近年、年金受給の年齢が引き上げられたり、年金受給額が減らされたり・・・
老後の生活資金に不安を覚える方が増えてきています。
世の中のサラリーマンやOLの中には、「自分はいったいいつまで働けばよいのか」と悩む方は少なくないはずです。
もし、不動産投資で成功したら、早期退職して老後は悠々自適に暮らしたいと夢見ている方も多くいらっしゃるでしょう。
この記事では、不動産投資で成功して早期退職するためには、どうしたらよいのかについて書いていきます。不動産投資を活用して早期退職を検討されている方は、ぜひ最後までお付き合いください。
老後必要となる生活資金は、どのくらいなのでしょうか。
公益財団法人生命保険文化センターが公表した「令和元年度 生活保障に関する調査」によると、老後の最低日常生活費は22万1,000円となっています。
平成22年、25年、28年、そして令和元年とずっと22万円台前半で推移してきています。
出典:公益財団法人 生命保険文化センター 令和元年度「生活保障に関する調査」
しかし、この22万円という金額は、あくまで「必要最低限」の金額です。それでは、ゆとりを持った生活を送るためには、あとどのくらい必要になるのでしょうか。
下記の表をご覧ください。
出典:公益財団法人 生命保険文化センター 令和元年度「生活保障に関する調査」
こちらが、ゆとりを持った老後の生活を送るためには、22万1,000円に加えてあとどのくらい必要かを調査した結果です。
令和元年の調査では、14万円がさらに必要だという回答になっています。
つまり、ゆとりを持った老後生活を送っていくためには、月々にして22万1,000円+14万円=36万1,000円が必要であるというデータになっています。
まとめると、最低限の生活を送るためには、年間で22万1,000円×12ヶ月=265万2,000円が必要になり、ゆとりを持った生活を送るためには、年間で36万1,000円×12ヶ月=433万2,000円が必要になるという試算になります。
令和2年12月に厚生労働省年金局から「令和元年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」が公表されています。
出典:厚生労働省
報酬比例部分の支給開始年齢が令和元年度に63歳へと引き上げられました。その関係で、令和元年度の受給権者数は、60歳~62歳の方が少なくなっています。
65歳以上の受給額で比較でいくと、平成27年度には1人あたり178,928円だったものが、年々減り続け、令和元年度には171,305円となっています。
日本においては、今後も少子高齢化が進んでいきます。年金を積み立ててくれる、若い働き手が年々減少し、年金を受給する高齢者が増え続けていく現状では、年金受給額の増加は期待できないと言ってよいでしょう。
仮に現在45歳の方が後5年働き、50歳で早期退職をしたとしましょう。この数年の年金開始年齢の引き上げを鑑みるに、現在45歳の方が、現在と同じ63歳で年金受給開始が出来ることはまずないと考えてよいでしょう。良くて65歳、悪いと70歳近くになることも想定しておかなければなりません。
さらに受給額についても、昨今の推移を鑑みるに、いきなり上昇することは考えにくいです。この数年は受給額17万円台で推移していますが、16万円台に突入してしまうことは時間の問題といえます。また、厚生年金受給額は、在職期間とその期間の給与によって決定します。
このデータは早期退職せずに60歳近く働いた方が受給額平均を引き上げていると考えると、50歳で早期退職した際に、この平均金額(令和元年度で言えば17万1,305円)をもらえる方の方が少ないのではないのでしょうか。
さて、不動産投資でどのくらいの利益が出せていれば早期退職が可能になるのでしょうか。
前述のように、必要最低限の生活を送るためには月々22万円が必要で、ゆとりをもった生活を送るためには月々36万円が必要になることを解説してきました。
ここでは、ゆとりをもった生活である36万円の方でシミュレーションしてみます。
年金を受給できるまでの間は、月々36万円、つまり年間で432万円が必要です。年金が受給できるようになってからは、仮に年金が月々15万円もらえると仮定して、年案で(36万円-15万円)×12ヶ月=252万円が必要となる計算になります。
以上の計算から、本業を早期退職して不動産投資だけで生活していくためには、年間で450万円~500万円(税引き後)の手元に残る現金(キャッシュフロー)を生み出すことが出来れば可能になると言ってもいいでしょう。
それでは、どのくらいの規模で不動産投資を行えば、キャッシュフローで450万円~500万円を生み出すことが出来るのでしょうか。
【物件情報】
(※自己資金200万円、借り入れ1,600万円、期間35年、金利2.0%として計算)
【年間のキャッシュフロー】
120万-(63万6,000円+12万円+18万円+6万円+4万円)=約16.4万円
仮に同条件の中古ワンルームマンションを複数購入して、450万円のキャッシュフローを生み出すためには、「450万円÷16万円=27.4・・・」つまり28件程度、中古ワンルームマンションを運営する必要があります。もちろん、これはすべて融資を活用していく簡単な試算であり、途中で繰り上げ返済、完済する物件は考慮していません。
ここまで数が多いと中々現実的ではないかもしれません。
【物件情報】
(※自己資金1,000万円、借り入れ7,000万円、期間35年、金利2.0%として計算)
【年間のキャッシュフロー】
768万-(278万4千円+48万円+96万円+40万円+80万円)=約225万円
仮に同条件の一棟アパートを複数購入して、450万円のキャッシュフローを生み出すためには、「450万円÷225万円=2」つまり2件、一棟アパートを運営する必要があります。
先ほどの中古ワンルームマンションと比較すると、こちらの方が現実的かもしれません。
なお、物件価格、家賃収入などによってこれ以上の規模を持つ必要がある場合もあります。こちらの試算結果はあくまでも一つの参考値にしていただければと思います。
不動産投資の中級者~上級者の方に対しては、言わずもがなの内容ですが、不動産投資のみで生活していくにあたっては、さまざまなリスクが存在します。
その物件のあるエリアの賃貸ニーズが未来永劫続くわけではありません。
時間の経過とともに、ニーズは徐々に変化し20年も経てば街の状態が大きく変化することも決して珍しくありません。投資を始める前に、エリアの状況をきちんと確認することが大切です。
近年、日本において自然災害が増えてきています。こればかりは、いつどこのエリアで被害が起きるのか誰にもわかりません。
最悪の場合、投資用不動産が自然災害によって滅失してしまう可能性も少なからず秘めています。
必要な保険には、勿体がらずに加入するようにしましょう。
近年は、低金利で推移しています。
この先数年もこの低金利状態は続く見込みとなっていますが、20年・30年のスパンで考えた際に、金利が大きく上昇してしまうケースが全くないとは言い切れません。
金利が上がってしまうと、月々の返済額に影響があるため、キャッシュフローの計算が当初予測していたものと異なってしまう可能性があります。
いかがでしたでしょうか。
不動産投資の利益で、早期退職が出来るかどうかについて解説してきました。シミュレーションで不可能ではないことが、ご理解いただけたと思いますが、リスクも鑑みて判断するようにしましょう。