不動産投資の最初のハードルといわれる、「金融機関からの借り入れ」があります。
という方もいらっしゃるのではないでしょうか。実は金融機関の融資面談は、聞かれる内容をある程度想定し、事前に対策をとることが可能です。試験の前に過去問を解いて傾向と対策を練るように、融資面談の質問にもクセがあります。
そこで今回は、金融機関の融資面談でよく聞かれる質問について、回答のポイントをまじえながら解説します。融資面談の対策としてお役立てください。
金融機関で行なわれる融資面談の目的は、「融資希望者に本当に融資を行ってよいのかの見極め」にあります。つまり、「融資希望者が本当に信用に足る人物かの確認」です。融資面談の質問者には、大きく分けて次の2つの心理に分類できます。
質問の目的は、疑問の解消にあるとは限りません。融資希望者がきちんと誠実に説明できるかをテストする意図があるケースもあります。融資機関の担当者は投資者に貸さないために、質問をするのではなく、融資を通すために厳しい質問をします。よって、「細かい部分についてもきちんと説明できるか」「話す内容に矛盾点がないか」が質問の目的の場合、対応を間違えないことが重要です。
融資面談が行なわれる目的が理解できたところで、次は具体的な質問内容についてです。この章では、金融機関の融資面談でよく聞かれる7つの質問を、回答のポイントとあわせて解説します。
第一に、融資希望者(ご自身)がどのような人物か質問されます。融資希望者が想定する不動産運営の規模によっては、何千万円〜何億円の融資になるため、当然ながら慎重に審査されます。
よって、職歴や学歴、金融資産やすでに保有している物件など、融資者の属性をできるだけわかりやすく説明することが重要です。最低限必要な情報として、次の項目を整理しておきましょう。
不動産投資の成功事例がある方は、「過去の経験や実績をもとに投資をする」というイメージを伝えてみましょう。また、投資に役立つ資格を保有している方も、アピール次第でプラスの要因となります。
都市銀行・日本政策金融公庫・信用金庫・信用組合・地方銀行など、数多くの金融機関が存在します。そのなかで、「わざわざ時間と労力を使って、なぜ当行を選んだのか?」は、重要なポイントです。
この質問で最も避けたい回答が、「不動産の融資がおりやすいと聞いたから」です。「審査がゆるそうだから」という動機では、金融機関からの第一印象が悪くなる可能性があります。対して、1番強い動機が「不動産投資をしているオーナーからの紹介」。オーナーの不動産投資の実力が高いほど、スタート段階で有利となります。そのほかに考えられる妥当な理由は、次の通りです。
自宅、勤務先、物件に近い・実家の近くで縁があるなど。
給料が振り込まれている口座がある、住宅ローンを借り入れているなど。
基本的に「場所」は、銀行にとって重要な位置付けになります。金融機関の審査や融資の現状などの把握は、実際に難しい場合が多いため、単に「場所が近かったから」という理由でも問題ありません。
この質問は、副業として不動産投資を始めたい方によく聞かれます。例えばサラリーマンや自営業者、公務員など、「本業として給与所得がすでにある融資希望者」です。不動産投資を本業としている場合は、「不動産投資の拡大のため」という理由がはっきりしているため、この質問はあまりされません。
この質問における最も適切な回答としては、「不動産賃貸事業を通して、資金形成をはかりたいから」です。「投資」を全面に打ち出すと、金融機関からギャンブルをやろうとしている印象を与えてしまいます。バブル崩壊によって投資による破綻が増加した過去の影響から、「投資」という言葉にネガティブな印象をもつ担当者もいます。金融機関が融資するのはあくまで「事業」に対してであり、「投資をしたい」という理由で資金を貸すのは認められにくい傾向にあるのです。したがって、「不動産事業を通して資産形成をしたい」という趣旨の方が、銀行担当者にとって正当性がある理由にうつります。
その収益物件をなぜ選んだのかの質問は、融資希望者の事業スタイルや投資に対する考え方をジャッジする目的があります。つまり、融資希望者の投資スタンスと、銀行の物件評価の方針に齟齬がないかを確認するためです。
例えば、築古の木造に対して、厳しい評価しかでない都銀で「築35年の木造アパートに融資してください」といっても、融資の可能性は低いでしょう。都銀の多くは、耐用年数をオーバーした建物に対して、ゼロ評価しかしないからです。よって、融資を依頼する金融機関の特徴をある程度把握して、依頼をする方が効率的に融資を受けられます。金融機関に融資されやすいのは、「物件評価が高い」「借主が破綻しても借入返済ができる」物件です。したがって、ある程度利回りの高い物件の方が、融資の判断において有利になります。
金融機関では使い道に応じて返済方法や返済年数が決められているため、借りた資金をどのように返済するかの見通しの説明が必要です。
最終的には、金融機関で物件の評価はなされるため、細かいシミュレーションをする必要はありません。しかし、大まかで構わないので家賃収入と返済額のバランスを事前に確認しておくと、金融期間に適切に事業の内容を伝えられます。例えば、「このくらいの融資額と融資期間があれば、家賃収入に対する返済額は〇〇%以内におさまり、不動産事業として成立します」という話をするとスムーズです。
将来の売り上げの見通しが立っており、どのような資金を元手に返済するのか(返済原資)は、融資で最も重要視されます。できるだけ、具体的なプランを提示できるように、キャッシュフローの見立てを整理しておきましょう。
自己資金については、「事業で使用している通帳」と「個人の通帳」の両方から確認されます。自己資金が給与を貯めたものである場合は、経歴が通帳から把握可能です。よって、これ以上質問されません。給与が現金で支払われている場合は、通帳の記録だけでわからないため、給与明細の提出が別途必要です。そのほか、贈与された資金の場合は、贈与した者への確認や贈与した者の通帳の提出が求められるケースがあります。
金融機関にとって自己資金は、「融資希望者が事業のためにどれだけ計画的に準備してきたかの指標」です。「自己資金がなければ融資を受けられない」とは限りません。しかし、自己資金がないと融資を受ける難易度は上がる傾向にあります。
家賃や公共料金など定期的な支払いに遅れや未納がある方は、その理由を聞かれる場合があります。金融機関は「融資希望者が期限までに支払いできるか?」を、過去の信用履歴によって判断するからです。支払い履歴として対象になるのは、家賃や公共料金のほかにも、次のようなものがあげられます。
確認される期間は一般的に「直近から6ヵ月〜約1年前」とされています。この期間で支払いが遅れている月があると、融資が厳しくなるためご注意ください。また、審査の基準はあくまで「期限までに支払いがされているか?」です。「融資の申し込み直前に遅れた分をまとめて支払えばよい」わけではありません。したがって、期間内に支払いの遅れがある場合は、しばらく申し込みを見合わせる方向でご検討ください。
金融機関の融資面談で聞かれる質問には意図があるため、ある程度の傾向と対策が可能です。本記事の要点は次の通りです。
金融機関の融資面談の目的は「融資希望者に本当に融資をしてもよいかを見極めるため」である。
質問の意図は大きく分けて「事業内容がわからないので、詳しく知るため」「融資希望者の説明と事業内容に齟齬がないか確認するため」の2つ。
質問されそうな事項の詳細は、事前に添付資料としてまとめると的確に情報を伝えられる。
今回ご紹介した質問事項は、金融機関の融資面談でよく質問されるものばかりです。一問一答の回答ではなく、文章として回答できるようにすると、担当者が納得できる説明に近づきます。不動産投資会社によっては融資までを一括で行っているため、有利かつスムーズに融資を受けることが可能です。興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。