相続・税金

不動産投資を行う上で知っておきたい分離課税|仕組みやメリットを徹底解説!

2020/12/16
不動産投資を行う上で知っておきたい分離課税|仕組みやメリットを徹底解説!

分離課税とは、複数ある所得を合算することなく分離して課税することを指します。

不動産投資を行う上で、税制を理解し上手く活用することが成功への近道となりますが、分離課税とはいったいどのようなものなのでしょうか。

こちらの記事では、分離課税の仕組みやメリットを解説していきます。

所得税の課税方法

日本における所得税の課税方法は、2パターンあります。「総合課税」と「分離課税」です。

総合課税の対象となるのは、事業所得や給与所得などです。

所得を全て合算した上で合計額に対して累進課税によって税率が決定されますが、分離課税の対象となる所得については、他の所得とは合算しません。

それぞれの所得で定められている税率をかけることによって納税額が決まります。

総合課税

総合課税は、1年間の間に得た給与所得や事業所得などを全て合算し、その合計額に対して累進課税の税率をかけることによって納税額が決定されます。

住民税の税率は、所得金額に関わらず一律10%です。

出典:国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/2260.htm

分離課税

分離課税は、所得を合計せず、それぞれの所得に応じて定められている税率に応じて課税される仕組みです。

なぜ、分離課税という制度があるのでしょうか。

例えば、家を売却した場合や、退職金を得た場合には年収より大きな金額が入ってくるケースが少なくありません。

その際に、総合課税によって累進課税率をかけられてしまっては、税負担がとても大きなものになってしまいます。

その負担を軽くするために、分離課税という制度があるのです。

確定申告を行う際には、皆さん自身の所得が総合課税の対象なのか分離課税の対象なのかの確認が必要です。

源泉分離課税と申告分離課税

源泉分離課税

源泉分離課税とは、会社から支給される給与や預貯金の利子などで、給与や利子を受け取った段階で所得税が既に天引きされているものを指します。

収入金額の20%(2037年12月31日までは復興特別所得税2.1%を上乗せして20.315%)が源泉徴収される形となります。

この他には、割引債の償還差益が該当しますが、18.378%が源泉徴収されます。

申告分離課税

申告分離課税になっている所得としては、土地や建物を譲渡した際の譲渡所得山林所得、株式の譲渡所得などがあります。

こちらは、所得を受け取った時点では税金がかかっていません。

一定額以上の利益が出た際には、確定申告を行って税金を納めることが必要になります。

総合課税と分離課税の対象となる所得

以下に、総合課税の対象と分離課税の対象例を示しておきます。

総合課税の対象になるものとしては、会社から支給される「給与所得」や不動産経営での家賃収入などを計上する「不動産所得」、その他「利子所得」、「配当所得」、「事業所得」、「雑所得」などが該当します。

「譲渡所得」も総合課税の対象となりますが、土地・建物の譲渡による譲渡所得については、こちらには含まれません。

分離課税の対象となるものとしては、「土地・建物の譲渡所得」や「配当所得」、「退職所得」、「山林所得」などが含まれます。

なお、不動産投資をしている方に、ここで理解しておいていただきたいのは、

  • 不動産の家賃収入:不動産所得 → 総合課税
  • 不動産の売却収入:譲渡所得  → 分離課税

ということです。

分離課税のメリット

日本における所得税は累進課税制度となっており、所得が大きくなるにつれて所得税率も大きくなる仕組みになっています。

分離課税によって、所得を分離して計算することで税率を抑えることができます。

不動産を売却した際の税金の仕組みとは

ここで、実際に不動産を売却した際の税金についてみていきましょう。

不動産を売却した際に得ることのできる利益のことを譲渡所得といいます。

譲渡所得は、

  • 「売却金額①-(取得費②+譲渡費用③)-特別控除額=課税譲渡所得金額」

で計算されます。

  • 売却金額

売却金額とは、実際に不動産を売却した金額です。

  • 取得費

取得費とは、主に購入代金及び手数料や設備費や改良費の合計金額から所有期間中の減価償却費を除いた金額となります。

  • 譲渡費用

譲渡費用とは、不動産を売却するために直接かかった費用です。

主に仲介手数料、建物の取り壊し費用や印紙税などが含まれます。

居住用財産を売却した際に、譲渡所得から最高で3,000万円まで控除できる特例

これによって、特別控除前の段階(収入金額-(取得費+譲渡費用))で3,000万円に満たない場合は、非課税となります。

しかし、「自分が住んでいる家屋を売却するか敷地や借地権を売却」や「住まなくなってから3年が経過する年の年末までに売却」や「買う側と売る側で血縁関係があるなどの特別な関係の場合は適用外」などの条件があるので、注意が必要です。

詳しくは、下記からご確認ください。

出典:国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3302.htm

譲渡所得による分離課税の計算方法とは

上記の特別控除を受けた上で、課税譲渡所得金額がマイナスにならない場合には、課税譲渡所得金額に所定の税率をかけて所得税額を決定します。

税率は、所有期間が5年を境にして変わるので注意が必要です。

①長期譲渡所得の場合(所有期間が5年を超える場合)

長期譲渡所得の場合の税率は、以下の通りとなります。

  • 「課税譲渡所得金額×15%(15.315%)」

これに住民税の5%が上乗せされて、合計は20.315%となります。

※2037年までは、復興特別所得税がかかるため15.315%が税率です。

出典:国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3208.htm

②短期譲渡所得の場合(所有期間が5年以下の場合)

短期譲渡所得の税率は、以下の通りとなります。

  • 「課税譲渡所得金額×30%(30.63%)」

これに住民税の9%が上乗せされて、合計は39.63%となります。

※2037年までは、復興特別所得税がかかるため30.63%が税率です。

出典:国税庁

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3211.htm

所有期間が5年を超えるケースと、そうでないケースとでは、税率の部分で非常に大きな差があるのがご理解いただけるかと思います。

所有期間が5年前後で非常に微妙なケースでは、事前に税務署などに相談しておいた方がよいでしょう。

売却益を大きく見込まれる場合は、売却時期を遅らせることも有効な手段です。

不動産の保有期間中でも節税効果が得られる

ここまで読んでいたただいた方は、総合課税と分離課税では、税率が大きく異なることがご理解いただけたことと思います。

個人で不動産投資を行っている場合、減価償却費を計上して税の繰り延べ効果を得ることで大きなメリットを得られます。

特に、累進課税において税率が高い人ほど節税効果を享受出来ることになります。

万が一、売却した際に譲渡損失が出た場合

不動産は、購入時より売却時で価値が下がるケースが一般的です。

そのため、売却損が出るケースもごく普通にあります。損をしているので、その所得に対して課税されることはありませんし、売却した年のその他の所得と合算してマイナスを相殺することができます。

つまり、損益通算が可能になります。

これによって、万が一売却損を出してしまっても、所得税や住民税を減らすことができるのです。

従って、不動産売却で損をした場合も、確定申告するようにしましょう。

不動産投資において申告分離課税を申告するには

不動産投資において、売却により譲渡所得が発生した場合には申告分離課税を行う必要があります。

申告分離課税を行う際には、不動産投資をしている方が毎年提出する「確定申告書B」に加えて「第三表」を提出する必要があります。

作成に際して、心配な点がある方は税理士などに相談しながら進めるとよいでしょう。

●確定申告書B 第一表

●確定申告書B 第二表

●分離課税用 第三表

まとめ

いかがでしたでしょうか。

分離課税の仕組みやメリットを解説してきました。

不動産投資において、税制を正しく理解し、上手く活用することが成功への近道となります。

分離課税のみならず、税金面で疑問点や不安な点がある方は、税理士などに相談していくとよいでしょう。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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