天才物理学者のアルベルト・アインシュタインが「人生最大の発明」とまで言った「複利効果」。実は不動産投資でも、この複利効果は活用できることをご存知でしょうか。複利効果を用いれば時間を味方につけ、お金がお金を生むサイクルを作り出すのも夢ではありません。
そこで今回は不動産投資の複利効果について、銀行預金との違いや事例などを交えて解説します。複利効果の仕組みを不動産投資に活かしたい方は必見です。
複利とは、複利法によって計算される利子を指します。そして複利効果とは、元金によって生じた利子を次の元金に入れ、元金だけでなく利子にも次期の利子をつけることです。複利は次の計算式によって算出されます。
なお、複利とよく一緒に引き合いに出される「単利」は、投資の元本のみに利回りがつくことです。単利は次の計算式によって算出されます。
計算式からわかるように、複利の計算は掛け算であるのに対し、単利の計算は足し算によって算出されます。複利効果を活用した投資とは、投資で得た利益を再び投資にまわすことです。利益が利益を生んでふくらむ効果があるため、短期間では大きな差がなくても、長期になると複利の効果は大きくなります。1年や2年といった短い期間では不可能なことも、時間を味方にすれば資金を雪だるま式に増やすことが可能です。
複利効果の概念が理解できたところで、次は複利効果の特徴についてです。この章では、不動産投資の利回りと銀行預金の利息の違いを解説します。
不動産投資の表的な複利効果は、物件ごとの利回りです。他の投資とは異なり、入居者からの家賃収入を借入金の返済に活用できる特徴があります。キャッシュフローを考慮した投資運用をすれば、利益を得ながらローン返済も可能です。支出を抑えながら資産形成をし、ローン完済後には家賃収入を他の投資にまわせば、さらなる複利効果が期待できます。
銀行預金の代表的な複利効果は利子です。一定の利子が約束されている銀行預金は、他の投資よりもどれくらいの複利効果があるのかを、事前に把握しやすい特徴があります。ただし、近年の銀行預金の利子は非常に少なく、お金がお金を生むシステムと言い難いのが現状です。大手銀行が設定している普通預金の利子は0.001%程度。定期預金の場合は約0.01%ともいわれています。
銀行預金と不動産投資は、どちらも保有期間が長いほど総額が大きくなる特徴があります。しかし、一般的に不動産投資の方が高い時間対効果を得ることが可能です。銀行預金はあらかじめ金利が決まっているため、得られる複利効果を事前に把握できますが、利子による恩恵は実感しにくいのが現状です。
一方、不動産投資は入居率に応じて運用状況に変動があるため、複利効果の予測立てが銀行預金と比べると不安定な側面があります。しかし、家賃収入をローン返済にあてながら、うまくキャッシュフローをまわせられれば、銀行預金よりもはるかに効率的に多くの資金形成が実現可能です。
実際に家賃収入がどのように複利でまわされるのか、次の事例をもとにみていきましょう。
【物件条件】
1部屋を保有した場合の利益:300万円×5%=15万円
20年後の累計利益:20年×15万円=300万円
一方、複利の累計利益(概算)は次の表のとおりです。借入額や家賃、利回りなどはわかりやすくするために、1部屋目の物件と同じ数値を設定しています。
経過年数(年後) | 保有数(部屋) | 1年の利益(万円) |
5 | 2 | 30 |
10 | 3 | 45 |
15 | 4 | 60 |
20 | 5 | 75 |
累計 | 810 |
5年ごとに1部屋ずつ物件数が増えると仮定した場合、物件を増やして複利効果を活用すると、20年後には約810万円の利益が生まれるとわかります。
複利効果の基本的な概念や不動産投資での実際の事例が理解できたところで、次は主な利点についてです。この章では3つのメリットを解説します。
複利の計算式は、毎年の収益を運用元本に組み込むため、年数が経過するごとに速いスピードで資産形成ができます。
例えば、元本300万円の場合、複利と単利の利益を比較すると、5年で8万円の差が20年後には196万円もの差となります。
経過年数(年) | 単利(万円) | 複利(万円) |
5 | 375 | 383 |
10 | 450 | 489 |
15 | 525 | 624 |
20 | 600 | 796 |
運用のスタート時点では複利運用の効果は把握しづらいものの、長期運用するほど大きな効果を発揮するとわかります。不動産投資は長期運用を基本とするため、複利運用と相性のよい投資法です。
複利運用は利益を再投資するため、資金効率が高い点も特徴的です。事例で示した通り、再投資で利益を増やせば加速度的に資産を増やせます。複利も不動産も時間を味方にしながら利益を最大化できるため、効率的に大きな資産形成を目指したい方は複利運用がおすすめです。
不動産投資はFXや株式などの投資と異なり、投資ローンを組むケースが多い点が特徴的です。不動産投資で複利運用を用いると、利益をローンの返済と投資にまわしながら同時進行で資産を増やしていけます。不動産への再投資以外にも、株式投資や投資信託などの一般的な資産運用へと活用可能です。複利運用は汎用性が高い資産運用手段であり、自然にお金がお金を生み出すサイクルが醸成されます。
一方、利点があれば注意すべき点もあります。不動産投資の複利効果の代表的な注意点を2つみていきましょう。
投資用物件の購入には大きなお金が必要となるため、一般的には投資用のローンを利用します。必然的に借入総額も大きくなるため、黒字がでるキャッシュフローかの念入りな試算が必要です。利益がでてローンを順調に返済できるサイクルが機能している場合だけでなく、必ずサイクルが壊れた事態もシミュレーションしておくと安心でしょう。
基本的には家賃収入からローンを返済するため、家計を圧迫する心配はありません。しかし、複数の物件を所有する場合は、それぞれの物件の利回りやリスクなどの総合的な把握が重要です。
複数の物件を所有すると投資運営を事業とみなされて、事業税が課される可能性があります。具体的には10室以上の部屋もしくは5棟以上の家屋は、事業的規模に該当する事例です。投資を始めたばかりの方は事業税の心配をする必要はありませんが、将来的に税金のリスクが生じる点はご注意ください。事業規模を考えている場合は、事業の法人化や計上できる経費の見直しなどによって節税対策が期待できます。
最後に、不動産投資の複利効果を最大限に活かすコツについて解説します。主なポイントは次の3つです。
不動産の複利運用は、物件から生まれたキャッシュフローを安全に再投資できるかを見極められるかがポイントです。物件それぞれの築年数や空室率、環境リスクなどは多種多様なため、シミュレーションで同じ条件を想定するのが難しいケースがあります。
また、物件そのものの状態以外にも、資金をどのような金利で借りているかもポイントです。変動金利での借入の場合は、金利の変動によってどのような影響を受ける可能性があるのかをチェックし、最悪のケースを想定しながら戦略を詰める必要があります。
黒字経営ができたからといって、すぐに裾野を広げるのではなく、ある程度資産ができてから複数所有を目指します。利益をあげられると、予期せぬ出費に動じる必要がなくなりますし、将来的により資産価値の高い物件への投資も可能です。
一度複利運用がうまくいくと、やり方を再現してさらに利益を増やす確率がアップするともいわれています。厳格で正しいキャッシュフローを身につければ、利益を高めるうえで効果的です。
ここまで不動産投資における複利効果について解説しましたが、「1部屋の所有でもリスキーなのに、2部屋も3部屋も所有するのはリスキー」とまだ不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。不動産の複利運用は他の投資とは異なり、物件それぞれの状況に鑑みて判断する必要があるため、個人での投資判断は難しいと感じるのも当然です。
1人で複数の物件運用が不安な方は信頼できる不動産投資の専門家とタッグを組めば、多種多様な不動産の特徴やリスク管理などを徹底できます。個人では得られない情報を、プロがアドバイスしてくれるので、初めて複数所有をご検討する場合も安心して投資の幅を広げていけるでしょう。
今回は不動産投資の複利効果について、銀行預金との違いや事例などを交えて解説しました。要点は次の通りです。
不動産投資の複利効果をうまく活用すれば、お金がお金をうむサイクルを作り出せます。複利効果の最大化は、早期投資が何よりも重要です。1年でも早く始めることがより多くの資産を得る秘訣といえます。本記事でご紹介した内容をきっかけに、複利効果を活かした資産形成をご検討されてみてはいかがでしょうか。