見ると、買い主のために物件を安く買おうと尽力することが必要です。
このような理想的な仲介を両手仲介はおこなえないことが多いといえます。売り主と買い主の双方を同じ業者が担当するので、片方の利益を追求すると片方が犠牲になるからです。

②仲介手数料が多くえられる

不動産業者は売り主と買い主の双方を仲介するため、単純計算すると倍の仲介手数料がえられます。そのため、不動産業者が自分の利益だけを追求して、不正に両手仲介を実施することがあるのです。この不正な行為のことを「囲い込み」といいます。

③囲い込みをする

囲い込みとは、売却依頼を受けた物件を他の不動産業者に取り扱わせないようにする行為のことです。通常、物件を売却する場合には、不動産業者が「レインズ」という売却情報サイトに物件の情報を登録して、多くの不動産業者に情報を開示します。専任媒介契約以上の媒介契約では、この「レインズ」に登録する義務があるのです。
しかし、囲い込みをしている場合には、レインズに情報を登録していないか、登録していても「契約済」などと言って、他の会社の購入依頼を断る業者がいます。
このように、囲い込みをされると、売り主は高く売るチャンスを逃してしまい、短期間で物件を売却できない可能性が高くなるのです。

両手仲介のメリット

ここまで、両手仲介の問題点について、説明してきました。

このように、両手仲介は問題点も多いですが、適切な取引が実施できれば問題のない取引方法でもあります。

例えば、他の不動産業者で取引を行わずとも、買い主と売り主の双方が納得できる金額で取引ができれば、両手仲介であろうと双方にデメリットはないのです。

それどころか、適切な取引がおこなえるのなら、両手仲介をしたほうがよい場合もあります。

では、両手仲介のメリットとは、どういったものなのでしょうか?

それは以下の3つです。

  • 交渉が円滑
  • 手数料が安くなる可能性がある
  • 買い手が付きやすい

それぞれについて、説明していきます。

①交渉が円滑

取引を同じ不動産業者が実施するため、買い主と売り主の交渉が円滑です。例えば、片手仲介の場合は買い主が値引き交渉をしたいと考えて交渉の依頼をすると、間に複数の不動産業者が入るため、どうしてもやりとりに時間がかかります。
しかし、同じ不動産業者で同じ担当者の場合は間に入っているのが、一人なのですぐに連絡をとって返答をもらうことも可能です。
このように、値引きなどの交渉に手間がかからないのは、大きなメリットといえます。

②手数料が安くなる可能性がある

両手仲介の場合は双方から仲介手数料をえているため、通常よりも不動産業者が多くの収入をえることが可能です。そのため、不動産業者に仲介手数料の値下げを交渉すると、対応してくれる可能性があります。ただし、値引き交渉は最後の契約のタイミングではなく、必ず最初に行うことを覚えといてください。

③買い手が付きやすい

大手不動産業者のように、多くの顧客を抱えている会社に依頼した場合には、条件がマッチングした顧客を見つけやすいため、早期に買い手がつきやすいです。ただし、顧客数が少ない会社の場合は、長期化する可能性が高くなるので、気をつける必要があります。

片手仲介とは

片手仲介とは、物件の売却依頼をうけた会社と、物件の購入依頼をうけた会社が異なる取引手法になります。

つまり、業者が売り主か、買い主の片方を仲介する取引のことです。

売り主か買い主の一方だけを担当するため、顧客に寄り添った取引手法と言われています。

メリット

片手仲介のメリットは以下の2つです。

詳しく解説していきます。

①公平な取引がおこなわれる

片手仲介は、公平性が高いというのが、最大の特徴になります。その理由は、1つの業者が買い主か売り主の片方を担当するため、担当した側の利益を考えて行動するからです。そのため、家を売るために、しつような物件の値下げ交渉が両手仲介よりも起きにくくなります。
このように、顧客の利益を最大化しようとする姿勢で、取引がおこなわれるので、売り主と買い主の双方に利点がある取引手法といえます。

②広く買い手を探せる

「レインズ」などを使って、物件の買い手を自社の顧客以外からも探すため、よりよい条件の買い手を見つけられる可能性があります。

デメリット

片手仲介のデメリットは以下の2つです。

では、詳しく解説していきます。

①営業姿勢が消極的

業者の営業姿勢が消極的になる可能性があります。なぜなら、両手仲介よりも得られる仲介手数料が低いからです。特に、物件の価格が低い物件の場合は、えられる仲介手数料も少なくなるため、営業活動を積極的に行わない業者も存在します。
このように、業者によっては営業姿勢に問題が出る場合があるので、担当者の取り組む姿勢には注視する必要があります。

②取引が円滑におこなわれない

間に複数の会社が入るため、取引が円滑におこなわれない可能性があります。そのため、買い主と売り主間でのコミュニケーションがなかなか取れず、取引が前に進まないこともあり得るのです。
このようなことを避けるためには、信頼できる業者に依頼することが重要になります。

囲い込みを避けるためには

先ほども述べましたが、両手仲介は囲い込みなどの行為がなければ、適切な取引が可能です。

では、どのようにすれば「囲い込み」を避けられるのでしょうか?

それは以下の3つの手法で防げます。

  • 一般媒介契約を交わす
  • レインズの確認
  • 複数の業者に依頼する

一般媒介契約を交わす

囲い込みを回避するために、最も注意すべき点は一般媒介契約を交わすことです。では、一般媒介契約とは、どのような契約なのでしょうか?

まず、媒介契約とは、不動産業者に仲介を依頼するときに結ぶ契約のことです。

この媒介契約には、「一般媒介」、「専任媒介」、「専属専任媒介」の3種類があり、一般媒介契約はその中で1番制約が少ない媒介契約になります。

ちなみに、3種類のうち「専任媒介」と「専属専任媒介」は物件の販売活動を1社に限定して任せる媒介契約です。そのため、囲い込みをおこないやすい媒介契約といえます。

要するに、「一般媒介」には、複数の不動産業者に仲介の依頼できるメリットがあるわけです。

この複数の不動産業者に依頼できる契約という特徴により、囲い込みを防止することができます。しかし、当然デメリットもあります。

一般媒介の場合は、他の媒介契約と違って、レインズへの登録義務がありません。

そのため、レインズへの登録を依頼しなければ、登録をしない会社もあるので注意が必要です。

このように、物件の仲介を依頼する場合には、業者が結ぼうとしている媒介契約の種類に気をつけるようにしてください。

レインズの確認

不動産流通システムのレインズに、物件情報が登録されているかを確認することで、不動産業者が意図的に囲い込みをしようとしているかどうかがわかります。

では、どのように確認すればいいのでしょうか?それは、登録証明書を確認することです。物件をレインズに登録すると、登録証明書が発行されます。

さらに、その登録証明書に売り主専用のIDとパスワードが記載されており、レインズにログインして物件情報を確認することが可能です。

また、確認する手順は以下になります。

  1. 媒介を締結した不動産屋から「登録証明書」を受け取る
  2. http://www.reins.or.jp/  (レインズのHP)にアクセスする
  3. 画面右下の「売却依頼主向け」からログイン
  4. 「登録証明書」記載の、確認用ID・パスワードを入力
  5. 売却依頼物件を閲覧

もし取引相手がいないにも関わらず、レインズに登録されている情報が「紹介停止中」や「購入申し込みあり」などになっていた場合は、囲い込みをしようとしている可能性が高いでしょう。

また、図面などの情報をわざと少なくしている場合も注意が必要ですこのように、レインズを確認することで、囲い込みを防ぐことができます。

ですから、物件を売るときには、不動産業者からIDとパスワードを教えてもらうようにしてください。

複数の業者に依頼する

囲い込みをする場合には、物件価格を不動産業者が意図的に操作して、マッチングしづらくすることがあります。そして、自社で近い相場の買い手が見つかると、売り主に価格変更を交渉して売却をおこなうのです。

これをされてしまうと、あなたにとって好条件の買い主を見逃してしまう可能性があります。

こういった囲い込みを未然に防ぐためには、複数の業者に依頼をすることが有効になります。

なぜなら、正しい物件の相場を知ることで、囲い込みによる価格操作を知る事が出来るからです。ですから、囲い込みを防ぐ為にも、複数の業者に依頼することをオススメします。

こちらに関しても当然デメリットがあります。仲介業者が得られる報酬は成功報酬の仲介手数料のみになっていて、複数社に依頼することによって、仲介手数料を得られる確率が低くなるため、対応を後回しにしたり、そもそも対応してもらえない可能性が出てきます。

従って、いきなり複数社に依頼するのではなく、まずは一社に依頼して、その対応を見て複数社に切り替えることも一つの選択肢を言えるでしょう。

まとめ

両手仲介は、片手仲介と違い、囲い込みの対象にされるリスクが高くなります。しかし、両手仲介も注意点さえ守れば、買い手が見つかりやすいなどのメリットがある取引手法なのです。

要するに、不動産売買を成功させるためには、片手仲介と両手仲介の違いや気をつけるポイントについて詳しく知ることが重要になります。

こちらの記事を参考に、両手仲介と片手仲介をうまく活用して頂けますと幸いです。

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八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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