不動産投資とは

東京の不動産投資額が世界首位に!有事における日本買いが促進する背景とは?

2021/01/28
東京の不動産投資額が世界首位に!有事における日本買いが促進する背景とは?

新型コロナが世界経済に大きな打撃を与え続けるなか、投資への意識に変化はあるのでしょうか。実はこのような不確実性の強い有事下に、東京の不動産市場が海外の機関投資家から注目を集めています。

アメリカを中心に商業用不動産サービスを展開している、ジョーンズラングラサール(JLL)の調査によると、新型コロナによって世界的な混乱が続くなか、東京を中心とした日本の不動産への投資の動きが高まっていると明らかになりました。

なぜ危機的な状況においてこそ、東京の不動産は世界から選ばれるのでしょうか。そこで本記事では、東京の不動産投資額が世界首位になった背景や、今後の見通しについてみていきます。

東京への不動産投資額が世界首位になった背景について

東京への不動産投資額が世界首位になった背景について、JLLの調査内容や世界の上位都市のランキングをあわせてみていきましょう。

アメリカJLLにおける調査結果の内容

JLLによると、2020年1月〜9月における東京の商業用不動産投資額が193億ドル(約2兆円)で、世界首位だったと明らかになりました。日本の不動産への直接投資の割合は、2020年1月〜9月期で38%アップし2019年の1月〜12月期と比較しても増加。前年同期のランキングについても、世界4位からの急上昇でした。

投資額の上昇はあったものの、投資対象によってはマイナスも見受けられます。例えば、全体に占めるオフィスへの投資割合は、1月〜9月に31%と2019年の40%から9%減少しました。都心エリアのオフィス不動産は規模を縮小しているケースが増加しており、今後の動きは不確実です。しかし反面、ネット通販の利用拡大や巣ごもり消費の影響で物流施設の人気は30%と躍進。安定した家賃収入が期待できる住宅への投資(22%)へと続いています。

東京以外の不動産投資額の世界上位都市

東京以外の不動産投資額の具体的な数値をみてみましょう。世界の主要都市への不動産投資額は次の表の通りです。

(参照:JLL 2020年1-9月期 投資活動が最も活発な10都市

第2位はソウルで142億ドル、3位がロンドンの134億ドルです。東京が世界首位となるのは、2008年のリーマンショック以降で初めてといわれています。

大阪エリアも世界18位にランクインの快挙

東京だけでなく、大阪への投資も活発化しています。JLLが世界のオフィスやホテル、物流施設などを対象にした投資額の調査によると、2019年の1月〜9月における大阪エリアも45億ドルの18位にランクインしました。大阪エリアは外資を中心に大型の物流センターの建設が続いており、今後さらなる躍進が期待できます。

東京の不動産投資額が世界首位になった理由とは?

世界的な不況下において、世界から東京への不動産投資が注目を集める理由はどこにあるのでしょうか。考えられる主な理由を3つご紹介します。

当サイトのプロデューサーである、八木チエのYou Tubeチャンネル「不動産投資の女神チャンネル」にて、分かりやすく解説する動画も公開しておりますので、ぜひご覧ください。

参照:不動産投資の女神チャンネル

理由1:不動産価額の安定性

1つ目の理由は、「不動産価額の安定性」です。東京の不動産価額は世界からみると割安と長くいわれており、海外投資家からも人気があります。では、なぜ東京の不動産が割安といえるのでしょうか。利回りが高い物件の条件を「購入費の安さ」と「家賃の高さ」とした場合、原則としてこれら条件の差が大きいほど高い運用益を見込むことが可能です。よって、東京の不動産の購入費と家賃について世界の現状と比較してみていきましょう。

まずは購入費用についてです。日本不動産研究所の「国際不動産価格賃料指数(2020年)」では、世界の主要都市における高級マンションの分譲価格を指数で比較しています。このデータによると、東京都南区麻布地区のマンションの分譲価格を100とすると、ロンドンは約7.5割高の175.8、香港は2倍以上の205.2です。購入価格が高いと、高い家賃設定をしなければ安定的な利回りを確保は難しくなります。香港以外にも、とくに台北や上海などアジアを中心とした不動産は、東京よりも価格が高い傾向にあるため、アジアへの投資を見込む海外投資家にとっては「東京の不動産の購入価格は割安」なのです。

次は「家賃の高さ」についてです。「グローバ・プロパティー・ガイド」の調査によると、東京は市内中心部の一等地の住宅街で借りるのに、香港・ロンドン・ニューヨーク・イスラエル・スイスに次ぐ「第6の都市」にランクされています(2020年12月現在)。

東京の不動産の購入費用が割安である事実を照らし合わせると、東京の不動産は家賃相場が高いため運用益が出やすい点が特徴的です。また、東京は治安もよくて安全なので、旅行者からも好評なお買い得都市とされています。例えば、アメリカの経済雑誌、グローバルファイナンスが公表した「住みやすい都市」の2020年ランキングでは東京が首位です。購入価格の安さや家賃の安さ、人気の高さを総合的にみても、東京の不動産はコスパのよい投資先であるとわかります。

理由2:長期にわたる低金利が期待できる

2つ目の理由は「金利の低さ」です。コロナ後の経済対策として、日本ではかなりの長期にわたって低金利の状態が維持されると考えられます。つまり、低コストでレバレッジをかけながらの投資リターンの引き上げは当面続くと期待可能です。

またIT技術やデータ活用の発展により、比較的利回りの高い周辺地域や、地方中心都市における不動産市場の動きも把握しやすくなれば、他のアジア諸国と比較しても大きな不動産市場を持つ東京はさらに見通しがよくなると予測できます。

理由3:衛生面の高さ

3番目は「衛生面の高さ」です。日本は世界的にみても新型コロナによる死者数が圧倒的に少ないと指摘されています。例えば、BBCの「【解説】なぜ日本では新型コロナウイルスの死者が不思議なほど少ないのか」という記事では、3密や衛生管理(手洗いやマスク着用)などを日本人の多くが守った点を理由の一つとして示唆しています。

ただ、この調査は2020年の7月5日段階の状況をベースにした記事であるため、今後の動向によってはなんらかの変化もあるでしょう。しかし、現段階では世界と比較して日本の衛生面に対する意識の高さが、世界的な信頼や安心に寄与しているとの見方ができます。

東京の不動産投資額は世界首位をキープできる?

JLL日本法人によると、2021年以降も利回りの厚い物流施設などに資金が流入する見解を示しています。コロナ後、東京の不動産投資額はこのまま世界首位をキープできるのでしょうか。今後の見通しと課題を解説します。

今後の見通し

20201年の見通しについて、JLLリサーチ事業部ディレクター・大東雄人氏は、「各中央銀行の金融緩和により投資待機資金は増えており、政治面が安定し市場規模も大きい日本への資金流入は続く」と述べています。また、オフィスや住宅、物流施設のほか、データセンターなどに投資対象が広がっていくとも指摘しました。

コロナの収束時期は不確実なものの、日本の不動産市場は堅調に推移するともいえます。その他東京に限らず、世界的に定期的な収入を生む資産が不動産や株しかない現在において、移住や複住、一極集中否定の議論はありますが、今後も都化トレンドは続くという見解が多いようです。

今後の課題

日本の不動産市場における今後の課題は、「不動産市場の透明性」です。JLLが9月に公表した世界各国・地域の不動産市場の情報開示姿勢などを評価した「透明度調査」では、日本は16位と前回から順位を下げています。順位を下げた背景として、「ビルディングの管理費用や取引額の開示などが十分でない」との指摘もありました。今後、さらに海外投資家を日本の不動産市場に呼び込むためには、データの積極的な開示が必要といえるでしょう。

まとめ

今回はJLLの調査結果をもとに、東京の不動産投資額が世界首位になった背景や今後の見通しを解説しました。要件は次の通りです。

  • 東京の不動産投資は世界の主要都市に比べて不動産価格が安く、有事においても安定した利益を得られると世界の投資家から期待されている。
  • 不確実性の高い情勢において、海外からの資本流入は今後も期待できる。
  • さらに海外投資家を呼び込むには、日本の不動産市場の透明性が課題。

IT技術やデータ管理技術が発展すれば、今後ますます日本の不動産市場はさらなる活性化が可能です。東京や大阪を起点とした日本の不動産市場への人気は、今後ますます加速するでしょう。本記事でご紹介した内容を、ぜひお役立てください。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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