不動産投資とは

事故物件になったらどうする?誰でもあり得る投資リスクへの対策法を解説

2020/12/16
事故物件になったらどうする?誰でもあり得る投資リスクへの対策法を解説

家賃収入のために貸し出していた物件が事故物件になったら、投資者はどう対処すれば良いのでしょうか。事故物件はどの投資者にも平等にあるリスクである一方、事故物件の定義や未然に防ぐ対策法などは曖昧です。

そこで今回は、事故物件になったらどうすればよいのか、誰にでもあり得る投資リスクへの対策法を解説します。

「事故物件」とは?

まずは事故物件の定義や種類についてみていきましょう。

事故物件の定義

よく耳にする「事故物件」というフレーズ。実は、「何をもって事故物件とするか」という定義が明確に決まっているわけではありません。しかし、一般的に事故物件とは「物件の購入者や賃貸契約者が敬遠すべき事情のある物件」といわれています。例えば、賃貸している不動産に「事故があった」とみなされる事例は次のとおりです。

  • 貸し出していた室内で自然死、自殺、他殺などで人が亡くなった
  • 強盗や放火などの事件があった
  • 幽霊がでるというウワサがある
  • 反社会的な入居者がいるというウワサや実態がある

つまり、さまざまな理由で精神的にその不動産に住みにくくなる状態を、「事故」と広く定義づけているのです。

事故物件の4つの種類

「事故物件」と聞くと、多くの場合「自殺者や殺人事件があった物件」と思われがちですが、実は事故物件にはさまざまな種類があります。この章では、代表的な4種類の事故物件についてみていきましょう。

①心理的瑕疵物件

「心理的瑕疵物件」とは、その不動産に住む際に、気持ちの面で好ましくない物件です。瑕疵(かし)とは、傷や欠陥のことで、この状況における瑕疵とは、例えば自殺者や殺人などにより、物件の価値を損ねてしまった状態を指します。その他、反社会勢力や宗教団体の拠点である場合も、心理的瑕疵物件として区分されます

②物理的瑕疵物件

「物理的瑕疵物件」とは、物件に物理的な欠陥がある物件です。例えば、シロアリが発生する、雨漏りがする、排水管が詰まっているなどの状況を指します。つまり、物件そのものの構造や設備面に欠陥がある状態が物理的瑕疵です。

③環境的瑕疵物件

「環境的瑕疵物件」とは、物件を取り巻く環境に何らかの問題がある物件です。例えば、物件の周辺に火葬場や産業廃棄物処理施設などの嫌悪施設があったり、電車や大型トラックによる騒音トラブルがあったりする状況を指します。物件そのものに何の問題がなくても、周辺環境に不快要素があると、環境的瑕疵に区分される点が特徴的です。

④法的瑕疵物件

「法的瑕疵物件」とは、違法状態にある物件です。例えば、都市計画法や消防法などの基準を満たしていない物件を指します。その他、耐震基準を満たしていない物件や建蔽率をオーバーしている物件なども法的瑕疵物件に区分されます。つまり、地域や国の基準に違反している物件が法的瑕疵物件です

事故物件になったら「告知義務」が生じる

事故物件になると、宅地建物取引業法に基づき、契約者への告知義務が生じます。この章では、告知義務の内容や判断基準、義務期間についてみていきましょう。

事故物件における告知義務の内容

宅地建物取引業法に基づいた告知義務とは、主に「重要事項説明書への記載」と「契約者への告知」です。告知義務に関しては、宅地建物取引業法における第35条の「重要事項の説明等」と、第47条の「業務に関する禁止事項」に明記されています。

第35条は、重要事項説明が義務である点についての条文です。契約者との権利関係や設備関連の金銭的な負担など、物件を購入(または賃貸)した後に契約者の利益が損なわれる可能性のある重要事項を、説明する義務について言及しています。

また第47条では、第35条に明記されるような重要事項に関し、契約者の判断が揺らぐような事柄について、説明しなかったり虚偽を言ったりする行為を禁ずると定めています。

事故物件における告知義務の判断基準

事故物件かどうかの判断基準は事故物件の定義と同様に曖昧です。よって、事故物件の判断基準に関しても物理的な側面だけでなく、心理的な側面も考慮することが重要です。しかし、人の感じ方やとらえ方は人それぞれ違うため、法律で心理的な側面を定義づけするのは難しい問題といえます。事故物件といえるかどうか、個々の状況をみての判断が必要です。

過去の事例からみる告知義務の期間

事故物件の告知義務は、一般的に事故後に初めて入居する賃貸人や物件の購入者にあるといわれています。しかし、その次の賃貸人や購入者については、特段の事情がない限り、事故物件の告知義務は生じません。ここでいう「特段の事情」とは、告知義務を回避するために投資者自身が事故物件に住んだり、短期間だけ賃貸契約者として契約させたりするケースなどがあげられます。このような場合は、次の契約者に対しても告知義務が生じるので注意してください。

判例では2年〜3年経過したら事故物件だという告知義務はなくなるとされています。心理的瑕疵に関しては年月の経過に伴い瑕疵要因は薄まるとみなされる傾向にありますが、それぞれのケースや状況を総合的に考え合わせながら、告知義務の必要性を吟味してください。

事故物件になったら起きるリスク

事故物件になったら、さまざまなリスクが生じます。この章では、事故物件になった場合に考えられる、マイナス面についてみていきましょう。

修繕や供養の費用と手間がかかるリスク

自然死や事故によって物件内で人が亡くなった場合、発見が遅れると部屋に大きな痕跡を残す可能性があります。部屋を元の状態に復元するには、シミや臭気を無くすために床や壁の張り替えといった大がかりな修繕が必要です。状況によっては多額の修繕費用がかかる場合もあります。

そのほか、心理的な不快感を軽減させるために、部屋を供養する費用も必要です。このような費用は遺族にも請求できますが、事情によっては酷に感じ、躊躇してしまう場合も考えられます。

家賃の値下げを要求されるリスク

最近では、事故物件の情報だけを集めたサイトがあり、誰でも簡単にどの物件が事故物件かを知ることが可能です。したがって、告知すべき期間が経過した後も「家賃を安く抑えたい」という人が、事故物件である事実を理由に家賃交渉の手段として用いるケースが考えられます

空室率が上がるリスク

物件の悪いウワサが住人に広がると、空室率が上がるリスクがあります。マンション内の住民が事故の事実を聞きつけて次々と退去してしまったり、事件性があればそれだけで全室が空室になったりする可能性があるからです。

隣室や下の階が事故物件になったら影響はある?

隣室や下の階など、事故があった部屋以外の物件に関しては、原則として事故物件にはなりません。過去に裁判で争われたケースにおいて、「隣の部屋は事故物件に該当しない」という判決が出されたこともあります。よって、アパートやマンション内で事故が発生しても、その1棟すべてが事故物件とはなりません。

ただし、物件の条件や事故の内容によっては判例とは異なる扱いになる可能性があるため、完全に大丈夫とはいえないのが現状です。トラブルを未然に防ぐためにも、過去のマイナス要素に関しては、契約前に可能な限り告知しましょう

事故物件になったらすべきこと

事故物件になったら、どう対処すれば良いのでしょうか。

誠実な管理会社に相談して迅速な対応をとる

事故物件のリスクを完全に無くすことは不可能ですが、被害を最小限に抑えるには、誠実な管理会社とタッグを組むしかありません。

「優秀で誠実な不動産管理会社は金のわらじを履いてでも探しに行け」とよくいわれるように、管理会社は投資者にとって最も重要なパートナーです。どの投資者にもあり得る「もしも」に備えて、リスク管理に関して十分な仕組みをもっている管理会社と一緒に、大切な資産を守る取り組みを日頃からお心がけください。

状況によっては事故物件専門の業者に相談する

最近では、事故物件を専門に取り扱っている管理会社もあり、少しでも有利な条件で賃募集をしてくれる管理会社も存在します。そのような業者を見つけることで、金銭的なリスクを少しでも最小化することが可能です。投資者目線でサポートしてくれるパートナーを見つけると、数年の辛抱で事故物件の影響が徐々に薄れていく好転が期待できます

まとめ

今回は、「事故物件になったらどうするか」について、事故物件の定義や投資への影響、リスクなどを交えて解説しました。要点は次の通りです。

  • 事故物件には明確な定義はない。しかし、「物件の購入者や賃貸契約者が敬遠すべき事情のある物件」と一般的に区分されている
  • 事故物件になったら物件の契約を検討している人(賃貸希望者や購入希望者)への告知義務が生じる
  • 事故物件になったら修繕費用や空室リスクがある

事故物件は誰にでもあり得るリスクであり、投資者の努力だけではどうにもならない問題です。リスクを最小限に抑えるためには、信頼できる不動産投資会社とタッグを組み、迅速な対応が必要となります。本記事で紹介した内容を、ぜひお役立てください。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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