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加速する地銀の再編|不動産投資ローンの融資はどうなっていくのか?

2021/01/19
加速する地銀の再編|不動産投資ローンの融資はどうなっていくのか?

菅義偉内閣総理大臣が自民党総裁出馬の記者会見の際に、地銀の多さを指摘していました。最近では、東和銀行(群馬県)とSBIホールディングスが資本提携で合意するなど地銀再編を巡る動きが活発になってきています。
これから地銀を取り巻く環境はどのように変化していくのでしょうか。こちらの記事では、地銀再編が不動産投資ローンの融資に与える影響について解説していきます。

これまでの地銀再編の流れ

ここ数年の地銀再編の流れを解説します。
2015年10月1日に肥後銀行(熊本県)と鹿児島銀行(鹿児島県)が経営統合し「九州フィナンシャルグループ」が誕生しました。

続いて、2016年4月1日に横浜銀行(神奈川県)と東日本銀行(東京都)が経営統合し「コンコルディアフィナンシャルグループ」が誕生しました。さらに、2016年10月1日に常陽銀行(茨城県)と足利銀行(栃木県)の金融持株会社である足利ホールディングスが経営統合し、「めぶきフィナンシャルグループ」が誕生しました。

2018年までの間に、この他にもいくつかの金融機関の経営統合がなされました

2019年に入っても、地銀再編の流れは止まることなく、2019年の4月に関西アーバン銀行と近畿大阪銀行が合併し「関西みらい銀行」が、2020年10月には、長崎県の十八銀行と親和銀行が合併し、「十八親和銀行」が発足しました。

2021年1月1日も第四銀行と北越銀行が合併し「第四北越銀行」として発足しています。

合併以外でも、2020年10月23日に、SBIホールディングスと東和銀行の資本提携が発表されました。

2020年12月には、群馬銀行が、千葉銀行や第四銀行が参加する地方銀行連合に参加するなど、地銀再編をめぐる動きが急加速しています。

菅総理の方針

菅義偉総理大臣は、自民党総裁選の出馬会見時から、「地方銀行の多さ」を挙げ、地域の金融機関の再編を政策課題として掲げています。ここにきて、なぜ地銀の再編が必要とされているのでしょうか。

地銀は、地域の経済や産業を金融面で支えるという大きな役割を担っています
しかし、ここ数年継続している低金利の状態や、2020年に起こったコロナ禍の影響などによって地銀の経営は決して良いとはいえない状況にあります。

そこで、地銀の再編で規模を拡大することによって、経営体力の向上及び地域の経済を活性化させる狙いがあるといえます。
経営体力が向上することによって、融資の活性化も期待でき、コロナ禍で苦しんでいる事業の再生を後押ししやすくなるのです。

菅義偉総理大臣は、地銀再編のために具体的にどのような施策を行っているのでしょうか。

1つ目は、2020年11月27日に施行された「地銀合併特例法」です。
この特例法は、同一地域の地銀同士が合併する際に、独占禁止法適用しないというものです。これによって、地銀再編のハードルが下がった形になりますが、一方で競争力の低下によるサービスの低下を懸念する声があるのも事実です。

2つ目は、システム統合を行う際にかかる費用の補助制度です。
また政府は、地銀や信用金庫が統合する際のシステム統合にかかる費用のうち最大30億円程度を補助する制度を導入する方針を固めており、地銀の再編の加速を後押しする流れになっています。

出典:金融庁 金融審議会「銀行制度等ワーキング・グループ」(第6回)

3つ目は、日本銀行が2020年11月10日に公表した「地域金融強化のための特別当座預金制度」です。
2020年から2022年度の3年間の時限措置ですが、地銀や信用金庫の日銀当座預金残高に年+0.1%の上乗せ金利を支払うことになりました。

「地域の経済を支えながら、経営基盤の強化に取り組む」ことを前提に、必要な認可の取得を条件に、2021年3月をめどに、制度が実施される予定となっています。

こちらも、事実上の「補助金」として政府が進める金融機関の再編を後押しする政策となっています。

出典:日本銀行

今後予定されている地銀再編スケジュール

今後も地銀の再編は続々と行われることとなるでしょう。
2021年5月には、三重銀行と第三銀行が合併した「三十三銀行」が発足する予定となっています。

今後大きな勢力になってきそうなのは、SBIホールディングスです。
同社が出している中間報告書において、「地域金融機関との共創」や「地域金融機関への出資」など、グループ全体として地域金融機関戦略を掲げています。

出典:SBIホールディングス 第23期 中間報告書

この報告書の中では、10行の地銀を目指すとしていますが、既に島根銀行(島根県)、筑邦銀行(福岡県)、福島銀行(福島県)、清水銀行(静岡県)、東和銀行(群馬県)、仙台銀行(宮城県)、きらやか銀行(山形県)の7つの地銀と提携しており、今後の動向に注目です。

地銀再編のメリット

まず、大きなメリットとして挙げられるのが、地銀の経営体力の向上です。
コロナ禍で苦しんでいる事業主は、融資を受けたくても中々受けられないという現状もあります。
地銀の経営体力の向上によって、融資の活性化が期待でき、ひいては地域の活性化にもつながります。
不動産投資を考えている方にとっても、融資を受けやすくなるのは間違いないとみてよいでしょう。
また、複数の地銀が合併することで、お互いにもっていた強みを共有することができます。

例えば、資産運用をとってもこれまでよりも、ノウハウが多くなります。
不動産投資以外でも、幅広い資産運用の提案をしてもらえる可能性が高まりそうです。

地銀再編のデメリット

金融機関に限らず、どの業界にもいえることですが、「競争相手」の存在はその企業の成長のためには必要不可欠です。
顧客視点に立つならば、選択肢が増えかつ競争によって切磋琢磨してくれる方が良い可能性だってあるのです。

例えば、住んでいる街にラーメン屋が1店舗しかないとしましょう。
あまり美味しくなくとも、ラーメンが食べたいと思えば、その店で食べるしかないです。客もそれなりにやってくるので、「まあこれでいいか」といった甘えが生まれます。ラーメン屋の競合が周りにあれば、他の店に行かれまいと努力をするはずです。こうやって、美味しいラーメンが生まれるのだと思います。

ラーメン屋を地銀に置き換えてみてください。

周りに地銀がなくなれば(数が減れば)サービスの質の低下は、リスクとして存在することがお分かりいただけるかと思います。

地銀再編が不動産投資ローンの融資に与える影響とは?

地銀再編によって、不動産投資ローンの融資に与える影響は、どのようになるのでしょうか。
多くの地銀において期待できることは、前述のように経営体力が増して不動産投資向けのローンの融資に積極的になると思われます。不動産投資家にとっては、追い風になるといえるでしょう。

ただし、貸し出す側(金融機関)も無条件に貸し出すわけではなく、きちんと回収できる相手を選びます。
着実な収益を上げることができる投資物件でなければ融資を絞られてしまう可能性も秘めていますので、物件選びから慎重に行うことが重要となってくるでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
地銀の再編と不動産の融資の関係について解説してきました。菅義偉総理大臣の方針もあり、今後も地銀の再編は加速していくことになるでしょう。不動産投資を始めようと考えている方にとっては、地銀再編は、融資を引き出すうえで追い風になる可能性が高いです。
気になった方は、専門家へ相談してみるとよいでしょう。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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