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住宅ローン控除が延長!延長の背景や投資に活かせるのかどうか徹底解説!

2021/03/01
住宅ローン控除が延長!延長の背景や投資に活かせるのかどうか徹底解説!

住宅ローン控除の特例期間が延長される見込みです。

当初、住宅ローン控除の特例は消費税が8%から10%へと上昇した際に打ち出されたものでした。2020年の新型コロナウイルスの感染拡大において、日本のみならず世界中で経済をはじめとして様々な方が影響を受けたことを受け収入が減った方も多くいます。そんな方々への税金負担への配慮もあり、当初の期間より2年間延長される方向性となりました。

こちらの記事では、住宅ローン控除の仕組み、延長の背景や投資用不動産へ活かせるのかどうかを徹底解説していきます。

住宅ローン控除とは?

住宅ローン控除の正式名称は、「住宅借入金等特別控除」といいます。

十年以上の住宅ローンを組んで、住宅を購入した際などに、課税所得から算出される所得税が控除される制度になっています。所得税から控除し切れない際には、一部住民税からも控除され、住宅購入者が税金面で大きく優遇される仕組みとなっています。

増改築の際にも利用することができ、この場合は「特定増改築等住宅借入金等特別控除」といいます。

住宅ローン控除は、毎年、年末時点でのローン残高もしくは住宅取得対価のうち、いずれか少ない金額(上限4,000万円)の1%が所得税から控除されるというものです。 

2014年4月以降の住宅ローン控除は、以下のような形となっていました。

  • 居住開始時期:2014年4月~2021年12月
  • 控除期間:10年間
  • 控除率:1%
  • 最大控除額:4,000万円×1%×10年間=400万円
  • 住民税からの控除限度額:136,500円/年
  • 住宅の床面積:50㎡以上

2019年の10月に消費税が10%に増税されました。これを受けて、2019年10月1日~2020年12月31日までに入居した方(※ただし、消費税10%が適用されている住宅を購入した場合に限ります。)を対象に控除期間を3年間延長(10年間→13年間)にされていました。

控除額の計算方法ですが、最初の10年間については、延長される前までと同じ計算になります。11年目~13年目については、少々複雑となります。

  • ローン残高もしくは取得対価(上限4,000万円)のうちいずれか少ない金額の1%
  • 建物の取得価格(上限4,000万円)の2%の1/3

上記2点のうち少ない方が控除対象金額となっています。

  • 居住開始時期:2019年10月~2020年12月
  • 控除期間:13年間
  • 控除率:1%
  • 最大控除額
    (最初の10年間)4,000万円×1%×10年間=400万円
    (11年目~13年目)4,000万円×1%×3年間=120万円
    または 4,000万円×2%×1/3×3年間=80万円
  • 住民税からの控除限度額:136,500円/年
  • 住宅の床面積:40㎡以上
    ※ただし、40㎡以上50㎡未満のケースで、住宅ローン控除の適用を受けるためには、合計所得金額が1,000万円以下でなくてはなりません。

この13年間控除は、本来2020年12月で終了する予定でしたが、2年間延長されて2022年12月までの入居者に適用するとされています。

出典:国土交通省

住宅ローン控除(住宅ローン減税)が延長された理由とは?

なぜ、住宅ローン控除が延長されたのでしょうか。

新型コロナウイルスの感染拡大の影響が大きいといえます。2020年に世界中で大流行した新型コロナウイルス。2020年4月上旬~5月下旬にかけて緊急事態宣言が発出され、経済的に大きな打撃を受けました。今なお、新規感染は中々収束しておらず、一部都道府県では2021年1月上旬以降緊急事態宣言が発出されています。 

昨年から続く、コロナ禍において収入が減少してしまった方も多くいらっしゃいます。そのような状況で住宅を購入することを検討している方の中でも、慎重になっている方は、少なくないはずです。

政府としては、経済を回すという意味において、住宅購入を考えている方の需要を喚起する目的があるといえるでしょう。

住宅ローン控除シミュレーション

どのくらいの年収の方が、どのくらいの住宅ローン控除を受けることができるのでしょうか。

以下でシミュレーションを行ってみます。

【設定条件】

  • 自宅購入費
    4,500万円の物件を自己資金500万円で購入、4,000万円の借入
  • 金利・返済期間
    元利均等0.6%、35年間
  • 家族構成
    夫(35歳・年収650万円、1年間で10万円年収アップ)
    妻(31歳・専業主婦)
    子(3歳・1歳)
金額は万円1年目2年目3年目4年目5年目6年目7年目

夫年齢
35363738394041

年収
650660670680690700710

課税所得
350360370380390400410

所得税
27.2529.2531.2533.2535.2537.2539.25

控除対象住民税
13.6513.6513.6513.6513.6513.6513.65

④+⑤
40.942.944.946.948.950.952.9

年末残高
3,9053,8023,6973,5923,4873,3813,274

残高1%
39.0538.0236.9735.9234.8733.8132.74
金額は万円8年目9年目10年目11年目12年目13年目

夫年齢
424344454647

年収
720730740750760770

課税所得
420430440450460470

所得税
41.2543.2545.2547.2549.2551.25

控除対象住民税
13.6513.6513.6513.6513.6513.65

④+⑤
54.956.958.960.962.964.9

年末残高
3,1673,0592,9502,8412,7312,620

残高1%
31.6730.5929.528.4127.3126.2

建物取得価格2%の1/3
11年目~13年目に適用
今回は建物取得費用を4,000万円で計算
26.6626.6626.66

1年目~10年目までについては、「所得税と控除対象住民税の合算(⑥)」、「年末残高の1%(⑧)」のうち、金額が小さいものが控除額となります。11年目~13年目については、上記の2点のほか「建物取得費用の2%の1/3(⑨)」を加えた3点のうち、最も金額が小さいものが控除額となります。控除額は、1年間で40万円が上限となっております。

今回のケースについては、必要な部分だけ抜き出して整理すると以下のような形になります。色がついている箇所が控除金額になります。 

金額は万円1年目2年目3年目4年目5年目6年目7年目

④+⑤
40.942.944.946.948.950.952.9

残高1%
39.0538.0236.9735.9234.8733.8132.74
金額は万円8年目9年目10年目11年目12年目13年目

④+⑤
54.956.958.960.962.964.9

残高1%
31.6730.5929.528.4127.3126.2

建物取得価格2%の1/3
11年目~13年目に適用
 今回は建物取得費用を4,000万円で計算
26.6626.6626.66

合計控除金額は、1年目~10年目はで3,431,400円となり、11年目~13年目は、795,200円、13年間の合計で4,226,600円の控除金額となります。

今回の延長で、この795,200円分が控除されることになったということになります。

住宅ローン控除は投資用不動産に利用できるのか?

住宅ローン控除は、ご自身が住まない区分マンションや一棟アパートなどの投資用不動産で利用することは認められていません。

しかし、投資用不動産であっても、ご自身が住む「賃貸併用住宅」であれば利用できるケースがあります。

賃貸併用住宅において、住宅ローン控除を受けることのできる条件や留意点は、以下の通りです。

  • 建物の床面積のうち1/2以上が自身の居住用
    そもそも、この条件を満たさなければ住宅ローン控除の適用どころか、住宅ローンすら組むことができず、金利の高いアパートローンとなります。
  • 金融機関からの借入期間が10年以上
  • 自身の居住用の床面積が40㎡以上
    40㎡以上~50㎡未満のケースは、所得金額が1,000万円以下です。
    50㎡以上のケースは、所得金額が3,000万円以下です。
  • 自身居住用の部分にのみ適用され、賃貸部分については、控除対象外
    自身居住用が建物全体の3/4だった場合、控除金額も本来の3/4となります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

住宅ローン控除の特例期間が延長された背景や、その仕組みについて解説してきました。シミュレーションで、具体的な数字を出しましたので、どのくらいのインパクトが出るのかをご理解いただけたのではないでしょうか。

また、投資用不動産へは適用とならない制度ですが、条件を満たせば賃貸併用住宅での利用が出来る可能性があります。

気になった方は、不動産会社へ相談してみるとよいでしょう。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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