不動産を購入する際に、募集条件で「再建築不可」という表示を見たことがありますか?
文字通り、1度建物を取り壊すと、再度建築することができないというものですが、市場相場と比べると、少々安くなっているため気になる方も多いと思います。
なぜ、再建築ができないのでしょうか。
また、どうにかして再建築する術はないのでしょうか。
こちらの記事では、再建築不可物件を保有するメリット・デメリットを徹底解説していきます。
文字通り、現在家が建っていたとしても、一旦取り壊してしまった際に新たに家を建てることが出来ない物件です。
この規制には建築基準法や都市計画法が関係しています。
なお、再建築不可物件が存在するのは、「都市計画区域」および「準都市計画区域」内のみとなっています。
これらの区域は、自治体が住みやすい街を作るために建物を建てる際に様々な規制を敷いていており、「再建築不可」もその1つとなっています。
市場相場と比較した際の価格は、50%~70%程度とされています。
再建築が出来ない土地というのは、それだけでも価値が大きく落ちてしまうものです。
例えば、周辺の価格が4,000万円だとすると、再建築不可物件の2,000万円台前半~後半となるでしょう。
前述の「都市計画区域」および「準都市計画区域」においては、「接道義務」というものがあります。
簡単にいうと、住宅などの建物がある敷地は、「幅員4メートル以上の道路に対して、2メートル以上接していなければならない」という決まりです。
裏を返せば、道路に対して全く接していない敷地や、間口が2メートルに満たない敷地については、建築基準法によって新たに建物を建てることができないのです。
なぜこのような決まりが存在するのでしょうか。
これは、急病人が出てしまった際や、火災が起こってしまった際に、救急車や消防車などの緊急車両が通ることが出来るようにするためのものです。
「救助活動がスムーズにできないような場所に建物を建てないように」というメッセージなのです。
もう1点、法律によって規制されているにも関わらず、なぜ再建築物件が存在するのかと疑問に感じる方もいらっしゃると思います。
理由は、建築基準法の制定が1950年、都市計画法の制定が1968年のため、それ以前に建築された物件の中に、この接道義務を果たせていない物件が存在するからなのです。
なお、2メートル以上接している場合であっても、接している道路が建築基準法に準じた道路でない場合、再建築不可となります。
幅員が4メートルに満たない道路については、道路の中心線から2メートルの範囲については建物を建てることができません。
もし、上記の規制に該当する敷地のうち、幅員が4メートルに満たない場合では、「セットバック」という方法があります。
ここでいうセットバックは、建物を建てる位置を道路に対して後退させるという意味です。
例えば、道路の中心線から1.5メートルのところに建っている建物を再建築する際には、あと0.5メートル後退させれば、中心線から2メートル離れることによって建物を建てることが可能となります。
しかし、このケースでは、後退させた0.5メートル分については自身が所有する土地であるにも関わらず、建物を建てることができません。
また、そもそも建築基準法に準じた道路に接する部分が2メートルに満たないケースでは、隣の土地などを買って、自身の土地とする手段もあります。
しかし、隣の方が売買に応じてくれなければ、再建築することはできません。
なお、再建築は出来ない物件であっても、増改築をしなければ、リフォームをすることは可能です。
ただ、この場合は建築申請が必要ないリフォームに限られます。
建築申請が不要になるのは一般的に4号建築物といわれる建物です。
具体的には、階数が2以下かつ床面積が500㎡以下などの条件を満たす建物になっています。
最大のメリットは、購入価格が安いことです。
前述のように、市場相場の50%~70%程度で購入することができます。
安く購入できれば、市場相場よりもやや低い金額(90%程度)で賃貸しても、通常の物件よりも利回りが良くなる可能性があります。
また、各種税金面でメリットがあります。
課税評価額が低くなるため、固定資産税や都市計画税などの税金も安くなります。
隣の土地所有者から土地を売却してもらい、既に自身が所有している土地と合わせた土地が接道義務を満たすなど、新規で建築が可能な土地となった場合に、資産価値を大きく上げて売却できる可能性もあります。
こちらは、あくまで隣の方が売買に応じてくれた場合です。
最大のデメリットは、建替えることが出来ないということです。
増改築も基本的に行うことは出来ません。
このように使い勝手が良くないため、出口戦略で困る可能性も秘めています。
リフォームが可能なケースもありますが、基本的に大きな道路に接していないか、間口が狭いため、工事車両などが入りづらいケースや機材の搬入や搬出が大変になるケースでは費用が相場より高くなる可能性があります。
また、金融機関からの融資を受けるのが難しい可能性が高いため、自己資金で購入する必要があります。
再建築不可物件は、その性質上資産価値が低いため、金融機関においては、建物を担保として融資を行います。
しかし、その担保としての価値が低いケースでは、お金を貸すことが出来ないということなのです。
再建築不可物件は、建築基準法や都市計画法が制定される前に建てられたものがメインになので、築年数はそれなりに経過しているはずです。
購入に際して、躯体の状況を見ることが一番重要です。
建物の老朽化や劣化が著しいケースでは、購入後まもなくして建て替えなければ住むことが出来ないレベルになってしまう可能性があります。
しかし、これまで解説してきたように建て替えはできません。
建物の痛み具合をしっかり確認してから購入するようにしましょう。
また、古い土地・建物によくありがちなケースとして隣の家との境界線が曖昧なケースがあります。
後々になって、土地の境界のことでトラブルにならないためにも、購入に際しては、確定測量をされているかどうかの確認をしましょう。
ここ数年で建築された中古物件であれば、インフラの心配は無用です。
しかし古い建物では、インフラが整っていないケースもあります。
購入に際しては、きちんと確認しておくようにしましょう。
いかがでしたでしょうか。
再建築不可物件を保有するメリット・デメリットを解説してきました。
購入金額が安く、利回りが高くなりやすいというメリットがある一方で、デメリットも存在しています。
相場よりも割安で購入できるため、手を出したくなりますが、上手に活用できないと固定資産税や都市計画税などの税金だけがかかる土地を保有し続けることになってしまう可能性があります。
購入に際しては、すぐに飛びつくことなく慎重に吟味の上動くとよいでしょう。不安なことがあれば専門家に相談してみることをオススメします。