「サブリース・・・」
不動産投資をしている方なら、一度は耳にしたことのある言葉でしょう。
2020年12月に、賃貸住宅の管理業務などの適正間に関する法律(サブリース新法)が施行されました。このサブリース新法は、どのような内容なのでしょうか。
こちらの記事では、サブリース新法について徹底解説していきます。
サブリースが広く知られるようになったのは、「かぼちゃの馬車」事件からといってもよいでしょう。
「かぼちゃの馬車」とは、スマートデイズという不動産会社が経営していたシェアハウスの名前です。このシェアハウスは、サブリース事業として展開されていました。
サブリースとは、いったいどのようなものなのでしょうか。
簡単に言うと、不動産の「転貸」や「又貸し」のことを指します。
具体的には、不動産会社がオーナーから賃貸物件を一括で借り上げて、入居者に転貸します。
オーナーは、入居者がいてもいなくても、不動産会社から毎月一定の家賃収入を得ることができます。また、入居時や退去時に関する手続きや、家賃滞納者への催促業務なども不動産会社がやってくれるので、オーナーの手間はかからないスタイルになっています。
その代わりに、保証される家賃は一般的な家賃相場の8割から9割となります。
サブリースの新法が出来た背景には何があるのでしょうか。
近年、サブリースをめぐり、ローンの不正契約やそれに伴う訴訟が頻発しているためです。特に「安定した家賃収入を約束する」という謳い文句にサブリース業者や勧誘者などに勧誘されます。
前述した「かぼちゃの馬車」では、運営会社のスマートデイズが倒産し、その関連で「スルガ銀行」の不正まで発覚する事態となりました。
以下は、スルガ銀行からの報告書です。
出典:スルガ銀行
一般的にアパートやマンションの建設費用は、オーナーが金融機関から借入を行うことで捻出します。その段階で、オーナーには毎月決まった金額のローン返済がのしかかります。
オーナーが想定していない段階で、サブリース業者側から保証家賃の減額を迫られてしまい金融機関へのローン返済が滞るなどの問題が起きているのです。
この社会問題を解決するために制定されたのが「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律(2020年6月12日)」です。
第2章で紹介したように、2020年6月12日に国会において、「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」が制定されました。その後、2020年8月5日に「第一回賃貸住宅管理業法の施行に向けた検討会」が開催されました。
ここには、御法川副大臣が出席し、「真に機能させるためには、実行性のあるガイドラインやルール作りが極めて重要である」という旨の発言をしていました。
出典:国土交通省
これを受けて、2020年10月14日に「第二回賃貸住宅管理業法の施行に向けた検討会」が開催されました。
ここで、8月の時点で御法川大臣が課題として挙げていた「ガイドライン」の最終とりまとめが行われました。
出典:国土交通省
その後、2020年12月15日に賃貸住宅の管理業務などの適正間に関する法律(サブリース新法)が施行されたというのが一連の流れです。この後、賃貸管理業者の登録制度についても2021年6月中旬の施行に向けて、準備を進めていくとのことです。
サブリース新法において、特に重要なのは以下の3点です。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の「第28条」に定められています。
出典:国土交通省
この28条は、オーナーになろうとする方の経験や知識が乏しいことを利用して、サブリース業者が、オーナーが支払うべき家賃やサブリース契約の解除などの条件を明らかにすることなく、メリットだけを強調してリスクを小さく見せることを禁じる内容となっています。
経験・知識に乏しい方にとって、広告の内容からその真偽を判断するのは、簡単なことではありません。
契約の内容をきちんと理解せず、誤認したまま契約を締結してしまうと大きな被害を受けることになってしまうため、それを防止する内容になっています。
例えば、契約期間内で家賃の見直しやサブリース業者側からの家賃保証金額の減額請求が可能であるにも関わらず、あえてその旨を表示しないケースがあります。
この法律によって、「10年間の家賃保証!」というものや、「一切収入が下がらない!」などの謳い文句を禁止しています。
具体例が多数挙げられていますので、詳細は国土交通省のHPからご確認ください。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の「第29条」に定められています。
出典:国土交通省
この29条では、オーナーになろうとする方の経験や知識が乏しいことを利用して、サブリース業者や勧誘者が、不正確な情報や誤った情報によって勧誘を行うことを禁止する内容になっています。また、強引な勧誘も禁止されています。
例えば、将来に向けて家賃減額の可能性があることや、サブリース業者からの契約解除が可能であることを故意に伝えないケースです。
また、原状回復や修繕などの費用がかかることもあえて伝えず、後になってオーナーが「こんなの話聞いていない・・・」ということがないような内容になっています。
サブリース業者や勧誘者に対して、サブリースのメリットだけを伝えるような勧誘を禁止しており、こちらの29条第1項に違反した場合は、重くて懲役刑となることになっています。
具体例が多数挙げられていますので、詳細は国土交通省のHPからご確認ください。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の「第30条・第31条」に定められています。
出典:国土交通省
サブリースにおいて、専門のサブリース業者とオーナーになろうとしている方の間で知識の格差があります。
この格差の違いを利用して十分に契約内容の理解を得ずに契約を締結させるサブリース業者がいて、オーナーとの間で大きなトラブルを生み出している部分を解決しようという内容になっています。
第30条では、契約締結前にきちんと書面を交付し説明することが義務付けられるようになりました。
第31条でも、費用負担や契約期間および契約解除などオーナーにとって必要な情報を記載した書面を契約締結時に交付することを義務付けるものになっており、オーナーとサブリース業者間の認識の相違によるトラブル防止を図るための内容になっています。
出典:国土交通省
今回の新法により、違反した場合には上記のような罰則が設けられます。
特に、29条第1号(不当な勧誘の禁止)に違反した場合は、罰金のみならず、懲役までつく可能性があり厳しいものになっています。
出典:国土交通省
先ほどの罰則に加え、行政処分も課されます。
サブリース業者(特定転貸事業者)および勧誘者に対して、指示処分や業務停止命令などが科されることになります。
いかがでしたでしょうか。
2020年12月に施行されたサブリース新法について解説してきました。新法の内容はご理解いただけたでしょうか。今年の6月頃をめどに、賃貸管理業者の登録制度の整備も進んでいく予定となっています。
今後もサブリース関連の動向に注目していきたいと思います。