相続・税金

換価分割とは?メリットやデメリット、他の分割との違いを徹底解説!

2020/12/09
換価分割とは?メリットやデメリット、他の分割との違いを徹底解説!

換価分割とは不動産などを含む遺産を換金して、相続人で分けることをいいます。

相続については、多くの方が通る道です。

特に換価分割は、不動産を相続が生じた際によく利用される方法なので知らないわけにはいきません。

こちらの記事では、換価分割の手順や税金およびメリットやデメリットについて解説していきます。

不動産の換価分割とは?遺産を分割する4つの方法

亡くなった方がいた場合、相続が発生します。

その際に遺産を「どの資産を」「誰が」「どのように」して引き継ぐのかという問題が生じることになります。

遺産を分割する方法は、以下のようなものがあります。

現物分割

不動産や車、現金などの遺産を「現物」で相続人に分割する方法です。

  • メリット

不動産を相続した方は、単独で所有することが可能。

  • デメリット

法定相続分で、資産を分割することが困難なので、相続が不平等になってしまう。

換価分割

不動産などの遺産を一旦売却して現金化し、その現金を相続人に分割する方法です。

  • メリット

不動産を現金化した後に分割するため、法定相続分で相続することが可能。

  • デメリット

不動産の売却に手間がかかりやすい。

代償分割

遺産を多く相続したことによって、相続人の間で不公平が生じた際に、多く相続した方が他の方にお金を払うことによって公平に分割しようとする方法です。

  • メリット

不動産を特定の相続人が相続することが可能

  • デメリット

不動産を引き継いだ方は、他の方に代償金を支払わなければならないので、経済的な負担がかかってしまう。

共有分割

不動産を法定相続分の「共有持分割合」で分割する方法です。

  • メリット

法定相続分で分割が可能なので、手間がかからない。

  • デメリット

先々、二次相続や三次相続によって、相続が複雑になってしまうと売却したくてもすぐに出来ない可能性がある。

換価分割と代償分割の違いとは?

相続した不動産を売却する際に、換価分割と代償分割のどちらかの方法を選択する形となります。

効果が似ているためどちらが良いのか判断はつきにくい方もいらっしゃいます。

具体的なシミュレーションでみてみましょう。

前提条件

  • 被相続人(亡くなった方):父
  • 相続人(息子3人):長男、次男、三男(長男は亡くなった父と同居)
  • 相続財産:不動産(自宅)2,000万円及び預貯金1,000万円

換価分割の例

長男、次男、三男が共同で売却し、売買代金2,000万円と預貯金1,000万円を1/3ずつ相続することになります。

シミュレーション結果として、それぞれの方の譲渡所得税は下記となります。

①  長男

長男は、被相続人と同居していたので、居住用不動産を譲渡の3,000万円控除の適用を受けることができます。

(※同居していない次男と三男は適用対象外)

2,000万円(売却金額)×1/3-100万円(取得費+譲渡費用)×1/3-3,000万円(特別控除)≒-2,366万円

つまり、長男の相続税は「0円」になります。

※「取得費+譲渡費用」を売却金額の5%として計算しています。

②  次男

次男の相続税は下記にて算出することができます。

{2,000万円(売却金額)×1/3-2,000万円(取得価格)×5%}×20.315%(長期譲渡)≒115万円

③  三男

次男とは次男と同様です。

代償分割の例

長男が不動産(2,000万円)と預貯金(1,000万円)を全て(3,000万円)相続します。

次男と三男に3,000万円を3等分した1,000万円ずつを代償金として支払い、相続した不動産を長男が単独で所有することになります。

シミュレーション結果として、それぞれの方の譲渡所得税は下記となります。

①  長男

長男は、被相続人と同居していたので、居住用不動産を譲渡の3,000万円控除の適用を受けることができます。

(※同居していない次男と三男は適用対象外)

 2,000万円(売却金額)-100万円(取得費+譲渡費用)-3,000万円(特別控除)

 =-1,100万円

長男の相続税は「0円」になります。

※「取得費+譲渡費用」を売却金額の5%として計算しています。

②  次男

次男には納税義務ありません。

③  三男

三男にも同じく納税義務ありません。

どちらの方が良いかはケースバイケースとなります。

ご自身では計算方法が分からない場合は、専門家に相談してみるとよいでしょう。

不動産を換価分割する際の手順

相続人同士で換価分割の合意

相続人のうち、換価分割に合意しない者がいる時点でこれ以上先には進めません。まずは相続人同士で合意を取るようにしてください。

方向性の確認

相続人の中で代表相続人を選定し、分割割合も決めておきます。

専門家への相談をするか否かも話し合っておきましょう。

専門家の選定

相続の手続きは司法書士や行政書士に、また相続税の申告は税理士に依頼することになりますので、専門家の選定を進めましょう。

相続登記を行う

不動産の名義が、亡くなった方のままだと売却することが出来ません。

法務局で相続人の方へ名義変更を行いましょう。

代表相続人の方へ名義を集約する場合は、遺産分割協議書にその旨の文言の記載が必要です。

売却の方針を決定

不動産をそのまま売却するのか、取り壊しをしてから土地を売却するのかを決定しましょう。

もし、「居住用財産(空き家)を売ったときの特例」で3,000万円の特別控除を利用する場合は、建物の取り壊しが必要となります。

出典:国税庁

不動産業者の選定

相続人同士で、どの不動産業者へ依頼するのかを決定します。

相続ということで複数人がお金に絡みます。適当な対応は、親族間でのトラブルに発展してしまうリスクがあります。

相続に関して実績がある業者を複数候補として挙げ、その中から慎重に選定するようにしましょう。

購入希望者の募集

これまでに決定してきた方針、条件をもとに購入希望者を募集します。

価格や瑕疵担保責任、引き渡し時期などを確定します。

売買契約を行う

売買契約及び売主としての義務(建物の取り壊しや遺品整理など)を引渡し日までに完了させます。

引渡し

引渡しに際して、印鑑証明書など必要となるものを調べておきます。(司法書士などに相談すれば教えてもらえます。)

決済日に買主から売買代金を受け取り、引渡しが完了します。

代表名義人からの分配

代表名義人の名義で売却した際には、遺産分割協議書の内容に応じて分配を行います。

お金が絡むため、相続人とは関係のない第3者に立ち会いしてもらった方が安心です。

譲渡所得税の申告

税理士に依頼するのか検討を行います。

なお、譲渡所得税の申告は、代表相続人だけではなく売買代金を受領したすべての相続人が行う義務があります。

「居住用財産(空き家)を売ったときの特例」を利用する際には、このタイミングで手続きを行います。

不動産を換価分割するメリット

1円単位で分割が可能

換価分割は、不動産を現金化して、現金を相続人で分けることになります。

よって、1円単位まで細分化して分けることができるため、平等な相続が可能になります。

相続税の節税対策になる

換価分割は、相続した後に不動産を売却する流れとなっています。

不動産は、時価と比較して相続税評価額の方が低くなることが一般的です。

相続する際には不動産の形として資産を持っている方が資産総額は低くなります。

相続する前に現金化を行うよりも、相続した後に現金化をした方が相続税は低くなるのです。

よって、換価分割は相続税を節税できることになります。

不動産を換価分割するデメリット

売却に時間や手間がかかりやすい

換価分割する・しない以前に、不動産を売却するにはある程度の期間を要します。

また、売却に際しては仲介手数料が発生しますが、こちらの手数料は相続人が相続分に応じて支払うことになります。

また、「遺産分割協議書」を作成する必要もあり、手間がかかりやすいです。

税金(譲渡所得税)がかかる可能性がある

売却することによって、税金がかかる可能性があります。

税金がかかることがあれば、同時に確定申告する手間や納税を行う手間もかかります。

特に、譲渡所得が発生することによって生じる所得税や住民税については、相続前によく理解しておく必要があります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

換価分割の手順や税金、およびメリットやデメリットについて解説してきました。

相続自体が多くの方に初めての経験です。

とは言え、人生で何度も経験するものでもありませんで、換価分割に関して詳しい方も多くないと思います。

困ったことや不安なことがあれば、専門家に任せることによって、安心して手続きを進められるはずです。

ぜひ、相談してみてみると良いでしょう。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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