「市街化調整区域」というキーワードを耳にしたことはありますか?
市街化調整区域とは、「原則としてこのエリアは、用途地域を定めておらず開発行為が制限されています」と言われても何だかピンと来ない方も多いのではないでしょうか。
こちらの記事では、初心者の方でもわかりやすいように市街化調整区域や用途地域について、かみ砕いて解説していきます。
ぜひ最後までお付き合いください。
市街化調整区域を理解するためには、「都市計画区域」を理解する必要があります。
都市計画区域は、「都市計画法」によって都道府県知事が指定するエリアのことです。
また、都市計画区域は、行政に区域とは関係なく指定が可能で、複数の都道府県にまたがることもあります。
その場合には、都道府県知事ではなく国土交通大臣が指定することになっています。
上図のように、都市計画区域は主に「市街化区域」と「市街化調整区域」に分けられます。
どちらでもないエリアは、「非線引き区域」と呼ばれています。
現在、市街地を形成しているエリアや、今後概ね10年以内に積極的に開発や整備を行うことによって、住宅や店舗などを増やしていこうとするエリアとなります。
なお、市街化区域には「用途地域」と呼ばれるものを定めて、土地利用の制限がかけられています。
用途地域についての詳細は後述します。
前述した市街化区域は「市街化を推進」するのに対して、こちらの区域では、基本的に「市街化を抑制」することとされています。
なお、こちらのエリアには、先ほどの市街化区域では定められていた「用途地域」は基本的に定められておりません。
原則的に開発行為は行われず、新たな住宅や店舗・工場などを建てにくくなっています。
詳細は後述しますがこのエリアに住宅や店舗が絶対に建てられないということではありませんので、誤解のないようにお願いいたします。
なぜ、このようなエリアが存在するのでしょうか。
目的としては、自然環境を保全する他に、自治体の限られた予算の中で市街化することが決まっているエリアに集中的に予算を投下するためなのです。
都市計画区域以外は、どのようなエリアになっているのでしょうか。
「準都市計画区域」というエリアがあって、将来的に開発を行う可能性がある地域が指定されています。
下図をご覧いただくと、「市街化調整区域」の位置づけや全体像がご理解いただけると思います。
次に第1章で出てきた「用途地域」について解説していきます。
用途地域は、「市街化区域」の中に13の用途のうちいずれかが設定されています。
図解すると以下の通りとなります。
出典:東京都新宿区
上のような地図をご覧になったことはありますでしょうか?これは、東京都新宿区の「都市計画図」と呼ばれるものです。
一般的にどの自治体においても作成されており、HPや役所などで閲覧することができます。
さまざまな色で塗られていますが、この色分けこそが「用途地域」そのものなのです。
こちらは、「都市計画法」という法律に基づいて作成されていて、おおむね5年に一度見直しがかけられることになっています。
それぞれの自治体においては、住居、商業、工業などが混在しています。
もし、皆が自由に住居を建てたり、商業施設を建てたり、工場を建てたりしたらどうなるでしょうか。
もし、皆さんが住んでいる家の横に工場が建設されたとしましょう。
どう感じるか想像してみてください。
多くの人が、「機械音が聞こえてきてうるさいのではないか」、「トラックの出入りが激しくて排気ガスなどが心配だ」などを思い浮かべたのではないでしょうか。
このように、異なる用途が混在していることによって、生活環境が悪化してしまう懸念があるのです。
そこで、自治体が意図をもって同じような建物を同じエリアに集めることで、それぞれの環境を保護するという目的で用途地域が定められているのです。
市街化区域内の用途地域は、13種類存在し、それぞれの分類に応じた用途が定められています。
番号 | 用途地域 | 概要 |
1 | 第一種低層住居専用地域 | ・最も規制の厳しいエリア ・高さ制限があるため階数は1か2がほとんど ・コンビニを建てることすら難しい ・小中学校は建てることが可能 |
2 | 第二種低層住居専用地域 | ・1に準ずる ・店舗は、床面積が150㎡以下かつ店舗部分が2階以下であれば建てることができる |
3 | 第一種中高層住居専用地域 | ・3階建て程度のマンションやアパートが建てられる ・店舗は、床面積が500㎡までかつ2階以下 ・大学や病院も建てることができる |
4 | 第二種中高層住居専用地域 | ・3に準ずる ・店舗は、床面積が1500㎡までかつ2階以下 ・中規模のスーパーやドラッグストアが建てられる |
5 | 第一種住居地域 | ・ホテルを建てることが可能に ・店舗や事務所は、床面積が3,000㎡まで可能 |
6 | 第二種住居地域 | ・5に準ずる ・店舗や事務所やホテルは、床面積が10,000㎡まで可能 ・カラオケボックスも建てることが出来る |
7 | 準住居地域 | ・1~6の制限内の建物は全て建てることができる ・床面積が150㎡以下の自動車修理工場を建てることができる ・国道及び幹線道路沿いで指定されることが多い |
8 | 田園住居地域 | ・建物の高さ、事務所の床面積は、1に準ずる ・農産物の生産・集荷・処理施設などの建築が認められている ・農業関連で利用する方以外は、厳しい規制 |
9 | 近隣商業地域 | ・店舗や事務所のほか、劇場や映画館、パチンコ店などが床面積の制限を受けずに建築可能 ・小規模の店舗や中規模以上の商業施設まで建てることが可能なことから商店街が形成されることがある |
10 | 商業地域 | ・工場の建設や危険物などを扱う業態など以外において規制を受けることなく商業施設の建築が可能 ・大規模な駅の周辺が指定されているケースが多い ・住宅も建築可能 |
11 | 準工業地域 | ・工場が建てられる一方で、住宅や商店なども建てることができる ・さまざまな物件の形態が混在するため、騒音や排気ガスなどのトラブルが起こる可能性もある |
12 | 工業地域 | ・工場の建築が可能 ・住宅が建てられる一方で、学校や病院やホテルなどは建築不可 |
13 | 工業専用地域 | ・12に準ずる ・住宅の建築が出来ないため人は住むことが出来ない |
第1章で「市街化調整区域に住宅や店舗が絶対に建てられないということではない」と解説しました。
開発行為の許可を得ることで、土地を有効活用することが可能になるケースがあります。
もし、建物を建てるのであれば、周辺に住んでいる方への説明や同意が必要となります。
開発行為を行う旨の「事前届」を準備し、協議を重ねて、締結されると「申請」を出すことになります。
申請が承認され、土地の開発許可が下りると開発行為が可能となります。
ただし、この一連の手順には手間がかかりますので、留意が必要です。
いかがでしたでしょうか。
市街化調整区域と用途地域の違いについて、かみ砕いて解説してきましたが、ご理解いただけたでしょうか。
ぜひ、不動産の購入を検討している方は、きちんと用途地域について理解した上で購入するようにしましょう。