不動産投資とは

不動産バブルはコロナ後にどう変化する?景気に左右されない物件の特徴も解説

2021/03/09
不動産バブルはコロナ後にどう変化する?景気に左右されない物件の特徴も解説

2020年から感染拡大が続く新型コロナウィルスの影響は、都市圏への利便性のニーズを一層高める要因となったと指摘されています。不透明性が増す不動産市場において、「不動産バブル」とも呼ばれる現状は今後どう変化するのでしょうか?

本記事では、不動産バブルの基本的な概念をふまえ、コロナ後の市況の変化やバブルに強い物件の特徴を交えて解説します。
好調と評される不動産市場の現状を知りたい方や不動産投資をご検討の方はぜひ読んでみてください。

不動産バブルとは?

不動産バブルとは、主に1980年代後半から1990年代にかけて日本で生じた地価の高騰を指します。高くなりすぎた地価を実勢価格に戻すため、地価税(一定の土地等を有する個人や法人に課される税)を導入し、不動産価格の修正を試みました。しかし、1990年代以降の地価暴落により土地の担保価格は激減し、大量の不良債権を生み出しました。

近年、2012年ごろからアベノミクスや東京オリンピック開催決定などにより、首都圏を中心とした不動産市場は活況にあります。しかし、2020年から拡大を続ける新型コロナウィルスにより、活況にある不動産市場へも影響が懸念されています。

不動産バブルの要因

不動産バブルが生じる原因は「行き過ぎる金融緩和」です。金融緩和とは、各国の中央銀行が行う金融政策のひとつであり、不況時の国債の買い上げや政策金利の引き上げをして市場に出回るお金を増やすことを指します。
市場に出回るお金が増えると、「融資を受けやすくなる」「不動産を購入する人が増える」「不動産価格が上昇する」などの影響があります。

対して、不動産バブルが崩壊する原因は「金融が引き締まり」です。不動産の価格は何千万円、何億円と大きな資金が必要であるため、多くの投資者は金融機関からの借り入れにより自己資金を準備します。よって、金融が引き締まると金融機関からの融資が受けにくくなり、金利は上昇します。

不動産バブルとコロナの実態

不動産バブルの基本的な概念や要因について理解できたところで、コロナによる関係性を解説します。代表的な3つの実態をみていきましょう。

都心を中心とした局地性

世界最大の総合不動産サービスであるJLL(ジョーンズ・ラング・ラサール)の調査によると、2020年第2四半期の世界の商業用不動産への投資額において、東京だけは勢いが衰えていないと明らかになりました。世界の都市別投資額をみてみると、2位のニューヨークを40億ドル以上も引き離し、世界トップでした。
ニューヨークやロンドンにある物件の購入価格は東京の2倍以上ともいわれており、世界的に割安感がある東京を中心とした都市部の不動産への投資はさらに局地性を増すといわれています。

欧米系資本の増大

かつて東京の不動産市場に興味関心をもっているのは、香港やシンガポールなどのアジア系資本がメインでした。
しかし、新型コロナウィルスの感染拡大以降は欧米系の海外資本の増加が目立っているといわれています。特に首都圏を中心としたオフィス物件の購入が積極的に行われており、今後も兆単位の投資マネーが東京に流入する見込みです。

国債や社債を運用しても効果的な利益が期待できなくなった現在において、相対的にコロナによる経済的な被害が少ないとされる東京の不動産に投資が向かう傾向は、更に強まるともいわれています。

不動産市場の3極化

コロナ後、テレワークやリモートワークが広がる一方で出勤回数がゼロではない会社も多いことから、郊外移住よりも利便性や通勤時間短縮のニーズが増しているといわれています。「都心・駅前・駅近」の3極化が強まり、好立地かつ高額な物件は好調である一方、立地に難がある物件は厳しい状況にあるという見方もあるようです。

株式会社学情の調査によると、在宅勤務を経験した20代の7割は「郊外移住」よりも「通勤時間をもっと短くしたい」と回答していると明らかになりました。最も多かった理由が「自由に使える時間を確保したいから」。
理想的な通勤時間の平均は29分で、「15分~30分」「30分~45分」の回答が多い結果となりました。

リモートワークと通勤との併用により通勤時間のムダに気付いた人が増えた点も要因としてあげられます。「勤務先に近い場所」「可能ならば徒歩圏に住みたい」といったニーズも高まっています。通勤に限らず、買い物や学校など日常生活全般に渡り、「都心・駅前・駅近」の3極化は今後ますます進展するでしょう。

不動産バブルはコロナ後にどう変化するのか?

不動産バブルはコロナ後にどう変化するのでしょうか?マンションデベロッパーやゼネコンなどへの見識が深い山中琢人氏の見解をふまえ、「土地取得費」「建築費」「販売管理費」「デベロッパーの利益」の4点を中心に解説します。

土地取得費

勤務地取得費は、2〜3年前と比較すると価格は落ち着きつつあります。例えば、場所によっては土地の実勢価格が2割以上下がっているケースもあり、インバウンド向けのホテル建設ラッシュや高値での土地の取得などのトレンドは、平時の通常の土地代に戻りつつあるようです。

しかしこの状態は、必ずしも「不動産バブルの暴落」といった表現と称されるものではなく、コロナ禍が落ち着いて大都市圏を中心とした好立地の不動産は、再度価格が高騰する可能性があるとも考えられます。

建築費

建築費に関しては、第一に建築に直接かかわる人件費が年々上昇している傾向があげられます。少子高齢化による職人の不足は深刻な状況にあり、外国からの技術実習生の受け入れをもってしても継続的な労務費アップは避けられないともいわれています。

また、鉄筋や鉄骨などの資材費も高騰傾向にあり、コロナが収束しても世界的な資材需要の高まりにより、さらに建築費を要しかねません。

販売管理費

不動産投資において、販売管理費は見過ごせないポイントです。物件を安定的に運営するには物件だけでなく入居者を管理することも求められます。家賃滞納者や入居者同士のトラブルは賃貸経営にはつきものとされますが、本業をもつサラリーマン投資家にとって自力でこれらの問題を解決するのは大きな負担だからです。

しかし幸いにも、販売管理費はコロナの影響を大きく受けないと予測されています。管理費や家賃を安定的に得るうえで必要なコストであり、土地取得費や建築費とは異なる基準で価格が推移しているためです。

デベロッパーの利益

デベロッパーとは、マンションやビルなど街全体の不動産開発に携わる専門業者を指しますが、デベロッパーの利益に関しても「コロナによる大きな影響はない」といわれています。ここ数年、マンションデベロッパーの地方進出が際立つとの指摘もありますが、先述した通り将来的に建築原価の上昇が生じれば地方のマンション供給の状況は変化する可能性があり、注視が必要です。

バブルに強い不動産の特徴

これから不動産投資をご検討の方にとっては、「どのような物件を購入すれば市況の影響を受けにくいのか?」という点も懸念事項としてあげられるでしょう。そこで本章で最後に、バブルに強い不動産の特徴を解説します。

住居系不動産

住宅の需要は景気によらず一定のニーズがあるため、マンション戸建てなどの住居系不動産は、景気による変動を受けにくいとされています。

特に賃貸住宅に関しては、賃貸水準が景気の影響を受けにくく、比較的価格が変動しにくい点が特徴的です。賃貸住宅の価格は収益還元法における利回りベースで決定されるため、不景気になっても10万円の賃料を毎月取っていた部屋が半額に下落するケースは考えにくいとされています。

対して、商業施設やオフィス、ホテルなどの物件価格は新型コロナウィルス感染拡大にともない、大きな影響を受けました。したがって、今後もしも不動産価格の下落に直面しても、住宅系の不動産は価格が下がりにくい傾向にあるといわれています。

立地

先述したような住居系物件のなかでも、特に首都圏の物件や駅近物件は価格が下がりにくいとされています。賃貸需要が高いため、今後も需要が下がりにくいと考えられているためです。少子高齢化が進む日本において、利便性の低い地域の物件は、賃料を下げないと入居者が見つかりにくくなると予想されています。
また、需要の低い地域の物件では融資の面で不利になる場合もあるため、賃貸住宅への投資の際には「賃貸需要が下がりにくい立地か」という観点での選別が重要です。

まとめ

新型コロナウィルス拡大と不動産バブルとの関係性について、不動産バブルの基本的な概念や実態などを交えながら解説しました。要点は次の通りです。

  • 不動産バブルの原因は「過度な金融緩和」であり、対してバブル崩壊は「金融の引き締まり」より生じる。
  • コロナ後の不動産市場は「都心を中心とした局地性」「欧米系資本の増大」「不動産市場の3極化」が進むと予想されている。
  • バブルに強い不動産の特徴は「住居系不動産」かつ「立地(首都圏の物件や駅近物件)」

人口や世帯数の減少が必須な日本では将来的な住宅需要全体がしぼむ可能性を見越し、投資用物件の立地条件や省エネ性など、物件の長期的なニーズの吟味がポイントとされています。本記事でご紹介した内容を、ぜひお役立てください。

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八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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