不動産投資とは

日本へのインバウンド投資の将来性とは?国際不動産市場の最新動向を解説!

2021/05/07
日本へのインバウンド投資の将来性とは?国際不動産市場の最新動向を解説!

東京五輪・パラリンピックで、インバウンド需要が活気づくはずだった2020年の夏。訪日観光客の受け入れもなくなり、インバウンド投資も大きな転換を余儀なくされました。

しかし、このような世界的な不況が続くなか、CBREの調査海外投資家にとって魅力的な不動産投資先に、東京が2年連続で1位にランクインしているのをご存知でしょうか。

そこで今回は、日本へのインバウンド投資の将来性について、国際不動産市場に関する最新の調査結果を交えながら解説します。不動産に関するインバウンド投資に興味のある方はぜひ読んでみてください。

インバウンド不動産投資とは

インバウンド不動産投資」とは、外国人投資家による日本国内の不動産への投資や購入を指します。
では、「インバウンド」とはそもそもどのような意味なのでしょうか?インバウンド不動産投資について、語源や対義語であるアウトバウンドとの違いを交えて解説します。

「インバウンド」の意味

インバウンド(inbound」とは、国外から国内に入ってくる人やモノを指します。例えば、日本の旅行業界においてのインバウンドは、「日本国内に入ってくる外国人観光客による旅行」の意です。よって、「不動産へのインバウンド需要」とは、「外国人投資家による日本国内の不動産への投資や購入の需要」という言意となります。

アウトバウンド投資との違い

インバウンドに対して、アウトバウンド(outbound」とは、国内から国外に出ていく人やモノを指します。よって、日本における不動産へのアウトバウンド投資とは、日本の投資家が海外の不動産に投資することを指します。

外国人によるインバウンド投資とは

外国人によるインバウンド投資とは、先述したとおり海外の投資家が日本の不動産に投資することです。

2014年ごろからの中国人や中華系外国人による不動産の爆買いを皮切りに、近年は外国人の長期滞在を見越した民泊施設への需要が増加しました。しかし、現在では新型コロナウィルス感染拡大の影響で東京五輪・パラリンピックでの海外観客受け入れがなくなり、民泊業界への逆風が強まっています。

反面、苦境を乗り越えるべく民泊仕様からテレワーク仕様への変更や、賃貸物件としての汎用など、時流に合わせた柔軟性の高い活用がされている点も特徴的です。

日本不動産へのインバウンド投資熱が高まる背景

インバウンド不動産投資の概要が理解できたところで、次は日本不動産への投資熱が高まる背景をみていきましょう。昨今の不況に反して、先述したとおり日本不動産が世界的に注目を集めているのはなぜでしょうか。考えられる要因を解説します。

資産の防衛

都市部の不動産を購入する投資家の投資目的は、「財産を増やすことだけではない」といわれています。一般的に、都市部の不動産価格は高く、家賃利回りは低い点が特徴的です。利回りが低いことは価格や賃料、流動性のリスクが低いことを示唆しています。

よって、将来的に不動産価格が下落した場合に備え、リスクヘッジとして都市部の不動産を購入するべきという考えもあるようです。特に損失をカバーする時間的なメリットが20代や30代よりも少ない50代や60代にとっては、リスクを抑えた安全性の高い投資先に投資をし、資産を防衛したいという背景があります。

首都圏の不動産価格が安い

東京をはじめとした日本の首都圏の不動産価格は、世界的にみてリーズナブルです。ゆえに、昨今の世界的な不況により運用難に直面した海外投資家の資金が、日本の不動産市場に流入しているとされます。その他、日本への投資額が増加している要因は次のとおりです。

  • 超低金利下において日本の不動産は還元利回りが相対的にみてよいから
  • 日本は新型コロナウィルスの感染者数を比較的に抑制できていると評価されているから
  • 地政学的リスクの観点から、相対的にみて日本への安心感が高まったから

不動産の国際市場は、金融政策や不動産価格の上下、慣行や取引形態など多くの要因によって左右されます。不動産市場は株式市場とは異なり、値動きが一体化していない点も特徴的です。以上のような多様な背景から、外資系ファンドやチャイナマネーの目指す先として日本の不動産が再び注目を集めています。

他のアジア諸国より不動産投資環境が整っている

日本はアジアの不動産市場をリードする存在として認知されています。東・東南アジアをはじめとした中華系の国々では、不動産投資に熱心な華僑(外国に移住している外国人やその子孫)が多く、先行きが不透明な経済において中国本土以外の投資先を求めています。その点、他のアジア諸国より日本は不動産の投資環境が整備されている点に加え、流通する物件数が充実しており、不動産市場の主力として有力視されているためです。

CBREの調査によるインバウンド不動産投資の最新動向

不透明性が増す現在において、インバウンド不動産投資の現状にはどのようなポイントがあるのでしょうか。CBREの調査をベースに、インバウンド不動産投資の最新動向をみていきましょう。

日本への不動産投資は24%増加

日本の不動産へのインバウンド投資は昨年と比較して24%増加しています。新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、現在も渡航には制限のある国が多いのが現状です。しかし、海外の投資家のなかには日本国内にマネージャーをもつ人も多いため、投資家本人が海外に渡航できない状態でも投資を継続できています。

海外投資家の投資意欲は高い

新型コロナウィルスの影響に関係なく、多くの投資家は海外投資を成長戦略の中心に位置付けています。渡航制限の緩和には不透明性が残るものの、投資意欲は高い点が特徴的です。反面、アウトバウンド投資に関しては引き続き感染拡大防止策に左右されるとの見方が強い傾向にあります。

インバウンド不動産投資は流動性リスクに注意

不動産へのインバウンド投資で最も留意すべき点としてよく、「流動性リスク」が指摘されます。不動産の流動性とは、「不動産の売買のしやすさ」です。つまり、保有する不動産を売却して現金化したい状況になっても、すぐに現金化できない可能性があります。

しかし、このリスクはインバウンド不動産投資に限ったものではありません。よって、不動産投資を検討する場合は長期運用を見越し、売却に時間を要することがあっても生活に困らないような余裕資金での投資が重要です。

インバウンド不動産投資の将来性

先行きが不透明な昨今において、どのような観点から投資戦略を立てればよいのでしょうか。インバウンド不動産投資の将来性をみていきましょう。

今後も日本不動産への海外資本流入は続く

不動産に関するインバウンド投資は2021年も日本の投資市場を牽引するといわれています。CBREの調査によると、日本を魅力的と回答した海外投資家の66%が「昨年よりも取得額を増やす」と回答。今後は物流施設をはじめとし、デーセンターや冷凍・冷蔵倉庫など代替投資への海外資本流入が期待されます。

不動産市場の国際化に対する学識者の見解

国土交通省の土地・建設産業局国際課は「不動産市場の国際化に向けた環境整備の取り組み」として、平成284月に不動産市場の国際化に関して学識者の見解を示しています。これらの意見はいずれもコロナ禍よりも前のものですが、インバウンド投資の指標として現在も有用です。では、ぞれぞれの見解をみてみましょう。

都市経済学者

国内投資家よりも高い値段で日本の不動産を購入する外国人投資家がいる場合、外国人が不動産を購入することは経済の観点から好ましいと評価しています。一方、取引に要するコストが高いため、不動産取引の活性化を阻害しているとの指摘があります。また、容積率制限が厳しい都市は成長しないとの指摘が特徴的です。

国際経済学者

インバウンド投資による日本国民へのメリットは、経営資源の多い海外の大企業からいかに誘致できるかに影響されると評価しています。よって、特に金融や不動産等の巨大都市型産業の誘致が重要です。しかし、日本は自国民と同様の権利を相手国の国民や企業に対して保障することに関しては進んでいますが、マーケットアクセスの面では後れを取っているとの見解を示しています。

ミクロ経済学者

多種多様な市場参加者による情報が価格に反映されると、適正価格の形成に貢献するため、不動産の有効活用が進み、不動産の生産性が向上すると評価しています。インバウンド投資政策に関しては、制度の透明性を高めて取引コストを下げることが望ましく、マーケットの情報発信は適正価格で形成すると効果的です。

マクロ経済学者

日本の人口動態(少子高齢化)から、「成熟債権国(貿易収支は赤字に転落するが、過去の対外債券からの収入があり、所得収支は黒字のため経常収支は黒字である状態)」から、「債券取り崩し国(貿易収支の赤字が拡大し、経常収支が赤字に転落。対外債券が減少する)」になるのは不可避と評価しています。ゆえに、今後は海外の貯蓄をいかにして日本国内への投資に回してもらうかが重要です。また、不動産の個別リスクを軽減するため、情報収集のコスト削減や地域単位で外国人に場所の特性を知ってもらうことが、投資の呼び込みにおいて有用と指摘しています。

まとめ

今回は、日本へのインバウンド不動産投資への将来性について、最新の調査をもとに解説しました。要点は次のとおりです。

  • 日本の不動産への海外資本の流入は今後も続く可能性が高い。
  • 海外投資家による日本不動産への投資は前年比で24%増加しており、一貫してインバウンド投資への意欲は高い。反面、アウトバウンド投資は感染症防止対策に影響を受けると予測されている。

国際不動産の市場は動向の変化が目まぐるしく、ニーズにあわせた柔軟な投資戦略が重要です。インバウンド需要をターゲットにした不動産投資をご検討の方は、本文で紹介した内容をぜひ参考にしてみてください。

八木 チエ

株式会社エワルエージェント 代表取締役
みんかぶ(不動産投資)プロデューサー

宅地建物取引士・2級ファイナンシャルプランナーなどの経験を活かし、第3者の立場で不動産投資をしていくうえで役に立つ情報をお届けします。

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