「無料で家が手に入る!」と安易に受け取られがちな「無償譲渡」。必ずしも「お得な物件」とは限らないことをご存知ですか?
無償譲渡物件の特徴や実態について理解していないと、思わぬトラブルの可能性もあり、注意が必要です。そこで今回は、空き家投資のポイントやメリットなどを解説します。
投資費用を抑えたい人や、地方の物件への投資に興味のある人は、ぜひ読んでみてください。
無償譲渡物件とは、「タダ(0円)でもらえる物件」です。一般的に物件を手に入れるには、物件を購入する必要があります。しかし、法律的にみると無償譲渡物件は「対価がない」ため、「譲渡」ではなく「贈与」としての物件です。
無償で物件を渡す側と渡される側によって、税金の有無は異なります。
個人が所有する物件を他の個人に無償で譲るパターンでは、物件を引き渡す側には税金はかかりません。ただし、物件をもらう側に贈与税が必要となる可能性があります。
個人が所有する物件を法人に無償で譲るパターンでは、「不動産を現在売買すると考えた場合の値段で譲渡した」とみなされるため、無償で譲渡する側にも「みなし譲渡課税」として所得税がかかります。また、物件を無償でもらう側である法人には、「不動産をもらったことで利益があった」となり、法人税の支払いが必要です。
法人が個人に無償で物件をあげるパターンでは、法人が個人から対価を受け取らなくても、税務の観点からは「利益があった」と判断されるため法人税の支払い義務が発生します。また、物件をもらう側の個人は「一時所得があった」となり、所得税の支払いが必要です。
物件を無償であげる側も受け取る側も法人の場合は、どちら側にも法人税の支払いが必要です。無償譲渡では、譲渡する側と受ける側の立場によってかかる税金が異なります。
無償譲渡物件には、一定の傾向があります。代表的な特徴は次のとおりです。
空き家の総数は、448万戸から846万戸と20年で全国的に約1.9倍にまで増加し、2033年には、2,100万戸にもなると予想されています。なぜこれほどまで空き家は増えているのでしょうか?不動産が無償譲渡される代表的な理由をみていきましょう。
日本の住宅の総戸数は増加傾向にある反面、人口は減少傾向にあります。不動産「住宅・土地統計調査」によると、日本の住宅の総戸数は、2013 年には5年前よりも5.3%増加の供給が増える一方で住む人の数が少なくなっているため、空き家が増えたといわれています。
また、不動産の所有者の高齢化が進んでいます。子どもとの同居や老人ホームへの転居などで、元に住んでいた自宅が空き家となっていることも要因の一つです。国勢調査によると、2015年の日本の人口は大正時代に調査をスタートして以来、初めて日本の人口は減少に転じました。
資産価値の低い空き家を所有したままでは、固定資産税や都市計画税などの税金を支払うだけの負担のみが残ります。かといって、空き家となっている住宅を解体し更地にすれば、固定資産税や都市計画税が上がってしまいます。課税の種類によっては住宅用地に軽減措置があるため、「報酬なくてもいいから物件を手放したい」という心理が生じ、無償譲渡されるのです。
無償譲渡物件の数は都市部よりも地方で多い点が特徴的です。それは、「都市部に雇用が集中していること」が要因として考えられます。2010年の国税調査によると、首都圏9つ(東京都・神奈川県・埼玉県・千葉県など)の人口増加があったものの、その他38の都道府県は人口が減少していると明らかになりました。また、市区町村別にみると、人口減少率が 10%以上の市町村数の数は230もあり、地方の過疎化が顕著です。
都心に流入した人のなかには、「仕事がないから仕方なく地方から都心に移り住んだ」という人も少なくありません。地方は空き家が多いため、「無償でも良いから譲渡したい」というニーズも増加しているのです。
無償譲渡物件の基本的な内容が理解できたところで、この章では無償譲渡物件のメリットを解説します。
「無償譲渡」という言葉どおり、実質0円で不動産の入手が可能です。物件や土地を購入するとなると、高額な自己資金が必要ですが、無償譲渡を受けると土地や建物が実質0円となります。「とにかく初期費用を浮かせたい!」という人にはメリットです。
タダで手に入れた物件は民泊や宿泊施設として活用できます。2018年に施行された、「住宅宿泊事業法(民泊新法)」によって、一定の条件をクリアすれば民泊事業として活用できるようになりました。ただし、民泊を始める際には、民泊新法に基づく届出や、特区民泊としての認定(または旅館業法に基づく許可)などの手続きが必要です。
新型コロナウィルスにより、新しいライフスタイルや働き方が拡大するなか、地方への移住を検討する人も増えているといわれています。自然豊かな場所での生活に憧れのある人や、地域の人との付き合いに抵抗のない人は田舎暮らしを体験可能です。
自治体によっては空き家の取得や改修、撤去の補助金が支給される場合があります。コストをかけずに物件を活用したい人には、費用の負担を減らせる点がメリットです。ただし、補助金の内容や受給条件は自治体ごとに異なります。補助金の活用を検討している方は、事前に自治体に補助金の制度があるかを確認しましょう。
メリットの反面、無償譲渡物件には「無料で物件が手に入るから」と簡単に飛びついてはいけないとされています。注意すべき無償譲渡物件のポイントを確認してみましょう。
無償でもらえる物件は、売りたくても売れない物件です。よって、「なぜ無料で譲ろうとしているのか?」「なぜ住む人がいないのか?」という物件の背景を把握しておきましょう。
過疎地域では先述したとおり、利便性や住宅需要の問題などから売れないと考えられます。しかし、それ以外にも物件の瑕疵が原因の場合もあるからです。例えば、「シロアリによる物件の損傷が酷い」「雨漏りがする」などのケースは、大規模なリフォームや建て替えが必要となり、土地代や物件の費用がたとえタダでも、他のコストがかかる可能性もあります。
無償譲渡は物件の購入費はタダですが、住宅を取得する際にかかる税金は別途かかります。例えば、次のような税金です。
不動産そのものを無料で取得できるとはいえ、一定のコストはかかります。課せられる税金に関しては、事前に把握しておくと安心です。
不動産会社を仲介しないで手続きをする際には、あらゆる準備をすべて自分でする必要があります。建物や土地の調査や契約書類の用意など専門性の高い事柄が多く、手続きも煩雑です。不明点が生じると、毎回自分で役所や税務署などで相談や確認をしなくてはなりません。分野ごとに専門家への依頼も可能ですが、その度に費用がかかります。
譲渡された物件の損傷が激しい場合は解体や撤去が必要となるため、解体費用が発生します。また、解体によって生じた廃棄物を撤去するには、撤去する費用も必要です。無償譲渡される物件の状態を確認し、どのくらいの費用が発生する可能性があるのか見越しておくと後悔がありません。
書面による契約を省略すると、予想外のトラブルが生じる場合があります。例えば、譲渡後に、過去に生じた物件の瑕疵が明らかになった際などです。法的には文字として残さずとも言葉だけでの契約も可能ですが、不動産贈与契約を書面で締結してくと、問題が解決しやすくなります。
「無償譲渡物件を探したい」と思ったものの、「どうやって見つけられるのかわからない」という方に向けて、無償物件の探し方をご紹介します。
空き家の情報は、インターネットの掲示板で適宜公開されています。空き家の保有者が物件情報を登録し、掲示板に掲載されるシステムです。空き家の物件を数多く掲載している掲示板として有名なものに、「空き家バンク」や「家いちば」があげられます。ただし、掲示板によっては、空き家の契約時に報酬や基本料の支払いが必要です。
地元が地方にあり、空き家を譲ってくれそうな知り合いがいる人は、譲ってもらうことも可能でしょう。ツテがない人も、移住希望する地方の公的機関に問い合わせると、空き物件の紹介をしてもらいやすくなります。
無償譲渡物件に関する疑問は、不動産投資会社に相談すると、スムーズに解決できます。
「今の家をどうすれば良いのか」「無償譲渡物件の契約をどう進めたら良いか」を、一括してサポートしてもらえるため、効率的です。不動産の本当の価値は個人では把握しにくいものですが、プロに相談すれば、的確なアドバイスを手っ取り早く知れます。
「無料で空き家をもらえるという言葉を過信して、損をした…!」という心配もありません。不動産投資のプロが、専門的な立場から物件の本当の価値を見定め、物件の有利な活用方法を教えてもらえます。
無償譲渡物件には空き家ならではのメリットがある反面、予想外のリスクや注意点があります。空き家の背景に何があったのかを事前に把握したうえで投資がポイントです。本文の要点は次のとおりです。
無償譲渡物件を手に入れるまでには、多くの書類準備や契約が必要です。予想以上に時間とコストがかかる場合も考えられます。疑問点は不動産投資会社への依頼で効率的に解決が可能です。ぜひお気軽にご相談ください。