不動産売買について、大きな改革が起こります。
今までは、原則対面での実施が必要だった不動産売買の重要事項説明ですが、国土交通省では2021年4月よりオンラインで実施することを認める判断をしました。
重要事項説明をオンラインにすることによって得られるメリットは多くありますが、気を付けなければならない点もあります。
こちらの記事では、メリット・デメリット、留意点を徹底解説していきます。
重要事項説明は、「宅地建物取引業法(通称:宅建)」という法律によって定められている手続きです。
不動産売買や不動産賃貸の際には必ず行われなければなりません。
不動産賃貸におけるオンラインによる重要事項説明(通称:IT重説)は、2017年10月に解禁されていましたが、不動産売買におけるIT重説はついに2021年4月に解禁される方向となりました。
不動産売買の際には、重要事項説明だけでなく、「媒介契約締結」及び「売買契約締結」についても、宅地建物取引業法によって書面の交付が義務付けられています。
不動産は、人生の中において1、2を争う非常に高価な買い物です。
高価な買い物をした後に「聞いていない、認識が違う」などといった話では済まないですが、
それを回避するために、つまり買主側をしっかり保護するための制度であるといってよいでしょう。
重要事項説明が行われる時期については、「契約」のうち一番はじめの段階、つまり「売買契約締結」を行う前に必ず行われなければなりません。
詳細は、下記の表でご確認ください。
出典:国土交通省
重要事項説明などの書類は、事前に目が通せるように郵送またはメールで送られてきます。
途中で音声が途切れることはないか、コミュニケーションが円滑にとれるかどうかのテストをします。
対面時と同様に宅建の資格を持った方が行います。
画面越しではありますが、宅地建物取引士の資格証の提示が必要です。
重要事項説明の終了後、書類に記名・捺印した上で、不動産業者へ書類の返送を行います。
一度でも不動産売買の経験のある方は、記憶にあると思いますが、非常に時間のかかる手続きです。
早くても2時間程度、長くなると3時間を超えるケースもあります。
書面の内容をもとに、
さらに、区分所有物件であるケースではその説明が入るなど、非常に多くの内容が読み合わせされます。
時間が長いため、途中から内容が上の空になる方の気持ちも分かりますが、説明を聞いて、捺印した瞬間に内容面について理解・承諾したものとみなされます。
前述のように、後になってから、「聞いていない、認識が違う」は通らないことに注意が必要です。
急に物件の契約を取りやめなければならない可能性がありますので、万が一に備えて、契約解除が可能な期限を必ず確認が必要です。
契約解除にあたって、手付金が返還されるのかどうかや違約金が発生するのかどうかの確認をすると同時に、金融機関からの融資条件もきちんと確認するようにしましょう。
2020年7月より、不動産取引時にはハザードマップを用いて重要事項の説明をすることが義務づけられるようになりました。
施行前から投資用不動産をお持ちの方は、当時聞かなかった内容が追加になってきます。
背景としては、水害が増えており、家屋に甚大な被害をもたらすケースが多くあることを鑑みての国土交通省の判断です。聞き逃さないようにしましょう。
出典:国土交通省
オンラインによる説明における一番のメリットは、移動にかかる費用や時間がかからなくなることです。
説明を受ける場所が家から30分程度であれば、そこまで手間を感じないかもしれませんが、移動時間に数時間かかるような遠方である場合には、非常に大きなメリットを感じることができます。
オンライン会議ツールは、勤務している会社などでも使用しているため、多くの方がご存知かと思いますが録画機能があります。
この録画機能を使えば、万が一の際に「言った・言っていない」や「聞いた・聞いていない」を回避することができます。
また、これによって宅建の資格を持った説明者には、これまで以上にきちんとやるプレッシャーがかかるでしょう。
なんといっても、説明の内容が記録として残るので、後になって、手抜きなどがばれてしまったら免許はく奪にもなりかねません。
より丁寧な説明が期待できるでしょう。
本来、契約者自身が病気やケガなどが理由で説明を聞きに行くことが出来ないケースでは、代理人などを立てて対応することが一般的でした。
しかし、オンラインによる重要事項説明が解禁になることで、契約者自身が直接説明を受けることが出来るようになりました。
新型コロナウイルスによる感染拡大前から検討されていた、オンラインによる重要事項説明ですが、ここにきて大きな効果を発揮しそうです。
オンラインによる説明で、場所を選ばずにできるようになりました。
今までは説明を聞きにいく場所までの移動時間を考慮しながら、日程を決定しなければなりませんでしたが、時間さえあれば説明を聞くことができるようになったのは、大きなメリットといえます。
オンラインによる重要事項説明は、インターネットの通信環境に依存するため、通信障害によってスムーズに進まない可能性も秘めています。
しかし、国土交通省の方で行っている「社会実験」において、大きなトラブルは報告されていないので、大きな心配をする必要はないといえるでしょう。
会社などでオンライン会議を利用されている方は、既にお感じかもしれませんが、対面時と比べて、相手の感情が伝わりづらいです。
また、相手にもこちらの空気感が伝わりづらいです。
対面時には、理解していない部分があるとこちらの表情やしぐさで気づいてもらえる部分がオンラインだとなかなか伝わりにくいです。
説明が進んでいく中で、不明な点があれば、その都度きちんと伝えて説明をしてもらうようにすることが大切です。
オンラインでは、対面時と比較して宅地建物取引証が見づらい可能性が高いです。
宅建の免許を持っていない方が、なりすましを使って、偽造された取引証を使用して重要事項説明を行う可能性は完全に否定できません。
免許をきちんと見せてもらい、「名前」と「登録番号」は控えておいた方が良いでしょう。
万が一、トラブルに巻き込まれそうになった場合は、国土交通省などの公的な機関に相談するようにしましょう。
いかがでしたでしょうか。
不動産売買におけるオンラインでの重要事項説明について、メリット・デメリット・留意点を解説してきました。
オンラインで非常にメリットがある一方で、オンラインならではのリスクも存在します。
困ったことがあれば、専門機関に相談するようにしましょう。